All Chapters of 女装メイドと婚約破棄された悪役令嬢は、幸せな結末を目指します: Chapter 11 - Chapter 20

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第11話

「シヴァのこと、ほんとのかぞくだとおもってるのね」私の言葉に、皆が目を丸くした。部屋に沈黙が走るが、気にせず私は言葉を畳みかけた。「かぞくだから、しんぱいでこんなにおこってるんでしょう?」本心が違ったとしても、そうしておけば誰も傷つかないはずだ。失敗を責め続けられてしまう少年も、自責の念から子供に厳しくしすぎてしまう女性もいなくなる。お願いだから、肯定して。祈るように、シヴァと繋いでいた手を強く握る。どんな反応が返ってくるか分からず不安がる私の予想とはかけ離れた姿を、彼女は見せた。「え?」そう呟くと、彼女は顔を真っ赤にする。堅物な彼女の普段見ることの無い姿に、皆唖然としてしまう。「そ、そうですね。私の身内? ですし? こういうことは、はっきり言っておかないと我が家の体面が……」色々言っているけど、その発言は要するに【既にシルヴィオは我が家の子】と完全に思っているのでは? 彼女、もしかしてツンデレ? 思わぬ反応に驚きつつ、笑ってしまう。つられて周囲の皆も笑っていた。「そんな笑わなくたって……家に年下なんていなくて、どう接すれば良いか……私だって色々悩んで」話せば話すほど、墓穴を掘っていますよルネさん。「いや、それなら良かった。半ば無理に君の親類にしたものだから、嫌がってないか心配だったんだ」「はぁ……」お父様は笑いながら彼女の肩を叩く。笑いすぎて出た涙を拭うと、お父様は次にシヴァに向き直った。「良かったな、シヴァ。 彼女はもう君を身内だと認めているぞ」「それは、ありがとうございます……叔母さん?」「そんな年じゃないわ!」「じゃあどう呼べば…&helli
last updateLast Updated : 2026-03-04
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第12話

「今回のことは、本当に驚いただろう。まだ子供だからと、きちんと説明しなかった私が悪かった」リリアンナの私室。そこで、当主であるアードリアンは静かに話し出した。ベッドに座ったままのシルヴィオは、静かに話を聞いている。「まず尋ねよう。シヴァ、君は」アードリアンのいつになく真剣な表情に、シルヴィオはどんな話をされるのかと緊張でベッドシーツをきつく握りしめた。少しの間を置いて、アードリアンはゆっくりと言葉を発する。 「【魅了】という性質を知っているかい?」  ***  あれから毎日のように私は書庫に足を運んだ。慣れない文字は読むのに時間はかかるし頭も使う。嫌になるけれど、頼みの綱はここしかないのだ。お父様や乳母等の大人達は、あの日の事件について何も語らなくなっている。とても今から訊きに行ける雰囲気ではない。「無い頭捻って毎日懲りないな」自由時間を共に過ごすシヴァは、私に合わせて書庫に来てくれている。何を探してるのかは、訊かれても教えていない。だって、心配はさせたくないし、たった5歳の女の子が何故こんなことに頭が回るのかなんて言われても、答えようがないんだもの。「ちゃんとかんがえてるもん!」「どうだか」反論するが、彼はからかうような態度で読んでいた本を一冊差し出してきた。訳も分からず、つい受け取ってしまう。「なに?」「読めるか?」失礼な!馬鹿にした態度に反抗するため、本を開く。細かく並んだ文字に一瞬目眩がするが、負けるものかと踏み留まる。「この、しょうで、は……かんやく? かんりゃく、てきな、まろう……」「ああ、うん。無理言って悪かった」
last updateLast Updated : 2026-03-04
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第13話

気を取り直して本探しを行おう。とはいえ、若干飽きてきてしまったし、魔法なんていう興味を引かれるものを見つけてしまったのだ。とりあえず一冊くらい魔法についての本を読破してみたい。そう思い、先程の子供向けの本を読んでくれと私はシヴァにせがんだ。嫌そうにすることもなく、彼は本を読んでくれる。書庫の中央にあるソファで二人寄り添って本を読んだ。この世界の魔法について、なんとなく理解出来てきた頃。それは、最後の章に書いてあった。「魔法に才能を持つ人物を見分ける方法として、性質というものが上げられる。まだ魔力の制御が出来ない子供は、特殊な性質を有することがある。例えば【魅了】では異性を虜にしてしまい、周囲からの執着により生活が困難になる事例が報告され」「まって」今、すごく大事なことを聞いた気がする。まさか探していたことが、こんな子供向けの本に書かれていたなんて。もう一度読んでもらって確認するが、間違いない。きっとこの性質というものは、リリアンナを男性嫌悪に陥れた元凶だ。【魅了】はゲームや漫画で似たような物が出てきた記憶があるので、なんとなく理解出来る。異性を惹き付けてしまう魔性みたいな物だったはず。それならば、あの男の不自然な発情も理性のきかない様子にも説明がつく。そして、リリアンナの男性嫌悪も。常に周囲の男性を発情させまくっていて、それが無自覚ならば理由が分からず嫌にもなるだろう。だから屋敷内には女性しかいないのか、と納得する。私が考え込んで黙っていると、シヴァは静かに本を閉じた。「休むか? 疲れただろ」「……うん」言われるがままにソファに寝転ぶ。それを見ると、シヴァは上着を脱いで優しく体にかけてくれた。ソファ横の床に座り込むと、彼は私のお腹を心地好いリズムでぽんぽんと叩く。彼の横顔を眺めてからそっと目を閉じながらも、私の頭は働いていた
last updateLast Updated : 2026-03-04
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第14話

次の日、シヴァは丁寧に教えてくれた。【魅了】のような性質を持ってしまうのは、魔力の保有量が多い人間に起こりやすい現象だ。魔力とは体内に流れている目に見えないエネルギーで、これが無くなると生き物は死んでしまう。魔力の保有量が多い人間は、血液がドロドロになると血管が詰まってしまうように、魔力の流れが体のどこかで停滞してしまうらしい。この停滞した箇所によって、性質は変わる。 元々【魅了】は誰しも持っていて、好きな相手に自分を好きになって欲しくて放つフェロモンのような物なのだとか。通常は微かに放たれるだけのそれが、そこにたくさんの魔力が停滞することで強烈な影響力を持ち生活に支障をきたしてしまう。それが性質と呼ばれる物。この性質は子供の時だけで、ちゃんと魔力を循環させる訓練をすれば徐々に消えていくものらしい。だが、あまりにも幼い内に訓練を始めてしまうと子供の理解と魔力の操作が追い付かずに事故が発生する。それを避けるために魔力操作の訓練は、基本的には7歳以上と決まっているのだとか。平民も7歳以上から魔力操作の方法を教わるらしい。 ここまで説明されて、ようやく事態が呑み込めてきた。リリアンナは平民よりも魔力の保有量が多い貴族の中で、さらに強い魔力を持っている。道理で強かったはずだ。ゲーム内で主人公のパラメーターを上げる際、定期的に試験が行われる。その時に学年順位が発表されるのだが、魔力に関してはリリアンナと攻略対象の一人がトップを独占していたのだ。この二人を抜いて魔法の成績をトップにするには、他の成績を諦めざるをえないくらいだった。生まれながらに強い魔力があることが分かっていたリリアンナなのだ。そりゃ勝ち目がない。色々と納得しつつ、目下必要なのは魔力操作が出来ることだと判断する。あんな目に会い続けたら、身体がいくつあっても足りないもの。 「おとうさま」
last updateLast Updated : 2026-03-04
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第15話

「どうなさいますか?」キラキラとした私の視線を受けているお父様に、呆れたようにルネは尋ねた。「どうもこうもない。……教員の手配は?」「ちょうどシルヴィオにも手配しようと調べておりました。可能です」「事故防止の施設は?」「離れの一室をお借りする予定で建設中です」「そういえばそうだったな……」大人二人の会話が進む。どうやらシヴァに魔法を習わせるつもりで二人とも準備中だったのだ。これは良い。もう一押しと、握っていたお父様の服の裾をぎゅっと握りしめる。「シヴァもまほうをならうの?」「ああ、うん。そうだな」「わたしもいっしょにおしえてもらえるのね」無邪気な娘の笑顔に顔を青ざめて黙ってしまうお父様。恐らく大人になってからこんなに緊張することは無かっただろう。冷や汗をかきながら彼は私の肩に手を置いた。「いいかい、リリー」「はい」一度深呼吸して平静を装う彼に、何も知らない娘のフリをして笑みを返す。騙しているようで心苦しいけどしょうがない。今回は折れて下さい、お父様!いつもがどうだったかは知らないけど。「……ちゃんと先生の言うことを聞くんだよ」「はい!」娘のおねだりに、あっさりお父様は陥落した。呆れた顔で見てくるルネの視線が痛い。こうして私は、なんとか魔力制御の訓練をする機会を手に入れた。【魅了】さえ無くなれば、男嫌いになる原因が無くなる。私が男嫌いにならなければ、シヴァを迫害する理由は無くなるのだ。 明るい未来へ一歩歩き出せたことを喜んで、私はお父様に満面の笑みを向けた。   *** &n
last updateLast Updated : 2026-03-04
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第16話

「第一王子アレクサンド・リヒハイム殿下との婚約が決まった」やっぱり、その話か。予想が的中してしまい、私はため息をついた。魔法訓練が進めば外出機会も増やせる。そうなれば後々出てくるであろう婚約話が進んでもしょうがない。覚悟はしていたはずだが、いざお父様の口からそう言われてしまうと眩暈がするほどの衝撃だ。「……お断りします」「リリー」「……私は、シヴァと」「無理なんだ」最後まであがこうと言葉を紡ぐが、お父様は語気を強めて私を制止した。お父様も辛いのだろう。その手は微かに震えている。「お前がシヴァと仲が良いのは分かっている。私が突然連れてきた子供と仲良くなってくれて優しく接してくれたことは、とても有難く感じているよ。お前が彼を好いていることも、ちゃんと分かっている」ずっとずっと、皆の前で示してきた。私はシヴァが好き。シヴァしか見ていない。他に異性のいない箱庭にいるからだとか、まだ子供だからだとか言われるかもしれない。それが分かっていても、私ははっきりと態度に出していた。ここまですれば、自然とお父様が諦めて断ってくれるんじゃないかと期待して。「だがお互いに良い年だ。魔法訓練もする年になれば、何も知らない子供として扱われることはなくなる。成人はまだだが、ある程度分別のつく頃だ。だから、はっきり言おう。リリアンナ・モンリーズ」お父様から正式にフルネームで呼ばれるのは始めてだ。それだけ真剣なんだと伝わってくる。「貴族としての務めを果たしなさい。この婚約は、王家からの命だ」お父様の国内での影響力は大きい。地位も名誉も持っている彼が対抗できないのは、王家のみ。その王家からの直々の命。背くことなどできはしない。「一週間後、王城に行く。その時に殿下との顔合わせがある。しっかりと身支度をし
last updateLast Updated : 2026-03-05
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第17話

シヴァも私に第一王子と婚約をしろと言う。彼だけは一緒に反対してくれるって、どこかでそう思っていた。だって、彼は優しかったから。全力で大好きだと伝えて態度に表しても、拒否なんてしないで温かく受け入れてくれた。その表情はいつもよりも圧倒的に柔らかくて、手を繋ぎたいとかいう私の我儘も許してくれていたから。だから、彼も私を好きでいてくれてるなんて、そう思っていた。思い返せば、彼からはっきりと好きだって言われたこともないのに。「……シヴァは、私のこと好き?」始めて尋ねた。もっと早く訊いておくべきだったと、今更思う私はとんでもない阿呆だ。私の言葉に、礼をしていた顔を上げて彼は答えた。「敬愛しております」あくまで執事としての態度を崩さない。いつもみたいに、軽口で返事なんてしてくれない。これが大人に近づいたということか、そう理解する。それでも、彼のそんな言葉を聞きたくなんか無かった。 「シヴァのバカ!」 そう吐き捨てると、私は自室へと走って行った。  ***  「さあさ、お嬢様。もう日付が無いんですからね!」落ち込んで部屋に引きこもっている私に、バルバラは無遠慮に話しかけてきた。底抜けに明るく振舞う様子は、拗ねている私の暗い気持ちを吹き飛ばすようだ。テキパキと侍女を使い、どんどんと王城へ行く準備を進めて行った。当日着ていくドレスが決まり、靴が決まり、首飾りやイヤリング、髪飾りが決まる。あっと言う間に集められ決められたそれらを試着し寸法を合わせる。有名な髪結いが呼ばれ当日のヘアスタイルを決めていく。その間中、私は一言も口を利かなかった。子供っぽいと笑われてもしょうがない。そ
last updateLast Updated : 2026-03-05
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第18話

当日の私は、誰が見ても見惚れるほどに美しく着飾られていた。光の加減で赤色にも見えるピンク色のドレス。ふんだんにレースやリボンで飾られたそれには、瞳の色と同じ薔薇の飾りまでついている。ドレスとお揃いのリボンで淡い紫色の髪は編み込まれ、同じく薔薇の飾りが髪を彩っていた。拗ねていたため下がっていた口角は化粧で適度に口角が上がって見えるようになっている。その加減は正しくプロとしか言いようがない。「綺麗だよ、リリー」鏡の前でくるりと回って自分の姿を確認していると、私と同じ様に着飾ったお父様がやって来てそう言ってくれた。「ありがとうございます」「まだ拗ねてるのかい?」声色から察したのか、困ったように尋ねてくる。「もちろんです。でも、覚悟は決めました」はっきり断るための、ね。「リリーも大人になったなぁ」そう言って笑うお父様に手を引かれて馬車に乗る。屋敷を振り返ると、見送りの使用人達の中にシヴァの姿があった。あれから一週間、ろくに顔を合わせていない。リリアンナとして生きるようになって、そんなこと始めてだった。彼に何か言いたくて、でも言葉が見つからずに口を閉ざす。それは彼も同じようで、私と全く同じ反応をしていた。結局お互いに何も言えず、彼はあの時のような綺麗な礼をする。そのまま馬車の扉は閉じられてしまった。彼がどんな表情をしているかすら、見ることも出来ず。  ***  辿り着いた王城は、あまりに広すぎてどこをどう通ったのか全く分からなかった。白を基調とした城壁は太陽光に当たって光り輝き、深い青色の屋根が空に向かって伸びている。合間にある中庭は陽光で明るく輝き、植えられた花々が風に揺れていた。ずっと歩いている廊下は大理石の床に紺を基調とした絨毯が布かれ、
last updateLast Updated : 2026-03-05
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第19話

ついていった先は温室。一般家庭の大き目の一軒家くらい大きく、ガラス越しに中の花がよく見える。その扉の前で立ち止まったお父様は、執事と何やら話していた。こんなところで何の立ち話かと聞き耳を立てようとするが、身長差もあり小声で話しているためよく聞こえない。「リリー」話し終えたのかお父様は私と目が合うようにかがんでくれる。「申し訳ないが、急な仕事で陛下と一緒に出掛ける用事が出来てしまってね。殿下とは二人で会ってくれないか?」元々は王様、王妃様、第一王子の三人と顔合わせをする予定だった。きっと政務のことで何かあったに違いない。「分かりました」「殿下に失礼のないようにな」優しく私の頭を撫でたお父様は一人でどこかへ行ってしまう。その後ろ姿に手を振っていると、執事に促されて温室の中へ入った。 温室は外よりも少し暖かいが、室温が丁度良く保たれているのか暑すぎない温度になっていた。魔力操作の訓練のおかげか、周囲の魔力の流れで温度管理に魔法が使われているのが分かる。努力の成果が出ているようで、心なしか浮かれてしまった。少し歩くと薔薇で出来たアーチが続く。アーチを三つほどくぐった先の開いた空間に、白磁のテーブルや椅子が置かれた休憩スペースがあった。そこには一人の少年が座っている。「殿下、リリアンナ・モンリーズ公爵令嬢をお連れしました」「ありがとう」執事が立ち止まり礼をすると、彼は柔和な笑みを浮かべて礼を口にした。穏やかそうな印象の瞳は、この国の王族の証でもある黄金色。髪は大人っぽく見えるよう上げており、シミや皺とは無縁そうな白い肌が露出していた。髪は海のように深く青く、光のせいか毛先に行くほど薄くなっているように見える。白を基調とした清潔感のある服がよく似合う。着ている服はリリアンナの目からも上等な品であることがうかがえ、アクセントで付いている小さ
last updateLast Updated : 2026-03-05
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第20話

静寂が流れる。怖くて頭が上げられない。攻略対象の筆頭、第一王子アレクサンド・リヒハイム。彼はその柔らかな笑みと物腰で老若男女を虜にする天才だ。言動も優しく、相手への気遣いを忘れない姿はとても上に立つものとは思えない。しかし、それは彼の本心でもあり作戦でもある。誰もが彼に感謝し、優しい態度に気を許し親密になろうとするだろう。そこで得た情報をきちんと政治に生かすだけの頭脳が彼にはあった。人の相談に乗り情報を集め、悪いことや問題はしっかりと収める。それが彼のやり方だ。嘘くさい、二重人格だ、裏表がある。そう影で揶揄する人間もいるが、そんな態度を取ることは決して彼の本心に反しているわけでは無い。ゲームをプレイしていたから分かる。常に人に優しく接していたいと思うのは、まぎれもない彼の本心だ。そんな彼に直接頼めば、きっと話を聞いてもらえる。それが今日の狙いだった。「うん」そう聞こえて、あまりにあっさりした答えに驚いてしまう。思わず一瞬顔を上げそうになるが、続いた言葉にすぐにまた頭は下がった。 「無理だね」  ***  「とりあえず、顔を上げてくれないかな?」言われた通り顔を上げる。必死に取り繕おうとするが、ちょっと拗ねた表情なのが見て分かったらしい。彼は困ったように眉をひそめた。「そんな表情をされると、願いを聞いてあげたくもなるけれど。事情が事情なんでね。無理なんだよ。僕にはどうしようもない」そこまで言われてしまうと、それ以上何も言えない。少し愚痴を言いたくなるのをこらえて唇を噛み締めていると、彼は私に椅子を示した。立ち上がるとこちらまで来て椅子を引いてくれる。促されて座ると、ふわりと彼の香水の香りが鼻をく
last updateLast Updated : 2026-03-05
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