All Chapters of 女装メイドと婚約破棄された悪役令嬢は、幸せな結末を目指します: Chapter 121 - Chapter 130

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第121話

季節は冬になり、年末年始が近づいていた。実家が遠方の生徒のためにも12から1月の約2ヶ月は学園はお休みだ。場所によっては雪で帰れず、2月から登校する生徒もいるらしい。その後は3月の最終試験と卒業式が待っている。4月はゲームの始まりを知らせる入学式。とうとうゲームのヒロインや、登場キャラクターが勢揃いするのだ。それが楽しみでもあり、ちゃんと反乱を阻止して婚約解消できるのかどうか。緊張の一年でもある。「リリアンナ嬢、考え事ですカ?」そんなことを考えていると、突然横からロミーナに声を掛けられた。「い、いえ! ちょっと、課題のことを考えておりまして……」私とロミーナは現在、馬車でアマトリアン辺境伯領へ向かっていた。この約2か月間の休暇の最中、最終試験にも関わる課題が宿題にされていた。自分の実家が管理している領や、関わりのある領について調べ、その問題点や課題を整理し対応策を練ること。休暇中に少しでも何か対策を実行し、その結果を報告する。そういうレポートを作らなければならない。本来であればお父様の管理している我が家の領を対象にするところだが、せっかくだからと私は旧ソプレス王国を選んだ。ロミーナも実家に帰省し、アマトリアン辺境伯領について課題を提出するらしい。行き先が同じ私達は、どうせだからと一緒にアマトリアン辺境伯の所へ行くことになった。既に辺境伯夫妻からの許可は得ているが、せっかくの休暇をあんな人達と一緒に過ごさなければならないのは憂鬱だ。ロミーナには悪いが、辺境伯夫妻は苦手だ。おまけに、課題だからと今回はルネはいない。私が自分で頑張らないといけないのだ。不安と緊張で頭が痛くなる。「今回はルネもいないですし、一人で向き合わなければならないので……ちゃんとできるか心配で」「大丈夫ですヨ。貴族たるもノ、領地管理の経験を持ちなさ
last updateLast Updated : 2026-03-22
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第122話

「……ねえ、ステファン様はこのこと知ってるの?」ステファンは何をしているんだろう。ロミーナの婚約者なのに。いくら場所が離れているとはいっても、ロミーナが相談すれば少しくらい何とかしてくれるはずだ。ゲームではステファンのルートはしなかったし、触り程度にしか知らない。ヤコブに事前に二人の話を聞いておけば良かったと思うが、ここまで来たら帰るのに一週間。手紙だって早馬で4、5日はかかる。ヤコブ自身も実家に帰っているだろうし、誰かに見られるかもしれない手紙に、気軽に前世の話を書くこともできない。完全な八方塞がりだ。「メイドの話によれば、手紙が来るのは1、2か月に一度。昨年も休暇中に1回来た程度で、婚約者がここに来たこともない。だから、メイド達は顔も知らないんだとさ」「何それ……? 本当に、二人の婚約関係ってどうなってるの?」私とアレクサンドですら、離れていても手紙くらいはやりとりする。遠くではあるが、配達速度的に2週間に一度のペースでやりとりはできる。それすらもしないなんて。ゲームでもステファンとロミーナの婚約関係は上手くいっていないようだった。しかし、ロミーナが婚約解消を拒むので難易度はそこまで低くない。こんな状態で、何故ロミーナはステファンとの婚約状態を維持したがっていたんだろうか。「ステファン様……ロミーナ嬢がこんなことになってるのに、何もしないなんて。見損なったわ」「いや、ステファン様の方にも何か事情があるんだろう。とにかく、ロミーナ嬢から話を聞いてみないことには」シヴァに言われて頭が冷静になる。感情的にはアマトリアン辺境伯夫妻とステファンに怒りたい所だが、事情も分からないのにあれこれ言えないのも確かだ。「それなら、ロミーナ嬢に事情を聞いてみる。ステファン様とどうなってるのかって」「夢中になりすぎて、課題のこと忘れるなよ」
last updateLast Updated : 2026-03-22
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第123話

「……とりあえず、早くサンスリード公爵家に潜り込め。そうだな、後半年……5月までは待ってやろう」両親に何か策があるだろうことは察しがついていた。そのためにも、どうしても自分をサンスリード公爵家に潜り込ませ、情報を手に入れたいのだ。それがいけないことなのは頭では分かっていた。それでも、他に行く当てなどない。自分が反論したところで、両親は話も聞かず、さらにひどい折檻が待っていることは容易に想像できた。かといってステファン様にこれ以上迷惑をかけるわけにもいかず、ただ時が過ぎるのをじっと待っているしかない。 私には、何もできない。 「それ以降、何の情報も連絡も無ければ覚悟しておけ。政略に使えなくても、お前を金に変えることだってできるんだ」それが禄でもない相手に自分を高く売りつけるんだということは、容易く想像できた。思わず背筋が凍ってしまう。「分かったら、早く行け。課題などさっさと終わらせて、王都に戻ってサンスリード家にすり寄るんだ」父は冷たい視線で私を見下ろした。「……できるよな?」それは、確認ではなく命令だ。父の言葉に、私は小さく頷いた。  ***  翌日。私は朝食を食べに食堂へ向かった。食堂は広く、中央には大きなテーブルが置かれていた。窓からは冬の朝の光が差し込んでおり、暖房がついていて十分暖かいはずだ。しかし、どこか冷たく寒々しい。辺境伯夫妻は既に席に着いていた。だが、ロミーナの姿は見えない。「おはようございます。あの、ロミーナ嬢は?」「おはようございます、モンリーズ嬢。ロミーナなら、もう出かけましたわ。領内の下見に行くんだとか」
last updateLast Updated : 2026-03-22
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第124話

ずんずんと歩いていき、私の部屋に押し込める。暖炉の火の前に椅子を運ぶと、立ち尽くすロミーナを座らせた。そうしている内にドアがノックされる。部屋に入ってきたのは軽食と紅茶を用意したシヴァだった。彼は片手で軽くテーブルを持ち上げ、ロミーナの横に移動させる。そして、テーブルの上に軽食を並べ始めた。皿の上には、湯気が立つ小さなサンドイッチや、焼きたての甘いスコーンが並び、傍には温かい紅茶が入った銀のティーポットが置かれている。美味しそうな匂いが、温かい部屋に広がった。「どうぞ食べて下さい。温かいですよ」私が勧めたことで、ロミーナは恐る恐る紅茶を手に取り一口飲んだ。温かい紅茶に癒されたのか、彼女の顔に笑顔が戻る。そうしてしばらく食べ進めていると、徐々に頬に赤みが戻ってきた。「コート、そろそろ外したらどうですか?」ずっと分厚いコートと冬用のボンネットを付けたままなので、もう体も温まったしと思い声を掛ける。ロミーナは俯いてボンネットを深く被り直した。「着替えは部屋でしまス。お気遣イ、ありがとうございまス」ロミーナは少し慌てた様子で立ち上がると、すぐに部屋を出てしまった。完食はしているので、これで元気になるだろうか。「大丈夫かな……」「どうだろうな。なんか、色々きな臭いし」茶器を片付けながら、シヴァはそう呟く。そうだ。きな臭いで思い出したが、旧ソプレス王国について調べていて不審な点を見つけたのだ。ロミーナに確認しようと思っていたが、あの様子なので部屋まで押しかけるわけにもいかない。「明日なら話せるかな?」少し心配に思いながら、私は明日やるべきことに思いを馳せた。 翌日の朝。私はシヴァに頼んで、いつもより二時間早く起こしてもらった。冬の朝はまだ暗く、肌寒い。それでも、ロ
last updateLast Updated : 2026-03-22
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第125話

ドアを開けると、中にロミーナを押し込む。ちょうどタイミング良く、朝食を用意してきたシヴァが大きなバスケットを持ってきた。彼に目配せすると、ロミーナをさらに奥へ押し込むように、一緒に馬車に乗り込む。最後に乗り込んだシヴァは、御者に出発するよう声を掛けるのを忘れなかった。「あノ、こレ、どこに出発してるんですカ?」シヴァの存在に慌てて髪で頬の痣を隠しながら、ロミーナは質問した。それもそうだろう。今日もレポート作成のためにと外出するつもりだったようだから。「昨日は時間が無かったんですが、レポート作成のためにアドバイスして欲しいと思ったんです」「それならもちろン、力になりますガ……これでは私の予定ガ」「大丈夫です。ちゃんと手紙は残しましたから!」昨夜の内に、アマトリアン辺境伯夫妻とロミーナの馬車の御者やメイド宛に『どうしてもお手伝いが欲しいのでロミーナ嬢と旧ソプレス王国の地域まで出かけます』と書置きを残してあるのだ。昨夜のあんな不穏な状態で、毎日のように早朝から出かけているのを安心して見ていられるわけがない。どうせここで一番地位が高いのは私なのだ。今回ばかりは、公爵令嬢と言う立場を思う存分使わせて頂こう。「どうせなら怪我が治るまで旧ソプレス王国でゆっくりしちゃいましょうよ」ロミーナに笑いかけて、私はシヴァが差し出したスコーンをロミーナに手渡した。準備したばかりの物なので、スコーンはまだ温かい。私も自分の分を受け取ると、思いっきり口に入れた。焼きたてのスコーンはしっとりしていて、バターの香りが口内に広がる。私が美味しそうにしているのを見て、ロミーナもスコーンを口に入れた。戸惑いながらも、どんどん食べ進めていく。その内に、彼女のまん丸なアプリコット色の瞳から、ポロポロと涙が零れてきた。何も言わずにハンカチで涙を拭き、シヴァからもらった携帯用の器に入ったスープを私は差し出す。
last updateLast Updated : 2026-03-22
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第126話

恐らく何らかの不正に手を出していそうな両親。それに巻き込まれそうになってはいるが、両親に見放されたら生きていけないロミーナは従うしかない。婚約者であるステファンにも迷惑はかけられず、一人で板挟みに苦しんでいたようだ。「このままではいけないと分かってはいますガ、どうしたらいいカ……」悩むロミーナの姿は学園で見せるしっかりした先輩の姿からはかけ離れていた。本当の彼女は、こんな風に気弱で大人しい女の子なのかもしれない。どうにかしてあげたいが、証拠が無いことには立件も出来ないし、何より夫妻に何かあればその火の粉はロミーナにも飛び掛かるだろう。無茶なことは出来ない。「元気を出して下さい。私達は一緒に学園生活を送ってきた仲間じゃないですか」ロミーナの冷たい手を両手で包み込み、笑顔を向ける。彼女はまだ不安そうにしながらも、少しだけ微笑んだ。「そうだ! 何か夫妻を牽制できそうな証拠を手に入れておいてください。私からアレクサンド様に伝えて、下手なことが出来ないように脅し付けてもらいましょう!」「アレクサンド殿下ニ……?」「ええ。私だと何も分かりませんが、ロミーナ嬢相手に油断しているでしょうから、上手くいくはずです。ちょっとした横領とか」「横領……」ロミーナは考え込む。そうは言われても、すぐにそれらしいものなど手に入らないだろう。しかし、ちょうど今日彼女に尋ねたかった件がそれなのだ。上手くいけば、この件でアマトリアン夫妻を黙らせることが出来るかもしれない。 馬車が旧ソプレス王国に入った。以前小麦関係でお世話になった町の中は通り過ぎてしまい、大通りを抜けて隣町へと向かう。移動しながら、徐々に馬車は大きく揺れ始めた。魔法で衝撃を吸収している設計とはいえ、それでもここまで揺れるのは珍しい。ちらりと窓の外を見ると、そこ
last updateLast Updated : 2026-03-22
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第127話

今ある道をそのまま進み、とりあえず道の長さを地図と照らし合わせることにした。御者に指示を出して、そのまま真っすぐ道を進んでいく。町を二つ通り過ぎ、旧ソプレス王国の王都の広場に来て、道が途絶えた。この頃にはすっかり日が傾いている。広場の先には、遠い丘の上に建つ旧ソプレス王国の廃城が夕暮れの空に沈んでいるのが見えた。この広場はかつて王都だった名残を感じさせるほど広く、中央には大きな石造りの噴水跡がある。周りを囲む建物は、どれも古い石造りで重厚だが、窓の木枠や扉は真新しいものが使われており生活感と修繕の跡が見て取れた。こんなに大きな広場なのに、活気は少ない。「もう暗くなりますが、どうしましょうか?」御者が私たちに声を掛けてくる。シヴァは窓辺に近付くと、御者に声を掛けた。「このまま右に行くと、管轄の貴族の屋敷があったはずです。まだ人がいればそこに泊まらせてもらいましょう」御者は頷き、馬車を動かす。同時に護衛としてついて来ていた兵の1人に先触れを頼んだ。馬車は広場から外れ、さらに日が傾き暗くなる中を移動していく。やがて到着した屋敷は、高い塀に囲まれてはいるものの、門扉は錆びつき庭は荒れ果てていた。雑草が茂り、手入れされていない木々がいかにも不気味だ。建物自体に人の気配が薄く、誰かが住んでいるのかすら怪しい。しかし、その入り口には、先触れに出かけた兵の馬が留まっていた。「……これ、本当に人がいるの?」心配になって呟くも、信じて待つしかない。馬車を屋敷の前に止めてしばらく待つと、先触れに行っていた兵が屋敷のドアを開けてこちらへやって来た。「元々貴族だった住人がいました。確認すると、ろくな部屋は無いですが、寝床程度なら用意できると言っています」見れば、奥の部屋の一角に、辛うじて橙色の明かりが灯っている。どうやら、ちゃんと人が住んでいたようだ。「分かったわ。
last updateLast Updated : 2026-03-23
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第128話

「んで? ああ、お嬢様二人な。大丈夫だ! 寝床ならさっきの兵隊さんに手伝い頼んだから。お前は食ったのか?」漏れ聞こえる声の調子からして、知り合いなのだろうか。口調が砕けたものに変わっていく。シヴァの声は小さいから、私には男の声しか聞こえない。「途中? 何やってんだ! ちゃんと食え! 食わなきゃ、でかくならねぇぞ!」追い出されたのか、小走りでシヴァが戻ってくる。その表情は少し疲れているような、どこか嬉しそうな、複雑なものだ。「お帰りなさい、シヴァ。えっと……お知り合いか何か?」「亡き両親の旧友……とでも言うのでしょうか。変な奴ですが、お気になさらず」シヴァの過去の知り合いとか、会うのは始めてかもしてない。どんな人だろうか。ちゃんと挨拶できるかな?モンリーズ家へ来る前の知り合いと言うことは、彼の幼少期のことを知っているはずだ。シヴァの過去の話とか、ぜひ聞いてみたい。私が目を輝かせていることに気付いたのか、シヴァは困ったようにため息をついた。そうか。知り合いだったから、すんなりここへ道案内したんだなと納得する。しばらくすると食堂に一人の男が現れた。二メートルは超えるかと言う程背が高く、体格もがっしりしている。顔は髭で覆われており、貴族だったとは言うが、見た目だけならば森で木こりをしていると言われた方がイメージに合う。濃い茶色の直毛がすっかり日焼けした顔を覆い尽くし、そこからやや垂れ目の紫色の目が覗いていた。服装はシンプルなシャツにベスト。質素ではあるが質は良さそうだ。席を立ったシヴァが彼の隣へ立つ。シヴァも背が高い方ではあるが、彼と並ぶと子供のようだ。私が並んだら赤ちゃんに見えてしまうかもしれない。隣に座るロミーナも、今まで見たことがないタイプの人間に呆然としていた。「…&
last updateLast Updated : 2026-03-23
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第129話

その日の夜。寝る準備が終わって部屋のカーテンを閉めようとすると、庭先でシヴァとヴォルフガングが一緒にいるのを見かけた。知り合いだと言うし、積もる話もあるんだろうと思うが、どうしても気になってしまう。シヴァの過去を私は何も知らない。ヤコブから教えてもらったのも、ソプレス王国の高位貴族出身と言う話のみ。後知っているのは、シヴァを追っている怪しい人がいるという話くらい。本名すら教えてもらってないのだ。二人の邪魔をするのも嫌だが、気になるものは気になる。しばし考えて、こっそり盗み聞きすることに決めた。うん。シヴァには後で謝ろう。私は部屋のローブを羽織り、そっとドアを開けた。足音を立てないよう慎重に移動する。庭に面した裏口から、二人の声が聞こえる方に注意深く近づいた。庭の一角、暗闇に紛れるように生い茂った生け垣の陰で、二人が何かをしている。すぐ近くの木に私は身を潜めた。夜の冷たい空気が肌を刺す。そんな空気を切り裂くように、剣が空を切った。シヴァはシンプルなシャツとズボンに着替えていた。黒髪のウィッグを付け、編み込んだ髪型は女性らしいものの、服装は男性っぽいものだ。対するヴォルフガングは先程の服装と変わらない。暗闇の中、二人が剣を交わす動きに合わせて金属音が鳴り響く。剣を振るシヴァは、あまり見たことがない。真剣な表情で相対している彼は途方もなくカッコいい。そうやって見とれていると、シヴァの剣がはじかれて飛んでいく。次の瞬間には、ヴォルフガングの剣先がシヴァの喉元で止まっていた。「また負けた! くそっ!」シヴァはため息をつくとしゃがみ込む。ヴォルフガングは息一つ乱さずに笑っていた。「はっはっは! ワシに勝つには100年早いわ。まあ、昔よりは強くなったな」「その余裕が腹が立つ…&hellip
last updateLast Updated : 2026-03-23
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第130話

「……忘れてくれ」無理だ。こんな可愛い姿、忘れるはずがない。「なんだ、モンリーズ家のお嬢さんとは良い仲なのか」からかうように笑いかけてくるヴォルフガングに、シヴァは顔を上げると再び睨みつける。つかつかと近寄ると、片手でぐいぐいと彼を押した。「もうお前帰れ! 寝ろ!」「おいおい、久々の再会なのに手荒にするんじゃない」まるで家に彼女が来てしまった時の反抗期の息子のようだ。あまりに可愛くて私はつい笑ってしまった。私が笑っているのを見て、シヴァは動きを止める。「……リリーに免じてだからな」ため息をつくとシヴァは剣を片付けに行った。残されたヴォルフガングは私に近寄る。大柄な彼はしゃがみ込み、私と目を合わせてくれた。髭もじゃの顔から優しそうな目が覗いている。「どうも、モンリーズ家のお嬢さん。あいつと仲良くしてくれているようで、ありがとう」「いいえ。こちらこそ、シヴァの意外な一面が見られて嬉しいわ。ヴォルフガング様は、シヴァとはどういうご関係なんですか?」「ワシはソプレス王国の騎士団長をしていましてな。ユリ……」「その名は言うな」にこにこと話していたヴォルフガングの頭に、シヴァの手刀が刺さる。いつの間にか、もう戻ってきていた。シヴァの本名が聞けそうだったのに、惜しい。「えっと、こやつの剣の先生もしていたことがある……今は何と呼べばいいんだ?」「とりあえず、シルヴィアで」腕組みをして唇を尖らせながら言うシヴァに、ヴォルフガングは口髭を弄りながら返事をした。「女性名か。ドレスも着ていたし、女装趣味だったとは知らなかった」「趣味じゃねえ。身を隠す必要があるだろうが!」「おお、そうだったそうだった」なんとも呑気だ。
last updateLast Updated : 2026-03-23
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