All Chapters of 女装メイドと婚約破棄された悪役令嬢は、幸せな結末を目指します: Chapter 131 - Chapter 140

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第131話

驚いた顔をしている私達を見て、ヴォルフガングは首を傾げた。「……なんだ。当時のことは覚えていないのか?」「ああ……はっきり記憶してはいないが、夜寝てた間に襲撃されてたとしか聞いてない。それ以外は何も」シヴァの当時の年齢で言えば5、6歳程度。逃げるのに夢中で、救助した大人も子供であるシヴァには何も見せずに逃げ出した、と言う事だろうか。「ワシも詳細は知らないがな、城が襲撃されたと聞いて駆け付けた時には全てが終わっていたよ。あまりにも早い決着だった。当時は休みで、この屋敷にいたんだ。城まではここから1時間もかからないが、着いた時には終わっていたんだ」伝令の移動も考えると、襲撃から二時間。そんな短時間で、内乱って終わるものなの?それに、意見の対立でギスギスしていたなら、城は警戒していたはず。それなのに二時間以内で決着するほど、警備が緩かったとは到底思えない。ヤコブの言うように、これは確実に何かがある。私が考え込んでいる間に、ヴォルフガングは優し気にシヴァを見つめた。フライパンみたいな大きくて硬そうな手で、彼の頬を優しく撫でる。「姿が見えないから、どうしているのかと思ったはいたんだがなぁ。こんなに大きくなって……元気そうで良かったなぁ」その手のぬくもりと彼の優しさに、シヴァが涙目になるのが分かる。それを振り払うように、シヴァは私の方を向いた。私の手を引いて、どんどん屋敷の方へ歩いてしまう。「もう寝るぞ。風邪をひく」それは、泣き顔を見られたくない強がりなのか。それとも、私に素の状態でヴォルフガングと一緒にいるところを見られたくないのか。戸惑いながら振り向くと、庭の中央でしゃがんだままのヴォルフガングが、やれやれと言った様子で笑っていた。「おやすみなさい」私が声を掛けると、ヴォルフガングはひらひらと手を振って見送ってくれる。またど
last updateLast Updated : 2026-03-23
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第132話

道中、私達は例の小麦を支給した町へ留まり、小麦の今年の収穫量を確認した。しっかり増加しており、これならば来年からは一年食べていける量は十分確保できる。余剰分は隣町ともやり取り可能だろう。それを確認して、私達はアマトリアン辺境伯邸に戻った。屋敷に到着した頃には、もうすっかり暗くなっている。「ロミーナ嬢を一人にさせるのは心配ですし、屋敷に着いたら行動を共にしましょう」道中、私達はそう約束していた。一人にすれば、きっと辺境伯夫妻はまたロミーナを呼びつけて嫌がらせをしてくる。それを防ぐためだ。私達は手を繋ぎ、一緒に私の客間へ向かった。ベッドは広いし、恐らく二人で寝るのに支障はない。部屋に到着すると、シヴァにはロミーナの部屋から荷物を運んでもらう。一部話を聞いてくれそうな使用人がいれば、手伝ってもらうつもりだ。シヴァがいないうちに私だけでも部屋義に着替えてしまっていると、ロミーナはソファに座りながら呟いた。「リリアンナ嬢、ありがとうございまス」「気にしないで下さい。大事なお友達のためですから!」元気に返事をすると、ロミーナは笑顔を見せてくれる。そうこうしている内に扉がノックされ、シヴァが顔を出した。箱に綺麗に仕舞われた部屋着をテーブルに置くと、明日の着替えをクローゼットに仕舞ってくれる。ロミーナとずっと一緒にいる分、私が動けないためシヴァのやることが多いのは申し訳ない。それでも彼は、自分の仕事だと淡々とこなしてくれていた。ロミーナが着替える頃には、シヴァは素早く部屋を出ていく。次は紅茶の準備をしに行くのだ。「……リリアンナ嬢ハ、使用人もいるのに着替えは一人でするんですネ? シルヴィア嬢もいるのニ……」ロミーナの着替えは私が手伝った。まあ、普段からこの屋敷ではロミーナ一人で着替えることも多いらしく、手慣れている。
last updateLast Updated : 2026-03-23
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第133話

とうとう今年最後の日だ。他の家ではするのだろうが、年越しのパーティというものを、この家でしているのを見たことがない。いつものことだからと、特に私は気にしていなかった。町で開かれる年越しのお祭りがあると両親はリリアンナ嬢に話しており、せっかくだからと彼女は出かけている。おそらく、私を孤立させるためだろう。ずっとリリアンナ嬢と一緒にいたせいか、一人になるのは久しぶりだ。リリアンナ嬢の客間で世話になっており、私の部屋とは違い十分に室内が暖められているとはいえ、一人で部屋にいる寂しさと冷たさは変わらない。広い屋敷に残された私は、黙々とレポートの制作を進めていた。ここにいるのも後一週間程。王都までは移動に一週間はかかるので、余裕を持って学園が始まる二週間前には出発しなければならない。国内でもそこまで寒くないこの土地は毎年うっすらとしか雪が降らず、ほとんど冬の移動に困ることは無かった。だが、油断はできないので早めに出かけなければ。そう思いながら、残りわずかとなったレポートを書き続ける。そんな時に、ふとドアがノックされた。「はイ」返事をすると、両親専属のメイドがドアを開けて入ってきた。両親に専属の従者がいても、自分専属の従者などいない。必要のある時に、見かけた人に声を掛けて用事を頼むのが常だ。「旦那様がお呼びです」その言葉に、ようやくだなと思い立ち上がった。あくまで普段通りにしなければならない。いつものように、俯いて表情を硬くして、怯えた様子を見せる。長い間、両親の操り人形だったせいか、演じるのは得意だ。両親の寝室へ向かう途中の、廊下の窓の外。遠くでは祭り会場の明かりが灯っているのが見えた。あそこでリリアンナ嬢は一息ついているだろうか。明るい彼女の顔を思い出す。せっかくリリアンナ嬢がくれたチャンスなのだ。上手く証拠を見つけないと。
last updateLast Updated : 2026-03-23
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第134話

「これじゃ寝れないぞ! どうしてくれる!」花瓶の水で寝間着が濡れてしまった父は、感情のままに私へ近づく。そのままの勢いで、転んで床に倒れている私の腹を蹴り上げた。痛みが走るが、まだ我慢だ。これくらい、いつものこと。まずは耐えなければ。「ご、ごめんなさイ! 申し訳ありませ……」「年越しにまで迷惑をかけないで頂戴! もうその顔見たくないわ! 貴方、早く空き部屋へ移りましょう!」騒ぎを聞きつけメイド達がやって来る。彼女らは掃除をしようと箒や雑巾を持ってきていたが、それを父は奪い取り私へ投げつけた。頭に雑巾を被せられ、箒が体に当たる。なんともみっともない姿だろう私を見て、父は満足したように鼻を鳴らした。「片付けなんぞあいつにやらせろ! それより着替えと別室の用意だ!」両親に言われて、メイドは私を置いて走って行く。しょうがないことではあるが、彼女らは両親の言いなりだ。こういう時に助けてくれることは無い。あの業突く張りの両親は、寝間着すらも一級品の物を買い、全て別室で大切に保管している。ここに着替えは置いていないので、取りに来るために立ち寄ることもないだろう。これでもう、この部屋に来ることは無い。これから行くのは、リリアンナ嬢の客間の次に豪華な部屋だろう。雑巾で顔が隠れていて、本当に良かった。両親やメイド達の足音が遠ざかり、周囲が静かになったのを確認して私は立ち上がった。つい笑みが浮かんでしまうのはしょうがない。頭から落ちた雑巾を掴み、誰かが来てもすぐには分からないようドアを閉めた。油断した両親は、ちゃんと片づけをしているかどうかすら確認には来ないだろう。いつも従順に、黙々と指示に従っていたのが功を奏していた。裏金や裏帳簿などを隠している場所の予想は付いている。全く使っていない、インテリアと化した本棚の下の方は、ただの戸
last updateLast Updated : 2026-03-23
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第135話

あれから二日間、ロミーナはずっと私達と一緒にいた。私のレポートも大詰めで、後は開始された公道整備の様子を確認して終わりとなる。共に馬車に乗り移動している間、ロミーナはずっと馬車の中でレポートの続きを書いていた。彼女が忙しいのは、レポートを二種類書いているからだ。1つは私と共に行った公道整備の内容。もう1つが、公道整備に携わった際に見つけた不正と、その証拠。それを訴えた場合に起こるであろう法的手続きなどについてまとめたレポートだ。明日の夕方にはアマトリアン辺境伯邸に到着し一泊。そのまま王都に帰る予定になっていた。ロミーナはその一晩で、両親と決着を付けようと必死なのだ。私はとにかく邪魔にならないようにと、彼女をできるだけ一人にしてあげた。   ***  特に新年祭すらない我が家は、いつも通り静かだ。身内にお金をかけるよりも、外で見栄を張りたい両親は他人のパーティに出席することの方が多い。もう新年祭も一段落付いたある日の夕方、私とリリアンナ嬢は屋敷に戻っていた。何事もなく夕飯を済ませ、リリアンナ嬢は先に部屋に戻っている。部屋着には着替えず、私は一人で両親のいるであろう寝室に向かった。ドアをノックすると返事が返って来る。中に入ると、両親は身支度中だった。「大事なお話がありまス」許可なく唐突に入ってきた私に驚いた様子を見せていたが、顔にパックを貼ったままの母は見下した目で私を見ると、すぐに背を向けた。「何なの? 手短に話して」煙管を吸っていた父も訝し気にこちらを見ている。不思議そうにしながらも、メイドは母の髪を梳かし爪の手入れをしていた。彼女らを見渡すと、私はいつもと違う真剣な表情で母を見つめる。「いいんですカ? 人のいるところで話をしテ」鏡越しにその表情が見
last updateLast Updated : 2026-03-24
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第136話

もう説得は無理だと思ったのか、父は私を睨みつけながら言う。今まで恐怖の対象だった視線を受けて一瞬ひるむが、すぐに体制を整える。絶対に、相手の勢いに負けちゃだめだ。「私とステファン様ニ、もう何も手出しをしないで下さイ。婚約の解消や別の縁談などを目論んでいると分かったラ、すぐにこのレポートをアレクサンド殿下にお渡ししまス」恨めしそうに母も睨んでくるが、父は諦めたような表情で頷いた。「分かった。お前の言うとおりにしよう」「貴方!?」母が抗議しようとするも、父が視線で母を制す。二人の様子を見て、私はほっと息を吐いた。決着はついたと、二人に背を向け扉へ向かう。見ていなくても両親がそそくさと何か相談しようとしていたのは分かる。私が足を止めたことで、二人は動きを止めた。「……このレポートハ、この後リリアンナ嬢とも協力して管理しまス。明日にはここを出るのデ、破棄をしようとなど思わないことですヨ」そこまで言われてしまうと、もう何もできないだろう。がっくりと肩を落とす両親を背にして、今度こそ私は部屋を出た。 外の長い廊下は、室内と違って寒々としていた。両親が予算を省いているからか照明も薄暗く、窓の外から入る月明かりが主な光源だ。私は先ほどまでいた両親の寝室の扉から少し離れた場所に立ち尽くしていた。異変を察知し、両親の怒りを買わないために避けているのか、この館にいるはずの使用人たちの気配もなく、周囲には誰もいない。ゆっくりと、そのまま冷たい床にしゃがみ込んむ。大きくため息を付き、肺の中の重たい空気を全て吐き出す。まだ心臓がドキドキしている。力一杯レポートを握り締めた手は赤くなり、小刻みに震えていた。あんなに反論したのは、生まれてはじめてだ。両親には逆らえない。そうすればどうなるか分からないと、ずっと耐え続けていた。それが
last updateLast Updated : 2026-03-24
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第137話

翌日。私達は早速王都へ出発した。アマトリアン辺境伯夫妻は一応見送りに来てくれたが、表情が固いのが丸わかりだ。いい気味だと思いながら、私達は意気揚々と辺境伯邸を後にした。まだしばらくロミーナの顔色は悪かったが、徐々に状況にも慣れ、気持ちに整理がついたらしい。王都に近付くにつれ、少しずつ明るさを取り戻していた。道中はシヴァの魔法に憧れたロミーナが、何度か魔法を教わっていた。あまりにも距離が近く、嫉妬しそうになるが、ロミーナはあくまでシヴァをシルヴィアと言う女性と思っているのだ。これはそういう意味絵は無いと、私は何度も我慢した。「長い間ありがとうございましタ。リリアンナ」この休暇中にすっかり仲良くなり、少しロミーナとは砕けた話ができるようになった。王都のタウンハウスに到着し、ロミーナを下ろすと彼女は嬉しそうに笑いながら挨拶をしてくれる。レポートはロミーナの手にあり、元となる証拠はより警備の厳しい私達が預かっている。ことの詳細は後でアレクサンドに伝えるつもりで、学園が開始されるまでにあと1回は会うことになるだろう。「こちらこそ、ありがとうございます。また王宮で」「はイ!」ロミーナがいなくなった馬車の中は、シヴァと久しぶりに二人きりになった。改めてそのことを実感すると、照れて緊張してしまう。「おい、大丈夫か?」「何が?」シヴァが席を立ち、私の隣に座った。柔らかなスカートがふわりと揺れる。それに視線を奪われていると、気付けばシヴァの端正な顔がすぐ近くにあった。長いまつ毛がすぐ近くで揺れている。「ロミーナ嬢と一緒にいる時、熱心に見てたから。てっきり機嫌でも損ねたかと思った」「……お、怒ってないわよ! ちょっとくらいは、嫉妬……した、かもだけど」シヴァの顔を手で覆い遠ざける。やっぱりシヴァには私の
last updateLast Updated : 2026-03-24
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第138話

長期休暇明けの学園は、休暇中の話題で盛り上がっていた。久々に見る顔ぶれは、しばらく会わなかった間に様変わりしている……なんてことはない。休暇前と変わらず、みんな元気そうな笑顔を見せてくれた。「久しぶり。休暇はどこに行っていたの?」「イザベラ、久しぶり。私はアマトリアン辺境伯領にお世話になっていたわ」休暇明けに見たイザベラはいつも以上に輝いていた。髪は高い位置で結い上げ、お団子にされている。周囲の髪は丁寧に編み込まれており、白い小花のピンで飾られていた。サイドの髪は下ろされており、縦ロールになっている。お団子から覗く白い鳩をモチーフにした飾りがアクセントだ。「ああ、ロミーナ嬢と一緒と言っていたわね。どうだった?」詳細を省いて、私はレポート作成の件やロミーナがシヴァと仲良くなった件のみを話した。あの後、二人でアレクサンドの所へ行き証拠を提示して詳細を話した。すぐにでもアマトリアン辺境伯を処罰はできるが、できたとしても罰金刑程度。アレクサンドにバラしたことが分かれば、ロミーナがあの両親から何をされるのか分からない。そのため、ロミーナは今回は処罰を選ばなかった。彼女が言うには、他にもあの夫妻には怪しい点があるらしい。証拠を手に入れる際に、雑多に金庫に詰められた書類の束に不穏な物をいくつも見つけたのだ。どうせ処罰するならば、一気に行い、完全に息の根を止めてしまう。それがロミーナとアレクサンドの決断だった。「もう両親のことは良いのかい?」そうアレクサンドは聞いていた。いくらなんでも、実の両親だ。ロミーナも気に病むことがあるかもしれない。しかし、彼女はきっぱりとそれを否定した。「はイ。私の故郷はライハラ連合国の親戚のみでス」そう言い捨てるロミーナは凄くかっこ良かった。 そうして平穏な学園生活が戻ってきたのもつかの
last updateLast Updated : 2026-03-24
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第139話

王族専用食堂には、いつものメンバーが集まっていた。テーブルの中央には、豪華なデザートが堂々と並べられている。主役は艶やかな苺とラズベリーが山のように盛られた大きなフレジェだ。フォークを入れると濃厚なムースと、薄緑色のピスタチオが練り込まれたスポンジが層になった断面が覗いている。その横には、金箔が小さくあしらわれたチョコレート細工。色の濃いチョコレートが鏡のように光を反射し、一口サイズながらも芸術品のような存在感を放っていた。透き通ったガラスのグラスには、ローズマリーの葉を添えたジェラートが盛られており、爽やかな香りを部屋中に漂わせている。私は遠慮なくシヴァにお願いしてフレジェを取ってもらった。口に入れれば芳醇な苺の香りが広がる。クリームの甘さとラズベリーの酸味が絶妙だ。隣のイザベラも頬が落っこちないか心配なのか、頬に手を添えて喜んでいる。ロミーナは優雅にジェラートを口に入れているが頬が緩んでいるのが分かった。食事を終える頃、また何か指示をされるのではないかと少しソワソワしていたが、何事もなく解散となった。「今日は何も無いんですね?」「卒業式とパーティが控えてるけど、私が代表者挨拶をするだけで、みんなに手伝ってもらうようなことは無いからね」念のため帰りがけにアレクサンドに聞いてみると、彼はそう答えた。その返事にほっと安心する。そういえば、卒業パーティがあるんだった。基本的には、学園に通う生徒は全員参加だ。「あ、そうだ。パートナーは私になるから、後でドレスを贈っておくよ」「分かりました」婚約者として事務的な話だけを済ませて、私は帰宅した。 今回の卒業パーティはなんてことはない。まだゲーム本編開始前なのだから、むしろ何か事件が起きる方がびっくりだ。パーティが催された大広間は、巨大なシャンデリアが天井から吊るされ、華やかな色合いの絨毯が敷き詰められている。
last updateLast Updated : 2026-03-24
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第140話

もうすぐ、ゲーム本編が開始する。ゲームのヒロインと最後の攻略対象者。そして、マルグリータが入学してきて、ゲームの登場人物が勢揃いするのだ。ワクワクすると同時に緊張もする。来年、ソプレス王国で大規模な反乱が起こるのがゲーム本編の話。私はそれを解決しなければならない。そうしなければ、私はチャンスを失いアレクサンドと結婚することになる。シヴァと自由に会える生活とはおさらばだ。「……絶対、婚約解消してみせるんだから。応援してよね?」「深入りはできませんが、助言くらいなら」私の覚悟に、ヤコブは柔和な笑顔で返す。気付けば三曲目に入っており、アレクサンドはロミーナと踊っていた。いつものメンバー女性全員と踊れば、イザベラと踊るのも不自然には見られない。なんとも彼らしい立ち振る舞いだ。そうなると、私もいつものメンバーと踊らなければ不自然だろう。飲み終えたグラスをテーブルに置くと、私はヤコブの方を見た。察したのか、ヤコブは私が差し出した手を取る。そのまま二人でダンスホールに向かい、ダンスに興じる人々の波に混ざっていった。   ***  「……えっと、ここで合ってるんだよね?」王都の中でも中央のきらびやかな地区から少し離れた、落ち着いた場所。一人の少女が、その一角にある屋敷の前で立ち止まっていた。すぐ足元には、重すぎて地面に一度置いた大きなボストンバッグがある。彼女は艶やかなストロベリーブロンドが似合う、可憐な少女だ。腰まで伸びた長い髪には、白いリボンがついている。生成りのパフスリーブにワインレッドのチェックガラのワンピースと、服装も実に質素だ。小柄で手足は細く長く、その美しさが目を引く少女ではあるのだが、胸のふくら
last updateLast Updated : 2026-03-24
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