最初に公開された記事には、紗月の名前はどこにも書かれていなかった。 ところが、いったいどこから情報が漏れたのか、源間の次回作で主演を務めるのが友枝紗月だという情報が、ほどなくして突然ネット上へ流れ始めた。 ドラマの宣伝用に撮影したはずの紗月のビジュアルまで流出している。 ただ、掲載されている写真は正式な宣材写真には見えなかった。 撮影中の紗月を少し離れた場所から狙い、本人に気づかれないよう密かに撮ったかのような、不自然な角度の写真だった。 騒動への注目が高まるにつれ、「友枝紗月」という名前にも急速に多くの視線が集まり始めた。 もっとも、紗月の名前が世間へ知られるのは、これがほとんど初めてだった。 これまで出演作もなく、女優としての経歴さえほとんど知られていない。そのため、ネット上で飛び交う話題の大半は、「友枝紗月とはいったい何者なのか」というものだった。 やがて、源間が自分の欲望を満たすために、後ろ盾も実績もない無名の素人を主演へ抜擢したに違いないと決めつける声まで増えていく。 枕営業で役を得たのではないか。 監督と特別な関係があるから主演に選ばれたのではないか。 根拠のない憶測は、いつしか事実であるかのように語られ始めていた。 あまりにも下劣だ。 画面に並ぶ言葉を追いながら、慎一の表情はますます険しくなっていった。 今回の記事について、慎一は本当に何も知らなかった。 昨夜、紗月の言葉に腹を立てていたことは認める。 紗月は何日も慎一を避け、電話にもろくに出ようとしなかった。慎一はわざわざ仕事の予定まで変更し、彼女の住むマンションの前で待っていた。 それなのに、ようやく目にした紗月は、自分ではない男の隣にいた。 親しげに寄り添い、何の警戒もなく言葉を交わし、楽しそうに笑っていた。 その光景を目にした瞬間に湧き上がった不快感を、慎一は今でもはっきり覚えている。 たとえ紗月を憎んでいるつもりでも、慎一が本当に望んでいたのは、何もかもが以前と同じままであることだった。 紗月が自分の傍にいて、変わらず自分だけを見つめていること。 どれほど冷たく扱っても、どれほど突き放しても、それでも最後には自分のもとへ戻り、以前と同じように自分を愛していること。 慎一にとって、それはあまりにも長く当たり前のことだった。 だからこそ、紗月の
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