どうやらこの魔法は、一度行ったことがある場所へと移動できる魔法のようだ。気付いた僕は、まずは屋敷のあちこちに自由に移動した。そして、自分の性質を利用してこっそり屋敷の外へ移動すると、魔法を使ってちょっとずつ移動範囲を拡大していった。用事があって母が出かけるたびに、僕は出かける。性質を利用してこっそり乗合馬車に乗車したり、荷馬車の中に隠れたり。そうして移動していきながら、行きついたのがライハラ連合国だった。『よう、坊主。一人で何してるんだ?』『こんな年の子が一人? お母さんは?』ライハラ連合国は、リヒハイム王国よりも文明が発展していない。それでも、地域に根差した生活や住民達の明るい性格が、僕の鬱屈とした生活に明かりを灯してくれた。たまに住民と慣れないながらに会話をしてライ語を習得する頃には、僕は7歳になっていた。正式に魔法訓練を受け、僕の【隠密】という性質は鳴りをひそめていった。母をこっそりライハラ連合国に連れて行っても良いかもしれない。そんなことを考えていた矢先のことだった。母が亡くなったのだ。長年の心労のせいなのか、元々の持病のせいなのか。はたまた、気にかかっていた僕の性質が消えて気が抜けたからなのか。その理由は、僕にはよく分からなかった。頼りにしていた唯一の人物がいなくなり、僕は再び一人になった。もう性質はない。それでも、父や兄達からすれば、急に7歳の家族が生まれたようなものだ。幼少期を一緒に過ごしても、その記憶は他の家族には残っていない。そんな奇妙な僕を、彼らは受け入れることはできなかった。そんな中でも、父は不器用なりに親として接しようとしてくれた。悲しんでいる僕に、母の大事にしていた髪飾りをくれたのが、彼なりの精一杯の優しさなのだと気付いたのは数年後のこと。それまで僕は、ずっと家族からいらないもの扱いされているんだと思っていた。それは、別に誰も
Last Updated : 2026-04-06 Read more