「あの勢いを見てよ。店ごと買い占めるつもりじゃないだろうな?」かなりの時間が過ぎても、二人が飽きることなく服を選び続けているのを見て、湊は思わず眉をひそめた。景は顔を上げ、絃葉へ愛おしげな眼差しを向けた。「好きにさせてやればいい。絃葉が喜ぶこと以上に大切なものはない」「はいはい......」湊は聞いていられないとばかりに、しきりに首を振った。「お前の口からそんな言葉が出るなんて、いまだに信じられない。あの築山社長だぞ?」景は横目で彼を見た。「俺は妻の尻に敷かれる生活を楽しんでいる」湊は言葉を失った。景は諭すように彼の肩をたたいた。「お前も、じきに好きになる」そう言うと、景は遠くへ目を向けた。その瞳には、未来への憧れが満ちている。「街に無数の明かりがともる中、その一つが自分の帰りを待っている。そう思えるのは幸せなことだ」湊も珍しく真剣な表情になった。「ああ、そうだな。以前の俺は、結婚なんて束縛にすぎないと思っていた。でも悠ちゃんのおかげで分かったよ。運命の相手と出会えたなら、結婚も幸せで楽しいものなんだって」二人の男は互いの顔を見つめ、自然と笑みを交わした。――景が立てた予定は滞りなく進み、瞬く間に結納の日を迎えた。景は昔ながらのしきたりを重んじる男だったため、すべてを伝統にのっとって進め、日取りも縁起のよい大安を選んだ。結納を2日後に控え、西尾家の本邸は隅々まできれいに掃き清められた。邸宅全体が華やかな祝いの雰囲気に包まれていた。景は早くから、何着もの結納用の衣装を届けさせていた。絃葉は多磨城にいる親しい女友達を全員呼び、飽きることなく一着ずつ試着していった。皆は幸せそうに彼女を取り囲み、着替えを手伝いながら、景はセンスも見る目も抜群だと口々に褒めた。結納の前夜、悠は西尾家の本邸に泊まった。二人は子どもの頃と同じように絃葉の部屋で並んで横になり、翌日の様子を想像しながら、にぎやかに語り合った。そして二人は、互いに用意した贈り物を交換した。悠が絃葉へ贈ったのは、美しい透明感をたたえた宝石の腕輪だった。悠が一目見て気に入った品で、絃葉の雰囲気にもよく似合っている。絃葉は感激しながら贈り物を受け取ると、自分も箱を取り出し、悠へ差し出した。箱を開けた瞬
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