All Chapters of 女装メイドと婚約破棄された悪役令嬢は、幸せな結末を目指します: Chapter 31 - Chapter 40

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第31話

小さな咳が部屋に響く。咳が収まると一息つき、少女はペンを走らせた。ベッドの上で上半身を起こしたまま、少女は手紙を書いている。彼女の乳白色のストレートヘアはベッド上を這い、濃い青色の瞳は真剣に文面をなぞっていた。その体は同年代と比べても明らかに細く弱弱しいが、頬は年相応に丸みを帯び病床においてもその美しさが陰ることはない。書き終わり、ライムグリーンの封筒に手紙を入れて蜜蝋を垂らし終わったところで扉がノックされた。「どうぞ」小さいが澄んだ声は良く通る。扉の向こうの人間に無事届いたのか、扉が開かれて老年の執事が顔を出した。「お嬢様、終わりましたか?」「ええ。ちゃんとここに」差し出された手紙を執事は恭しく受け取る。「宛先はモンリーズ公爵邸で間違いありませんか?」「ええ、そうよ」少女がテーブルの上の道具を片付けていると、執事もそれに手を貸して二人で片づけを済ませる。空になったベッドテーブルは端に避けられると、彼女は口を開いた。「リリアンナ様はわたくしと一つ違いらしいの。……わたくし、ちゃんと仲良くなれるかしら?」「もちろんですとも」笑顔で答えてくれた執事に安心したのか、彼女はモソモソとベッドに横になり布団にくるまる。「その日までに、ちゃんと治さないといけないわね」「ええ。ですから、しっかりお休み下さい。後で薬湯と、ご褒美のデザートをお持ちしますので」「爺は甘やかし過ぎよ……でも、嬉しいわ」クスクスと楽しそうに笑って、少女は目を閉じた。  ***  婚約パーティを終えてからの毎日は、更に忙しくなった。継続される魔法訓練や基礎勉強に加えて、マナーレッスンやダンスレッスンも本格化。次期王妃となるべく王宮での講義
last updateLast Updated : 2026-03-08
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第32話

バルバラにそう尋ねると、彼女は笑いながら答えてくれた。「ヴァイゲル公爵家のマルグリータ様からです」その名前には聞き覚えがある。マルグリータ・ヴァイゲル。攻略対象の一人である第二王子レオナルド・リヒハイムの婚約者だ。女好きな王子に控えめで気の弱い婚約者の組み合わせはゲームを攻略する側にとってはあまりにも簡単で、その難易度の低さから初心者は第二王子ルートから始めるよう言われるほどだ。本来ならば攻略対象との仲を邪魔し、敵になるはずの彼女は少しの会話で第二王子を諦めて身を引く。それも攻略難易度の低さを後押ししていた。「マルグリータ様は病弱ですし、大勢は呼ばずに王家と婚約を結んだ者同士交流がしたいだけのようです。これなら参加しても宜しいかと」なるほど、婚約パーティに彼女が現れなかったのはそれが原因か。病弱で寝込んでいて第二王子との仲が深められず、彼女自身も未練が無いのならあの素早い身の引き方も理解できる。だが、今は王家と婚約を結んだ者同士、手を取り合うのは良いことだ。「分かりました。お父様にも許可を貰ってきますわ」そう言って手紙を持ち、私はお父様の執務室へ向かった。 執務室にいたお父様は一度仕事の手を止めて話を聞いてくれた。もちろん、ヴァイゲル公爵家へ出かけることは素直に了承してくれる。これでもう話は終わりかと思った時だ。「そうだ、リリー。そろそろ話しておきたいことがあるんだ」思い出したかのように、お父様が話し出す。彼が目くばせをすると一緒にいたルネが一礼して部屋を出て行った。デスクから離れ、私の座っているソファの隣にお父様は腰を下ろす。一瞬緊張が走ったが、何の話なのか想像はついた。「リリーにはね、【魅了】っていう特別な力があるんだよ」ようやく、お父様は私にその話をしてくれた。一通り説明されるが、既に知っていることの復習のようなものだ。丁寧な説明に、私
last updateLast Updated : 2026-03-08
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第33話

その日の夜、シヴァの私室にこっそりやって来た私は彼のベッドに寝転びながらそう尋ねた。私服に着替えて髪も下ろしたシヴァは以前の私のようにベッドの横に座っている。「オレが付いて行っても良いが、今回は女同士なのもあって付き添えない場所も出てくるしな」「そうだよね」今回付いて行っても、執事が出来るのはせいぜい道案内程度。例えばマルグリータの私室に入るとかは出来ず、特に相手がご令嬢ならどこにでも男性が付いてくることに良い顔はしないだろう。「うん……大丈夫。ちょっと不安だなって話したかっただけだから。きっと何事もなくやれるよね?」悩んだところで解決しないなら、考えるだけ無駄だ。無理に笑顔を作ると、私はすぐ隣にあるシヴァの腰にぎゅっと抱き着いた。「おい、もう婚約者がいるのにこんなことしてたら!」「今は誰もいないもん」いつも通り、白い肌とシルバーグレイの髪から涼し気に見える印象に反し、彼の体温は高い。その熱を感じ、私は額を背中にぐりぐりと押し付けた。うん、チャージ完了!「元気出たし、お茶会は頑張って出席してくるね! マルグリータ様とも仲良くなれるように頑張る!」手を放して体を起こし、元気に発言した私に呆れてシヴァはため息をつく。片手で頭を抱えつつ、ポツリと彼は言った。「ルネさんに頼んでみるか……」ルネに何を頼むというのだろうか。その日だけ、女性である彼女についてきてもらうとか?疑問に思いつつもそれ以上尋ねることはせず、私はそのままシヴァの部屋を後にした。  ***  次の日から、ますますシヴァと顔を合わせることが無くなった。食事は一緒に摂るが夜に遊びに行っても部屋にはいないし、屋敷内ですれ違うことも無い。「最近いないけど、何してるの?」
last updateLast Updated : 2026-03-11
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第34話

歩く姿は優雅で、モンリーズ家のお仕着せが動きに合わせて揺れる。服のリボンがたなびくが、その髪は綺麗に纏められて微動だにしない。真っ黒な髪は後ろでシルバーグレイの髪が編み込まれ、一纏めにされている。目にかかりそうな長さの前髪から覗くのは、今日の晴天をそのまま写し取ったかのような空色の瞳。肌は白く滑らかでシミ一つなく、顔の各パーツは完璧ともいえる場所に配置されている。背は低くまだ幼さも感じるが、彼女が美しいことに変わりはない。それは、ゲームで何度も見た名もなき【死にキャラ】の姿だった。「シヴァ……?」思わず声をかけると、彼? 彼女? は不敵に笑う。何度もゲームで見た最推しの姿に胸が高まるが、それどころではなかった。ゲーム内ではリリアンナから虐げられ、無理に女装をさせられていた。女装をすることは男としての尊厳やプライドを捨ててしまうことと同義で、その姿は男を拒否するリリアンナにとって体の良い見世物に過ぎない。そんな姿を、なんでわざわざ。「何で? その姿……!」「これならどんな場所に付いて行っても不自然ではないと思いまして」幸い声変わりしていないため、喋っていても不自然ではない。私のため?私があの時、不安だって言ったから?喜んで良いのか悲しめば良いのか分からない。複雑な顔をする私にシヴァは歩み寄る。会わない間に何度も練習したのだろう綺麗なカーテシーをすると、シヴァは私の手を取った。むず痒くて思わず引っ込めそうになる手を、彼はきつく握りしめる。そのままの流れで、彼はその手に優しく口付けた。それは、何度もゲームやアニメで見たような行為。紳士が大切な女性にするような動作。私を見上げる彼の顔はいつも通りの無表情になっていたが、その瞳の鋭さと手の熱から真剣さが伝わってくる。「お傍に」
last updateLast Updated : 2026-03-11
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第35話

ヴァイゲル公爵邸に着き、私は同乗していたシヴァと共に馬車を降りた。屋敷はモンリーズ家と変わらないほど大きく、ヴァイゲル家が裕福であることが見て取れる。執事が開けた扉をくぐると大広間があった。深い緑色を基調とした絨毯に覆われた部屋にはたくさんの執事やメイドが並んでいる。全員が礼をしているのはなかなかに凄い光景だ。そんな人々の奥から、大広間にぽつんと置かれた椅子に座っていた少女が立ち上がり、私達の方へと歩いてきた。乳白色の長いストレートロングの髪が揺れる。髪の一部には綺麗なアップルグリーンのリボンが編み込まれ、淡い色合いの姿に色どりを加えている。その濃い青色の瞳はこぼれそうなくらい大きく、目尻が垂れているためより幼く可愛らしい印象を作り出していた。薄いサーモンピンクと白を基調としたドレスは、彼女の儚く柔らかい外見によく似合っている。「マルグリータ・ヴァイゲルです。リリアンナ・モンリーズ公爵令嬢、よくお越し下さいました」大概貴族は部屋で待っていて、そこに執事やメイドが客人を案内するのが通例だ。わざわざ大広間で待っていたなんて、よほど楽しみにしてくれていたのか。そう思うと嬉しいし、何よりマルグリータって凄く可愛い!ゲーム内では大人しい薄幸少女って感じだったのに、微笑んでいるだけでずっと可愛さが増している。こんなに天使みたいな子だったっけ?幼少期と言うだけで随分変わるものだ。「リリアンナ・モンリーズです。お呼び頂きありがとうございます」「いいえ。この間のパーティには参加できず、ご挨拶も出来ずに申し訳ないと思っていましたの。来てくれて本当に嬉しいわ」ふわりと微笑む姿はまさに天使。その可愛さに圧倒されているのは私だけではないようで、周囲の執事やメイド達みんなが微笑ましい笑顔を向けてくる。大広間に置いてある椅子も、病弱な彼女のためにわざわざ用意したのだと考えると屋敷の皆の過保護具合が伺える。こんなに可愛い天使じゃ、そうなるのも仕方
last updateLast Updated : 2026-03-11
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第36話

そこからは他愛のない話が続く。お互いにあまり外に出ない者同士、屋敷でどう過ごしているかという話や最近学んだ物のこと。ダンスが苦手でパーティでアレクサンドの足を踏んだ話をしたら笑ってくれた。実際に会ったマルグリータは病弱で外に出れないものの、本当に思いやりにあふれた可愛い女の子だった。ゲーム内で彼女の婚約者は浮気を繰り返し女の子に声をかけまくっては、最終的にヒロインに夢中になり彼女を捨てる。こんな可愛い女の子を相手に、何故そんなことになってしまうのか本当に不思議だ。話しながら不思議に思っていると、不意に大広間の方向が騒がしくなったのが聞こえた。「リタ!」周囲の制止を聞かずに走ってきたのは、マルグリータの婚約者であるレオナルド。突然の登場に驚きつつ、マルグリータは嬉しそうに微笑んで立ち上がった。「殿下」レオナルドは彼女の胸に飛び込み、しっかりと彼女を抱きしめる。彼は抱きしめているから見えていないだろうが、彼女の顔は林檎のように真っ赤になっていた。完全にフリーズしていた彼女にはどうしようもないと判断し、慌てて私は椅子から立ち深く礼をする。「レオナルド・リヒハイム第二王子殿下に拝謁いたします。リリアンナ・モンリーズと申します」私の声にようやく存在に気付いたのかレオナルドがマルグリータから離れて私を見た。当の彼女は顔を真っ赤にしたまま両手で頬を押さえてアワアワしている。可愛い。「会場でお会いしましたね。レオナルドです」一度軽く礼をすると、すぐに彼はマルグリータに向き直った。「この前風邪が治ったばかりだって聞いたのに、何故起きてるんだ! ぶり返したらどうする!」「で、でも殿下。ずっと寝ていたので、たまには起きないと……それに、結婚すれば義理の姉妹になる相手ですからリリアンナ様と仲良くなりたくて」完全に私を無視して会話を続ける二人に呆れてしまう。同じ気持ちなのか背後のシヴァから怒りのオ
last updateLast Updated : 2026-03-11
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第37話

一瞬何があったか理解できなくなるが、マルグリータの動きとレオナルドの頬が赤くなっているのを見て彼が平手打ちされたのだと分かる。呆然と叩かれた頬を押さえているレオナルドに向かって、彼女は叫んだ。「何てことおっしゃるのですか!」その細い体のどこから出ているのか、大きな声が響いた。「殿下はいつもそうです! 心配だからとわたくしを部屋に閉じ込めるばかり……どうせ、こんな病弱でみっともない婚約者を他人に見せたくないだけなんでしょう⁉」後半はもはや涙声だった。彼女の青い目からは、ぽろぽろと涙が零れている。大きな瞳から零れる涙は大粒の真珠のようで、それを彼女は手の甲で乱暴に拭った。「リ、リタ……」レオナルドが慰めようと手を伸ばすも、一歩下がって避けられてしまう。そんな彼女は踵を返すと私の腕を掴んだ。「行きましょう」引きずられるような形で後を追うと、慌ててシヴァも私達に続いた。気になりちらりと振り返ってみてみると、差し出そうとした手を浮かせたまま傷ついた顔をしているレオナルドが中庭の中心で立ち尽くしていた。  ***  「……お見苦しい所を、お見せしました」マルグリータの自室に連れてこられた私達は、ハンカチで涙を拭い紅茶で喉を潤し平静に戻った彼女とテーブルを囲んでいた。その間に中庭のティーセットはこちらに移動され、それをシヴァも手伝っていた。「大丈夫ですか?」あんな風に、一国の王子を叩いてしまって。凄く後が怖いような気がするが、どうなのだろう。思わずそう尋ねると、彼女も明らかな動揺を示す。「……大丈夫では、ないかも知れませんわ。きっとわたくしは、婚約者の地位を外されてしまうわね」そう話す彼女は少し寂しげ
last updateLast Updated : 2026-03-11
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第38話

分かりますよ?マルグリータ様、滅茶苦茶可愛いですもん。今より幼くて小さく愛らしい彼女を王城で見て一目惚れして、そのまま自分のお姫様にしてしまったんですね?それで大好き過ぎて毎日会いに来るくらいですもんね?心配で外にも出したくないですよね?そんな彼女から平手打ちされて怒られたら、そりゃショックが大きすぎますよね?大人しい上に自分がそこまで愛されてるだなんて分かっていないマルグリータ様じゃ、身を引いてしまって簡単に仲直りなんて出来ませんよね?レオナルド殿下はショック過ぎて声もかけられなくなるでしょうね?そのせいで当てつけのように他の女に走るようになってしまうレオナルド・リヒハイムの姿が目に浮かぶようだ。全てに納得し、うんうんと頷くと私は紅茶を口にした。「せっかく来て下さったのに、本当にお見苦しいことを……どうかわたくしが婚約者から外されてしまっても、お友達として仲良くして下さいね」いや、それは無いと思います。数年後のゲーム開始時点でも、二人の婚約は解消されていませんでしたから。レオナルドが大好きな彼女を手放すなんてことするはずがない。「まだ婚約解消されたわけでもないのに、そんな弱気なこと言わないで下さい」「そうですね。申し訳ありません。あんなに怒ったのは始めてで」「普段はそういう話はしないんですか?」「ええ。殿下の気遣いを無下にするわけにはいかなくて。でも、わたくしはどうせならもっと外に出たかったのです」外に出れない窮屈さは私にも分かる。あの前夜祭の時のように、大人に止められても、こっそり外に出てしまう気持ち。そんな私の気持ちが分かったのか、シヴァがそっと私に近寄ってくれたのが分かった。背中を押されたように感じ、思い切って私は口を開く。「それなら、そう殿下に伝えてはいかがでしょう?」「あんなことをしたわたくしが言うことではないかもしれませんが、余計に怒らせてしまうのでは?」
last updateLast Updated : 2026-03-12
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第39話

次の日から早速私は行動に移した。私がレオナルドと会うには王城に行くしかない。そう判断し、その日のうちにお父様に言ってアレクサンドと会う名目で王城に行く手配をしておいたのだ。昨日のマルグリータとレオナルドの出会っていた時間を考えると、昼前には王城を出発している可能性が高い。そのため朝食を済ませてすぐに私は王城へと向かった。理由は説明して、もちろんシヴァにも一緒に来てもらっている。「おはようございます、アレクサンド様」「おはよう、リリアンナ嬢。今日は急にどうしたんだい?」私は王城に着くと、その名目であるアレクサンドに真っ先に会いに行った。婚約者同士なのだからそれでも良いはずではあるが、特に会うような理由もなく約束もしていないのだからアレクサンドは不思議に思うだろう。誤魔化そうかとも考えたが、彼の情報収集能力は高く頭も良い。そうそう誤魔化しきることなど出来ないだろう。「実は……」私は全て正直に話してしまうことにした。アレクサンドは私の話を聞くと、うんうんと頷く。「えっと、それでレオナルド殿下はもしかして……」せっかくだしマルグリータの婚約の経緯まで尋ねてみることにする。一応は兄弟だし、同じ王城に住んでいるのだ。彼が知らないはずはない。「うん、レオナルドはマルグリータ嬢にぞっこんなんだよ。一目惚れして父上に懇願し、無理に婚約を結んだのはここだと有名な話さ。その代わりまじめに勉強するよう言われて、父上に婚約解消させられないよう毎日頑張っているよ」知らぬはマルグリータ嬢ばかりというわけか。それなら話は早い。「そのお二人の仲を取り持ちたいんです。昨日話した限り、マルグリータ様はレオナルド殿下の溺愛を知りませんし、このままお二人の気持ちが離れ離れになるのは良くありません」「うん、確かにそうだね。昨日からレオナルドの様子がおかしかったから、何かあったんだとは思っ
last updateLast Updated : 2026-03-12
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第40話

さすがに王家の力は絶大で、他家の健康事情など普通なら話してはもらえないはずだったところを、レオナルドだけならと話してくれることになったようだ。私は客間で待ちぼうけ。「これで上手くいくと良いんだけど」「あそこまでされて理解できずに閉じ込めるようなら終わってるな」初対面の態度にまだ恨みがあるのか、シヴァの言葉は辛辣だ。一緒に座ることは出来ないが、すぐ傍にいてくれるのだから安心感がある。「それはそうだけど、分からなくもないんじゃない? ほら、例えば私もマルグリータ様みたいに病弱だったら、シヴァも心配で外に出したくないんじゃないの?」「そんなことねぇよ」周囲に誰もいない個室の状況だからか、私達の会話はいつも通りフランクだ。冗談交じりに尋ねた私の言葉を、シヴァは真っ向から否定する。「外に出たいのが願いなら、抱きかかえてでも叶えるために奔走するのが男ってもんだろ」仰ぎ見るとその表情は真っすぐで、メイド服を着て女装をしているはずなのに凛々しくかっこよく見える。何よりその言葉が嬉しくて、私は笑ってしまった。「それじゃ、私が病気でも外に出たいって言ったら、シヴァにお姫様抱っこしてもらおうっと」「お姫様だっこ?」「絵本にあったみたいな、王子様がお姫様を抱えてるやつだよ」イメージを伝えたくて手を動かすも説明しにくい。とうとう私は立ち上がって、シヴァに指示を始めた。両手をシヴァの首に絡ませると、背中と太ももを支えて持ち上げるよう頼む。さすが力がある彼は、事も無げに軽々と私を抱き上げてしまった。「そうそう! こんな感じで抱っこしてもらうのが……」そこでようやくシヴァと目が合い、今自分がされていることを理解した。全身がシヴァに包まれていて、がっちり密着している。腕を絡めているせいでシヴァの顔との距離が近く、彼の吐息がかかりそうなほどだ。間近に迫った顔はやっぱり綺麗で、呆然と見つめる私
last updateLast Updated : 2026-03-12
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