All Chapters of 女装メイドと婚約破棄された悪役令嬢は、幸せな結末を目指します: Chapter 271 - Chapter 280

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第271話

「求婚状をむやみやたらに持ち歩くものではないのよ。しかも、身内以外に見せるなんて……」そう言われてようやくちょっと理解したのか、今度はメロディが硬直した。顔を真っ赤にしつつ、気まずそうに封筒をポケットに仕舞い直す。「冷静に考えればそうでしたね……申し訳ありません」「で、それがどうしたの?」気を取り直して、呆れ顔のままイザベラが尋ねる。マルグリータは二人の間に挟まれて困った顔をしていた。「……私なんかが、公爵子息と結婚なんて、本当に良いのかと思って」ああ、そういうことか。ぽつりと呟いた言葉に納得した。メロディは元々庶民。一昨年頃から貴族について学び始めたばかりのひよっこだ。その上、家格は伯爵家。三男であるとはいえ、公爵子息であるステファンは圧倒的な格上だ。ただ片想いするだけならば、それで良かった。お互いに会話しているだけで、幸せで楽しかったことだろう。そんなメロディの前に、現実という壁が立ちはだかっていることを自覚したところなのだ。「私よりもステファン様は格上で、しかもただの伯爵令嬢ではなく元は庶民だった……愛妾の娘です」俯きながら、メロディは言葉を口にする。こうして現実と向き合って悩んでいるからこそ、私達に話を聞いてもらいたかったのだろう。「ステファン様なら、他にも素敵な人がいたはずです。例えば、リリアンナ嬢とか……婚約解消して、今は空いているじゃないですか」一瞬、イザベラとマルグリータの視線が向く。そんな二人に、私は必死に首を横に振って見せた。ステファンは正直、全く好みではないのだ。しかも、私にはシヴァがいる。冗談ではない。とんだ風評被害だ。とはいえ、シヴァとのことはイザベラとヤコブしか知らないの
last updateLast Updated : 2026-04-10
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第272話

「ステファン様を出して下さいますか?」あれから数時間後。学園が終わって、今は放課後である。私とイザベラ、メロディ、マルグリータの四人は、王城に来ていた。先頭に立つのはイザベラ。彼女は腕組みをして仁王立ち状態のまま、アレクサンドの前に立っていた。急に執務室に現れた私達を見て、アレクサンドは最初目を丸くして驚いていたが、険しい表情をしているイザベラを見て顔をほころばせる。何故、この状況で喜んでいるのかはよく分からない。「今は書類を届けに出かけているよ。急にどうしたんだい?」「どうしたもこうしたもありません!」イザベラの怒りはもっともである。陰ながら応援していた友人がようやく結ばれると思ったら、告白すらされていないなんて、そんなの悲しすぎる。ゲームのヒロインであるメロディなんて、誰とくっついても彼女にとっては推しカプになるのに、これではがっかりだ。そんなオタク心も8割ほど占めているかもしれない。「あんなに関わる機会があったのに、一度も愛の告白がないまま求婚状だけ送るなんて! アレクサンド様は冷たいと思いませんの⁉」「なるほど。イザベラは求婚する際にちゃんと告白して欲しいんだね。善処するよ」「そう言う話ではありません! 私はメロディのことを」「うんうん。その話ってことは分かっているよ」……なんだろう。この噛み合っているような、いないようなやりとりは。まあ、要するにいちゃついているということだろう。気にしないようにと、マルグリータとメロディには目で合図を送った。マルグリータは色々察したのか、張り付けた笑顔のまま後ろに下がっている。メロディはこれで良いのかとあわあわしていたが、私に視線を向けられてほっとしていた。分かってくれて何よりである。 「失礼します」 そんな騒ぎの中、執務室のドア
last updateLast Updated : 2026-04-10
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第273話

……これは、どうしたら良いのだろう。「あの」頭の中は真っ白で、どうすればいいのか分からない。「あの、ステファン様」とりあえず彼女を連れて出て来てしまったが、この後どこに行けば良いのか。 「ステファン様!」 大きな声に、ハッとして動きが止まる。後ろを見ると、メロディがこちらを見ていた。「……手、痛いです」確かに強く掴んでいた。慌てて手を離す。離れた手を、メロディは少し痛そうにさすっていた。申し訳ない。「……すまない」「いえ、大丈夫です」気付けば、人気のない裏門へ向かう廊下まで来ていた。夢中で歩いていたせいだろう。この近くで二人で話せるとしたら。「……こっちだ」 向かった場所は、騎士団の休憩所。走り込みなどの練習中の怪我人や、一時的な休憩場所や避難所として王城内の各所に設置されている。基本的に、用がない限り人が来ることは無い。中に入ると、さすがに男所帯だからか手入れも適当で汚れている。こんな場所に座らせるのも嫌なので、上着をベンチの上にかけてメロディに座るよう促した。座ったメロディの隣に、俺も腰かける。何から言えばいいのか分からない。「ステファン様、急に押しかけて申し訳ありません。お仕事中なのに」「いや、問題ない」謝るのは自分の方だ。確かに、ナンニー二嬢に言われて気付いた。一人で考えて、先走って動いて、用件だけ突きつけて、何も言わない。いつもの悪い癖だ。「謝るのは俺の方だ。何も言わなくて、申し訳なかった」「何か考えがあるのは分かってますから、大丈夫です」
last updateLast Updated : 2026-04-10
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第274話

まだロミーナと会ってすらいない。辺境伯夫妻が俺と面会した時に、ぼそっとそう言われたのだ。ああ、この人たちは俺を気に入ってはいないんだ。その事実にすぐに気付いてしまった。 その後、辺境伯夫妻に連れられてやって来たロミーナと会った。辺境伯夫妻とは似ても似つかない。彼女は、他の貴族令嬢とはどこか違う。肌が小麦色に焼けた、明るそうな少女だった。「はじめマしテ、ステファン様」片言の言葉。太陽のような明るい笑顔。あの時の彼女は、全くどこか別世界の住人のようだった。しかし、その表情も暗くなるのは早かった。会うたびに自分の両親を見てはビクビクして、俺を見るたびに悪態をつく親を制止しようとするたびに怒鳴られていた。そんなロミーナに、幼い俺は何もできなかった。何をしてあげればいいかも分からなかった。ロミーナを嫌いだったわけじゃない。本来はあの初対面の時のように、明るく優しい少女であることは分かっていた。それでも、物理的に守ることに長けた騎士の家系である俺にとって、精神的に守るというのはどうしてあげればいいのか、全く見当もつかなかったのだ。むやみに近づけば、俺自身もあの辺境伯夫妻に傷つけられるからという防衛本能もあったかもしれない。そうして無駄な日々だけが過ぎた。結局、ロミーナのことは助けられないまま。虚しさを埋めるように、騎士としての強さだけを磨いていた。 学園卒業まで後一年。ロミーナとの結婚まで後一年。そんなある時、メロディと出会った。  ***  きっかけは、アレクサンド殿下に言われて休日に町の調査に出かけたこと。帯刀の許可を得て、俺は町を歩いていた。「可哀想じゃない
last updateLast Updated : 2026-04-10
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第275話

そうして過去を清算して、今なんとかメロディの前に立っている。笑い終えたメロディは、まっすぐに俺を見ていた。今、ちゃんと言わなければならない。緊張で口内がねばつくが、俺は何とか口を開いた。「メロディ・ルベルゾン嬢」「はい」名前を呼ぶと、小さく頷く。そんな彼女の手を取り、俺は地面に膝をついた。本当は、ちゃんと環境を整えてから言いたかった。綺麗な店を貸し切って、ちゃんと花束も指輪も用意して。そうやって考えている割には、いつも俺は行動が遅い。そうしてゆっくりしていれば、またメロディを不安にさせてしまうだろう。 「俺と結婚して欲しい。どうか、求婚を受けてくれ」 声は、震えていなかったように思う。どういう反応が返ってくるか分からず、じっとメロディの顔を凝視してしまう。メロディは頬を染めて目を見開いていたが、ゆっくりと瞬きをしながら、柔らかく微笑んだ。「もちろんです。その言葉を、ずっと待ってました」その返事に、時間が止まったような気がした。どう反応すればいいか分からない。見ていられなくて俯く俺に、メロディは抱き着いた。「こういうのは早く言って下さいね。まずは何でも私に相談すること。約束して下さい」「ああ……分かった」彼女の体温に包まれながら、そう囁かれる。正直、あまり考えるのは得意ではない。でも、彼女ならば手伝ってくれる。これから隣で支え合っていけるだろうと、そう思った。  ***  「……ということで、解決しました。どうもお騒がせしました」「迷惑をかけて申し訳ない」隣り合って並んだメロディとステファンが戻って
last updateLast Updated : 2026-04-10
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第276話

アレクサンドの言葉に、メロディは首を傾げる。「君も魔力量が多くて、優秀だと報告が上がっていてね。王宮魔導士に入るのも、悪くないんじゃないかな」「王宮魔導士!? 私が!?」メロディは目を見開いて驚く。正直、私も驚いた。ゲームではレオナルドとアレクサンドしか最後までプレイしていない。両方とも王族との結婚エンドだったため、普通に王妃や王弟妃になって話は終わる。それが、ステファンでは全く違う方に転ぶのだろうか。イザベラやヤコブに、ぜひ聞いてみたいものだ。……イザベラの方は、今は動けないが。「ああ。せっかくなら夫婦で王宮勤めをしてみると良い。歓迎するよ」アレクサンドの言葉に、メロディは目を輝かせている。確かに、彼女は元々ヒロイン。人のためになりたいという思いが強い。それが、国のために働かないかと言われ、自分の才能である魔法を評価されたのだ。喜ばないはずがない。後はステファンとルベルゾン伯爵からの許可が貰えれば大丈夫だ。ステファンと結婚するなら、本家を継ぐわけでもないので、女主人が常に家にいなければいけないという縛りもない。私は魔力が強くても、モンリーズ家公爵家の跡継ぎなので、メロディのような一般の王宮勤めは難しい。勤めるにしても、父のような要職になる。「私が……王宮魔導士……」「俺は構わない。一緒に出勤するのも良いな」メロディの横でステファンが頷く。そんな彼を見て、心底嬉しそうにメロディは笑っていた。手と手を取り合って笑う姿に、ちゃんと仲直りができたんだと分かって安心する。こうしてお互いの意見を素直に言い合えれば、今後こういうトラブルもないだろう。いつの間にかイザベラが目を輝かせながら二人の様子を眺めていたので、視線に気づいたアレクサンドが目隠ししていた。あちこち
last updateLast Updated : 2026-04-10
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第277話

手袋を捨てる仕草は荒々しく、今まで人前で見せていた淑やかな様子とは真逆のイメージだ。小さく舌打ちすると、彼女は机の引き出しから替えの手袋を取り出して嵌め直す。神経質にも見えるその仕草には、覚えがあった。勘違いなのだろうか。だが、どこか確信めいたものも感じているのだ。窓を背にして、人気のない廊下に座り込む。もうすっかり薄暗くなっており、オレンジ色の夕焼けが窓から差し込んでいた。漠然と頭を悩ませながら、ふとリリアンナ嬢との会話を思い出す。 イザベラ嬢と一緒に、自分たちは死後この世界に来たと話した後のことだ。「死後の世界があるというのなら、きっとここは地獄なんでしょうね」ぽつりと呟いた僕の言葉を聞いて、リリアンナ嬢は目を見開いた。「何……言ってるんですか? そんなこと」「ないわけないですよ。だって、会いたい人に会うことすらできないんですから。どうせなら、この世界に来るよりも、幽霊にでもなって妻の傍にいたかった」それが正直な気持ちだった。何故、自分はここにいるのか。ヤコブ・ヘルトルとなった時から、何度そう思ったか分からない。死んだら消えてなくなるか、幽霊にでもなって現世にとどまり続けるのだと思っていた。せめて幽霊になれたら、妻の傍にいられただろう。男嫌いで気丈で孤独な彼女は、きっと僕以外の人間と今後結婚することなどない。一人で生き続けて、一人で死んでいくのだ。そんな彼女の傍にい続けたかった。「天国ですよ」様々な後悔と自責の念に苛まれ俯く僕に、リリアンナ嬢はそう言った。「ここはきっと、無念だった上野さんの気持ちを晴らすための場所なんですよ」その笑顔は、佐藤穂香という人間だった時の笑顔なのだろうか。僕には分からない。「だって私はすごく幸せですから。きっといつか、上野さんの望む人に会えますよ」ただ
last updateLast Updated : 2026-04-10
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第278話

パタンとページを押さえていた手が離れ、本が閉じられる。彼女は驚いたように目を見開き、僕を見ていた。「もしくは、上野優里。上野明彦でも構いません」「なにを」そう口にしようとして、彼女は言葉を止めた。視線を彷徨わせ、答えに困っているようだ。ふと考えなおしたのか首を振ると、その表情はいつも通りの笑顔に戻っていた。「なにか海外のお話ですか? はじめて聞くお名前ですね」「そうですか。よくご存じだと思ったのですが」やっぱり、片言なのはわざとか。動揺しすぎて言葉が流暢になっている。笑いながら、僕は彼女に一歩近づいた。彼女は凍った笑顔のまま、その場から動けない。「葉山優里は、頭が良くて優しい女性で、皆から好かれていました。本当に対人関係が上手くて、どんな苦手な人相手でも笑顔で対応できるくらいの方でした」もう一歩近づく。彼女は後ろに退こうと椅子を引くが、椅子の背もたれが壁にぶつかる。「きっかけは、母親の浮気でしたね。男を作って家族を裏切り、親権を勝ち取って幼い優里を連れて行った。しかし、新しい男は優里にも手を出そうとして母親は嫉妬に狂う。母親は親権を父親に渡して、二度と現れなかった」そうして葉山優里は男嫌いになった。信じられたのは、愛する父親だけ。しかし、そんな素振りを見せて父親を心配させるわけにはいかない。それで、ずっと演じ続けた。男嫌いではないと。ちゃんと皆と仲良くできるのだと。そうして嘘をついて、演じ続けて、上手い具合に噛み合って、信じられないほど人の好意を得るのが上手くなった。「そんな彼女と幼馴染だった上野明彦は、ずっと彼女を気遣い続けました」はじめて出会った幼稚園の頃から、僕はずっと彼女に夢中だった。どんな悲劇にも耐えて、笑顔で健気にふるまう彼女を支えたかった。だからずっと、上手く距離を取っていた。自分の両親と共に父子家庭になっ
last updateLast Updated : 2026-04-10
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第279話

本当に、運がない。親しい人ほどいなくなってしまう優里の不運を、正直舐めていた。残してしまった彼女のことが気がかりで、後悔でしょうがなかった。そんな時に、この世界のヤコブ・ヘルトルになったのだ。それで探した。手を尽くした。もしかしたら、僕みたいにリリアンナ・モンリーズとして彼女が転生しているんじゃないかって。そう考えて、ここまできた。まあ、結果は違ったけど。まさか、こんな形で再会するなんてね。本当に、人生と言うのは予想外なことの連続だ。頭を下げながら、僕は苦笑した。と同時に、頭に衝撃が走る。その勢いで、僕の額は机に勢いよくぶつかった。「いてっ」「……上野明彦、ね」額を押さえながら顔を上げる。見れば、立ち上がったドミニカが手をチョップの形にしていた。僕の後頭部を襲ったのは、彼女の手だったようだ。 「世界で一番嫌いな名前だわ」 ドミニカは頬を膨らませてこちらを睨んでいた。テラコッタの瞳がまっすぐこちらを射抜く。その姿が懐かしくて、つい笑ってしまった。「一番好きな男はお父さんなんだよね」で、それ以外の男達は全員大嫌いだと。そう優里は僕に言っていたっけ。本当に、こんな彼女とよく結婚まで出来たものだ。苦笑している僕の胸に拳が飛んでくる。痛くはない。「あんたね、私がどんな気持ちでずっとずっと……」「ごめん。ごめんって」本来は自衛のためにと武術を習っていたはずだ。恐らく今でも何かしらの体術は学んでいるのだろう。手袋からしても、潔癖なまでの男嫌いは健在だ。それなのに、僕の胸を叩く拳は柔らかい。自分から男に触れてくるなんてこと、僕以外には絶
last updateLast Updated : 2026-04-11
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第280話

「「ええっ⁉」」 私とイザベラの声が重なった。そりゃそうだろう。驚くしかない。急に奥さんを紹介されたのだから。「今は妻じゃないでしょ」「なってくれないの?」「……」ヤコブに当たり前のように言われて、再びドミニカは顔を背ける。二人は当たり前のように会話しているが、私とイザベラはこの状況をすぐに飲み込むことができない。「あ、あの……」先に手を上げたのはイザベラだった。「とりあえず、状況を一から説明してもらっても?」 一通り話を聞いて、私とイザベラは脱力した。思い返せば、そうなるヒントはあったのだ。優里さんは、ドミニカに転生後ライハラ連合国で過ごした。その内に、隣のリヒハイム王国の話を聞いたのだと言う。前世で上野さんから、ゲームの話を伝え聞いてはいた。ちゃんと真面目に聞いてなかったのでうろ覚えではあったが、アレクサンド第一王子と、その婚約者のリリアンナ公爵令嬢。その名前を聞いて気付いたらしい。この世界が、夫が作っていたゲームの世界ではないかと。そして、この国に来るために父親を説得した。まあ、前世が薬剤師だった繋がりで研究者をしていたので、留学の許可をもらうのは簡単だったらしい。優里さんが覚えていたのは、リリアンナの名前と、彼女が自分を模して作られたということだけ。それなのに会ってみれば、イメージと全く違う。それで、わざわざ私に声をかけて探ろうとした。私達は、転生しているなら当然ゲームについて知っていると思っていたが、優里さんに関しては違うのだ。ゲームの関係者と言えば関係者だが、関係は薄く情報もない。だから、ゲームと異なる他のキャラクターの言動や立場などには反応しなかった。ゲームのことを知らないのだから、そ
last updateLast Updated : 2026-04-11
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