「……体調不良、ですか。昨日も会食の途中で、ひどく顔色が悪そうでしたけど」 消え入りそうな声で口を挟むと、二人の鋭い視線が一斉にこちらへ突き刺さった。「会食の途中?」 宗隆の目が、眇められる。「お前、昨夜は理恩くんと一緒だったのだろう。なぜ彼の体調を気遣い、うまく立ち回らない。相手を立てて気分良くさせるのが、お前の役目だろうが」「そ、それは……」 深夜の通りに車から放り出されたなどと、言えるはずがなかった。「私がいくら気を使っても、理恩がずっと上の空で……全然、話を聞いてくれなくて」「上の空にさせているお前が悪いのだろう!」 ドンッ、と。 分厚い手がテーブルを叩き、銀のフォークがガチャリと跳ねた。「見栄えが良いからと、わざわざあの出来損ないの長女を追い出してまで、お前を獅子王の隣に据えてやったのだ。それなのに、相手の機嫌一つ取れず、仕事の足まで引っ張るつもりか!」 怒声が、鼓膜をビリビリと震わせる。「私のせいじゃありません! 理恩が勝手にイライラして、八つ当たりしてくるだけで……」「言い訳など聞きたくない。お前は、顔だけは良いが、中身は本当に空っぽだな」 冷ややかな声が、横から降ってきた。 トーストをかじっていた継母が、ひどく軽蔑したような目でこちらを見下ろしている。「瀬理亜は、確かに薄暗くて陰気だったけれど。黙って裏方に回り、男の靴を磨き、肩を揉み、機嫌を取ることだけは完璧にこなしていたわよ。……お前は、あの泥棒猫の代わりすら満足にできないの?」 血の気が、一気に足元へと引いていくのがわかった。 瀬理亜の代わり。 あの、埃まみれの雑用係の代わりすらできないと。 胃の奥がギュッと雑巾を絞るように収縮し、昨日の夕食から何も食べていないというのに、強烈な吐き気が込み上げてくる。「……私は、あの女の代わりなんかじゃありません」 震
Last Updated : 2026-05-20 Read more