All Chapters of 女装メイドと婚約破棄された悪役令嬢は、幸せな結末を目指します: Chapter 301 - Chapter 310

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第301話

一度伸びをすると、いつもの表情に戻る。人を惹きつけるような、あの穏やかな笑みだ。「なるほどね。そこまで把握はしている、と」「ロミーナの件も全く進展していないようですしね。気になっていました」シヴァは拗ねてはいたが、いなくなる前にちゃんと私に情報はくれたのだ。手紙という形だったけど、それは手元に残っていた。彼が集めた情報は、もっと視野が広い。ギデオン・ナハル・ザハド。ライハラ連合国の首長国の1つ、サフィール貿易国の侯爵家次男の21歳。現在は商談のためにリヒハイム王国に来ているというのが表向きの話だ。だが、どうやら度々裏で怪しい人と会っていることが多いと言う。ここに、ライハラ連合国内の対立構造が入ってくる。サフィール貿易国は革新派で、大きな改革を狙っているという。そして、ドミニカ・レスピナス伯爵令嬢はシャムス首長国出身。革新派と対立する、保守派の筆頭国家だ。そんな敵対している家の情報を、ドミニカが知らないはずがない。「ドミニカ嬢はロミーナと仲が良く、そして、ザハト様のことはよく知らないと言う。敵対派閥なのに」「だから、意図的に情報を隠したと」「はい」合っているのか分からなかったが、シヴァがくれた情報に間違いはないはずだ。まっすぐドミニカを見つめていると、彼女はくすりと笑った。「……貴女は。モンリーズ家はどちらにつくつもり?」「保守派に」リヒハイム王国の王族は、特にライハラ連合国の保守派と親しくしている。王妃教育でこれくらいは学んだことだ。念のためお父様にも確認をしてある。「なるほどね」ドミニカは再びコーヒーを一口飲むと、ため息をついた。「リヒハイムの王族も公爵家も保守派についてくれる、と。……それなら、私がモンリーズ家と敵対関係になるよりも、協力関係になった方が利口ね」
last updateLast Updated : 2026-04-13
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第302話

「あのギデオンは革新派筆頭の家よ。今は序列3位だけど、来年にはトップに立とうと父親が躍起になってるの」「革新派は何が目的なんですか?」「貿易の増加と領土の拡大」貿易はまだ理解できる。だが、領土の拡大ということは……「……戦争?」「そう。力を付けてきた今、戦争で確固たる地位を手に入れてライハラ連合国を統一国にしたい。そうして自分達が上に行きたいってね」酷いものだ。自分達の地位のために、戦争を起こそうだなんて。前世で日本に住んでいたからかもしれないが、絶対にそんなものは起こしたくない。「私も戦争には反対よ。だから、家が保守派で本当に良かったわ」「その戦争って、どこで起こそうとしているんですか?」「それがまだ不明なの。ただ、こうして動いてるってことは、リヒハイム王国も巻き込むつもりのようね」そんなの最悪だ。せっかく反乱を阻止したのに、今度は戦争だなんて。顔色を青ざめさせる私を見て、何を思ったのかドミニカはコーヒーを一気に煽る。「ザハト家にモンリーズ家と手を組まれては困るのよ。……縁談の阻止、私も協力するわ」カップをテーブルに戻し優雅に腕を組むと、ドミニカはにっこりと微笑んだ。  ***  そうこうしながらも時間は進んでいく。中間試験を終えた私は、以前貰った手紙に書いてあるギデオンの屋敷へ向かっていた。もちろん、お父様には相談済みだし、護衛もメイドもいつもより多めに連れている。これで、無暗に手出しできないと思いたい。「少々お待ち下さい」私もギデオンに倣って、事前連絡なしで訪問してみた。屋敷の従者達は驚いたことだろう。慌てた様子で私達を客間に通すと、すぐに部屋を出て行った。
last updateLast Updated : 2026-04-13
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第303話

ぽかんとした表情で私を見ている。まあ、彼との婚約は色々利点がある。それを提示したのだし、交渉は上手くいくと思っていたのだろう。ライハラ連合国の侯爵家との繋がり。大商人でもあるので、繋がればモンリーズ家の他国との貿易も活発になる。彼自身の容姿も悪くない。むしろ、十分すぎるほど魅力的だ。それもあるので、言いよれば大概の女性は虜になるだろう。それにより今後の交渉が上手くいくこともあるだろうし、美少女であるリリアンナの隣に立っても、全く見劣りはしない。そして、私を自由にしてくれるという言葉。他に男がいても構わないならば、ギデオンの恩恵を受けつつ私は好きな相手と一緒にいられる。なんとも魅力的な話だ。だが、裏を返せばそれはギデオンが自由にモンリーズ家を掌握できるという話になる。そんなことは許さない。「……理由を、お聞きしてもよろしいでしょうか?」「まず第一に、私は貴方様を好きではありません」「それでも構わない。政略結婚と思って欲しいと、以前言いましたよね?」それに、なによりも間違えているのがこの合理主義だ。合理的なだけでは、人は動かない。「そんな婚姻生活に、幸せはあるのですか?」私は感情のある人間なのだ。上から支配し、押し付けようとしても気持ちはそうはいかない。「政略結婚であっても、私は幸せを得たいのです。私は貴方様を好きになれず、貴方様も私を本心から求めているわけではない。そんな生活は、とても幸福とは呼べません」「そんな……私は本心から、貴女を愛していると言えますよ」ギデオンはわざとらしく困った表情を作ると、縋るように私を見た。しかし、私の気持ちは変わらない。「私のモンリーズ家の跡継ぎという地位を、でしょう?」そんな彼を睨みつけながら言い放つと、もう説得は無理だと思ったのか、再びギデオンの表
last updateLast Updated : 2026-04-14
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第304話

色々不安は残るものの、とりあえず表面上は解決したと思う。これで、とりあえず独身は貫ける。一人でシヴァのことを待てる。「これで大丈夫だよね……」帰りの馬車の中で、私はぐったりしながらそう考えていた。ああやって脅しをかけると言うことは、ギデオンの中で何かその材料があるのだろう。しかし、それが何かは分からない。いつでも対応できるようにアレクサンドやイザベラと話し合っておかないと。色々考えることはあるが、今はただ休みたかった。いつも守ってくれたシヴァがいない中で戦うと言うのは、ここまで不安なのか。「シヴァ、どうしてるかなぁ……」そう呟く私を見て、シヴァの代わりに担当についていたメイドは困ったように笑っていた。  ***  休暇の間に、私はアレクサンドに会いに王宮へ向かった。もちろん、イザベラと一緒だ。今まで私が王妃教育の時にイザベラを連れてきていたこともあり、イザベラが正式なアレクサンドの婚約者に決まってから私が一緒に王宮に来ていても誰も不自然には思わない。良い隠れ蓑だ。「お待たせ」しばらくぶりに会ったアレクサンドは、いつもと変わらない笑顔でやって来た。私とイザベラがお茶会をしていた部屋に、花束を持参し入室する。イザベラに花束を渡し、ハグをする様子を周囲の従者達は和やかに見ている。王宮内でも上手くやっていそうで良かったと安心する。アレクサンドも席に着くと、彼は執事に何やら合図を出した。執事は礼をすると、他の従者達を連れて部屋を出ていく。残されたのは、私達三人のみになった。「さて、人払いは終わったよ。何の話かな?」「ドミニカ嬢から話は聞いていますか?」「ああ、イザベラからもね。ギデオン・ナ
last updateLast Updated : 2026-04-14
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第305話

休暇明けの学園はいつも通り賑わっていた。しかし、その賑わい方が少し違う気がする。特に、実家が遠方の下級貴族達が何やら騒がしかった。「おはよう。どうかしたの?」教室に着くと、イザベラとメロディが既に席に付き何か話をしていた。珍しく、メロディが下を向いて落ち込んでいる。それをイザベラが何とか宥めているという状況だった。「リリアンナ嬢……」顔を上げたメロディは、目に涙をためている。レモン色の瞳が濡れていて、大変可愛らしいがそういう場合ではない。「え⁉ 本当にどうしたの⁉」慌てて私もメロディを慰める側に回った。だが、事情が分からないことにはどうしようもない。なんとかメロディから話を聞くに、彼女の実家があるルベルゾン伯爵領で反乱が起こったと言うのだ。両親が反乱を治め、一旦平穏を保ちはしたが、原因も主導者も分からないと言う。これでは、いつ再び反乱が起きて両親が襲われるか分からない。「それは確かに心配ね……」「両親は、こちらは大丈夫だから心配するなって。ちゃんと学園に行けって言うんですけど……」「そちらもですか」急に声をかけられ、驚いて振り向く。そこに立っていたのはヤコブだった。「おはよう、ヤコブ。そちらもって?」「どうやら、あちこちの田舎貴族の実家から、反乱が起こったと連絡があったそうです。小さなものですから、今は大きな問題になっていませんけどね」だとしても、同時多発的に各地の領地で反乱が起こるなどあり得るのだろうか。沈静化できているから良いものの、あまりに不穏すぎる。 『せいぜい後悔の無いように』 そんなギデオンの言葉が、脳裏に過ぎった。  ***
last updateLast Updated : 2026-04-14
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第306話

お父様に断られてしまってから、私はすっかり落ち込んでしまっていた。バルバラもルネも拒否して、部屋で泣き続けていた。迷惑をかけているのは分かっている。でも、どうしようもないのだ。シヴァがいなくなった時は我慢した。彼の目的だって、やりたいことだって応援しようって、ちゃんと待っていようってそう思った。そのためにも、後継者としてこの家を守り続けようと思って、頑張ってこられたのだ。それがこれでは、話は違う。国内が安定していて、シヴァに危険がなさそうなことが分かって、それではじめて大人しく待っていられたのだ。「シヴァ……」ベッドに寝ころんだまま、以前もらったネックレスを眺める。シヴァの髪色に近い細長いシルバーのチェーン。金の装飾で覆われたターコイズは、彼の瞳の色のようだ。「一体、どうすれば……」シヴァの居場所も、何をしようとしているかも分からないのだ。探しに行きたくても、この広い国内を無暗に歩き回るわけにもいかない。そんなことをすれば、すぐにお父様達に連れ帰られてしまうだろう。ぐるぐると考えていく内に、瞼が重くなってくる。そのまま、泣き疲れて私は眠ってしまった。  ***  「……で、そんな真っ赤な目をして登校してきたわけね」私の話を聞いて、イザベラは呆れたようにため息をついた。朝はすっかり私が落ち込んでいて、誰も話しかけてこなかったが、お昼に王族専用食堂に集まったことで少し話をする余裕が生まれたのだ。昼食後の会話で皆が集まっている時の話題も、もちろん反乱の件についてだった。旧ソプレス王国や、アマトリアン辺境伯領はここから遠い。すぐの影響はないだろうと、レオナルド含めた王族はゆっくり構えているら
last updateLast Updated : 2026-04-14
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第307話

セドリック曰く、人探しの魔法があるとのこと。どちらかと言えば王宮魔導士になった際に使用することの多い魔法のため、一般的にはあまり知られていない。それを使えば、シヴァを探せるかもしれないと言うことだ。「教えて差し上げてもよろしいのですが……まさか、ご自分で探しに行きませんよね?」「え?」心配そうにそう言ったセドリックの言葉に、表情が固まる。皆の視線が一斉に集中した。ヤバい。今の自分では探しに行きかねないのは、よく分かっている。セドリックは図星をつくのが上手い。「だ、大丈夫よ。ヒントがあれば、人を送るわ。それだけの人手とお金はあるもの」「そういうことでしたら」そう言って、セドリックはその知人に関わる物や触れたことがある物がないかと尋ねてきた。私はいつも服の奥に隠してあるネックレスを取り出す。シヴァからもらった、あのシルバーチェーンのものだ。「これは?」「ちょっと失礼しますね」ネックレスを手に持ったセドリックは、しげしげとそれを眺めている。何をしているんだろうか。「魔力を探るんですよ。これに触れた人の魔力が、多少なりとも残っているので」なるほど。セドリックレベルになるとそんなことも可能なのか。私以外の皆も興味津々のようで、黙って彼の動向を見守る。「一番触れている時間が多いのは、リリアンナ嬢の魔力でしょうね。古い物は微かなので難しいですが……たぶん、これかな?」何かの呪文を口にすると、ネックレスの周囲に淡い光がはじける。それは最終的にはネックレスの中心にあったターコイズへ集まっていった。「はい。これで、目的の方が近くにいればターコイズが光るはずですよ。人探しのヒントくらいにはなるかと」「あ、ありがとう……」ネックレスを受け取るが、一見何も変わって
last updateLast Updated : 2026-04-14
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第308話

さて、こうしてヒントは手に入れた。とはいえ、セドリックの言うように私が直接赴くわけにはいかない。この国内のどこにいるかも分からないのだし。無暗に動くわけにはいかない。「これを、どうするかが問題ね……」自宅に戻った私は、夕食を終えると自室に戻り、再びネックレスを見つめていた。傍にシヴァがいないせいか、ネックレスは全く光っていない。あえて部屋の明かりを消しているが、窓の外の月光をターコイズが反射するばかりだ。シヴァを探すことも大事だが、何が一番心配かと言えば、今反乱が起きている危険な地域にシヴァがいた場合だ。事件に巻き込まれて、身に危険が及ぶかもしれない。そうでなければ、ここまで心配はしないのだ。だが、こんなご時世にその危険地帯にわざわざ赴いて、ネックレスが光るか確認してくれる人なんて思い当たらない。金に物を言わせて使用人にさせるというのも、どうにも気が引けた。「わざわざ人に依頼はできない……でも、危険地帯に行くことがある人に紛れ込ませれば……」そうは思うが、そんなの誰がいるだろうか。王宮騎士団とか?でも、今はまだ大きな動きはないと聞く。危険地帯に家族がいて、迎えに行く人とか?いや、そんな時に悠長にネックレスなんて見てくれない。商売人?食料品なら、運ぶこともある。でも、ネックレスを持ち逃げし無さそうな人に心当たりなんてない。うんうんと頭を巡らせて、色々と考える。小一時間悩んだところで、結論なんか出ないと分かった。「とりあえず、聞いて、お願いして回るしかないのよ」そう決めると、私は早速封筒を取り出す。そして、思いつく限りの心当たりに対して手紙を書き始めた。  ***  
last updateLast Updated : 2026-04-14
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第309話

遠くで爆音が響く。何度目かのその音で、オレはふと目を覚ました。「お目覚めですかぁ?」すぐ近くで声がする。ねちっこい、あの嫌いな声だ。視線を向けると、オレのベッドに腰かけてオスカーが顔を覗き込んでいた。勘弁してくれ。最悪な目覚めだ。こうやって起こしてくれるなら、リリーの方が良い。……まあ、無理な願いなのは分かっているが。「うるさい。寝かせてくれ」「またまたぁ。せっかくここまで大きく人も金も動かせたんですよ? 集まった人々との作戦会議ももうすぐです。そのために、目覚められたのでしょう?」まあ、それもそうだ。この反乱には、多くの貴族と金と思惑が絡んでいる。その全てが、ようやく集まるのだ。うかうか寝てはいられない。だから、浅い眠りでこうしてすぐに目が覚めたのだ。オレはため息をつくと体を起こした。薄着だったため、オスカーが差し出してくれた上着を羽織る。人前に出るのだから、身支度を整えなければ。「残り時間は? 集まった人の状況も」「残り一時間程。概ね集まっていますが、現在動いている地区の当主は少し遅れると」「分かった。風呂に入ったら着替える。準備してくれ」「もちろん。我らが殿下のお披露目になるんですから。素晴らしい一張羅をご準備しましたよ」オスカーは真っ赤な目を細めて嬉しそうに笑う。そんな彼を横目で見ると、オレは隣の風呂場に向かった。ドアを閉める寸前まで、オスカーはオレを見ていた。「こうして協力的になられて、実に嬉しいですねぇ」まるで、監視でもするかのように。ああ、反吐が出る。 風呂場には、オレ以外誰もいなかった。この時だけが、一人でゆっくりしていられる時間だ。モンリーズ家の地下でオスカーと再会したオレは、このアマトリアン辺境伯領の
last updateLast Updated : 2026-04-14
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第310話

オレの父親はソプレス王国の国王。母親は同じくソプレス王国の侯爵家の娘だった。オスカーやヴォルフガングと幼馴染だった両親は、そのまま仲の良いまま大人になり、両親は婚約を結び結婚したという。そして、そんな二人を守るようにオスカーは魔導士団団長、ヴォルフガングは騎士団長になった。そんな中生まれたのがオレだ。王宮に子供はオレしかおらず、大人達に守られるように大切にされてきたのは覚えている。そして、オレが5歳の誕生日を迎えて一ヶ月程たった頃。あの事件が起こったのだ。真っ暗な夜。何やら騒がしい城内。そこに現れたオスカー。「殿下、どうかお静かに。早く逃げますよ」逃げる?何の話だ?そう思いながらも、オスカーの手を取りついていく。向かった先は、書斎だった。そこにお母様が身を隠していたようだ。オレ達を見ると、安堵した表情を見せる。「ユフィ、無事だったのね。オスカー、ありがとう」「ソフィ、早く逃げましょう。私の転移魔法なら、手を繋いでいる相手は連れていけます」オスカーは手を差し出す。しかし、お母様はその手を掴まなかった。「私は彼を助けに行くわ。ユフィが無事だと分かったなら、それで良いの。早くヴォルフガングのところに行ってきて」「何を言ってるんですか? 貴女1人でどうやって」「時間稼ぎくらいはできるわ。このまま奪われるというだけにはいかないもの」そのまま、お母様は走り去る。オスカーは舌打ちをすると、魔法を使い始めた。「まってオスカー、おかあさまが!」オレが後を追おうとするも、オスカーはオレの手を離さない。部屋の外で怒号と足音が聞こえたと思えば、お母様が閉めていったはずのドアが勢いよく開けられる。「ここから出てきたぞ! まだ中に人が」そうして武装した集団が流れ込んで来たが、オスカーの魔法が発動する方
last updateLast Updated : 2026-04-14
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