「求婚状をむやみやたらに持ち歩くものではないのよ。しかも、身内以外に見せるなんて……」そう言われてようやくちょっと理解したのか、今度はメロディが硬直した。顔を真っ赤にしつつ、気まずそうに封筒をポケットに仕舞い直す。「冷静に考えればそうでしたね……申し訳ありません」「で、それがどうしたの?」気を取り直して、呆れ顔のままイザベラが尋ねる。マルグリータは二人の間に挟まれて困った顔をしていた。「……私なんかが、公爵子息と結婚なんて、本当に良いのかと思って」ああ、そういうことか。ぽつりと呟いた言葉に納得した。メロディは元々庶民。一昨年頃から貴族について学び始めたばかりのひよっこだ。その上、家格は伯爵家。三男であるとはいえ、公爵子息であるステファンは圧倒的な格上だ。ただ片想いするだけならば、それで良かった。お互いに会話しているだけで、幸せで楽しかったことだろう。そんなメロディの前に、現実という壁が立ちはだかっていることを自覚したところなのだ。「私よりもステファン様は格上で、しかもただの伯爵令嬢ではなく元は庶民だった……愛妾の娘です」俯きながら、メロディは言葉を口にする。こうして現実と向き合って悩んでいるからこそ、私達に話を聞いてもらいたかったのだろう。「ステファン様なら、他にも素敵な人がいたはずです。例えば、リリアンナ嬢とか……婚約解消して、今は空いているじゃないですか」一瞬、イザベラとマルグリータの視線が向く。そんな二人に、私は必死に首を横に振って見せた。ステファンは正直、全く好みではないのだ。しかも、私にはシヴァがいる。冗談ではない。とんだ風評被害だ。とはいえ、シヴァとのことはイザベラとヤコブしか知らないの
Last Updated : 2026-04-10 Read more