「え……?」 あまりにも突然だったせいで、紗月は一瞬、言われたことの意味をうまく理解できなかった。 思わず隣へ顔を向ける。 篤司は前方の道路へ真っ直ぐ視線を向け、いつもと変わらない落ち着いた表情で運転を続けていた。 冗談を言っている様子でも、何となく口にしただけのようにも見えない。 その横顔をしばらく見つめてから、紗月はようやく礼を言わなければと思い出した。「……ありがとうございます」「紗月さんの演技には、人の心を動かす力があります。僕は素人だから、姉さんの言葉ほど説得力はないかもしれませんけど……」 一度、言葉を探すようにわずかな間が空く。 篤司自身、こういうことを誰かに伝えるのには慣れていないのかもしれない。それでも途中で誤魔化すことはなく、少し考えたあと、真面目な声音のまま続けた。「一人の観客として、僕は紗月さんの最初のファンになりたいです」 紗月は何度か目を瞬かせた。 あまりにも真っ直ぐな言葉だった。 篤司もこうしたことを口にするのは初めてだったらしく、言い終えた途端、どこか落ち着かない様子で小さく咳払いをする。 そんな不器用な様子がおかしくて、紗月の口元には自然と柔らかな笑みが浮かんだ。 何より、篤司がこんなふうに真っ直ぐ自分のことを信じてくれている、その気持ちが純粋に嬉しかった。 紗月は胸の奥に広がる温かなものを感じながら、少しだけ背筋を伸ばし、改めて真剣な声で篤司へ告げる。「ありがとうございます、篤司さん。私、頑張りますね……私を信じてくれる、最初のファンのためにも」* 車内には穏やかで心地よい空気が流れており、紗月の気分も久しぶりにすっかり落ち着いていた。 やがて車は、紗月が新しく暮らし始めたマンションの前でゆっくりと停まる。彼女がいつの間にか引っ越していたことについて、篤司は何も尋ねようとはしなかった。余計なことには踏み込まず、ただ紗月が車を降りようとしたところで、ごく自然な調子で声をかける。「紗月さん、今夜はゆっくり休んでください。……おやすみなさい」「おやすみなさい、篤司さん」 紗月は柔らかな笑みを浮かべたまま車を降りた。 ドアを閉めたあともその場に少しだけ立ち止まり、車外から篤司へ手を振る。篤司の車が夜道の向こうへ遠ざかっていくのを見届けてから、マンションへ入ろうと振り返った瞬間、エントラン
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