All Chapters of 女装メイドと婚約破棄された悪役令嬢は、幸せな結末を目指します: Chapter 231 - Chapter 240

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第231話

「それで、あの大音ですが……モンリーズ令嬢のお連れ様が原因だったようなのですけど」夫人の若干怒りが混じった声に、私はすぐに返事ができなかった。何と返事をしようかと考える。どう考えてもヴォルフガングのことだ。そして、彼が馬車を倒して大騒ぎを起こしたことは事実である。そして、そのヴォルフガングを連れてきたのは私達だ。「まあ、そうでしたの。ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありません。何があったのですか?」ヤバそうな雰囲気を察して慌ててバスタブから出て体を拭く……という風に見せかける。慌てているように見えなければ不自然に映ってしまう。シヴァが用意してくれた服に着替えながら、会話を続けた。すぐに脱出できるようにしておかないといけないという意味もある。「馬車を横転させたとか。今、従者や騎士たち総出で直しています」「そうなんですね。どうしましょう……馬車に傷があれば、モンリーズ家に請求して下さって構いませんから」「そう言って頂けると助かります」……この夫人はいつまでいるんだろうか。もう精神的にきつい。早く逃げ出したい。脱出したい。そんな雰囲気を察したのか、シヴァが動いたのがカーテン越しに分かった。「申し訳ありません。お嬢様も着替え等ありますので、他にご用件が無ければ控えて頂けると助かります」さすがシヴァ!ありがとう!「……食堂に戻っています。朝食は温め直させますので、ごゆっくり」そう言いながら夫人は部屋を去っていった。思わず全身の力が抜けてしまう。夫人は何かを勘付いているのだろうか。それとも、私の思い過ごし?「もういないぞ。大丈夫か?」シヴァの声がして、反射的に体が動く。「シヴァ!
last updateLast Updated : 2026-04-05
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第232話

それから三十分後。なかなか戻らないヴォルフガングにイライラした辺境伯は、屋敷内に戻って来ていた。あれから戻せた馬車はまだ2台。どう考えても手が足りないのだ。それなのに事件を起こした当の本人がいなくなるとはどういうことなのか。「全く、こんなことなら倍くらいの金をモンリーズ家に請求してやる!」辺境伯の言葉に、お付きの従者は呆れていた。そんなことも気にせず鼻息荒くリリアンナの部屋がある階にたどりつく。しかし、そこには誰もいない。あまりの静けさに首を傾げ、辺境伯はまずは最初に用意したリリアンナの客室へ向かった。綺麗に掃除された部屋の中は空っぽだ。誰かが泊っている形跡はない。「リリアンナ嬢はどこだ?」「さあ?」つい隣の従者に尋ねるも、ずっと辺境伯と一緒にいた彼に分かるわけもない。食堂にならいるはずだと、今度は食堂に向かった。しかし、そこにも先に食事を済ませている夫人しかいない。「おい、リリアンナ嬢を知らないか」「リリアンナ嬢でしたら、先程までお風呂場に」「風呂?」「あの騒ぎで驚いた従者が、リリアンナ嬢のドレスを汚してしまったので。絨毯も汚れてしまったので、客室も向かいの部屋に変えるよう手配しました」夫人の説明に、何かを感じ取った辺境伯は顔色を青くして食堂を走り去る。その不自然な様子に、夫人も早歩きで後を追った。先程夫人が説明した客室のドアを開ける。ここも使用の形跡が一切ない、綺麗な部屋だ。次にお風呂場を見る。ここにも誰もいない。同じ階にあるロミーナの部屋を開ける。質素なその部屋に、娘の姿はなかった。「どうしましたの?」辺境伯に追いついた夫人が尋ねる。振り返りながら、辺境伯は焦ったように叫んだ。「いないんだ! リリアンナ嬢も、ロミーナも、あの大男もどこにも!」
last updateLast Updated : 2026-04-05
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第233話

村中の女性が私とロミーナに……心当たりは一つしかない。「シヴァ!」「お嬢様」一通り見て回ると、少し離れたところでちょうどシヴァが変装魔法をかけているところだった。そこまで魔力の多くない一般人としては、変装魔法で髪や目の色が変わるのが面白いのだろう。魔法をかけてもらった女性が、淡い紫色になった自分の髪を見て喜んでいる。「これ、どうしたの?」「目くらましです。魔力が切れれば元に戻りますよ。もって三日でしょうか」確かに、こんなに人数がいれば追手が来ても私達には気づきにくいだろう。むしろこの中に混じっているのではないかと探し始めるかもしれない。「聞き込みをされたらすぐバレるんじゃ」「魔法をかけながら全員にとぼけるよう頼んであります。我々がどこに行ったのかは知らないと。村長にもそう伝えておきましょう」冷静に答えるシヴァがなんだか憎たらしい。変装魔法をかけると言うことは、相手の体の一部に触れるということだ。いくら今、シヴァが女装しているとはいえ、ちょっといい気はしない。村長の所へ行こうと、シヴァがやって来る。私の表情を見て察したのか、すれ違い様にシヴァは耳元で囁いた。「妬いてるのか?」その言葉にはっとする。「そ、そうだよ! 悪い!?」慌ててそう返事をすると、シヴァは揶揄うように笑っていた。 村長にも説明すると、私達の味方をすると約束してくれた。あの惨状をほぼ放置していたアマトリアン辺境伯よりも、この2、3年でしっかり旧ソプレス王国の復興に努めてくれた私達の方に恩があるからと。そう言われて、今まで頑張ってきたことが報われたような気がした。村を出て馬車を進める。旧王都への道はしっかり舗装されていた。道中何台かの荷馬車ともすれ違う。どうやらちゃんと使ってくれているようだ。それらを確認し
last updateLast Updated : 2026-04-05
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第234話

小声で話しているため、つい私も声を小さくしてしまう。「な、なんですカ?」「追手です。今は後方の部隊と交戦しています」その言葉に背筋が冷えるのを感じた。耳をすませば、激しい馬車の音や馬の蹄の音に混じって金属音が聞こえてくる。「先方隊に気付かれただけのようで、相手の人数も少なく対応可能な範囲です。しかし、何かあった時にすぐに脱出できるよう準備だけお願いします」彼女の言葉に私は頷くと、荷物入れになっている椅子の座面を持ち上げた。そこには私の着替えや部屋から持ち出した大好きだった本、日記などが直接詰め込まれている。その上には自分のトランクが置かれていた。中には大量の両親が隠し持っていたであろう書類や手紙を詰め込んであり、酷く重たい。私はそれを何とか持ち上げると、ぎゅっと抱きしめた。反対側の座面の下からベアトリクスがもう一つのトランクを取り出してくれる。それはリリアンナから借りたものだ。ベアトリクスはそれを軽々と持ち上げた。「先方隊が本隊を連れてくる前に、なんとか撒かないといけませんね」そう言うと彼女は馬車の窓を開けた。すぐ横には鎧に身を包んだ屈強な男性が馬で並走している。「まだ撒けないのですか⁉」「さすがに辺境伯だ、あれでも騎士の腕は良い」周囲の激しい物音に負けないよう、二人共大きな声で叫んでいる。「本隊が来る様子は!?」「呼びに行った奴らを潰すために、二人送った。他に隠れてるやつがいなけりゃ大丈夫だ」その分、後方部隊の人数が減っている。そのため少し時間がかかっているのだろう。大丈夫。大丈夫のはずだ。そう何度も繰り返しながら、再びぎゅっとトランクを抱きしめる。そうしていると、重たいはずのトランクがふと軽くなった気がした。「エ?」思わず声が出てしまう。軽くなったのはトランクだけではない。
last updateLast Updated : 2026-04-05
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第235話

追手が来たのは翌々日の夕方のことだった。ソプレス王国の旧王都へやって来た騎士達はみんな疲れたような表情をしていたと聞く。たぶんシヴァが準備していたあの大量の変装魔法をかけた女性達に翻弄されていたのだろう。あの中に本物がいるかもしれないと探すのは、骨が折れることだ。元々アマトリアン辺境伯は反感を買っていたから、協力が得られなくて手こずるのもしょうがない。そんな話がヴォルフガングの下に入ってきたため、私はシヴァに変装魔法をかけてもらい、ヴォルフガングの馴染みの店に匿ってもらっていた。シヴァも同様で赤髪の青年になっている。お陰様で調査は順調で、後は調査結果を聞いて指示を出したり手続きをしたりして、家に帰るだけだ。「とうとう追手が来たみたいだけど、大丈夫かしら……」「まあ、ヴォルフガングに任せておけば大丈夫だろ。この辺のまとめ役で人望があるから、皆も協力してくれる」食堂の二階の部屋を借り、そこで私はシヴァとお茶をしていた。テーブルの上に広がるのは、周辺の地図と今現在集まっている情報だ。せっかく道路も整備したのだ。後は流通が上手くいけば良いと、補助金でも出そうと思ったがどこに出せば良いのか判断が難しい。のんびりもできないし、早く決めてしまいたいのだがそう簡単にはいかなかった。「でも、ゆっくりはできないし。明日明後日で結論を出さなきゃ」「やっぱり一番生活に関わる食料品か?」「食料品にはしたいけど、嗜好品含めて何でもかんでも補助は出せないわよ。小麦は既に手を貸しているから、何か別の物にしないと。他にも日常生活で欠かせないものはたくさんあるし……」そうしていると、扉がノックされた。シヴァがドアを開けると、そこにはヴォルフガングが立っていた。「よう、追手はなんとか撒いてるぞ。モンリーズ家の馬車も廃城に隠してあるから、まだ見つからないはずだ。目撃証言も皆に適当言ってもらってるからな。まだ数日は何とかなる」
last updateLast Updated : 2026-04-05
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第236話

翌日早朝。開店前の食堂にぎゅうぎゅうに集まっている面々に、私は驚いてしまった。『そんなに悩むなら、本人達に聞けば良いな!』昨日にかっと笑いながらそう言っていたヴォルフガングの顔を思い出す。彼のアイデアは要するにアンケートのようなものになるだろうか。確かに、その方が皆が望むものが分かりやすい。私が了承すると、彼は本当に数時間でこんなに人を集めてしまったのだ。狭い部屋にたくさんの人がひしめき合っていると、あの大きな体は入りきらない。ヴォルフガングは外で待機し、追手が来ないか入り口を見張っていた。「皆さん、ようこそお越し下さいました」私は変装魔法で黒髪ピンク目の姿のままだ。服装も質素だが、仕草で貴族と言うのは伝わるのだろう。たとえ身分が下の人が相手でも誠意を示さねばと、私はカーテシーで深々とお辞儀をした。そんな私の姿を見て、人々は静かになる。「今日はお嬢様のためにお越し下さりありがとうございます。ヴォルフガング殿の説明の通り、お嬢様はソプレス王国の民を救おうと邁進しておられます。今回は、生活に必要なものが行き渡りやすいよう補助金を出そうとお考えです」隣で赤髪の青年に扮したシヴァが、前に出て発言する。その発言を、人々は真剣な顔で聞いていた。「食堂の開店まで約2時間。それまでに、補助金が出たらありがたいものを教えて下さい。意見の多かった物や、皆さんの説明から確かに重要性が高そうだと判断した物から補助金を出します」「お店の邪魔にはならないよう、お話が終わったら速やかにお帰り下さい。追手も撒いて下さり、皆さんの協力には本当に感謝しています。捕まって、このまま終わらせるつもりはありません。復興支援のため、よろしくお願いします!」二人で深くお辞儀をすると、どこからともなく拍手が聞こえてきた。拍手はどんどん大きくなり、部屋中に響く。彼らは国が滅んだ後もこの場を離れず、ヴォルフガングと共に頑張ってきた面々だ。そんな彼らが浮かべる笑顔や真
last updateLast Updated : 2026-04-05
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第237話

翌日の昼には用事が終わり、後は持って帰った資料で学園に提出するレポートを作成するだけだ。一通り荷造りを済ませると、私とシヴァは部屋を貸してくれていた食堂のオーナーに礼を言い、馬車の置いてある廃城へと向かった。道中、一般人に扮した護衛がいるものの、明らかに私達を探している追手の姿も見える。外に出たのはニ、三日ぶりで緊張していたが、どうやらバレてはいないらしい。鎧を付けた仰々しい騎士とすれ違っても、見咎められることが無かったことにほっとする。そうして私達はなんとか廃城に到着した。背の高い草が生え、荒れ放題になっている廃城の庭を、皆に手伝ってもらいながら進む。草で隠されていたが、進んでいった先にあったのは間違いなくモンリーズ家の馬車だった。豪奢な造りにモンリーズ家の紋章。この馬車で外に出れば一発でバレてしまう。「……これにも、変装魔法ってかけられる?」私の問いに頷き、シヴァは馬車に触れた。魔力を流すと、馬車はモンリーズ家の紋章が消え、少し煤けた木の色に変わる。しかし、馬車の形自体は大きく誤魔化せないのだろう。普通の乗合馬車ではありえない天井の高さと、車輪の大きさだ。「う~ん……まだ普通の馬車には見えないわね」私の言葉にシヴァも隣で考え込む。そこで私は、学園で習ったばかりの魔法を思い出した。シヴァは繊細な魔力操作は得意なようだが、一気に大量の魔力を放出するような使い方は苦手だ。対して私は繊細な操作は苦手だが、魔力量には自信がある。確か、基本的には物を修復する魔法だったが、要するに物質の形を変形させる魔法だ。剣を作る際に金槌で叩くように、大きな魔力で思いっきり物質を叩いて変形させる。そんな魔法だ。腕まくりをすると、私は馬車に触れた。学園で何度か練習した程度だが、落ち着いてやれば車輪を小さくしたり天井を低くして、その分横幅の広い馬車に変える
last updateLast Updated : 2026-04-05
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第238話

「ロミーナ嬢、王城が見えてきましたよ」ベアトリクスの言葉に私は体を起こした。彼女が開けてくれているカーテンから窓の外を見ると、いつも見ていたあの荘厳な城が目の前にある。「この後、ロミーナ嬢には王城で暮らして頂きます。追手や暗殺者が来てもおかしくはありませんから。王城での警備は一流ですよ」安心させるようにベアトリクスは言葉をかけてくれる。しかし、私は素直に喜べなかった。この後、私が持ち込んだ資料を精査し、両親の罪と黒幕を暴いていく。その最中、私が襲われてしまったら意味がない。だから王城で暮らし、私は一切の外出ができなくなるのだ。もう学園に行くことも、誰かと自由に会うこともない。全てが終わるまでの辛抱だと分かってはいるが、それは酷く孤独で、辛い。未来がどうなってしまうか何も分からない不安。結局上手くいかずに、このまま王城で一生引き籠って過ごすしかなくなるのではないか。何かが間違って、両親と一緒に処刑されてしまうのではないか。そんなネガティブな思考に飲み込まれてしまう。「……そんなに暗い顔をしないで下さい」私の表情に気付いたのか、ベアトリクスが私の頭を優しく撫でてくれる。私よりも10歳は年上だという彼女とは、この旅の間に随分仲良くなった。もはや姉のようだ。「何かあれば、私も助けに入ります。だから、本当に辛かったら言って下さいね?」彼女の笑顔に助けられ、私もなんとか笑みを作る。このネガティブな思考も、ろくに休憩する暇がなかった長旅で疲れているせいだ。きっとそうだ。頭の中で、いつも明るい誰かさんのことを思い出すが、私は頭を振ってその顔を忘れることにした。 ベアトリクスがトランクを持ってくれ、他の護衛と共に私はアレクサンド様の所へ向かった。誰かに見られるかもしれないことを考えると、正門から入るわけにもいかず、裏門からこっそりと
last updateLast Updated : 2026-04-05
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第239話

やってきた人物は、ブロンドの短い髪を揺らしていた。まだ少し幼めの顔立ちには、女物の髪飾りも違和感がない。いつもの学園の制服ではなく、今日は白を基調とした上着にディープパープルのベストを着ている。思えば、彼がこんなにしっかりした服装をしているのを見るのは始めてかもしれない。私が驚いていると、彼の大きな菫色の瞳と目が合う。私の存在を認識した彼は、嬉しそうに微笑んだ。『先輩!』耳馴染みの良いライ語に、声変わり途中なのか少し高い声。この声は、間違いなくセドリックのもの。それを理解する前に、彼は駆け寄って私を抱きしめた。何故、彼がここにいるのか。私が王城にいることも、アレクサンド様のことも、彼には何も言っていないはずなのに。そうやって混乱していると、セドリックの背後のドアからこっそりとアレクサンド様が出ていくのが見えた。元から、私達を二人にするつもりだったようだ。『ご無事でしたか? 連絡をもらって驚きました』『私の方こそ……何故、貴方がここに?』『リリアンナ先輩から連絡が来たんです』一度体を離し、ソファで隣同士に座る。彼の説明で、私は納得した。あの行動力のある彼女ならやりかねない。手紙を出したとしたら辺境伯邸に着いてすぐ。そこからの移動時間を考えると、昨日か一昨日にはセドリックに手紙が届いていたのだ。『それで、会いに来てくれたのね。久しぶりに会えて、本当に良か』『先輩』笑顔で話を逸らそうとする私に気付いたのだろう。私を見つめる彼の目は真剣だ。 『僕と婚約はできないって、本当ですか?』 誤魔化そうと思っていた本題を突きつけられ、私は息を飲んだ。リリアンナがわざわざ手紙を出した。その内容など、これ以外には考えられない。まさか
last updateLast Updated : 2026-04-06
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第240話

そんな時、自分は何をしているのか。きっと両親は裁判にかけられて貴族籍を剥奪。私も貴族ではなくなり、平民として暮らすようになるだろう。運がよければライハラ連合国の遠縁の親戚に引き取られるだろうが、そんなの希望的観測に過ぎない。犯罪者の娘となった私を引き取ってくれる可能性など、途方もなく低い。それに、引き取られたところでライハラ連合国の準男爵程度の地位だ。とてもセドリックとは釣り合うとは言えない。様々な想像をしてどんどん気持ちが暗くなる。こうして彼が私に愛を伝えてくれていることすら、奇跡のようだ。『だから、ね? ……もう私のことは諦めて。セドリック』無理に笑みを作って微笑む。胸元に顔を埋めながら視線を寄こしたセドリックは、拗ねたような表情をしていた。『嫌です』彼の返事ははっきりしていた。『僕は絶対に、ロミーナから離れません』私から一度離れ、体を起こすと、両手でソファに手を付き再び私を真正面から見つめた。彼のブロンドの髪が私の頬に当たって、少しくすぐったい。『なんで……なの?』そんな彼を見て、私は素直にその疑問を口にしていた。思えば、ずっと前から薄々思っていたことだ。『私には、貴方にここまで好かれる理由がないわ』はじまりは、入学式のあの日。書庫でばったり、同じくライ語を話せる人間と出会ったこと。それからは、あくまで先輩と後輩として、アレクサンド様の側近候補の方々も含め、皆でそれなりに仲良くしていたつもりだ。それなのに彼は、いつも私の後を追ってきていた。まるで、刷り込みでもされた雛鳥のように。『そんなことありません』そんな可愛らしかった雛鳥は今、私を組み伏せて私に愛を告げている。『ロミーナは、僕の初恋だから』私の髪を一房手に取り、軽く口付けながら彼はそう言っ
last updateLast Updated : 2026-04-06
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