「今夜、討ち入りが来る!」 「久遠村が――」 言葉が、喉の奥で絡みつく。 「この場所ごと、終わらせるつもりなんだ……!」 御影は、わずかに笑った。 「討ち入り、か……」 「愚かなことよ」 「自ら、底へ堕ちに来るとはな」 ――ちゃぷん。 水音が、やけに大きく響いた。 「ならば――」 「すべて、闇の底へ沈めるまで」 「待て!」 思わず、声が張り裂ける。 「この国の者たちはどうなる!」 「逃げ場はないのか!?」 一歩、踏み出す。 「いろはも……!」 「あいつも、守らなきゃならないんだ……!」 ――沈黙。 空気が、凍りつく。 「……面白い」 御影が、低く呟いた。 「よかろう。機会をやろう」 「ただし――」 その瞬間、温度が消えた。 「一人でも死なせれば――すべてを沈める」 「この国も」 「いろはも」 「誰一人、死なせるな」 「……分かった」 喉の奥から、絞り出す。 「必ず、止める」 御影は、わずかに目を細めた。 「ならば行け」 足元の闇が、ゆっくりと口を開く。 「遅れれば――すべては手遅れとなる」 その言葉と同時に。 身体が、沈んだ。 冷たい闇に、引きずり込まれる。 ――落ちる。 ――落ちていく。 そして―― 次に目を開けた時。 熱風が、頬を打った。 「……っ!」 目の前に広がっていたのは―― 炎。 燃え盛る、久遠村だった。 「何ごとだ……!?」 御影の言葉が、頭の奥で反響する。 ――誰一人、死なせるな。 あまりにも、残酷な条件だった。 「なんだ……」 喉が、ひりつく。 「お前は――死んだはずでは……」 ゆっくりと、振り返る。 そこに立っていたのは―― 村長だった。 焼け落ちる家々の炎が、その顔を照らす。 だがその表情は、生者のものではない。 「なんだこれは……!」 思わず詰め寄る。 「討ち入りに行くのではなかったのか!? 何故!?村人達を...!?」 村長は、しばし黙ったあと―― 口の端を、ぐにゃりと歪めた。 「ハハ……」 「ハハハハハッ!!」 異様な笑い声が、炎の中に響き渡る。 「お主の目は節穴
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