All Chapters of 女装メイドと婚約破棄された悪役令嬢は、幸せな結末を目指します: Chapter 61 - Chapter 70

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第61話

一通り見て回り、講堂まで戻ってきてしまった。入学式が終わってしばらく経つので、もうほとんどの人が学園の外へ出てしまっている中、出入り口に人が集まっている。よく見てみると、それは見知った人々だった。彼らの中心にアレクサンドがいるのを見て、挨拶でもしなければと私は駆け寄った。「アレクサンド様、お疲れ様でした」「リリアンナ嬢、君もお疲れ様」駆け寄ると、傍にいた人々が一斉に私へ礼をしてくる。第一王子の婚約者の前だから、こうなってしまうのか。ちょっとびっくりして一歩引くと、すぐにアレクサンドが手でみんなを制した。彼らは一斉に顔を上げる。頭を上げたのはステファンと、その婚約者のロミーナだった。ロミーナとは顔を合わせるのは始めてだ。まん丸のアプリコットのような目と視線が合うと、彼女はにっこり微笑んでくれる。ゲーム画面で見た通り、ふわふわの赤茶色の髪がよく似合う。アマトリアン辺境伯夫妻から引き継いだ目や髪の色だが、彼らと違ってロミーナ自身は大人しくて優しそうな雰囲気。仲良くなれそう。彼らの従者も後ろに控えていて、なんだか人口密度が高い。「ちょうど紹介と顔合わせをしようと、探しに行くところだったんだ。入学式の後、話しかける間もなく外に出るから驚いたよ」「姉上! 探しに行ってきて欲しいと頼まれたところだったので、ちょうど良かったです」アレクサンドの横にいたレオナルドがひょっこり顔を出す。マルグリータは1つ年下なので、まだ入学していない。今はレオナルド1人のようだ。相変わらず姉上と呼んでくるが、もうスルーすることにした。「私の側近候補達に当たるから、これから交流することも増えると思ってね。まずは、ご存じの通り第二王子のレオナルド」アレクサンドに紹介されて、レオナルドは明るい笑みを返してくれた。本当に、女好きのナンパ師に成長しないで良かったと思う。「それから、ステファン・サン
last updateLast Updated : 2026-03-14
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第62話

ヤコブ・ヘルトル男爵子息。そんな人間に心当たりはなかった。ゲーム内でのアレクサンドの側近候補に、そんな人間は存在しない。「絶対おかしいのよ……!」「何が?」帰りの馬車の中、頭を抱える私を見てシヴァは首を傾げながら尋ねてきた。ゲームがとか、前世とか、そんな話を言えるわけもなく私は口を閉ざす。そんな私の頬に、シヴァは触れてきた。「いたたたたっ!」遠慮なく頬を引っ張られ、私は声を上げてしまう。そんな様子を見てシヴァは噴き出した。「似合いもしない難しい顔してるから」「私は難しいこと考えてないって言うの……?」「考えてるのか?」「そんな頭は無いです」引っ張られた頬を押えながら返事をすると、シヴァはなんだか満足そうだ。「慣れないことはするな。困ってるならどうにかしてやるから……で、何があったんだ?」これは、ちゃんと答えるまで離してはくれないだろう。諦めて私はため息をついた。なんだか悩んでいたのが馬鹿らしくなってくる。「ヤコブっていう男爵子息。彼については私、全然知らなかったから。急に紹介されて本当に驚いたのよ」「成績優秀者ってことで、今回選ばれただけなんじゃないのか?」「それなら二年生の成績優秀者だって、側近候補じゃないとおかしいじゃない。なんでわざわざ一年生から選ぶのよ」「……まあ、確かに」私の訴えに、シヴァは頷く。少し考えて、彼はメモを取り出した。さらさらと何かを書き込んでいく。「調べといてやるよ。ルネさんにも聞けば、情報をもらえるかもしれないし」「本当? ありがとう!」本当に、シヴァは親切だし有能だ。私のためにと、積極的に動いてくれる。最近は表情も柔らかくなったし、本当
last updateLast Updated : 2026-03-15
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第63話

自己紹介の時間がもうけられるが、成績優秀者のクラスはさすが頭の良さそうな、大人しい子が多い。そんな中、目を引いたのはイザベラだ。彼女はこのクラスの中で私の次に爵位の高い侯爵家の出だ。他とは少し違う凛とした雰囲気を持つ彼女は、よく通る声で話し始めた。「ナンニー二侯爵家のイザベラ・ナンニー二です。立場は気にせず、皆様話しかけて下さると嬉しいですわ。最近、隣国から新しい宝石が入りましたので、気になった方がいましたらぜひお話しください」そう言いながら金髪のポニーテールを揺らす。服装は学園の制服だが、髪飾りも耳飾りも付けていて、お金持ちオーラ全開だ。ゲーム内でも似たような光景を見た気がして感動していた。そんな間にも自己紹介は進み、私の番になる。教師に名前を呼ばれて、私は慌てて立ち上がり姿勢を正す。「リリアンナ・モンリーズです。どうぞよろしく」色々考えすぎて、自己紹介で何を言うのか考えていなかった。特になんの面白味もない、無難な自己紹介になってしまったのが少し恥ずかしい。それでもしっかり周囲の視線が向いているのは、第一王子の婚約者だからなのか、公爵令嬢だからなのか、はたまたリリアンナの美貌なのか分からない。「レオナルド・リヒハイムだ。皆、よろしくな!」最後に自己紹介をしたのは、一番後ろの席にいたレオナルドだった。視線を向けると目が合い、ウインクされる。軽薄な雰囲気はあるが、今の彼ならば落ち着いた学園生活が送れるだろう。一通りの自己紹介が終わって、早速授業に入った。レベルが高い授業は、次期王妃教育のためかすんなりついて行ける。王妃教育もしていないのに、これについて行けてそうな周囲に感心してしまった。 授業が終わると、私はうんと伸びをした。この後はお昼休憩の時間。シヴァを待たせているし、すぐに教室を出ないとと準備をしていると後ろから声がかけられた。「すぐに行くんですか?」真
last updateLast Updated : 2026-03-15
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第64話

辿り着いた王族専用食堂は、まさに別世界だった。高い天井には豪奢なシャンデリアが輝き、大理石の床は磨き上げられている。キラキラ輝く家具は窓から差し込む日光を反射し、格式高い雰囲気を漂わせていた。すでに食堂の中央、窓際の大きなテーブルには、アレクサンドと、ステファン、そしてロミーナが席についていた。私達に気付いたのか、アレクサンドの黄金色を纏った瞳が私を射抜く。「やあ、リリアンナ嬢。それに、レオナルドとヤコブも」彼は私たちを歓迎するように微笑んでくれた。レオナルドは嬉しそうにアレクサンドへ駆け寄る。「兄上! 言われた通り、姉上を連れてきましたよ」「こういう場所があると紹介しただけで、連れてこいと言った覚えはないんだけどな」アレクサンドは困ったような笑みをレオナルドに返す。テーブルにはまだカップが用意されているだけなので、食事はこれから運ばれてくるらしい。タイミングが良かった。「リリアンナ様、隣にどうゾ」ロミーナが私のために隣の椅子を引いてくれた。相変わらず、彼女の言葉は片言だ。アプリコットのまん丸な瞳を瞬かせて私に笑みを向けてくる姿は、素直に可愛らしい。微笑み返して、私は彼女の隣に腰を下ろした。席順は、窓際の下座からロミーナ、私。端の上座にアレクサンド。廊下側には上座からレオナルドとステファンが座り、ヤコブは控えめに、テーブルの末席に静かに座った。給仕のため、すぐにシヴァが私の背後に控える。紫がかった黒いメイド服が、周りの華やかな色合いの中で際立っていた。高位貴族ばかりの上、重厚な雰囲気で少し緊張していたが、後ろにいる彼が、私をそっと支えてくれているように感じて嬉しい。給仕によって運ばれたレモンバームティーが、私の前に置かれる。それを口元に持ってくると、芳醇な香りが広がった。さすが紅茶も一級品だ。そうして紅茶を堪能している間に、テーブルの上
last updateLast Updated : 2026-03-15
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第65話

夕日が明るく照らす帰りの馬車の中、シヴァはポケットからメモを取り出した。「ヤコブ・ヘルトルについて今の所集まった情報だ。今話してもいいか?」「ええ、大丈夫よ」昨日の今日でもう調べてあるとはさすが早い。シヴァとルネの優秀さに、私は素直に感心していた。男爵家の次男だったヤコブは、幼少期からその大人びた言動と頭脳で神童と呼ばれていた。それで王家から元々注目されていたらしい。神童は途中から普通の人に成り下がるのも珍しくないが、幼いながらに何本かの論文まで発表し、学園では最優秀と認められた。その功績から、今回側近候補に抜擢されたようだ。低い身分からの成り上がりストーリーは大したものだ。素直に感心してしまう。「調べてみても、ヘルトル男爵家は文官として細々とやってきた家で特別おかしなところはなかった。なんで側近候補なのかっていうのは、今回の話で納得できたか?」メモをしまいながら話すシヴァを見て、私は頷いた。特別おかしなことは無い。ただ、彼が神童と言うだけ。本当に、それだけでいいんだろうか?考えながら眉間に皺が寄っていたのだろう。急に眉間にシヴァのデコピンが炸裂する。「いたっ」「だから、そんな難しい顔するなって」額を手で押さえると、いたずらっぽく笑うシヴァが見えた。その顔を見て安心する。確かに、何か難しく考えすぎているのかもしれない。「へへっ……そうだね」タイミングを見て、一度ヤコブとは話をしてみよう。そう思っていたが、そのタイミングは思っていたよりもすぐに来た。 「リリアンナ様」 翌日の放課後。今日も素早く帰っていくレオナルドを微笑ましく眺めていると、ヤコブが急に声を掛けてきた。振り返ると、彼は真剣な顔で私を見ている。「急で申し訳ありませんが、大事なお話があります」
last updateLast Updated : 2026-03-15
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第66話

「え?」急な発言に、つい戸惑ってしまう。この世界に来てはじめて、指摘されたことだから。そう、私はリリアンナ・モンリーズではない。ただの女子高生の、佐藤穂香だ。今まで一度も言われたことがない核心を突く言葉を、ここで言われるとは思っていなかった。戸惑う私をよそに、ヤコブは言葉を続ける。彼の声は低いが、その言葉に私は圧倒されそうになる。「おかしな話かもしれません。それでも、気になるんです。私は、別の貴女を知っています。その記憶の中の彼女と、今の貴女はあまりにも違いすぎる」彼はカップの縁を指先で撫でた。一瞬視線が外れ、少しだけ緊張が緩和する。ヤコブが話しているのは、ゲームでのリリアンナ・モンリーズのことなのは容易に想像できた。ゲームの彼女と私では、あまりに性格が違いすぎる。「彼女は、男性相手に屈託なく笑うような人じゃない。あの従者にも、あんなに親しく接することなんてない。何もかもが違って、おかしいのです」そんな前世でしか知らないはずのゲームの情報を、何故ヤコブは知っているのか。「貴女は、一体誰なんですか?」ヤコブの話に、私は言葉を失った。全身の血の気が引いていくように、体が冷えていくのを感じる。私以外に、ゲームのことを知っている人がいる。彼は、全てを知る神様なのか。それとも、私と同じ転生者なのか。様々な考えが頭をよぎるが、ここで安易に答えを出すわけにはいかない。私には今の身分も、立場もある。何が起こるのかは分からないのだから。「……1つだけ、聞いてみてもいい?」ヤコブは紅茶を口に含むと、静かに頷いた。「貴方こそ、誰なの? 私も、貴方のことを知らないわ。アレクサンドの側近候補は三人だったはず。残り一人は来年入学してくる。貴方は、数に入っていないのよ」重い沈黙が流れる。ヤコブは何かを確信したように目を閉じ
last updateLast Updated : 2026-03-15
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第67話

それから、私とヤコブは色々な話をした。学園の人間関係のこと、前世の思い出、そして、この世界のゲーム設定について。ヤコブが前世で年上だったこともあり、会話の中で自然と彼に敬語を使うようになっていた。前世で使っていた”ゲーム”や”マジ”などの言葉が、こんな形で自然に使えることが、何よりも嬉しかった。「ああ、やはりあのメイドは彼だったんですね」ヤコブは、シヴァがただのメイドではないことには気づいていたようだ。確かにゲーム制作者だもの。シヴァが女装していることくらい分かるわよね。そのことを確認して、小さく頷いた。「ええ。自ら女装し始めた時はビビっちゃいましたよ」「……まあ、そういうこともあるでしょう」ヤコブは困ったように苦笑いした。彼の表情は、もはやヤコブとして落ち着いた優等生のものではなく、ゲーム開発者がファンに会った時の顔だ。「そういえば、シヴァはどうしてあんな立ち回りになったんですか? SNSでも立ち絵も声優も付いていてフルボイスだったのに、なんだかおかしいって話題でしたよ」私が疑問をぶつけると、ヤコブはティーカップを指で撫でながら、苦労を思い出すように目を閉じた。「実は、製作期間的に恋愛ストーリーが間に合わないことと、彼を入れたら他のキャラとのバランスが崩れるとかで中止になってしまったんですよ。でも、立ち絵も声優も決まっていたのでとりあえず入れたんです。その頃には、次回作の話もありましたから宣伝にもなると……」「次回作⁉」私はその言葉に目を輝かせながら、思わず前のめりになった。そんなものが決まっていたのかと、プレイヤー魂が燃え上がる。「はい。彼は次回作のメイン攻略者で、そのための宣伝や布石のつもりだったんです」「わ~……そうだったんだ……私、彼が最推しだったからプレイしたかったです」
last updateLast Updated : 2026-03-15
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第68話

ヤコブとはあの日の秘密の共有を境に、一気に仲良くなれた。昼食や授業の休憩時間に、前世の話まではできないけれど、気兼ねなく話せる関係は心強い。そんな私たちの雰囲気を感じたのか、レオナルドも自然と私達の輪の中に入ってきた。彼の天真爛漫な明るさは、私とヤコブの間の空気をいつも明るくしてくれる。そんな私たち三人を、アレクサンド様は遠くから微笑ましく見守ってくれているようだ。たまに二人きりで話をする時にも、私の学園での話を楽しそうに聞いてくれる。休日にはマルグリータに会い、学園生活の話をした。楽しそうに目を輝かせる彼女は、私が語る学園の様子や、ヤコブという新しい友達の話に夢中だった。来年の入学を今から楽しみにしてくれているのだろう。シヴァも段々とヤコブとの距離感も落ち着き、過剰に感情を露わにすることは無くなった。廊下で待機する彼の姿は、以前のように完璧なメイドに戻っている。正直に言うと少し寂しいけれど、移動の馬車の中では普段通りに話せるから、それが楽しみになっている。学園生活に一ヶ月もすると慣れてくる。相変わらず、マルグリータとロミーナくらいしか、私には心から話せる女友達がいなかった。取り巻きのように話しかけてくる人はいるけれど、ゲーム内でリリアンナがやっていたように、たくさんの生徒を引き連れるようなことは私には向いていない。気を張って疲れてしまうし、元々人が多いのは苦手なのだ。どうしても少し遠巻きにしてしまう。そのせいか、彼ら以外とりわけて親しい人間はできていなかった。そんなある日の昼食時、私たちはいつものように王族専用食堂で食事を摂っていた。「女友達が欲しい……」優雅さとはかけ離れた呟きとともに、私はテーブルに突っ伏した。お行儀が悪いだろうが、この悩みは切実すぎて、優雅に食事を続けるなんて無理だ。隣では、ロミーナが困ったように微笑んでいる。「リリアンナ様と釣り合うような家格と言
last updateLast Updated : 2026-03-15
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第69話

「……お友達作りって難しいわね。シヴァ」車窓からオレンジ色の光が差し込む、いつもの馬車の中。私はクッションに体を預け、ため息とともにそう呟いた。馬車の揺れに合わせて、車内に吊るされた小さなランプが微かに揺れる。対するシヴァはあっけらかんとしていた。「改めて思うと、貴族同士の交流で知り合った人間ばかりだからな。それ以外の交流となると難しいだろ」「情報として、基礎的なことは知っているのよ。でも私、そういうお仕事的な話じゃなくてね、本当に純粋にお友達ってものが欲しいのよ」彼の言葉が正しいのは分かっている。貴族の交友はすべて、家格と利害が絡んでいるのだ。そこから純粋に親しくなれるかどうかは、その後の交流次第。問題は、イザベラ嬢とはその基本的なつながり自体存在しないということだ。「マルグリータ嬢は?」「学園に通ってると会えないし……普段から一緒にいられる子がいいの」わがままかもしれないが、私は少し拗ねた様子を見せた。夕日で影が濃くなったシヴァの顔は、真剣に私の言葉を聞いている。しばらく考えて、シヴァは提案してくれた。「趣味とか、好みとか、オレの方で調べておこうか?」「え?」「話したいんだろ? イザベラ嬢と。なら、きっかけになりそうなことくらい、調べておくよ」その言葉に、私は一気に気分が上がった。諦めかけていた希望が、彼の提案によって再び光り輝く。「ありがとう、シヴァ!」私の感謝の言葉に、シヴァはふっと安堵したように微笑んだ。  ***  シヴァの情報は早かった。翌日にはもうある提示度情報を集めてくれていたのだから。イザベラはアクセサリーの目利きが得意で、外出が好きらしい。特に最近は、町中に
last updateLast Updated : 2026-03-15
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第70話

アポイントメントを取り付けた嬉しさが冷めやらぬまま、私はシヴァが待つ帰りの馬車に乗り込んだ。馬車が走り出すとすぐに、私は前のめりになって話し出す。「シヴァ、ありがとう! 上手くいったよ」「それなら良かった」シヴァは私の興奮とは対照的に、いつものように落ち着いた声で返事をした。「今度の休日に、家に誘うことになったの。お茶会の準備、お願いしても大丈夫?」「分かった。屋敷には声を掛けて、準備しておくよ」彼の返事に安堵しながら、私はふと肝心なことに気が付いた。「そういえば、宝飾品のことで相談があるって言っちゃったんだけど……私、バルバラに全部お任せしていて、何も知らないわ」私はほとんどファッションに興味がない。可愛いとは思うけど、優柔不断で自分で選ぶ勇気が持てないのだ。そのため、全部バルバラ任せにしてしまっている。彼女は毎回楽しそうに選んでいるので、これでいいかと思っていたが、おしゃれが好きそうなイザベラと話を合わせるならそうはいかないだろう。「相談するのに?」シヴァの視線が、わずかにこちらを向く。「口から出まかせです……どうしよう、シヴァ。一緒に考えて!」私は勢いのまま、彼の腕に抱き着いた。前かがみになって正面に座る彼の腕に縋りつくと、すぐにシヴァは視線を逸らす。彼の頬が馬車内の薄暗がりの中で、かすかに赤くなっているように見えた。ハッと気づいて、すぐにシヴァの腕から手を放す。いくらメイドの格好をしていても、シヴァは男の人だもんね。さすがに距離が近すぎだ。この馬車の中での会話が心地よくて、すっかり油断していた。馬車は少しの気まずさが残ったまま、静かに揺れ続けた。  ***  なんとかシヴァと言い訳も考えて、後は約束の日
last updateLast Updated : 2026-03-16
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