All Chapters of 女装メイドと婚約破棄された悪役令嬢は、幸せな結末を目指します: Chapter 291 - Chapter 300

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第291話

一刻も早く、シヴァに会いたかった。お父様から、話を伺いたかった。悠長に晩餐の席で待ってなんかいられない。「お嬢様!?」「シヴァとお父様に会うの! バルバラは先に行ってて。晩餐の席に二人がいたら呼びに来てちょうだい」速足で移動しながらそう言った私に、ため息をつきながらバルバラは頷いた。玄関ホールにはいない。客間にもいなかった。お父様の部屋にも。途中の廊下にもいない。とすると、執務室だろうか。 お父様の執務室の前まで来ると、ドアの隙間から廊下に明かりが漏れているのが見えた。やっぱり、ここにいたようだ。ギデオンのことがあったのに、私に何も言わないで悠長に晩餐に来るはずがないと思っていた勘は正しかった。それにしても、当人である私を呼ばないで一体何を話しているのだろうか。首を傾げて、私はそっと中の様子を見る。「無茶なことを!」そう怒鳴っていたのはルネだった。彼女がこんなに怒りを表しているのもなかなかに珍しい。「それで何かあれば、誰が責任を取るのです⁉」「それはオレが自分でどうにかします」「馬鹿を言うんじゃありません! ご当主様も、なんとか言って下さい!」怒っているルネに対して、シヴァは至って冷静だ。そんな二人に挟まれて静かに佇むお父様は何か考えているようだったが、ルネに話を振られて口を開いた。「……シルヴィオに任せよう」その言葉に、ルネは目を丸くする。何を任せると言う話だろうか。まさか、ギデオンの対処?それをシヴァ一人にやらせるってこと?「もう十分大きくなった。いつかはやらねばならないことでもある。我々は、何かあった時の逃げ場を用意してあげるだけで良い」お父様は冷静そうだった。その様子に、ルネは勢いを無くしていく。
last updateLast Updated : 2026-04-12
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第292話

昨夜のことは、あれから誰も何も言わなかった。そもそも私に聞かれてしまったこと自体が予想外だったらしいし、これ以上聞いてしまうのも申し訳ない。それに、お父様がシヴァのために動いているというのだ。私が心配したところでしょうがないだろう。なんたって、あのお父様が付いているのだ。きっと大丈夫。 「そんな感じで、仲直りできたんです!」「良かったわね」「まさカ、そんなことになっていたんですネ」私は現在、王城に来ていた。アレクサンドの許可を得て、月に一回程度はロミーナに会いに来ている。外部との連絡も取れず軟禁状態の彼女を気遣ってのことだった。ロミーナと顔見知りの女性陣は概ね来ている。イザベラは王妃教育のついでのような形だし、マルグリータもこの後レオナルドと会う予定だ。メロディはステファンと昼食を共にしたらしい。昼食後のティータイムの時間、ロミーナの客室に集まったみんなでこの一ヶ月の話をしていた。それぞれこんなことがあったと話すと、ロミーナは楽しそうに話を聞いてくれる。「シルヴィア嬢と喧嘩だなんテ、珍しいので驚きましタ」「でも、もう仲直りできたもの。ね? シヴァ」「はい。ご心配をおかけしました」あれから自然とシヴァとは仲直りできた。盗み聞きがバレてしまって慌てる私が面白かったのだろう。いつもの状態に戻ってくれたのだ。そうして今日も、彼は客室の端に控えてくれている。もはや見慣れた、あのメイド服姿で。声をかけられて冷静に返事をするシヴァと、仲直りできてにっこにこの私を見てイザベラがニヤニヤしている。こういうカップリングを見るのが好きなのは相変わらずだ。今度またアレクサンドにチクってやろうか。そうして話に花を咲かせていると、不意にドアがノックされた。「はイ」ロミーナの声に合わせて、シヴァがドアを開ける
last updateLast Updated : 2026-04-12
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第293話

壁際に立って控えたまま、楽しそうな女性達の様子を見てほっと安心する。レスピナス嬢が来た時、最初はどうなるのかと心配していたのだ。この様子ならば大丈夫だろう。席を立つタイミングを、オレはずっと見計らっていた。オレは、どうしてもアレクサンド殿下に会わなければならない。今回リリーについてきたのは、それも目的なのだ。そうこうしている内に、茶菓子が減っていることに気付く。新しい茶菓子を取りに、離席した方が良いだろうか。給仕をしながらそう考えていると、不意にレスピナス嬢と目が合った。彼女はくいっと、顎でドアの方を示してくる。まるで、早く行けとでも言うように。……全く、どこまで察知しているんだか。彼女は底が見えない。小さく頷くと、オレは手早く礼をして外に出た。給仕のためにも、他に使用人は残っている。周囲には厳重な警備もあるし、他の令嬢たちもいるのだからリリーは大丈夫だろう。 アレクサンド殿下は、案外早く見つかった。王城の中は知り尽くしているし、ある程度交流のある使用人もいる。彼らの目撃証言もあり、すぐにオレはアレクサンドの執務室に向かった。ドアをノックすると、返事が来る。中へ入ると、書類を見たまま手を止めずに仕事をしているアレクサンド殿下がいた。すぐ後ろには、サンスリード様も控えている。先に目が合ったのはサンスリード様の方だった。オレの姿を見て目を見開いている。リリーのメイドが一人でやって来たのだ。驚くのも無理はない。そんな気配を察したのか、アレクサンド殿下もキリの良い所で手を止めると顔を上げた。同じように、オレを見て目を見開く。しかし、すぐにいつものような柔和な笑みに戻った。「やあ、どうしたんだい?」「以前の返事をしに、参りました」
last updateLast Updated : 2026-04-12
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第294話

私本人は大満足だったが、彼としてはどうなのだろう。あの無感情な初対面の時を思い出すと、そんなに深く考えずに了承してくれていたような気もするのだ。小首を傾げて聞いてみると、彼はため息をついて席を移動した。私の正面の座席から、隣に移動する。彼の動きを目で追っていると、私の頬に手が添えられた。「シヴァ?」急にどうしたのか分からない。顔が一気に赤くなる。徐々に近づいてくるシヴァの顔に恥ずかしさが限界突破し、つい後ろに下がってしまう。そのままバランスを崩し、座席に倒れ込んでしまった。そんな私の頭を、シヴァは支えてくれる。完全に押し倒された姿勢となり、ますます恥ずかしくなって私はぎゅっと目を閉じるしかなかった。しかし、そのまま何も無い。恐る恐る目を開けると、すぐ近くにシヴァの顔がある。下から覗き込んで見ると、長い黒髪の下にあるシルバーグレイの髪が見えた。透けるような肌に、中性的な顔立ち。改めて見ると、もう大分男性らしい顔立ちに成長している気がする。ずっと一緒にいたので、こうしてまじまじと見てみないと分からなかった。空色の目と目が合うと、シヴァは面白そうに笑った。「……揶揄ってる?」「いや、別に?」「もう! シヴァ!」変に期待していた私の方が恥ずかしい。勢いよく体を起こすと、そのままシヴァの胸に頭を潜り込ませた。そのままシヴァを押し倒してやろうかと思ったが、案外がっしりしている彼は倒れず、ただ私が頭突きしただけになってしまう。悔しい。「悪い悪い。変なこと気にしてたから」笑いながら言うシヴァを抱きしめ見上げると、彼は私の髪を一房取った。そのまま軽く口付ける。 「嫌いなわけない。この名前は、リリーから始めてもらったものだから」 
last updateLast Updated : 2026-04-12
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第295話

学園はなんだかいつも以上に騒がしい気がした。生徒達がずっと何やら噂話をしている。私を見つめる目は気まずそうだが、何のことだか分からない。 教室に着くと、先に来ていたイザベラの周囲に人だかりができていた。いつもはあの人だかりの中心にドミニカがいたはずだ。どうしたんだろう。「おはようございます! リリアンナ嬢」背後から声をかけられて振り返ると、そこにはメロディもいた。なんだかニコニコしていて、機嫌が良さそうだ。「おはようございます。昨日ぶりね」「ですね!」メロディは明るい笑顔を返してくれる。せっかくだし、メロディに聞いてみることにしよう。「ねえ、今日は一体どうしたの? なんだか騒がしいけど」「あれ? まだ掲示板見ていないんですか?」不定期にお知らせがあれば張り紙が張られる掲示板。校舎の出入り口にあり生徒達は日に一度は確認しに行くものだが、私は見に行ったことがない。毎日人混みをかき分けて見に行くのも大変だろうからと、シヴァが代わりに確認して私に教えてくれていたからだ。今日はそのシヴァがいない。こうしてみると、自分がいつもシヴァに甘えきっていることを自覚する。メロディに連れられて掲示板へ行くと、そこにも人だかりができていた。さすが庶民に慣れているからか、メロディは人混みをかき分けるのが上手い。私の手を引いてずんずんと先に進んでしまう。気付けばあっという間に一番前まで来てしまった。後ろの人混みに押されそうになりながら、顔を上げて掲示板を見る。 【アレクサンド・リヒハイム殿下。とうとう新たな婚約者を決定! お相手は当学園のイザベラ・ナンニー二侯爵令嬢】 そんな見出しが視界いっぱいに広がる。慌ててメロディの方を向くと、彼女は満面の笑みを返してくれた。&nbs
last updateLast Updated : 2026-04-13
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第296話

そうして騒いでいて、私はすっかりシヴァの不在を忘れていた。 「お帰りなさいませ。お嬢様」いつもの待ち合わせ場所にいたのは、シヴァじゃなかった。その姿を見て、シヴァがいないことを思い出す。先程までは皆と話して楽しい気持ちでいたのに、急に気持ちが萎んでしまった。あれから半日。シヴァは元気になっただろうか。帰りに何かお見舞いの品を買って行かないと。代わりのメイドに伝えて町へ繰り出す。馬車で移動しながら、お見舞いの品は何がいいだろうかと考えていた。食べ物なら我が家のシェフが体に良いものを作ってくれるはずだ。身の回りのこともルネ達がなんとかしてくれるだろうし、特別私がすることなどない。無難にお花が良いだろうか。そう思い、花屋の前で馬車を停めてもらう。香りが強いものや花粉が多い物は避けた方が良さそうだ。その上で、今の季節に合った花はなんだろうか。 「花ですか。さすがお似合いですね」 突然の低い声に鳥肌が立った。振り返れば、テラコッタの瞳と目が合う。「花よりも貴女の方がお美しい。買うのはやめてしまったらどうですか?」褐色の肌に黒檀のような黒い髪。今日はどこに行っていたのか、街並みに似合わない上等な服を着ている。不敵な笑みを浮かべたギデオンがそこに立っていた。「……ザハト様」「こんにちは。リリアンナ嬢」私に冷たく睨まれても気にしない。ギデオンは笑みを崩さず、私の手を取り、その甲に口付けた。最悪だ。よりによってシヴァがいない日に、こいつと会ってしまうなんて。「こんにちは、ザハト様。お買い物ですか?」さっさと買い物を終えてどこかに行ってくれ。「ええ。これから貴女の屋敷に行こうと思っていまし
last updateLast Updated : 2026-04-13
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第297話

ギデオンは、シヴァが男だと気付いている。シヴァに敵意を持った彼が、その情報を知ってどうするのか分からない。「完成しました。お嬢さ」花屋の店員が完成した花束を持ってくる。言葉を聞き終える前に、私は花束を奪い取ると店を出た。「お嬢様!?」メイドがお代を払い、駆け足でこちらに来る。そんな彼女を待たずに、私は馬車に乗り込む。ギリギリでメイドが乗り込むと、急いで馬車を走らせた。お父様に相談しないといけない。シヴァの正体がバレているって。そして、対策を考えなければ。「お嬢様、大丈夫ですか?」メイドが慌てたようにハンカチで私の額の汗を拭う。気付けば全身、冷や汗でびっしょりだ。ハンカチで汗を拭い、ふと冷静になってから気付く。ギデオンの言葉を上手く諫めるような反応もできたのではないかと。そういう対処が必要だったのに、私はさっき何をした!?あれでは、その通りですと肯定しているようなものだ。私は自分の迂闊さを思い出し、頭を抱えて後悔した。  ***  ギデオンが来るつもりということは、お父様が不在だと思っていたが、予想に反してお父様は屋敷にいた。帰宅してすぐ、花束を持ってまずはお父様の執務室に向かう。ゆっくりしていると、ギデオンが来てしまうだろうから。「お父様! 失礼します!」ノックの返事も待たずに中へ入る。机に向かっていたお父様は、驚いたように私を見た。傍で仕事の補佐をしていたルネも、私を見て驚いた顔をしている。「リリー? 急にどうしたんだ。それに、その花束」「シヴァへのお見舞いです」今はそんなことはどうでも良いのだ。ドアを閉めると、つかつかと二人の前まで近づく。「ギデオン・
last updateLast Updated : 2026-04-13
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第298話

彼が私に何も言わずにいなくなってしまったことが、悲しかった。私が、シヴァの嫌なことでもしてしまったんだろうか。それで私が嫌いになったから、いなくなってしまったの?私が何かしてあげれば、彼はいなくならなかったんだろうか?引き留めることができたんだろうか?どのタイミングで、何をすれば良かったの?何を言えば、シヴァは今ここにいたの?いくら考えても分からない。 「ご主人様。客人が……」ドアをノックし、顔を出したメイドが困ったように声をかける。きっとギデオンが到着したのだろう。私とメイドを何度も交互に見比べて、お父様はため息をついた。「私が行ってきます」そんな私達の様子を見て、ルネがメイドの下へと向かった。ドアが閉められて、私はお父様と二人きりになる。「とりあえず、まずは座りなさい」お父様に促されて、しゃくりあげながらもなんとか立ち上がる。手を引かれるまま、執務室のソファに腰かけた。ポケットからハンカチを取り出し、涙を拭う。そんな私の様子を見て安心したのか、お父様は部屋の端にあったティーセットに向かった。慣れた手つきで紅茶を淹れている。ルネが不在時に自分で淹れているところは見たことがあるが、随分手慣れたものだ。「どうぞ」出された紅茶は湯気を立てており温かい。一気に飲み干すと、涙で出ていった水分が体に染み渡るような気がした。ほっと息を整えたところで、隣に座ったお父様が私の顔を覗き込んできた。こんな事態になっても、さすがお父様は落ち着いている。「落ち着いたかい?」「……はい」とりあえず、なんとか。また何かの拍子に泣いてしまうくらい、涙腺はゆるゆる状態ではあるが。「この後、リリーはどうしたい?」
last updateLast Updated : 2026-04-13
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第299話

「シヴァがいなくなった今、それでも後継者としてやっていきたいと思うかい?」そう聞かれても、私はすぐに答えられない。シヴァがいないとして、私はどう生きていけば良いのか。彼がいないのならば、普通に誰かと結婚して、婿養子でも迎えて一緒に家を支えていけばいい。そうすれば、以前考えていた不安は無くなる。一人で家を切り盛りして、社交界に出て、心無い噂に翻弄されることもない。この貴族社会でずっと一人身なんて、何て言われるか分からない。そんな不安を抱えているよりも、誰かと結婚してしまった方が余程気が楽だ。冷静に考えれば、そう分かっているのだ。でも、気持ちがついていかない。その安寧のためだけに、私は好きでもない人と結婚するの?好きでもないのに、政略結婚として結ばれる相手だって良い気はしないだろう。ギデオンならば歓迎するだろうが、あんな怪しい男をこの家に入れることなんかできない。 ぐるぐると色々なことを考えて、でも結局、結論はずっと同じところにあった。「……私は」緊張で喉が渇く。これで良いのか。お父様は何と言うのか。将来どうなってしまうのか。何も分からない緊張で冷や汗が出る。 「私は、やっていきたいです。モンリーズ家唯一の直系血族として、この家を守りたい」 でも、この緊張を乗り越えてシヴァは決断したのだ。それなら私も、ちゃんと覚悟を決めたい。「この家が好きなんです。シヴァだけじゃなくて、ルネもバルバラも、使用人の皆も、もちろんお父様も」転生してから10年以上。ずっと、この家の皆と楽しくやって来た。みんな良い人だ。お父様が守るこの町も平和で、住民達が楽しそうにしていて、視察で訪れた離れた領地の人々も、皆幸せそうだった。本当に、お父様は凄い
last updateLast Updated : 2026-04-13
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第300話

しっかり一日リフレッシュをして、私は学園へ向かった。その日はヤコブとイザベラをいつものように馬車に招待し、事情を話した。シヴァがいなくなったこと。彼は何か目的があること。そして、私は私で女公爵を目指すこと。「色々不安はあるけど……協力してもらえる?」そう声をかけると、二人は笑顔で了承してくれた。 他にシヴァについて知っているのはロミーナだ。彼女にはイザベラの婚約記念のお茶会で話をした。少し早めに到着し、二人で話をする。彼女はシヴァをシルヴィアという女性だと思っている。今後、ギデオンが何か噂を立てても動揺させないよう、彼が男であると言うことも伝えた。淑女としてしっかりしている彼女からすれば、常に男性を傍に置いていた事実はショックなことかもしれない。だから、伝え方は慎重に。あくまで父がつけた護衛で、ルネの親戚で身元もしっかりしていると教えた。そして、将来やりたいことのために、彼は故郷に帰ってしまったと。「色々、大変だったんですネ……」最初は戸惑っていたが、ロミーナは受け入れてくれた。彼女のことだから、無暗に口外はしないだろう。その後のお茶会は、至って普通に、和やかに進んだ。イザベラを中心に囲んで色々と話をしたし、プレゼントも贈った。最後はちょうど良い時間にアレクサンドが訪れてイザベラを連れ去ってしまったのも、良い感じにオチが付いたと思う。 これで打てるだけの手は打ったつもりだ。残るは、ギデオンへの対処のみ。一通り計画してあたりを付けて、私はドミニカをお茶に誘った。指定された日時は休日。場所は以前呼び出された、研究所近くのカフェだ。あの時はよく分からないままドミニカから誘われたが、今度は完全に立場が逆になっている。「&h
last updateLast Updated : 2026-04-13
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