今日は朝から、何度も電話がかかってきていた。それも、すべて別々の相手からだった。 今回の騒動が起きて以来、着信を知らせる振動を感じるたびに、また何か新しい問題が起きたのではないかと、胸が落ち着かなくなってしまう。 紗月は篤司に一言断ってから車を降り、スマートフォンを取り出して画面を確認した。 表示されていたのは、見覚えのない電話番号だった。発信元の地域には、東京と表示されている。 一瞬ためらったものの、紗月はそのまま通話に出た。「もしもし?」「友枝紗月さんでいらっしゃいますか?」 電話の向こうから聞こえてきたのは、女性の声だった。 どこかで聞いた覚えのある声のような気がしたものの、すぐには誰なのか思い出せない。「はい。失礼ですが、どちら様でしょうか?」「永長千尋です。覚えていらっしゃるでしょうか? オーディションの時に一度お会いして、名刺もお渡ししたのですが」 その名前を聞いてから数秒ほど経ったところで、紗月の脳裏に、ようやく一人の女性の顔がぼんやりと浮かび上がった。 永長千尋。 小さな芸能事務所でマネージャーを務めている女性だ。以前、オーディションで顔を合わせた際、紗月に興味を持ち、自分の事務所へ所属しないかと声をかけてくれたことがある。 ただ、当時の紗月は、そもそも芸能事務所と契約するかどうかさえ決めかねていた。 せっかく名刺をもらい、誘いの言葉までかけてもらったというのに、結局そのまま連絡する機会を逃し、いつしか忘れてしまっていたのだ。 思い出した途端、紗月は少し申し訳なくなり、慌てて声を整えた。「あ……ご無沙汰しています」「友枝さん、近いうちにお時間はありますか? よろしければ、一度お会いできませんか」 千尋は穏やかな口調でそう切り出したあと、少しだけ間を置いて続けた。「正直に言うと、あの日からずっと、友枝さんから連絡をいただけるのを待っていたんです。でも……どうやら、そのおつもりはなかったようですね」「申し訳ありません……」「いえ、責めているわけではありません。今日、SNSのトレンドで友枝さんのお名前を見かけて、思い切ってお電話してみたんです」 千尋の声に、ためらいは感じられなかった。今回の騒動を知ったうえで、それでも紗月へ連絡を取ろうと決めたのだろう。その口調には、迷いのない確かな意志が滲んでいた。「私
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