All Chapters of 女装メイドと婚約破棄された悪役令嬢は、幸せな結末を目指します: Chapter 71 - Chapter 80

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第71話

色々と心配な点はあるものの、今日はイザベラとのお茶会当日だ。廊下で耳にしたあの陰湿な会話を思い出し、あんな人達よりも私の方が絶対イザベラと仲良くなれると、彼女と友人になりたいという気持ちは強くなっていた。そのためにも、今日は絶対に失敗できない。私はいつも以上に華やかなドレスを選び、丁寧に髪を整えて着飾った。ドレスはナンニー二侯爵家を象徴するアイリスに似た、青みがかった紫色。露出は控えめでおしとやかなデザインで、動きに合わせて揺れるドレープが美しい。濃い紫色のストールも上に軽く羽織ってある。髪型はゆるい編み込みにして、白い小花を散らしてある。毛先は青紫のリボンで留めた。改めて鏡に映る自分を見ると、リリアンナの外見にもよく似合う色合いだ。その時、ノックの音とともに声が響いた。返事をすると、ドアを開けてシヴァが顔を出す。「お嬢様、お客様が参りました」「今行くわ」屋敷内でのシヴァは、完璧な仕立ての黒い執事服を身につけている。彼の美しい顔立ちと長い手足は、メイド服よりも執事服の方が遥かに映える。久しぶりの男性の姿は、あまりにも絵になる格好良さで、一瞬見とれてしまった。慌てて姿勢を正し、ドアへと向かう。「今日も似合ってる」すれ違いざま耳元で言われた言葉に、私はぎゅっと心臓を掴まれたような気がした。びっくりして囁かれた方の耳を押えつつ先を急ぐ。イザベラと会う前に、頬の赤みが引くことを祈らないと。そんなことを考えていたら、緊張感なんてどこかへ行ってしまった。全く、これを作戦でやっているなら、シヴァは天才だ。客間に行くと、イザベラがすぐに立ち上がって優雅な角度でお辞儀をした。彼女もまた、控えめながらも上質なドレスで完璧に着飾っている。ドレスは淡いピンクにバラの刺繍がされている。黒地のレースも首元や胸元を覆い隠していて、可愛らしくもほどよく色気を足したデザ
last updateLast Updated : 2026-03-16
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第72話

「実は、日頃の感謝に、お父様や従者達に何かプレゼントを渡したいと思っていまして。でも私、今まで自分で宝飾品を選んだことが無くて、誰か詳しい人を探していたんです」この言い訳なら、お父様だけでなく従者全員分という名目で、時間をかけて相談に乗ってもらえるはずだ。反応を伺っていると、イザベラはすぐに目を輝かせた。表情が楽しさとプロ意識が満ちたものに変わる。「相談相手に選んで下さり光栄ですわ。好みの色やモチーフと、首飾りやカフスボタンなど、どのような用途が良いか。それに、価格帯も教えて頂ければ絞れると思います」さっそくイザベラは前のめりになり、楽しそうに話し始めた。どうやらこの相談に乗り機になってくれたらしい。「まずはお父様の物から決めたいと思っていて……やっぱり、男の方が身近に使える物の方が良いとは思うのだけれど、よく知りません。色は薔薇色に近いもので、モチーフは実物を見てから考えたいんです」どうせだからと、自分なりに真剣にプレゼントについては考えてみたつもりだ。イザベラは私の言葉を聞きながら真剣な眼差しで頷いた。「男性ですと、指輪やカフスボタン、ブローチやタイピンがおすすめですわ。薔薇色の宝石でしたらロードナイトがおススメですわね」彼女は流れるように、専門的な知識を披露し始める。「でも、高位貴族に贈れるほどの透明度と高品質を誇るロードナイトは希少ですの。似た色でルビーもよろしいかと」彼女はティーカップに手を伸ばし一口紅茶を飲むと、さらに話を続ける。「モンリーズ公でしたら、価格は高くても構いませんわよね? ロードナイトとルビーを扱っている高級店は……」その情報量の多さと話の展開の速さに、私は圧倒されてしまう。「ちょ、ちょっと待って下さい!」私の声に、イザベラは驚き話が止まる。「情報が多すぎて……何か書き留めるものを持ってきても良いですか?」私が指さした壁際の文机を見ると、イザベラは柔らか
last updateLast Updated : 2026-03-16
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第73話

「……社交界の影響だろうな」彼の言葉には、影から貴族の世を見てきた者の冷静な評価が含まれていた。「本来社交界は王族や高位貴族の女性が取りまとめている。だが、今オレ達の世代でそういったことを担う人間はいない」少し年上の他の公爵家の娘は既に他国に嫁いだらしいし、王家に娘はいない。王子達の婚約者である私が本来ならば担うはずだったが、【魅了】のことやソプレス王国の件もあって社交界に出るのが遅れた。一般的に社交界に出るのは、学園入学の前後。入学前に社交界に出るのは、余程娘の素養に自信があるか、何か理由がある時くらいだ。婚約者も決まっていない子女は、素養がしっかりしていると他家に見せつけるために、あえて入学前に社交界デビューすることが多い。私が急がなくても良いのは、アレクサンドとの婚約が既に決まっていたというのも理由にある。マルグリータも体調のことがあって、まだあまり表に出ていない。レオナルドも彼女を大切にしたいからか、入学前に慌てて社交界デビューをさせる気はないようだ。王族、公爵家共に誰もいなければ、代わりになるのは侯爵家ということになる。「他にも侯爵家はあるが、今一番力を付けているのがナンニーニ家。王族も公爵家も他の侯爵家も差し置いて、社交界を牛耳っていると思われているから周囲からの風当たりも強い」シヴァの言葉は、私の知っているゲームの設定ではなく、この現実の貴族社会の構造を説明していた。ゲームでは語られなかった、現実の社交界の話だ。「私やマルグリータが社交界に出るようになれば、権力を持つのは私達。イザベラが強く出られるのも数年の間だとしたら、私達に迎合するためにあえてナンニー二家と敵対しておいても良い、というわけね」「まあ、表立ってそれをするようなバカはいないだろうけどな」私は、ふと1つの可能性に思い至り頭を上げた。「……シヴァ、私が今から社交界デビューするのは」「不自然すぎるからやめておけ」私の
last updateLast Updated : 2026-03-16
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第74話

休日が終わり、再び学園での生活が始まった。午前の光が差し込む教室の扉をくぐると、恒例となった挨拶をするため私はイザベラへ近づいた。「おはようございますわ。リリアンナ嬢」今日はイザベラから話しかけてくれた。明るい笑顔にこちらも気分が明るくなる。「おはようございます。休日はありがとうございました」「いえいえ。お役に立ててなによりですわ。また次のお休みも楽しみにしていますね」「ええ、ぜひ」今日もイザベラの格好は派手だ。ハーフアップにされた蜂蜜色の髪には、珍しいモチーフの金の髪飾りがきらめいている。宝飾品を褒めようと私が口を開きかけた、その時だった。「モンリーズ嬢、何のお話ですか?」横から、イザベラとよく一緒にいる女子生徒達が遠慮のない態度ですり寄ってきた。「以前言っていたお話でしょう。相談があるとか」「まあ、それでイザベラ嬢と仲良くなりましたのね。私もぜひお話を聞いてみたいですわ」今まで他の生徒とほとんど交流をしてこなかった私がイザベラと親しくなったことで、どうにか私と親しくなろうという打算が見え見えだ。あまり大勢と話すのが得意ではない私は、あわあわとしてしまう。優しく断る言葉を考えている間に、よく通る声が教室中に響いた。 「皆さん、いい加減になさいませ!」 その一言で、教室中のざわめきが一瞬でしんと静まり返る。イザベラの声は、厳格な教師のように響いた。「これは、私とリリアンナ嬢とのお話でしてよ。横から朝の挨拶もなく、話題に入り込むなんて無礼ではありませんこと?」杜若色の瞳に強い怒りを宿したイザベラに睨まれて、女子生徒たちは顔を青くする。彼女達は、イザベラの高圧的な態度に慣れていないわけではない。しかし、公爵令嬢である私の前で叱責されたことに、体裁を崩されたという羞恥が加わったのだろう。すぐに俯き、顔を赤らめた。
last updateLast Updated : 2026-03-16
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第75話

いつもの昼食の場。学園に通い始めて2ヶ月以上経ち、もはやこのメンバーと席順にも見慣れてしまっている。窓からは昼の暖かな日差しが差し込み、テーブルに置かれた焼き立てのパンやフルーツの鮮やかな色彩を照らしていた。時折、カトラリーが皿に触れる軽い音と、話声が響く。「いやー、今朝のは強烈だったな」レオナルドは、今朝の教室でのイザベラの叱責劇を思い出し、呆れたように笑いながら言った。「そう思うなら何とかして下さいよ、第二王子様?」「いや、ああいう女同士の争いに男がしゃしゃり出るのも問題ですよ」冗談めかして言ってみるが、真面目に返されてしまう。言われてみるとそうかもしれない。「じゃあ、どうすれば……」私が困っていると、アレクサンド様がティーカップを音もなくソーサーに戻し口を開いた。「ナンニーニ嬢か。話には聞いているよ。聡明だけど、気が強すぎると。リリアンナ嬢が代わりに強く出てみるってことは」「無理です」「……うん、性格的に難しいだろうね」さすが、一応は婚約者として今まで一緒にいただけのことはある。私は決して、人前であれこれ言えるような性格ではない。正直、次期国王の婚約者と言う立場だって荷が重いのだ。私が黙ってしまうと、アレクサンド様はテーブルの端を人差し指で静かに叩きながら考え込む。「問題は、彼女に後ろ盾がないことじゃないかな?」「後ろ盾?」今まで考えたこともない話に、私は首を傾げた。首を傾げる私に、分かりやすくアレクサンドが説明してくれる。「ああ。彼女の家は強くはあるが、ナンニーニ嬢に婚約者はいないし。私達のような各上の者と親交があるわけでもない。社交界に出れば大人達が後ろにつくんだろうが、学園内ではそうもいかないからね」「た、確かに……」アレクサンドの言葉は、貴族社会の冷徹な現実を簡潔に示していた。
last updateLast Updated : 2026-03-16
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第76話

次の休日。私はイザベラとのショッピングの約束を果たしに、街へ出ていた。王都のメインストリートは人が多く、明るく華やかなムードに包まれている。石畳の道には洒落た馬車が行き交い、色とりどりの花が飾られたウィンドウが光を反射していた。付き人としてシヴァが執事姿で私の傍に控えており、イザベラも侍女を一人連れていた。見えない場所には、2つの家からそれぞれ影で護衛する人材が大量に派遣されている徹底ぶりだ。「では、以前言っていたお店まで案内しますわ」今日のイザベラは比較的質素な、それでも質が良いと分かるワンピース姿だ。髪を下ろし、シルバーで装飾されたカチューシャを付けた彼女の蜂蜜色の髪が、街の明るい光を受けてきらめいている。街中に溶け込むようなシンプルな服装でも、彼女の凛とした高貴な佇まいを隠すことはできない。「はい、お願いします」後を追い店に入ると、そこは重厚な雰囲気のある空間だった。常連だからか、イザベラは店員から丁寧な礼を受けている。「ようこそいらっしゃいました。ナンニーニ侯爵令嬢様」「今日は友人と来たの。予約通り、奥へ案内を頼める?」「はい、もちろんです。どうぞこちらへ」イザベラから「友人」と言われて、私の胸は感動で熱くなった。奥へ通されると、きらびやかで高級感のある部屋へ着いた。重厚なベルベットのカーテンで外界から隔てられ、間接照明が落とされた贅沢な空間。金糸の刺繍が施された深いボルドー色の絨毯が足音を吸収している。目の前にある、細工の凝ったアンティーク家具や巨大な鏡が、この店の敷居の高さをこれでもかと主張しているようで、私は思わず息を詰めた。普段から高級なものに囲まれてはいたが、ここまで明らかに「特別なお客様専用」という空間は始めてかもしれない。テーブルには銀器のティーセットが準備されている。四人ぐらい座れそうな、広い革張りのソファーにイザベラと並んで座った。「では、準備をしてまいりま
last updateLast Updated : 2026-03-16
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第77話

そうこうしている内にドアがノックされ、少しの間の後に開く。入ってきた店員は丁寧にお辞儀をした。後ろには、分厚いカタログや宝飾品の詰まった箱を抱えた人が控えている。「準備ができました。テーブルの上に並べても構いませんか?」「え、ええ! どうぞ!」イザベラは急な来訪に少し慌てた様子を見せた。まだほとんど手を付けられていない紅茶が、すぐに店員によって素早く片付けられた。テーブルの上には分厚いカタログや、深いベルベットの箱に収められた宝飾品のサンプルが次々と並べられていった。蓋が開けられるたびに、間接照明の優しい光を浴びて、宝石たちは内側から輝きを放ち、部屋全体がキラキラとした高揚感に包まれていく。「ご相談されていたロードナイトですが、店で一番の高品質のものはこちらです」店員が指差したのは、深紅と淡いピンクの輝きを併せ持つ、大粒の宝石が収められた箱だった。その輝きは、薔薇の花びらをそのまま閉じ込めたかのようだ。「念のため近しいものも準備してありますが、一番はやはりそれですね。大きさも純度も一級品。希望があれば加工して下ろすこともできます」「リリアンナ、どうかしら?」「すっごく綺麗です! きっとお父様に似合うわ。宝石はこれでお願いできる?」私の言葉に、店員は満足そうに頷いてロードナイトの箱を端に寄せた。彼はすぐに分厚いカタログを取り出す。「何に加工しましょうか? ロードナイトが大きいので、2つに切ってカフスボタンにするのも良いですし、ブローチでしたらデザインによっては男女両性使えるので今後子々孫々に伝えていくにも良いですよ」「タイピンにするには石が大きいわよね。このままブローチか、2つにカットしてカフスボタンや指輪とタイピンのセットにしてしまうのもおススメよ」こんな大きい石をカットしてしまうのはもったいない気がする。昔の庶民だったころの影響か、こういうのはどうも苦手だ。カットすれば宝石は小さくなり、せっかくの価値が下がってしまいそうで手を出
last updateLast Updated : 2026-03-16
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第78話

顔を上げると、シヴァがその女子生徒の手首を素早く掴んで止めている。冷たい空色の瞳が女子生徒を睨みつけていた。成長期が始まり随分と背の伸びた彼は、女子生徒達よりも頭1つ背が高い。そんな背の高いメイドに冷ややかに睨まれて、さすがに女子生徒達も一瞬動きを止めていた。整った顔立ちな分、迫力も凄い。「……な、なによ使用人がっ」気を取り戻した女子生徒の怒りがシヴァに向かってしまう。普通に考えれば、貴族である彼女の動きを格下である一介の使用人が止めるなどありえない。このままではシヴァが罰せられてしまうと、慌てて私は背筋を伸ばした。「私の指示に、何か問題が?」できる限り大きな声を出すが、少し声が震えてしまう。それでも、必死に胸を張った。周囲の視線が私に一斉に注がれる。緊張で手に汗がにじんだ。私の視線を受けて、シヴァが女子生徒から手を離すと私へ深く礼をした。これで、指摘の矛先が私に向くはずだ。「話は途中から聞いていました。学年が何だろうと、してしまったことへの謝罪はすべきだと私も思います」何度も王妃教育で練習したポーカーフェイスを駆使して、至って冷静な表情でへたり込んでいた女子生徒に手を差し伸べて立ち上がらせる。イザベラの後ろに隠されていた彼女が、状況から見て虐められていた女子生徒だろう。彼女の質素な身なりから、家格が低いことが見て取れる。対して怒っている女子生徒達は、みんな身なりが良い。学年が違うとこんな陰湿な苛めがあるのかと、改めて自分の学年が比較的大人しかったことを理解した。急に現れた私を女子生徒達は睨みつける。「な、なによ貴女は」「リリアンナ・モンリーズ。第一王子アレクサンド・リヒハイム殿下の婚約者をさせて頂いています」こんな時くらいは大っぴらに名前を使わせてもらおう。内心アレクサンドに謝罪してみるが、彼ならいつも通りの柔和な笑顔で「
last updateLast Updated : 2026-03-17
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第79話

中庭の緊張から解放され、私達は食堂に到着した。王族専用食堂には、私たち以外のメンバーが揃い、すでに着席している。イザベラを連れてきても誰も文句は言わず、温かく迎え入れてくれる。使用人も何事もなかったかのように礼をして、昼食の準備を進めてくれていた。イザベラははじめて訪れるこの空間を、珍し気にしげしげと見渡している。「無事だったようだね。良かったよ」先に到着していたアレクサンドが、私達を見て声を掛けてきた。すでに椅子に座っていたレオナルドもこちらを振り返る。「姉上! 無事でよかった」「……まあ、ロミーナがいた時点で大丈夫だろうとは思っていました」いつも静かで口を挟まないステファンが、レオナルドの隣で立ち上がり、私達に礼をしながらそう言った。「ま、まア……この程度でしたラ、頼って下さいネ」ロミーナはそそくさと窓際のいつもの席へ向かう。そこでふと気付いて、いつもよりも1つ下座の席に座った。「彼女はお客さんかい?」ロミーナの動きを流し目で見ていたアレクサンドが、柔和な笑顔でこちらに視線を向ける。私やヤコブの後ろに隠れていたイザベラがびくりと身を震わせた。頬を真っ赤に染めた彼女は、慌てて深くお辞儀をする。「……い、イザベラ・ナンニーニ。リヒハイム王国の」「正式な礼はいいよ。無礼講だから、顔を上げて」アレクサンドに制されて、イザベラは顔を上げる。珍しくもじもじと指先を動かしながら、静かに俯いていた。そうだった。昔、婚約パーティで一度会った時に、イザベラがアレクサンドに好意を寄せているような様子があったことを忘れていた。好きな人の婚約者と友人とか、気まずいに決まっている。今更そのことに気付いて、私は内心頭を抱えた。「ナンニーニ嬢はこちら二」動かない私達を見かねて、ロミ
last updateLast Updated : 2026-03-17
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第80話

翌日の天気は快晴。眩しいほどの太陽が、学園で一番大きい中庭を照らしつけていた。アレクサンドから集まるよう指定された中庭は、生き生きとした綺麗な芝生が一面に敷かれていた。芝生を囲うように植えられた木々の葉が、風にさやさやと揺れる。学園の石造りの建物に囲まれたその場所は、まるで都会の中の秘密のオアシスのようだった。中央にはチェック柄のピクニックシートが敷かれ、端には既に白いリネンの被せられたランチボックスや、銀のティーセットの置かれたカートが準備されていた。「私の軽い提案にここまでして下さりありがとうございます」「たまにはこういうのも良いかと思ってね。今日だけはこの中庭は貸し切ったから、不躾に見てくる人もいないはずだよ」アレクサンドは温かい笑みを浮かべて答える。さすが王権。周囲を囲う建物の二階や三階の窓から微かな視線を感じることもあるが、遠いので気にしないようにしよう。いくら注意されていても、学園内の権力者たちが一堂に会する様子は気になるに決まっている。ちょっとくらい見てしまうのもしょうがない。実際、集められた面々は誰も彼も美男美女。権力関係が無くても、一枚絵になっていたら欲しい人が出てもおかしくない。実際、ゲームのファンだった私も見てみたい。そんなことを考えて立っていた私の隣で、イザベラが淑女らしくお辞儀をした。今日の趣旨に合うように、髪型は三つ編みにリボンのみと素朴にしている。その控えめな姿は、いつも教室で見せる華美なファッションリーダーのそれとは別人のようだ。「お呼び頂きありがとうございます」「大事な婚約者の友人だからね。ぜひ、また話がしたいと思っていたんだ」アレクサンドの優しい笑みに、イザベラははにかみながらも笑みを返す。少し慣れたのか落ち着いてはいるせいか、どちらかと言うと派手目な綺麗系美人のはずのイザベラが可愛く見える。恋する乙女というのは偉大だ。「どこに座ってもいいんですか
last updateLast Updated : 2026-03-17
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