叱りつけるような口調。けれど、声はひどくかすれ、音の端々が微かに震えている。「水……もらえ、ますか……」「……あ、ああ。待っていろ」 黎は弾かれたように動き、サイドテーブルに置かれていたガラスのコップを手に取った。 氷が再び、カランと澄んだ音を立てる。 ベッドの縁に腰掛けた黎が、コップの縁をゆっくりと口元へ運んでくる。 上半身をわずかに起こそうとすると、後頭部から背骨にかけて、鉛を流し込まれたような重い痛みが走った。シーツを握りしめ、顔をしかめる。「無理に動くな。そのまま口を開けろ」 黎の左手が、後頭部の枕の下に差し込まれ、頭部全体を布越しにそっと持ち上げてくれた。 直接、皮膚に触れないように。 髪の毛一本にも、自分の指が直接触れないように、極端なまでに慎重な力加減。 コップの縁から、冷たい水が流れ込んでくる。乾ききった粘膜に水分が染み渡り、火照った胃の腑へと落ちていく。少しだけ呼吸が楽になった。「……ありがとうございます」 コップが離れ、枕越しの支えがスッと抜ける。 再びベッドに背中を預けると、黎はすぐに立ち上がり、また一歩、距離を置いた。 間接照明の光が、黎の横顔に深い影を落としている。 唇は、血が滲むほどに強く噛み締められ、両手はズボンの脇で、指の関節が真っ白になるほど固く握り込まれていた。 あの地下牢で、白亜が放った言葉。 氷の刃のような正論が、まぶたの裏にフラッシュバックする。『その力は、命を削る力。人間が竜の傍にいるための代償としては、ちょっと高すぎると思わない?』 息が詰まる。 黎が何を恐れているのか、痛いほどに理解できた。 あの時、有栖川の寄生具を破壊するために、無意識の限界を超えて力を引き出した。その結果、熱を出し、こうして倒れ込んでいる。 黎は、自分のせいだと思っているのだ。 自分が傍にいるから。自分が、触れるだけで無自覚に浄化を引き出してしまう
Last Updated : 2026-05-29 Read more