All Chapters of 女装メイドと婚約破棄された悪役令嬢は、幸せな結末を目指します: Chapter 281 - Chapter 290

354 Chapters

第281話

ロミーナがアマトリアン辺境伯夫妻から大量の書類を強奪して、もう5ヶ月。その間、大量の証拠を改め直したり整理したりしているとは聞いていた。確かに、言われてみれば動きが遅い。きっと色々忙しいのだろうとか思っていたが、そうではなかったということだろうか。「ロミーナ嬢のご両親と裏で繋がっていた人物が、どうやらライハラ連合国内にいたそうなの。アレクサンド殿下が調査中、私の父がそれを知った」ドミニカは不敵に微笑む。それはゲームのリリアンナが裏で見せていた表情に似ている。「それで、こうしてアレクサンド殿下と繋がるために私が派遣されてきたというわけね」足を組みながら、自信ありげに微笑む姿は美しい。さすがは元々大人だっただけのことはある。精神的にしっかりしていて落ち着いているようだ。「……だから、アレクサンド様の婚約者候補という名目で近付いたと?」イザベラの言葉に、ドミニカは頷く。「父が手配したようだったけど、驚いたわ。まさか婚約者候補扱いされるなんて。でも、安心して。取ったりしないから」ドミニカに軽くウインクされると、イザベラは顔を赤くした。照れつつも、安心したらしい。今の彼女にとっては、アレクサンドと婚約できるかが最重要なのだから。「まあ、色々と判明して良かったです。これで謎が解けました」本当に、ドミニカが出てきた時はどうなるかと心配していたのだ。アレクサンドの婚約者候補に挙がるし、私と無理に仲良くなろうとするし、学園中の人々を虜にしているし。本当に、何がしたいんだろうかと真意が測れず怖かった。ほっと安心してため息をつくと、ふとあることを思い出す。ドミニカは続編のヒロイン。シヴァは続編の攻略対象者だ。二人は会っても大丈夫なのかと心配していたことを思い出す。「……あの。それじゃあ、レスピナス嬢はシヴァと会っても大丈夫ですか?」
last updateLast Updated : 2026-04-11
Read more

第282話

「お嬢様!」嫌な想像をしていると、すぐ傍でシヴァの声がした。慌てて目を開けてそちらを見ようとする。深いテラコッタ色の瞳と目が合った。滑らかな褐色の肌に、黒檀のような真っ黒な髪。緩くウェーブした髪をかき上げており、微笑を浮かべる姿はどことなく色気がある。まっすぐ私を見つめるその男が、どうやら私を抱き留めていたらしい。腰に男の手が回される。一気に鳥肌が立ったのが分かった。目の前の男は、確かに色気のあるハンサムな男性だ。だが、どうしようもない嫌悪感が沸き上がってくる。「離して下さい!」恐怖で固まっていると、男の後ろから手が伸びる。私を男から奪い去り、抱きしめてくれたのはシヴァだった。彼は男に向き直り、私を庇いながら相手を睨む。「どうか立場をお考え下さい。急にこんなことをされれば、恐ろしいですし迷惑です」「君はそんなことを、俺に言える身分なのかい?」シヴァに抱き着いたまま、怖くて男の顔が見られない。身分のことを言われると弱い。シヴァは今はただのメイドに過ぎないのだから。彼が表立ってこの男と対峙して、何かあったら。身の危険が及ぶのはシヴァの方だ。恐怖で震える体を落ち着かせ、なんとかシヴァから離れて顔を上げた。私が睨みつけると、男はにやりと不敵な笑みを浮かべる。「彼女は私の代弁をしたまでのこと。身分のことを言うのなら、貴方の方こそ私をどうこうできる立場なのですか?」「これはなかなか手厳しい。ご挨拶が遅れたことは謝罪します」わざとらしく肩をすくめると、男は恭しく礼をしてみせた。「手紙は送らせて頂きましたよね?」その言葉で、一気にあの手紙のことを思い出す。そういえば、この前の手紙ですぐ近くに来たと言っていた。でも、私は無視を続けていたし、すっかりこの男の存在を忘れていたのだ。 
last updateLast Updated : 2026-04-11
Read more

第283話

「お父様は?」「早馬を出しました。しかし、移動時間を考えると後一時間はかかってしまうかも……」ルネと会った時点で早馬を出したとして、王宮での仕事を切り上げて駆け付けるのには時間がかかる。本当に、面倒なタイミングに押しかけてくれたものだ。「お嬢様の分の晩餐の準備はできています。念のためお客様が数人増えても大丈夫なよう、晩餐の準備はできていますが」「彼を晩餐に呼ばなくて良いわ。そんな資格ないもの」急に押しかけてきた礼儀のない人物を、悠長に晩餐会に呼ぶ必要などない。全て客間のみの対応で済ませる。きっとこういう対応も、次期後継者として試されているのだ。「紅茶はお出しして良いけど、茶菓子はいらないわ」「すでに執事長がそう手配しています」「さすが」ルネはよく分かっている。とりあえず、お父様が来るまでの間にギデオンと客間で話をする。できればさっさとお帰り頂くか、お父様が来てくれるまで客間に引き留める。決して、客間以外の屋敷内をウロウロさせない。そう心に決めて、私はいつもよりも圧倒的に露出の少ないドレスに着替えた。しかし、布の量は多くデザインは派手だ。色も黒地に赤いラインや刺繍が入っていて毒々しい。髪も化粧も必要以上に派手に飾り付けてもらった。「これでいいわ。お父様が来たら、すぐに客間に連れてきて」「「はい」」部屋を出る私をシヴァがエスコートしてくれる。バルバラも私に向かって深くお辞儀をしてくれた。一人で嫌な客の相手をする。そんなことが私にできるのだろうか?  ***  「お待たせしました」声をかけて中に入ると、ギデオンはにこやかに微笑み立ち上がった。私の姿を見て、一瞬驚いた顔をする。
last updateLast Updated : 2026-04-11
Read more

第284話

不穏な言葉に体が凍り付く。振り返って見ると、ギデオンは不敵な笑みを浮かべていた。「……どういう、意味ですか?」「いえ、別に? ただ、せっかく良いお話なのに断ってしまって良いものなのかと」何事もなかったかのように笑うと、彼は正面のソファに座り直した。何がしたいのか、何を考えているのかも分からなくて怖い。震える体を押さえて、私はギデオンを正面から睨み返した。「残念ながら、私には過ぎたお話ですわ。ザハト様ほどのお方でしたら、もっと良縁があるのでしょう?」「今、他に良い方でも?」遠回しに断っているのに、随分と真っ向勝負で聞いてくる。どう返事をすべきかと、一瞬視線を逸らして考えてしまった。はっきり言えば、相手はシヴァに決まっている。しかし、そんなこと言えやしない。先程の態度から見ても、彼は地位の低い者を見下した言動を取っている。邪魔者が地位の低いシヴァであると分かれば、徹底的に排除するだろう。そんなことさせない。私が、シヴァを守らないと。「……父が良縁を探しているところです。学園に仲の良い方もいますし」「そうですか」紅茶に口付けると、ギデオンはにっこり笑った。「なら、私でも良いわけだ」 絶対嫌だ。 そんな言葉を言えるわけもなく、必死に飲み込んだ。ポーカーフェイスを作って微笑み返す。あえて返事はしなかった。そのまま沈黙が続く。「……弱りましたね。どうすれば、振り向いていただけるのか」変わらず沈黙を続ける。困ったように頭を掻き、ギデオンはソファに深く座り込む。「そうだ。何かプレゼントでも贈りましょう」「けっこうです。ザハト様のお手を煩わせるわけにはいきませんから」
last updateLast Updated : 2026-04-11
Read more

第285話

「お待たせしました。ザハト殿」ドアが開き、お父様が顔を出す。余程急いで帰って来たのか、少し髪型が崩れている。朗らかな笑顔を浮かべてはいるが、その瞳は冷たくギデオンを射抜いていた。お父様の顔を見ると、安心して泣きそうになる。私の表情に気付いたのか、お父様はすぐに私の隣に座った。「お疲れ様、リリー。学園の後なのにお客様の相手をして疲れただろう。休んできなさい」「はい、お父様」本当に、有難い助けだ。ソファから立ち上がり小走りでドアへ向かう。廊下では心配そうにこちらを見ているシヴァやルネの姿が見えた。彼らを見て、ほっと息をつく。礼儀として部屋を出る前に、ギデオンに会釈をした。最期に目があった彼は、変わらず不敵に微笑んでいた。  ***  「大丈夫か?」「うん……」シヴァに部屋まで送ってもらいながら、私は心ここにあらずと言った状態だった。後継者教育はしっかり受けてきた。イザベラともアレクサンドとも仲は良いし、そういう後ろ盾はある。学園の成績だって上の上だし、決して自分が劣っているわけではない。しかし、結局一人身でい続けると言うことは孤独なのだ。シヴァを傍に置きたかったら、そのために自分が前に出るしかない。貴族社会で生きていくのは私の役目になるのだから。イザベラもマルグリータもメロディも。そして、今後どうなるか分からないがロミーナもきっと、傍には一緒に貴族社会を渡り歩くパートナーがいる。私にはそんな人はいない。お父様がその役目を負ってくれたとしても、先にいなくなるのはお父様の方だ。そんな将来を考えたくないが、お父様がいなくなれば私はどうしたら良いのだろう。ギデオンという明確な脅威を見せつ
last updateLast Updated : 2026-04-11
Read more

第286話

周囲の様子を見つつ、後ろを振り返ると小声で話をする。「あの、ちょっと求婚とかの件で悩んでいまして……」「まあ、リリアンナ嬢は今フリーですから、そういうこともあるでしょうね」「私はシヴァと……あれなので、結婚なんかしないとお父様にも言って断ってもらってたんです」改めて話すのもこっぱずかしい。私の調子に合わせて、ヤコブも小声でひそひそ話してくれるので助かる。「それが、無理に求婚し続ける相手が出てきて。しかも他国の偉い方らしくて、お父様もはっきり断り続けられないんです」「ああ……政治的な物が絡むと厄介ですね」「そうなんです。お相手は政略結婚でも構わない。他に男を作っても構わないからと言っていて……」「それは」何かを言おうとして、ヤコブは口を閉ざす。「改めて言われると、私は今後一人で貴族社会でやっていかないといけないんだなって。頼りになるパートナーなしに、本当に一人でやっていけるのかなって。身分差があるから、しょうがないのは分かっているんです。でも……」再びため息をつく。こんなにことで悩んだことは今まで一度も無い。高校生だった時は、漠然とこのまま皆と同じように勉強して、大学に進学して、普通にどこかの会社に勤めるものだと思っていた。恋人がいてもいなくても、やっていけてしまうのが現代社会だ。男女平等を謳い、なるべく性差が出ないようにしてくれていたから、それで生活は送れた。本当に、自分の生活のことだけ考えておけば良かったのだ。それが、ここでは全く違う。一人一人進む道も違うし、将来も違う。特に私は上の立場にいるせいで、その重圧も責任も桁違いなのだ。そんな重荷を背負うだけでも不安なのに、そこにあのギデオンのような男性の相手も必要になる。男尊女卑の傾向が残り、身分が物を言うこの社会で、女性と言うの
last updateLast Updated : 2026-04-11
Read more

第287話

とりあえず、ギデオンのことはヤコブに任せる。そう決めると少し心が軽くなった。「何か良いことがあったのか?」帰りの馬車に戻ると、私の表情が明るくなっていたことに気付いたのだろう。そうシヴァが聞いてくる。「うん。ちょっとね。ヤコブに相談したら、ザハト様について色々調べてくれるって」私がそう返事をすると、シヴァの表情が固まる。何か悪いことでも言ってしまったのかと、私は慌てて彼の手を取った。「え? シヴァ、どうしたの?」「……そういう相談を」まっすぐに彼の顔を見つめ、彼の手を握っても、シヴァの険しい表情は変わらない。 「なんで、オレにしなかったんだ?」 そう言われて気付く。いつも何かがあるとシヴァに相談していた。ヤコブのことも、イザベラのことも、ロミーナのことも。それなのに、今回は何も言わなかった。言えるわけがない。一瞬でも、ギデオンと結婚してしまえば自分が楽になるかもなんて。そんな不誠実なことを考えてしまったことを。「いつも、ヘルトル様やイザベラ嬢と何か内緒話をして、何をしてるんだろうとは思ってたんだ」そうだ。いつも何か話があると、私達はこの馬車を利用していた。そんな時でも、何も言わないでシヴァは見守ってくれていた。そうやって、私を信頼して待ってくれていたのだ。「オレよりも、ヘルトル様の方が頼りになるか?」「違う!」そんなことはない。シヴァ以上に頼りになる人なんていない。私がこんなに自由気ままに動いているのも、どうせ何かあればシヴァが助けてくれるだろうと。常に傍にいて守ってくれるだろうからと、そう安心しているからだ。それを、どう言えば伝わるだろう。「シヴァのことは一番信用してるし、頼りにしてるよ! で
last updateLast Updated : 2026-04-12
Read more

第288話

ギデオン・ナハル・ザハド。ライハラ連合国の首長国の1つ、サフィール貿易国の侯爵家次男。21歳。近年海洋貿易が上手くいき、一気に勢力を増している。上昇志向が強いことでも有名だ。長男が次期侯爵であり、次男のギデオンには商団の1つを任せることになっていたと聞いている。「このまま商団で力を付けていく算段だと思っていましたガ、そうでもないのかもしれませんネ」「まあ、きな臭いのは確かです。お気を付けて」「ありがとうございます」そうこうしている内に人が増え、結局ドミニカは他の人々に呼ばれて行ってしまった。残された私は、再びシヴァのことを思い出してため息をつく。「情報が得られた割には元気がないですね。昨日より落ち込んでいるようですが」「シヴァとちょっと……仲違いを」そうなのだ。小さい時はちょっとした諍い程度ならあった。大きくなって、ここ数年はこんなトラブルなどなかったのだ。それが、今回こんなにシヴァと気まずくなってしまうなんて、想像もしていなかった。「シヴァはシヴァで私を心配してくれていたみたいで。ザハト様についても色々調べてくれていたらしいんです。それなのに、ヤコブに相談したって言ったら拗ねてしまって」「ああ、嫉妬ですか」嫉妬……シヴァが、嫉妬?さらっと凄いことを言ってくれる。「嫉妬……ですか」「別の男を頼られて、拗ねてしまったならそういうことでしょう」そう考えると可愛いものだが、今の関係はよろしくない。「そういうのって、どうすれば?」「まあ、時間が解決するでしょう」男女経験皆無の私には、そういうときの対処なんて想像もできない。ヤコブに聞いてみるも、彼はしらっとそう答えた。時間が解決って……そんなもので良いん
last updateLast Updated : 2026-04-12
Read more

第289話

我ながら子供っぽいことをしたとは思う。だが、我慢することはできなかった。ずっとリリーにとって自分が一番だという自負があったし、今までがずっとそうだった。ヘルトルとかいう男と2人で話をしたり、そこにイザベラ嬢が混じることもあったが、いつも帰りの馬車ではその内容を教えてくれた。何かあった時のためにと、傍に控えさせてくれていた。一番信頼しているのはオレなのだと、ずっとリリーは伝えてくれていたんだ。困ったことがあれば相談してくれていたし、ずっとオレはそれに応え続けていたつもりだった。そんなリリーが、オレを頼らなかった。よりによって、別の男を頼った。そんなことは始めてで、凄く動揺したのは確かだ。それによる不機嫌を隠しきれなかったし、あたってしまったことは本当に悪かったと思っている。すぐに正気には戻っていたが、すっかり落ち込んでしまっていたリリーにどう声をかけたら良いか分からなかった。そこからの挽回の仕方を、オレは知らない。 「おはようございます」そうして仲違いしてから2日後。朝早くに、ヘルトル様がオレに声をかけてきた。というか、リリーを教室に送った帰りに呼び止められたのだ。絶対オレを待っていたに決まっている。彼と話をしたことはない。何の用か、全く見当がつかなかった。不審そうな顔をしていたのが伝わったのか、彼は警戒を解くように笑顔のままヒラヒラと手を振る。「警戒しないで下さい。リリアンナ嬢の件について、ちょっとお伝えしたいことがあったんですよ」リリーについての話を聞かないわけにはいかない。オレは頷くと、彼に付いて行った。 着いた場所は中庭の端だった。壁と木々に阻まれて、覗き込まない限りは周囲に見られることは無い。「……で、話とは何ですか?」「先日、リリアンナ嬢が私に相談
last updateLast Updated : 2026-04-12
Read more

第290話

部屋に残されたギデオンは、出ていったリリアンナの背中をずっと見送っていた。「やれやれ。逃げられてしまったか」リリアンナが見えなくなると、ギデオンは部屋に残されたメイドに視線を移す。この糞生意気な奴をどうしてやろうかと考え、顎を撫でた。女にしては、やけに背の高いメイドだ。長い前髪で顔立ちはよく見えないが、決して不細工では無いのだろう。黒髪の下から覗く白い肌はきめ細やかで、顎もシャープだ。細身の体形で、よく目を引く容姿をしている。「では、ザハト様。お帰りはあちらです」「本当に、よくもやってくれたな君は。吹けば飛ぶような立場の癖に」脅しをかけてみるが、メイドは動じない。ギデオンに頭を下げたまま、ずっと玄関を指し示していた。「まあ、いいさ。手はある。俺がこの家の婿養子にでもなれば、そんな生意気な態度も取れないだろ。真っ先にクビにしてやるよ」そこまで言ってもメイドは動かない。反応が無いことで興味を失ったのか、ギデオンはため息をつくとドアに向かって歩き始めた。玄関から出るまで、メイドはぴったりと後をついてくる。玄関ホールに着き、ギデオンが馬車に乗り込むまでメイドはずっとギデオンを監視していた。本当は、屋敷をこっそり探索してやろうと思っていたギデオンだが、こうして監視が常につくなら動くこともできない。小さく舌打ちをすると、しぶしぶ馬車に乗り屋敷を後にする。あのメイドが、長い前髪の奥でずっと自分を睨みつけていることには気づいていた。「……あのメイドについて調べろ」「は?」馬車で待機していたギデオンの従者が、徐々に遠ざかる屋敷をずっと見つめているギデオンの言葉に不思議そうな声を出す。そんな従者の反応に、ギデオンは不機嫌そうに足を組み眉を顰めた。「あいつは邪魔だ。排除するに足る材料を手に入れる。文句があるのか?」「い、いえ。分かりました。お名前などは分かります
last updateLast Updated : 2026-04-12
Read more
PREV
1
...
2728293031
...
36
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status