All Chapters of 女装メイドと婚約破棄された悪役令嬢は、幸せな結末を目指します: Chapter 261 - Chapter 270

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第261話

あのお見合い当日に分かったことを、私達はヤコブに共有した。「父からの封筒と、薬学分野の学者を目指している、か……」私とイザベラの話を聞いて、ヤコブは考え込んだ。珍しく眉間に皺が寄っている。「そういう話に、覚えは?」「ないですね。続編のヒロインで、異国風のビジュアルとしか確定情報がありませんでした。話だって、ライハラ連合国を中心に展開するはずで、リヒハイムには関係ないはずなんです」「じゃあ、本当に何故わざわざこの国に来たのかは分からないわけね」三人で膝を突き合わせて考え込む。いくら考えたって分からない。というか、情報が不足している気がする。そう思っていると、ふとイザベラが何かを思い出したように顔を上げた。「そういえば、アマトリアン辺境伯夫妻の件だけど、少し進展があったってアレクサンド殿下が話してたわ」イザベラ曰く、婚約者になるからと情報共有はしてくれていたらしい。ロミーナがかき集めた証拠の書類は分類、筆跡鑑定がされて概ね情報が纏まってきている。しかし、肝心の辺境伯夫妻に指示を出していた黒幕が分からないらしい。紙質などからライハラ連合国の人間だろうということまでは分かっている。それならロミーナの親戚にあたる人物だろうとアレクサンドは思っているとのことだ。「同じライハラ連合国ということですし、何か関係があったりは……」「あるかもしれないけど、ちょっと分からないかもしれませんね」イザベラが期待を込めた目で見つめるが、ヤコブは苦笑いをした。まあ、結局全て情報に欠けるのだ。これは、改めて何か新しい情報が出るたびに共有していかないとなぁ。  ***  それからも学園は変わらない。いや、変わったとしたらドミニカの周辺だろうか。
last updateLast Updated : 2026-04-08
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第262話

それは唐突だった。今までそんな素振り無かったのに、私と話がしたい?ますます警戒してしまう。「申し訳ありません。今、色々と用事が立て込んでいて……」「そうですカ。残念でス」ドミニカは目に見えてしゅんとしていた。俯く姿は哀愁漂うが、絆されてはならない。「では、失礼しますね」そう断りを入れて私は素早くドミニカから視線を外した。待ってくれていたシヴァの所へ小走りで近付き、一緒に歩みを進める。「いいのか? 他国からの留学生なんだろ?」「いいの。ちょっと、なんというか、色々分からなくて怖いし」シヴァの言いたいことも分かる。ライハラ連合国という他国からの留学生。外交のこともあるし、仲良くしておいた方が絶対に良い。でも、私としてはヤコブもイザベラもいない状態で彼女と話をするのは、なんだか怖かった。そんな決断を、私はすぐに後悔することになる。 「モンリーズ嬢、ちょっと良いですか?」翌日。私に声をかけてきたのは、同じクラスの女子生徒だった。以前までイザベラを囲っていたが、最近はドミニカに付いていることが多かった人だ。「ちょっと、唐突に話しかけると言うのはいかがな物かしら? それも、レオナルド殿下を無視して」昼食前、教室を出る時に呼び止められた私は彼女の方を振り返る。ヤコブやイザベラ、レオナルドも一緒にいたため、イザベラは彼女に注意を促した。確かに、目上の人が多い中で後ろから急に呼びつけるなんてありえない。イザベラに言われて彼女は一歩下がったが、どうやら諦めてはいないようだ。目はまっすぐ私の方を見ている。「……手短にお願いします」三人には先に行くよう促し、私は彼女と対峙した。三人がいなくなったのを見て、待機していたのであろう他の女子生徒も2、3人
last updateLast Updated : 2026-04-08
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第263話

王族専用食堂につくと、すでに皆が食事を始めていた。なんだかんだ時間がかかってしまったので、こればかりはしょうがない。「お帰りなさい、姉上」「大丈夫でしたか?」レオナルドとマルグリータが出迎えてくれる。他の面々も、心配そうにこちらを見ていた。「何があったのか、話してもらえる?」イザベラの言葉に頷くと、私は席について食事を摂りながら、起こったことを説明した。 「……それは、大変だったわね」私の話を聞いて、イザベラは呆れたようにため息を漏らす。レオナルドも苦笑いをしていた。「兄上からは、学者の卵の留学生としか聞いてなくって……オレにも何が何だか」基本的な情報しか、レオナルドも知らないらしい。そんな中、おずおずと端の方でメロディが手を上げた。一斉にみんなの視線が集中し、メロディは慌てて手を引っ込める。「えっと、私も色々話を聞いてはいるんですけど……」そうだ。この中ではメロディは比較的地位が低い。ヤコブも同様ではあるが、彼はドミニカを警戒しているので純粋な周囲の噂話や情報は入りにくいだろう。それに対して、最初の頃のトラブル以外、今はメロディも他の生徒と楽しく過ごしている。私達と過ごすことが多いが、交流関係は広いようで他クラスにも友人がいる。彼女なら、何か違う視点の話が聞けるかもしれない。「最初は、隣のクラスの男子生徒だったそうなんです」メロディが聞いた情報と言うのは、こうだ。留学して初日に、偶然すれ違った隣のクラスの男子生徒の顔色の悪さにドミニカが気付いた。医学分野に詳しい彼女が色々と親切にアドバイスして、生活習慣や食事を改善。その結果、すっかり顔色もよくなり小さな体の不調も無くなったらしい。その男子生徒以外にもドミニカは小さなことに気付
last updateLast Updated : 2026-04-09
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第264話

話があったとはいえ、忙しいと言っておきながらすぐに予定が作れるのも変な話だ。私がドミニカに指定した日程は、この話があった3週間後だった。その間は至って穏やかな日々を過ごしていた。ドミニカを慕う人は日々増えていき、連日教室は人で溢れかえっていたが気にしない。他の面々も、そんな様子を気にしないようにしていた。 そうしてドミニカとお茶をすることになった当日。私は王宮から少し離れた場所にある、研究室近くのカフェに来ていた。休日も研究室に籠もっている彼女は、あまり移動できないらしい。今日の私は、つばの大きな帽子で顔を隠しつつ、濃い紫色のシンプルなワンピースを着ていた。お忍びといった格好で、一緒に来ているシヴァもいつもよりもランクの低い執事服を着ている。隠れた場所に護衛も配置し、何があっても大丈夫なように準備はしているつもりだ。「お呼びだてして申し訳ありませン」予約した二階のテラス席で先に紅茶を飲んでいると、ドミニカが現れた。研究室にいたせいか、シンプルなドレスの上に白衣を羽織っている。長いライムグリーンの髪は一つに束ね、仕事のできる女性と言う風貌になっている。見るからに研究者と言う出で立ちは、案外様になっていた。華やかな異国風の美人だった彼女の、学園では見られない一面だ。「いえ、大丈夫です。それで、話とは何ですか?」さっそく私は用件を尋ねた。向かいの席に座ったドミニカは、慣れた様子でコーヒーのセットを注文する。店員が店内に入っていくのを見送ると、彼女は私の方へと向き直った。「特別な話があるわけではないんでス。たダ、貴女と仲良くなりたくテ」その割には、随分と面倒な手を使ってきたものだ。上手く周囲を煽って、自分に都合よく動くよう唆すのだから。私の冷ややかな視線に気づいたのか、彼女は苦笑した。その表情は、至って普通の少女のように見える。「別に
last updateLast Updated : 2026-04-09
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第265話

「レスピナス嬢、局長がお呼びです」お話して一時間以上は経過しただろうか。ドミニカと同じ白衣を身に纏った男性職員が、テラス席に顔を出した。「もうそんなお時間でしたカ」ドミニカは慌てて席を立つ。「申し訳ありませン、モンリーズ嬢。ここまで来て下さったのニ」「いえ、お忙しいのですからしょうがないです。どうぞ行って下さい」私が促すと、彼女はテーブルの上に置いた空のカップやお皿を手早く片付けた。「本当に今日はありがとうございましタ。また学園でもお話出来たら嬉しいでス」軽く会釈して、ドミニカは店内へと戻っていく。振り返りながら軽く手を振った彼女は、私を見ながら小さく呟いた。「……思っていたより、素直そうな方で驚いたわ」そんな感じの言葉を、私はどこかで聞いた気がする。 少し間を置いて私も席を立とうとすると、端で控えていたシヴァが椅子を引きに来てくれた。軽くお礼を言って、テラスを出る。何かを考えこんでいる私が気になったのか、シヴァが声をかけてきた。「何かあったのか?」「そう言うわけじゃないんだけど……」どうにも、何かが引っ掛かる。ドミニカの最後の言葉を、どこかで聞いた気がするのだ。「ねえ、シヴァ。私、とっつきにくそうに見える?」「どこが?」「私が素直じゃなさそうとか、堅物だとか、そういう噂を聞いたりは?」「無いな。というか、その素直な所がお前の良い所だろ?」首を傾げながら軽く頭を撫でてくれる。そうやって簡単に褒めてくれるのだから、シヴァはズルい。そして、すぐに嬉しくなってしまう私もチョロい。馬車に乗り込み、移動しながらもまだ私は考えていた。記憶を頼りに、どのタイミングで言われたのかと記憶を掘り返す。そんなに幼い時ではなかったはずだ。
last updateLast Updated : 2026-04-09
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第266話

「……とりあえず、色々探りを入れてみますか? ゲームについての情報とか、知識とかをこっそり聞く形で」ヤコブの言葉に、私もイザベラも頷いた。何か悪いことがあるわけではないが、このままでは気持ちが悪い。ドミニカも転生者なのか、そうではないのか。それくらいははっきりしておきたいところだ。「私も、ちょっと気になっていることがあるので」最後にヤコブがそう呟いたが、詳細は教えてくれなかった。 翌日から、さっそく私達は動き出した。とりあえず、今すぐ繋がりが持てるのは私くらいだ。たまに昼食をドミニカと一緒に摂り、話す時間を作った。彼女の信者達は、ドミニカの望みが叶って嬉しそうだ。二人でいると余計な口出しはしてこないのは助かる。「まさカ、モンリーズ嬢からお誘い下さるなんて思いませんでしたワ」ランチボックスを持ってベンチに隣り合って座った私に、ドミニカはにこやかな笑顔で話しかけてくる。「せっかく仲良くなりたいと言って下さったので、私の方からも歩み寄りたいと思いまして」「有難いことでス」彼女のランチボックスの中身は、香辛料のかかった肉がたっぷり詰まった、タコスのような料理だ。サンドイッチのような感じなのだろうか。「一口食べてみますカ?」私の視線に気づいたのか、遠慮がちにタコスのようなものを差し出してくれる。私は端の方を一口齧った。やっぱり、タコスにそっくりだ。香辛料が強めなのが違いだろうか。食欲をそそる独特な香りが鼻を抜ける。「美味しいです。なんだか、タコスに似てますね」「これハ、タコスですヨ。ライハラの家庭料理でス。本場の味だかラ、少し違ったように思えましたカ?」軽く前世の言葉を使ってみるが、流されてしまった。言及もしてこないし、ドミニカの表情も変わらない。「そうなんですね。以前食べた料
last updateLast Updated : 2026-04-09
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第267話

「ということで、無理でした……」再び馬車の中。私はイザベラとヤコブに深々と頭を下げた。私が顔を上げると、イザベラはため息をつく。「まあ、苦手そうなことだもんね。無理もないか……」「気にしないで下さい」ヤコブの方も優しく笑いかけてくれる。二人とも優しいが、申し訳ないことに変わりはない。私が疑問を提示して、その答えを結局見つけ出せなかったのだから。あまりに私が落ち込んでいるのが分かったのか、イザベラは私をぎゅっと抱きしめてくれた。慰める時はいつもこうだ。温かな体温に力が抜けていく。「あんまり無茶はしないの。あんたは昔っから、思いついたらすぐ動く時が多いけど、そんな必要ないの。私を心配させないでね」前世を思い出すと、確かに何度かそう言われた気がする。こうすればいいんじゃない? と発言して行動しては失敗して、落ち込んで。そのたびに優ちゃんが慰めてくれた。思慮深いタイプの彼女は私とは真逆で、しっかり考えてから動く。そんな落ち着いたところを、私は素直に尊敬していた。「ごめん……」「いいのいいの。で、どうする?」私から体を離したイザベラは、明るい表情でヤコブの方を見た。「私としては、ここまでアピールすればレスピナス嬢もリリアンナが転生者だって気付くと思うのよ。それでも動かないということは、彼女は転生者ではないか、他の転生者と交流する気がないか。その二択だと思う」「そうですね。それなら、これ以上動いても無駄です」さすが頭脳派の二人。ちゃんと次のことを考えてくれていたようである。「お二人は、もう外して構いませんよ。後は私が調べておきます。何か分かったら、また報告しますから」ヤコブ一人で大丈夫かと首を傾げたが、何か思い当たることがあるのだろう。メガネをくいっと上げる彼の目は
last updateLast Updated : 2026-04-09
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第268話

きっかけは、二週間前。学園から帰宅するとお父様に呼び出された私は、この封筒を差し出された。「……お父様、これは何ですか?」お父様も困っているのだろう。頭を抱えている。その様子を見ただけで、何か厄介な話であるというのは想像できた。封筒の差出人はギデオン・ナハル・ザハド。確か、ライハラ連合国の高位貴族に使われるミドルネームだったはずだ。そんな縁もゆかりもないはずの人間が、何故私に手紙を?再度お父様を見つめると、お父様は冷や汗をかいていた。すごく申し訳なさそうな顔をしているのは見れば分かる。「……リリーへの求婚状、だ」「は!?」突然のことに声が漏れた。だって、私への求婚は全部断ってもらうようにお父様に頼んでいたはずだ。それがどうしてこうなるのか分からない。「ライハラ連合国の侯爵の息子でね。どーしても、どーしても! って言ってきかないんだ……外交のこともあるし、今ライハラで一、二を争う権力者でもあるから断れなくてな……」確かに、ちょうど良い年頃の隣国同士の高位貴族の男女。お互いに婚約者がいないのなら、白羽の矢が立つのも当然だ。「ひとまず、返事だけでももらえると助かる。遠回しになんとか断れるといいのだが……」公爵であるお父様がこうなるのだから、余程難しいのだろう。嫌々ながらも、私は手紙を受け取るしかなかった。 そんなこんなで、現在。嫌な物だから見たくないと放置した結果、二週間も経ってしまった。もうこれが断りの返事と思ってはもらえないだろうか。まあ、希望的観測すぎるか。「……いっそ燃やすか」シヴァの指先から炎が吹き出す。さすがにそれは良くない
last updateLast Updated : 2026-04-09
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第269話

ドミニカの言葉もあるし、何かあっても大丈夫かもしれない。そう思い、その日の夜に私は例の封筒を開けてみることにした。部屋にシヴァも呼び、二人で中を確認してみる。【リリアンナ・モンリーズ公爵令嬢へはじめまして。私はライハラ連合国のギデオン・ナハル・ザハドと申します。父の勧めで急にこんなお話になってしまい申し訳ありません。せっかくの機会ですし、一度お会いできませんか?一人身同士、何か相談に乗れることもあるかもしれません。お待ちしております。ギデオン・ナハル・ザハド】一通目はこんな感じで、至って普通だ。一息つくと、つい先日来たもう一通の手紙を開けてみた。【リリアンナ・モンリーズ公爵令嬢へこんにちは。お返事もないのに再度手紙をお送りしてしまい申し訳ありません。ただ、仕事の関係で現在リヒハイム王国の王都に来ていることだけお伝えしたいと思い連絡しました。今後しばらく滞在しますので、よろしければ、ぜひ遊びに来て下さい。ギデオン・ナハル・ザハド】下の方には住所も書かれている。ギデオンがこの国の王都に来ていることに、正直驚いてしまった。まさかここまで話が早いとは。「……え? これ、会いに来いってことよね? 急すぎない⁉」「落ち着け、仕事で来たって言ってるだろ」シヴァは一見冷静そうだが、今にも手紙を握りつぶしそうな気迫がある。彼の方こそ落ち着いて欲しい。このままでは、その内近くまで来たからと会いに来そうだ。何があっても出くわさないようにしないと。バルバラやルネにお願いしておかないといけない。ギデオンが来ても、私は留守!居留守を使い続けるのだ!「とりあえず、絶対会わない! 本人が断固拒否してるってアピールを続けるの!」拳を握って、私はそう決意した。
last updateLast Updated : 2026-04-09
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第270話

『ちょっと! 砂糖やミルク入れるなんて邪道よ邪道!』『でも、苦いって。僕には無理そうで……』『何言ってるの? コーヒーには苦みの少ないものだってあるんだからね! そんなに言うなら、絶対貴方が納得するコーヒーを入れてあげるから、それまでコーヒー禁止!』『それはそれで、どうなんだよ。飲めれば十分じゃないか』『いいの! 私の我儘聞いてよ』『はいはい』 そんな会話を思い出す。ヤコブからすれば、もうずっと昔の懐かしい記憶だ。「……見つけたとして、どうなんでしょうね」長い黒髪。色の白い肌にモデルのような整った容姿。ポーカーフェイスが得意で、人を引き付ける魅力があって、頭も良い知識人。実際は我が儘なお姫様気質だったが、そんな所も可愛く愛おしいと思っていた。目を閉じ、思い出そうとしてももう彼女の顔すらうろ覚えだ。人間は視覚から忘れていくというのは本当かもしれない。しかし、声ははっきりと記憶の中にあった。「……僕には、彼女に合わせる顔がないのに」少し寂しそうに呟き、ヤコブは本を閉じた。  ***  いたって平穏に日々は過ぎていく。あれから一週間は経つが、ヤコブは何も言ってこない。私も手紙の返事はしないままでいた。そんな中でも小さな変化は生まれてくるもので、それはメロディの発言から始まった。「あ、あの! 少しお話良いですか⁉」いつもの王族専用食堂での食事後。解散の流れになると、メロディが私達に声をかけてきた。どうやら女性陣と話がしたいらしい。レオナルドは気を利かせて、他の男性陣をそそくさと外に追いやってくれた。残った私達は、従者に
last updateLast Updated : 2026-04-09
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