All Chapters of 女装メイドと婚約破棄された悪役令嬢は、幸せな結末を目指します: Chapter 241 - Chapter 250

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第241話

どうやらこの魔法は、一度行ったことがある場所へと移動できる魔法のようだ。気付いた僕は、まずは屋敷のあちこちに自由に移動した。そして、自分の性質を利用してこっそり屋敷の外へ移動すると、魔法を使ってちょっとずつ移動範囲を拡大していった。用事があって母が出かけるたびに、僕は出かける。性質を利用してこっそり乗合馬車に乗車したり、荷馬車の中に隠れたり。そうして移動していきながら、行きついたのがライハラ連合国だった。『よう、坊主。一人で何してるんだ?』『こんな年の子が一人? お母さんは?』ライハラ連合国は、リヒハイム王国よりも文明が発展していない。それでも、地域に根差した生活や住民達の明るい性格が、僕の鬱屈とした生活に明かりを灯してくれた。たまに住民と慣れないながらに会話をしてライ語を習得する頃には、僕は7歳になっていた。正式に魔法訓練を受け、僕の【隠密】という性質は鳴りをひそめていった。母をこっそりライハラ連合国に連れて行っても良いかもしれない。そんなことを考えていた矢先のことだった。母が亡くなったのだ。長年の心労のせいなのか、元々の持病のせいなのか。はたまた、気にかかっていた僕の性質が消えて気が抜けたからなのか。その理由は、僕にはよく分からなかった。頼りにしていた唯一の人物がいなくなり、僕は再び一人になった。もう性質はない。それでも、父や兄達からすれば、急に7歳の家族が生まれたようなものだ。幼少期を一緒に過ごしても、その記憶は他の家族には残っていない。そんな奇妙な僕を、彼らは受け入れることはできなかった。そんな中でも、父は不器用なりに親として接しようとしてくれた。悲しんでいる僕に、母の大事にしていた髪飾りをくれたのが、彼なりの精一杯の優しさなのだと気付いたのは数年後のこと。それまで僕は、ずっと家族からいらないもの扱いされているんだと思っていた。それは、別に誰も
last updateLast Updated : 2026-04-06
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第242話

涙で濡れて顔に張り付いた赤茶色の髪の隙間から、まん丸のアプリコット色の目が覗いている。泣き腫らして赤くなった瞳でこちらを見てくる姿は庇護欲をそそられる。なんとも言えない表情で小首を傾げる仕草は、目元の泣き黒子も相まってどことない色気があった。母以外の女性というものと、まともに関わろうとしたのはこれが始めてかもしれない。それもあってか、どうしようもなく彼女を助けてあげたい気持ちになった。『やっぱり、泣いてる。どうしたの? 大丈夫?』僕が声をかけると、再び彼女の目からポロポロと涙が零れてくる。慌ててしまう彼女に、すぐに僕はハンカチを差し出して涙を拭った。母が泣いている時は、いつもハンカチなんて渡せなかった。いつも母は自分でハンカチを用意して、泣いていたから。『……すみません。ありがとうございます。ただ、ちょっと嫌なことがあって』泣きすぎて枯れてしまったのか、少しかすれた声。『そっかそっか。流暢なライ語だったから、つい気になってさ。お節介だったらごめんね?』彼女が先輩なのか、同級生なのかはよく分からない。それでもなんとか泣き止ませてあげたくて、僕はおどけた態度を取って見せた。気付けば彼女の涙は止まっていた。そのことに、胸の奥が熱くなる。本当はずっと、こうして母を泣き止ませてあげたかった。なんとなく、その夢が少しだけ叶った気がして。『わ、忘れて下さい……泣いていたのを見られるなんて、本当にお恥ずかしい……』頬を染め、ハンカチで顔を隠しながら目を逸らす彼女を、もっと喜ばせてあげたくなった。『人に見られなきゃいいの?』彼女の手を取り、転移魔法をかける。行き先はもちろん、生前母を連れて行ってあげられなかったあの場所。こんなにライ語が流暢な彼女なら、きっと行ったことがあるだろう。『嘘…&
last updateLast Updated : 2026-04-06
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第243話

学園に通っても、正直気の合う人なんていなかった。同じクラスには僕が年下だから、女物を身に着けているからと馬鹿にしてくる男子生徒。それを遠巻きで見つつ、アレクサンド殿下の側近候補に収まった僕を自身の結婚相手にしようと見定める女子生徒達。同級生になった第二王子の婚約者マルグリータ・ヴァイゲル嬢は、僕を普通に扱ってくれた。でも、人見知りがあるのかそこまで親しくはなれない。だから、ロミーナ嬢に依存してしまったのは必然かもしれない。すでに婚約者がいる身だからなのか、年下だからと弟のように接してくれるからか、彼女の隣は居心地が良かった。「なんだよ、これ」「女物だろ? こんな物付けて、なよなよして、お前本当に男かよ?」毎回休憩時間になると、逃げるようにいなくなる僕に苛立ったのか。ある日、男子生徒はそう言って僕に詰め寄って来ていた。相手にしたってしょうがないと黙ってはいるが、内心腹立たしくてしょうがなかった。反抗も反論も無意味だ。どうせ状況が悪化するだけ。それに、対人経験の少ない僕にはどう言ったらこの状況がおさまるのかもよく分からない。そうして教室のドア付近の壁に押しやられて詰め寄られていた時、すぐ隣のドアがノックされた。首を傾げながら、僕を取り囲んでいた男子生徒の内の一人がドアを開けると、そこにはロミーナ嬢が立っていた。「ありがとうございまス」丁寧に男子生徒に礼をしながら教室に入ってきた彼女は、すぐ傍で男子生徒に囲まれている僕を見つけた。僕は彼女にこんな状況を見られた恥ずかしさで、一気に顔が熱くなる。目を丸くして驚いているロミーナ嬢に、皆は慌てふためいていた。アレクサンド殿下の側近候補の1人、ステファン・サンスリード公爵令息の婚約者であり三学年。そんな上級生であることは、さすがに入学して三か月も経てば皆が理解していた。気まずい雰囲気だが、気を取り直したのか、ロミーナ嬢はにっこりと微笑んだ。そのまま
last updateLast Updated : 2026-04-06
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第244話

『ありがとうございます』僕の言葉に、彼女は振り向きながら笑みを返してくれた。きっと、これが決定打だった。これが初恋だと知ったのは、もう少し後のことだ。婚約者がいることは分かっているし、年だって離れている。仲良くなって、彼女の中の良い後輩に落ち着く程度のことしか、僕にはできなかった。それでも彼女のためになりたかったし、彼女の傍にいたかった。そうして動いていると、ロミーナ嬢の婚約解消の話を耳にした。その話に、すぐに僕は飛びつく。だって、一生見ていることしかできないと思った彼女を、手に入れることができるかもしれないんだから。「仲の良い人のことを知りたいのは分かりますが、やっていいことと悪いことがあります」僕の暴走に、あまりに距離感が近すぎるとリリアンナ嬢から注意をされてしまった。対人経験に乏しい僕には、距離感なんて分からない。仲良くなりたかったら近付いて、そうでもなければ話しかけもしない。選択肢はその二つしか無くて、どう動いていいか分からなかった。それを親切なリリアンナ嬢に教えられ、関係を再構築した。彼女のために何でも勉強したし、練習もした。準備だって万全だった。『僕と婚約してくれますか?』僕の言葉に、頬を染めるロミーナ。僕が差し出した手を、温かくて柔らかな手が包んでくれるロミーナ。 『はい。喜んで』 そう返事をしてくれた彼女の笑顔を、僕はきっと一生忘れない。父には頭を下げて結婚したい人がいると頼み込んだし、彼女のために指輪だって作った。それを彼女は笑顔で受け取ってくれたのだ。全てが順調で、後は彼女が正式に婚約解消して、両親から僕との婚約を認めてもらうだけ。それだけ、だったのに。【急な連絡申し訳ありません。ロミーナ・アマトリアン嬢は、貴方との婚約ができなくなりました。詳しくはアレクサンド殿下に聞いて下さい】
last updateLast Updated : 2026-04-06
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第245話

「はい」確認され、私は即座に返事をした。お父様は苦笑いをしながらも受け入れてくれる。「……分かったよ。アレクサンド殿下と話し合って、婚約解消の手続きを進めよう。もうすぐ三学年だ。その一年で、後継者教育を仕込んでいくから覚悟して欲しい」「分かっています。私、絶対にやり遂げて見せますわ!」私が意気込みを語ると、お父様は準備していた封筒を私に手渡した。何かと思い、首を傾げながら読んでみる。【長旅お疲れ様。こちらは順調だよ。例の話は三学年の卒業パーティの時に】アレクサンドからの手紙だ。人に見られても大丈夫なように、ふわっとしたことしか書いていない。それでも、十分私には伝わった。お父様も同じなのか、目が合うと頷いてくれる。ゲームでのリリアンナ・モンリーズの婚約破棄イベントのことを思い出す。あの時はリリアンナが糾弾される流れだったが、今回はそうはならないはずだ。イザベラとの婚約の話は、きっと別機会になるだろうから黙っておいた方が良いだろうか。そんなことを考えながら、私は期待に胸を膨らませていた。  ***  久しぶりに年末年始を自宅で過ごし、長期休暇を終えた。今日は久しぶりの登校日だ。色々と事件があったし、マルグリータは風邪をひいてしまったしで、なんだかんだ誰とも会えていない。休暇明けの学園は、休み中何をしていたのか、レポートは無事完成したのかなどの話題で盛り上がっている。教室に着くと、いつものようにたくさんの生徒に囲まれたイザベラの姿があった。今日は羽根飾りの付いた銀の髪飾りを付けている。蜂蜜色の髪は丁寧にカールされていて、立派なドリルになっていた。遠目から見ればなんとも悪役令嬢っぽい。「明けましておめでとう。イザベラ」「今年もよろ
last updateLast Updated : 2026-04-06
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第246話

噂の的であるロミーナは不在。自然と、ステファンが何かしたのではないかという余計な推測も立ってくる。どうなることかと心配していたが、食堂で会うステファンはいつも通りだった。赤い瞳を冷たく見据えて、淡々と食事をしている。時折、メロディと視線が合うと少しだけ表情が柔らかくなるが、その程度。巻き込まないようにメロディとは一度距離を置いているらしい。少し寂し気にしながらも、メロディも何も言わなかった。ロミーナの空席だけが目立つ。そんな空席を、セドリックだけは何度も何度も眺めていた。あれからどうなったのかは、なかなか聞けるタイミングが無かった。アレクサンドからは無事二人を会わせられた報告だけは受けている。しかし、その後は二人の問題だ。これ以上外野がどうこう口を挟める状況でもない。そんな状況に、アレクサンドは何も言わない。彼が何も言わないと言うことは詮索不要なのだと判断して、他のメンバーも誰も口を挟まなかった。もうすぐステファンも卒業する。そうすれば噂も自然と消えるだろう。そんな微妙な空気でも日常は送れるようで。期末試験の期間になり、その結果発表がされ、あっという間に三学年の卒業を祝うパーティの日が近づいていた。来年は第二王子のレオナルドがアレクサンドの立場を引き継ぐ。そんな引継ぎも期末試験の後に少しずつ進められた。レオナルドがいなくなれば、次はセドリックがその務めを果たす。せっかくだからと、レオナルドと共にアレクサンドから引継ぎと指導を受けるセドリックは忙しそうで、ロミーナとのことについて尋ねる暇はなかった。そんな中、私とアレクサンドの婚約解消を伝える場も近付いている。私自身それどころではない。あえてアレクサンドとは全く違うデザインのドレスを選び、髪型とメイクを決め、宝飾品を選んでおく。イザベラやヤコブにも最低限の説明は済ませておいた。そうして、と
last updateLast Updated : 2026-04-06
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第247話

同じくイザベラとも目が合うが、彼女の反応は違う。ゲーム内で見たのと同じ光景が繰り広げられていることに感無量なのか、誰よりも全力で拍手して私達の会場入りを喜んでくれていた。そんなイザベラの様子に、すぐ隣で腕を組んでいたアレクサンドが微妙な顔をする。たぶん視線から彼女が自分ではなく私の方を見ていたと気付いているのだろう。後でイザベラがアレクサンドにどんな目に合されるか、想像すると怖くなったのでツッコまないことにした。イザベラはゲームとは全く違う服装だった。淡い桜色のドレスに黄緑色の模様。胸からドレスの裾に向かって、綺麗なラインで大きな桜色の花があしらわれている。髪も下ろして同じく桜のような小花の散った髪飾りをしていて、いつもより少し幼く可愛らしく見える。ゲームの悪役令嬢らしいドレスのデザインとは真逆を行っている。彼女の隣にいたメロディは、ゲーム内でステファンと結ばれた時のドレスに身を包んでいた。ステファンのルートはプレイしていないので詳細は分からないが、ゲームの紹介動画で見たことはある。赤を中心としたドレスには黒いリボンが幾重にも重ねられており、だいぶ大人っぽいデザインだ。可愛らしい彼女には似合わないように思えるかもしれないが、それが普段とは違うギャップを生み出していて、それもそれで魅力的だ。赤い羽根飾りから見え隠れする、まん丸のレモン色の目が色っぽく見える。ゲーム内ではステファンと結ばれると、この場でロミーナが断罪されて婚約破棄されることになっている。しかし、明らかにゲームと違う道を進んだせいか、この場にロミーナはいない。本来だったらメロディの傍にいて、彼女の肩を抱いているステファンも存在しなかった。彼はといえば、この後私とアレクサンドが上る壇上の傍の会談で、警護をするかのように控えている。そんなステファンの後ろ。パーティ会場の端の壁に、各家の従者達が立って控えていた。何かあればすぐに自分の主人のところへ駆けつけていけるようにだろう
last updateLast Updated : 2026-04-07
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第248話

「リリアンナ・モンリーズ公爵令嬢。君との婚約は解消させてもらう」アレクサンドの言葉に、私はドレスの裾を摘まんで丁寧なカーテシーを披露した。突然の言葉に、会場の皆が息を飲む。それに負けないよう、私は顔を上げると笑顔で返事をした。 「そのお言葉、快く受け入れさせて頂きます」 会場の人々が一斉にざわめきたつ。何故婚約解消なんてするのか。二人の仲は順調だったのではないか。別れるとすると、二人の新しい婚約者はどうなるのか。モンリーズ公爵家と王家の中はどうなるのか。一瞬で様々な憶測が飛び交い、混乱する。そんな人々を見下ろして、アレクサンドが口を開く。「此度の裁判の件。それにより、ソプレス王国の名誉が守られ復興の道を進んでいることは周知の事実だと思う」騒ぎが収まり、皆がアレクサンドの言葉に耳を傾けた。「我々は元々、ソプレス王国との友好のために婚約をしていたが、これで必要が無くなった」「私は、以前より自分が王妃に向かない性格であることを自覚していました。ソプレス王国の件が解決した今、私よりも王妃に相応しい相手を、殿下に選んで頂きたいのです」これはお父様とも話し合って、決めていた内容だ。「王家とモンリーズ家の交流は変わらない。むしろ、ソプレス王国の地域の統治をモンリーズ公爵家に任せようと考えている。リリアンナ嬢には、公爵家を継ぐ者としてぜひ励んで頂きたい」アレクサンドが差し出してくれた手を取り、再び私は深くお辞儀をする。その様子を見て納得したのか、会場の混乱は収まった。それを確認すると、隅から現れた事務長官が、事前に準備してあった婚約解消の書類を差し出してくる。皆の前で、私達は順にサインを記入していった。サインを終えると、事務長官は書類を確認しアレクサンドに向かって頷く。書類をくるくると丸めると、一礼して奥へと引いていった。再び会場をアレクサンドが見
last updateLast Updated : 2026-04-07
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第249話

「……聞いてない」壁に寄りかかりながら腕を組み、拗ねたようにシヴァは呟いた。あれからパーティが開始されたが、まだ正式に次の婚約者が決まっていないアレクサンドが堂々とイザベラと踊るわけにもいかない。そうなれば、他の女子生徒からイザベラがどれだけ睨まれてしまうかも想像がつくから。そんなこともあり、ファーストダンスはアレクサンドと踊った。アレクサンドはそれからマルグリータと踊り、他の公爵家の遠縁だとかいう女子生徒と踊り、ようやく今は念願のイザベラと踊っている。さすが二人はポーカーフェイスが上手く、一見すると普通に楽しそうに踊っているようにしか見えない。私はといえばアレクサンドの後はレオナルド、ステファンと踊りこうして壁の花になっている。別に元々ダンスが得意だったわけでもなかったのだ。多数の男子生徒から視線を向けられていることには気づいているし、合間に実際声もかけられている。それらを全て断り、こうして壁際で軽食を取りながらシヴァに会いに来たのだ。「ごめんごめん。秘密ではあったし、今回はシヴァを驚かせたくって」「だからって、あんな見世物みたいになる必要なかっただろ⁉」少し言葉が強くなる。語気を荒げることが少ない彼の言葉に驚くが、それと同時にどうしようもない喜びが溢れてくる。それくらい、シヴァは私を心配してくれていたということだ。「ありがとう、シヴァ」笑顔で返すと、少し頬を染めたシヴァがちらりとこちらを見てすぐにそっぽを向く。「ねえ、この後……」「モンリーズ嬢」パーティ会場を抜け出すことを提案しようとすると、何度目か分からない男子生徒が再び声をかけてきた。彼は確か伯爵家の次男だったはずだ。「よろしければ、次のダンスの相手を……」「今日は靴擦れが痛くてもう踊れませんの。ごめんなさい」笑顔で圧力をかければ、相手はそれ
last updateLast Updated : 2026-04-07
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第250話

ダンスの基本形になった私達は、そっと音楽に合わせて体を揺らしていく。相変わらず、シヴァの刻むリズムは正確で、とても踊りやすい。今まで一緒に踊った誰よりも、一番彼がダンスが上手い。「ふふっ」「どうした?」つい昔を思い出して笑ってしまった。はじめてシヴァと踊ったダンス。あの時の私は本当に下手で、彼に足を出すタイミングとか、ターンの時の動きとかを教えてもらったっけ。「懐かしいなって。昔、シヴァにダンスを教えてもらったでしょ?」「そうだったな」懐かしむようにシヴァは遠くを見る。薄暗がりの中、綺麗な空色の瞳が虚空を見つめる姿は美しい。「あの頃よりも、上手になった」そう言いながら、シヴァはダンスにアレンジを加えて大きくターンする。突然の動きに驚きつつも、さすがにずっと練習してきた私の体は、素早く彼の動きに合わせて姿勢を整える。くるくると回転していると、不意にシヴァの手が私の腰に伸びた。腰を持ち上げられ、足が宙に浮いた状態で大きくターンする。驚いて目を見開くと、真正面に彼の顔があった。彼から目を離せないまま、地面に足が付く。見つめ合ったまま、私達はそのまま動けなくなってしまった。「……あの、ね。シヴァ」なんとか私は声を絞り出す。「今更かもしれないけど、改めて聞かせて」その言葉に、耳を傾けているのかシヴァは真剣な表情になった。「私、貴方が好きなの。これからモンリーズ公爵家の後継者として、色々な人と関わると思う。婚約者がいなくなった私に、たくさん縁談も来るし、男性も近付いてくると思う」お父様が私とシヴァの関係を知っていても、やって来る縁談を完全に全て拒み続けることはできない。きっと付き合いでお見合いに出ることもあるだろうし、社交界に出れば近づいてくる男性はうんと増えると思う。「でもね」一呼吸おいて、私は口を開い
last updateLast Updated : 2026-04-07
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