小さな咳が部屋に響く。咳が収まると一息つき、少女はペンを走らせた。ベッドの上で上半身を起こしたまま、少女は手紙を書いている。彼女の乳白色のストレートヘアはベッド上を這い、濃い青色の瞳は真剣に文面をなぞっていた。その体は同年代と比べても明らかに細く弱弱しいが、頬は年相応に丸みを帯び病床においてもその美しさが陰ることはない。書き終わり、ライムグリーンの封筒に手紙を入れて蜜蝋を垂らし終わったところで扉がノックされた。「どうぞ」小さいが澄んだ声は良く通る。扉の向こうの人間に無事届いたのか、扉が開かれて老年の執事が顔を出した。「お嬢様、終わりましたか?」「ええ。ちゃんとここに」差し出された手紙を執事は恭しく受け取る。「宛先はモンリーズ公爵邸で間違いありませんか?」「ええ、そうよ」少女がテーブルの上の道具を片付けていると、執事もそれに手を貸して二人で片づけを済ませる。空になったベッドテーブルは端に避けられると、彼女は口を開いた。「リリアンナ様はわたくしと一つ違いらしいの。……わたくし、ちゃんと仲良くなれるかしら?」「もちろんですとも」笑顔で答えてくれた執事に安心したのか、彼女はモソモソとベッドに横になり布団にくるまる。「その日までに、ちゃんと治さないといけないわね」「ええ。ですから、しっかりお休み下さい。後で薬湯と、ご褒美のデザートをお持ちしますので」「爺は甘やかし過ぎよ……でも、嬉しいわ」クスクスと楽しそうに笑って、少女は目を閉じた。 *** 婚約パーティを終えてからの毎日は、更に忙しくなった。継続される魔法訓練や基礎勉強に加えて、マナーレッスンやダンスレッスンも本格化。次期王妃となるべく王宮での講義
Last Updated : 2026-03-08 Read more