「それで、あの大音ですが……モンリーズ令嬢のお連れ様が原因だったようなのですけど」夫人の若干怒りが混じった声に、私はすぐに返事ができなかった。何と返事をしようかと考える。どう考えてもヴォルフガングのことだ。そして、彼が馬車を倒して大騒ぎを起こしたことは事実である。そして、そのヴォルフガングを連れてきたのは私達だ。「まあ、そうでしたの。ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありません。何があったのですか?」ヤバそうな雰囲気を察して慌ててバスタブから出て体を拭く……という風に見せかける。慌てているように見えなければ不自然に映ってしまう。シヴァが用意してくれた服に着替えながら、会話を続けた。すぐに脱出できるようにしておかないといけないという意味もある。「馬車を横転させたとか。今、従者や騎士たち総出で直しています」「そうなんですね。どうしましょう……馬車に傷があれば、モンリーズ家に請求して下さって構いませんから」「そう言って頂けると助かります」……この夫人はいつまでいるんだろうか。もう精神的にきつい。早く逃げ出したい。脱出したい。そんな雰囲気を察したのか、シヴァが動いたのがカーテン越しに分かった。「申し訳ありません。お嬢様も着替え等ありますので、他にご用件が無ければ控えて頂けると助かります」さすがシヴァ!ありがとう!「……食堂に戻っています。朝食は温め直させますので、ごゆっくり」そう言いながら夫人は部屋を去っていった。思わず全身の力が抜けてしまう。夫人は何かを勘付いているのだろうか。それとも、私の思い過ごし?「もういないぞ。大丈夫か?」シヴァの声がして、反射的に体が動く。「シヴァ!
Last Updated : 2026-04-05 Read more