All Chapters of 没落した薔薇は、碧夜の星になる: Chapter 31 - Chapter 40

47 Chapters

海の藻屑 Ⅱ

 リゼルは男が正体を隠すつもりがないのだと理解し、スッと立ち上がる。 話を聞かれたと分かっていても、その男は余裕の笑みを漏らしいつもの雰囲気だ。 セルジオ――屋敷にたまに来る情報屋だが、リゼルはこの男を警戒している。 明らかに騎士のような体の線、掌のマメ、腰の座り方、歩き方、そして時々見せる射るような視線。 それらがただの情報屋には見えない。 オルレインと繋がっているなら、余計に警戒対象になる。 静止を聞かずにその場を去ろうとするリゼルの背中に、セルジオは声を掛けて来る。「あぁ、待って待って。若い女の子がこんな時間に一人歩きは危ないよ?」「お構いなく。成人しております」「へぇ……男爵の家で見た時は、まだ年端も行かないように見えたけど……」 両腕を組み、壁に凭れるようにしてこちらを見ている。 振り返るとセルジオは驚いた様に目を見開いた。「お前、その顔どうしたの? 痣になってるけど……」 ジェイドに殴られた所が、時間が経って痣になっているのだろう。「セルジオ様こそこんな所で何を?」「それはお前に答えるべき事かな?」「いいえ、詮索が過ぎました。行きます」「お前、俺と取引しない?」 そう言われて、リゼルは足を止める。 言葉もなく振り返ると、セルジオはニッコリと笑って見せた。「取引……?」「俺はベル様にもう一度会いたいんだよね」「それは旦那様にご相談なさっては?」「お前はそれで良いの? 世間に素性をバラされたら、都合が悪いんじゃない? 特に炊事場で飼ってる犬とか」 その言葉にリゼルは瞼を伏せる。 セルジオが自分達の事をどれだけ把握しているかは分からない。「お前達はバロー領の出身だろう? 気付いてないとでも思った?」
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ケジメ

 追い掛けられて逃げ惑う。 泥濘に足を取られ、泥だらけで、何なら後ろも先も見えない。 息は上がり、見えない追跡者に恐怖を抱きながら、行き先も分からない不安が追い打ちをかける。 そんな世界に、遠くから聞こえる声――――。「ベル……ベルッ?」 体を揺さぶられて、ようやく瞼を押し上げる。 目の前で不安そうにしているのは、ジェイドだった。「ジェ……ッ」 喉が張り付いて声が出ない。 ラヴェルは喉を詰めて、眉を顰める。 最悪の目覚め、体は重く、まだ意識も朦朧としている気がした。「無理して喋らなくて良い。丸一日寝ていたんだ」 ジェイドの言葉に、ホッと息を吐いた。 迷惑ばかりかけて、この有様。 身が弱っているせいなのか、すぐに涙が込み上げそうになる。「どこか辛いか? 痛いのか?」 違う。違うんだ。 何も出来ずにいる、そんな自分が情けないだけで。 汗で額に張り付いた髪を避けるジェイドの指が、冷たくて気持ち良かった。「食べやすいものを用意するから、少し食べてまた休もう」 ラヴェルはジェイドを見つめ、甘える子供のようにコクリと頷いた。 ジェイドが用意した果物と、果実水を気持ち程度口にして、疲労感が勝手に眠りへと連れて行く。 眠りに落ちても、追われる夢ばかり見て、深く眠れず、代わりに空が深く沈んで行った。「ジェイ……ド、おき、る……」「大丈夫か?」 半身を起こし、背中に差し込まれた枕に体を預け深く息を吐いた。「熱は下がったみたいだな」 ジェイドは額に手を当て、そう零す。「うん、ありがとう……」
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秘密

 長い沈黙の後、ラヴェルは辛うじて口の端から「ははっ」と乾いた笑いを漏らした。「最初から? ここに? それはどう言う意味だッ!」 ラヴェルは自分の背凭れにしている枕を鷲掴みにして、ジェイドに投げつける。「お前がローゼン家を潰したのか? デルメール家の復讐の為に、お前がッ⁉」 あの夜会から帰った夜――。 血塗れで倒れていたクレイの姿を思い出して、余計に奥歯を噛み締める。「お前が、クレイを殺したのか……?」「……そうだ」「何故だッ! 何でクレイをッ!!」 あの手際の良さなら、殺さずに自分を連れ去る事だって出来たはず。 何より、何故誘拐と言う手段を取った挙句、海に捨てられたのか。 海に捨てる必要が何処にあった――? いや、そこじゃない。 そんな訳の分からない考察さえ過る程度に、混乱していた。「それは私がご説明致します」 後ろで控えていたリゼルが、静かにそう口を挟む。「あの執事を殺したのは、私です」 無表情のまま告げられたその一言に、驚き過ぎて言葉が詰まった。 こんな小さな少女に、そんな事が出来るなんて誰も思わないだろう。「私はとある軍で暗部の特殊訓練を受けております。ローゼン家の屋敷へ侵入し、ラヴェル様を連れ出し、海に捨てる。それを実行したのは、私と、このレヴィン」 ラヴェルは罪の告白を、今日の晩餐のメニューでも教えるかのように喋るリゼルを、ただ黙って見ていた。 呆れて、いや、信じ難くて。 クレイを殺し、自分を海へと投げ捨てた者達と、一年以上同じ屋敷で暮らしていた。 
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秘密 Ⅱ

 短い沈黙の間、ジェイドは一瞬も視線を逸らさない。 ラヴェルもその瞳の奥に、何があるのか、ただジッと見つめ合う。 自分を攫い、海に捨て、それを助けた。 自作自演の大芝居の理由が、どこにあるのかその瞳の奥を覗いても、何も分からない。「リゼル、服を脱げ」 ジェイドは短くそう告げた。「はい、旦那様」 迷うことなくそう答えたリゼルが、着ているお仕着せを脱ぎ始める。「いや、ちょっ……待ってくれっ! 何してっ……」「ベル様、よく見て下さい」 恥ずかしがる素振りも見せずに、リゼルは服を脱ぎ去り、隣に立っているレヴィンだけがソワソワしている。 裸になったリゼルを直視できないラヴェルは、手を眼前に当て、見ない様に顔を逸らした。「ちゃんと見てくれ、ベル」 ジェイドに腕を掴まれ。  それでも尚、ラヴェルは少女と呼んだ方がしっくりくるリゼルの裸を見る事は出来ない。「ジェイドッ! やめてくれっ!」 眼前に当てた手を引かれ、ラヴェルは抵抗する。「リゼルは君と同じ秘密を持っている」 ジェイドのその言葉に、ラヴェルはピタリと動きを止める。「なんっ……え?」 思わず顔を上げて、その視線の先にあったのはリゼルの細い肢体だった。 彼女の体はやはり子供のように小さいが、体中古い傷跡だらけで、見るに堪えない程痛々しい。 そして下半身には未発達でささやかな、あるはずない物がついていた。  何故――?  そう思った瞬間、一瞬だけ思考停止したが、ハッと気づいてまた顔を逸らした。「ふ、服を着てくれっ……わかっ、分かったから!」 どんな理由があっても、こんな人前
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裏切者の協力者

 ラヴェルは日記を手に、数日呆然と過ごした。 相変わらずリゼルは傍に付いているが、話す事もなく、鬱々とした空気が部屋の中に漂う。 食堂に降りる事もせず、寝台脇に用意される食事にも手を付けられない。「まだお食事する気にはなられませんか?」 リゼルは淡々と、いつもの調子で話しかけて来る。「……」「ベル様が私を厭う気持ちはわかります。あの執事を殺したのは、私ですから」 クレイを殺した張本人が、すました顔で傍に立ってお茶を淹れる。 整理の付かない感情は、苛立ち、焦り、そして消沈し、どう答えればいいのかすら、もう分からない。「あの時、現場での判断は私に委ねられていました」 そう切り出したリゼルは、ティーポットを置いてこちらを見るでもなく話を続けた。「ベル様が夜会から帰って来た時、あの男はベル様……いや、ラヴェル様の部屋にいた」 ラヴェルは普段無口なリゼルが喋るのを、窓の外を呆然と見ながら聞き流す。 何も聞きたくない。 何も考えたくない。 そういう拒絶反応がリゼルを見る事さえ、難しくさせる。「あの執事が鍵を持ち、貴方様の部屋で何をしていたのか?」 そう言われて、ラヴェルは問われた事を反芻する。 夜会の帰り、遅い時間に、出迎えもなくクレイは自分の部屋にいた。 そこには誘拐犯であるリゼルとレヴィンもいた。「あの男は、ラヴェル様の寝具にある薬を染み込ませる為、あの部屋にいたのです」「……く、すり?」 ふと振り返ると、どこを見ているのか分からないリゼルの暗い瞳と目が合った。「あの日、我々はあの男に接触し、鍵を貰う事になっていました」 リゼルが言うには、クレイは家人が留
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逸れた視線

 徹夜して日記を読み、ラヴェルはある選択を迫られていた。 明朝来ると言っていたリゼルが来るまでには、まだ明けきれぬ空が暗い頃。 寝台から起き上がり、床に足をつけた途端よろけて座り込む。 数日まともに食事していないものだから、単純に体力がないらしい。「ははっ、自業自得だな」 公爵家で過ごしていた頃は、日課のように剣技も訓練していた。 それこそ、クレイが相手となって日々鍛錬を積んだものだ。「それがこんなに痩せるとは……」 ラヴェルは自分のやせ細った手首を見てそう零す。 ようやく立ち上がり、ふらふらと廊下に出た。 いつも人気のないデルメール家の屋敷だが、今はより深い眠りについた様に静寂が漂っている。 ラヴェルは夜着のまま壁伝いに手をついて、右手には日記を抱え、静まり返った廊下をひたすら進んだ。 ある部屋の前でピタリ、と足を止める。 暫くの間、扉の前で立ちすくみ、扉に額を付けて「ジェイド」と小声で漏らした。 彼が何をしようとしているのか。 日記を読めば、明らかだった。 それでもまだ、自分が公爵家で育った二十年を捨てられずにいるのは確かだ。 一晩で捨てられようもない。 でも――――。 意を決したように体を起こし、ラヴェルは握りしめた拳で扉を二度、ノックした。 僅かな沈黙。 扉の向こうにいるはずのジェイドが出て来るのを待つ。「……誰だ?」 深い飴色の扉の向こうから、ジェイドが問いかける。「わ、私……」 声が震えた。 ラヴェルは一歩下がって扉が開くのを待った。「ベル……?」 心配したようなジェイドの声に、ラヴェルはホッと眉尻を下げる。
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岬の聖女

 押し黙ってしまったラヴェルに、ジェイドは視線を戻す。 苦い物を口に含んだような顔で、大事そうに日記を膝に抱えている。 ジェイドにとって日記を渡した事は、大きな賭けだった。 その日記を読んで彼がここに留まるか否かは、彼自身に決めて欲しかったのだ。 縛りつけ、囲い、留まらせる事は難しくない。 だが、彼自身が選ぶ事には、大きな意味がある。「彼女に会いたいか?」 ジェイドがそう問うと、ラヴェルは弾かれた様に顔を上げてこちらを見た。 ラヴェルは一瞬戸惑い、迷いながらもコクリと小さく頷く。「良いよ。だが、会わせるには条件がある」 ジェイドは目の前にいる憔悴したラヴェルを見て、そう答えた。 ふっと顔を上げたラヴェルの前に跪いて、ジェイドは見上げるようにして言葉を続ける。「湯浴みして、朝食をとるんだ」「え……?」「食べてないのだろう? リゼルからそう聞いている」「あ、まぁ……」 バツが悪そうに唇を噛んだラヴェルを見て、幼少期の気の強い彼を思い出す。「酷い顔色だ。彼女に会いに行く前に、少し食事して」 ジェイドはそう言ってラヴェルの頬にかかる髪を、指で優しくよけてやった。 唖然としたラヴェルは子供のように聞き返す。「それが条件……?」「あぁ、そうだ」 彼は昔から愛に飢えた子供だった。 誰からも期待され、誰からも称賛され、そして誰からも本心を向けては貰えない。 その孤独を悟らせないように伸ばした背筋や、凛とした立ち姿は今でも愛おしい。 あの頃、自分に力があれば――そんな無意味な事まで考える。◇◇◇ 久しぶりに食事をして、着替える。 リゼルは一言も喋らず
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岬の聖女 Ⅱ

「ユリアナ……?」「祖母だ」「えっ?」 あの写真の――? そう聞き返そうとしたが、墓石を見るジェイドの眼差しが余りにも弱々しくて言葉を飲んだ。 ラヴェルは今の今まで他の女の陰を疑っていた自分が、恥ずかしくなって俯く。「ここに来るのが彼女の日課でね」 そう言ったジェイドは墓石の前に跪いて愛おしそうに眺めた。「彼女は君やリゼルと同じ体を持っていた」「え……」「そのせいで屋敷に敷地内から殆ど出ずに暮らしていたんだ」 ジェイドが言うには、他国から嫁いで来た祖母ユリアナは、祖父の言いつけで屋敷からこの岬までしか外出許可を出して貰えなかったらしい。「ローゼン家と繋がりがあった祖父は、エルメダの日記に何が書かれているのか、昔から知っていた」「昔から……」「自分が娶った妻が“アンドール”だと知って、彼は彼女を閉じ込めたんだ」「王国に利用されないように……?」 そう聞くと、ジェイドは頷いて見せた。「世間知らずと言うわけでは無かったが、少女のような可愛い人だった。いつも外に出たがって、幼い頃はよく散歩に付き合わされたよ」「そう……だったの……」「父親と一緒にローゼン家の仕事を手伝う為に王都へ行くことになって、彼女とも頻繁に会えなくなったが、帰って来たら王都の話を聞かせてくれってせがまれて……」 段々と声が消え入る。「だから、私の体の秘密を知っていたの?」 あの痴態を、あの現場を見ただけで、この体の秘密を知っているのは少し疑問だった。「君のお父上が、君を王にすると言っていたのを聞いた。君が“アンドール”として王になれば、この国の王家はエルメダの再来だ」「エルメダの再来……」
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嫌疑

 岬から帰って来ると、玄関先に二人の男が見えた。 遠目に見ても軍服を着て、只者ではない雰囲気が分かる。 ラヴェルはジッと屋敷の方へと凝らした。「調査隊か……」 足を止めそう呟いた低いジェイドの声に、ラヴェルは「そうね」と短く答えた。 暫くその場で様子を見ていたが、立ち去る気配はない。 そして玄関先で対応しているリゼルが、屋敷の中へ彼らを招き入れる。「帰らないらしい」 そう言ってジェイドはまた歩き始めた。 主人の留守に、いつ帰って来るかもわからないのに、招き入れる人物。 そう考えると、強制的に「帰れ」と言えない立場の人間なのだろうと、ラヴェルは警戒する。「リゼル達は大丈夫かしら……」「ふっ……君は優しいな。リゼル達が何をしたか、忘れたわけではないだろう」「そりゃ……そうだけど。でも、彼らにも理由があるのは分かるつもりよ」「そうか。今屋敷に来ているのは国軍の制服を着ているが、夜鷹だろう」「え……じゃあ、早く戻らないとっ……」 ラヴェルはそう言ってもう一度屋敷へと視線を投げた。 もし不躾に踏み込まれたりしたら、レヴィンの正体もバレてしまうかもしれない。 それを見て、ジェイドが眉尻を下げ、笑みを浮かべて口を開いた。「ベル、さっきの君の提案」「う、うん」「受けよう」「……ありがとう」 一か八か。 ラヴェルはそういう賭ける気持ちである事を提案した。 でもそれが、ジェイドにとっても自分にとっても良いと思えたのだ。 玄関先に着くと小柄なリゼルが大柄な二人の男を相手に、問答を繰り返している。「主人は外出中だと申し上げております」「だから待たせてくれと言っている」「主が不在の屋敷に勝手に入れる訳には参りません」「俺達を誰だと思ってっ……」 一人がそう声を荒げた時、隣に立つもう一人が「止めろ」と制す。 その男は落ち着き払い、リゼルに「すまないね」と断りを入れた。「では、ここでも構わない。待たせて貰おう」「いつお帰りになるか……」 そう言いかけたリゼルがこちらに気付き、口を閉ざした。「……おかえりなさいませ、旦那様、ベル様」「あぁ、今戻った。私に御用でしたか?」 ジェイドが、背中に庇うようにして目の前に立つ。 ラヴェルはその広い背中に隠れるようにして、軍服を着た男たちを盗み見た。 何らかの夜会で会っていたとし
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海賊の薔薇

 取り残されたラヴェルは国軍の馬車が見えなくなるまで玄関先に佇んだ。 何も出来ない自分が玄関先で呆然と立っている。 これからどうすれば――?「ベル様、中へ入りましょう」「……そう、ね」 前を歩くリゼルはいつも通り動揺していないように見える。「リゼル、今回の密輸の件、貴女は何の事か分かっているの?」 ラヴェルは足を止めてリゼルの背中に問いかけた。 ゆっくりとこちらを振り返ったリゼルは言葉を選ぶような間を見せた。「何か知っているなら話して。このまま待っているわけには行かないわ」「承知しました。知っている事をお話します」 食堂へと連れていかれ、そこにはネロとレヴィンも姿を見せる。 長いテーブルの先でネロに椅子を引かれ、ラヴェルは静かにそこに腰を下ろした。「ベル様、少し前に情報屋が来た時、港で問題が起こっていると言っていたのを覚えていらっしゃいますか?」 リゼルにそう問われて、セルジオと庭で話していた時のことを思い出した。 確かに彼はそれをジェイドに伝えに来た、と言っていた。「それが密輸だったと言う事?」「厳密にいえば密輸ではないのですが……」「どう言う意味? 分かるように話して」 リゼルの回りくどい説明にラヴェルは少し語気を強めた。「今、港では“海賊の薔薇”と言う薬が出回っています。ある花を、強い酒に漬けて出来る中毒性のある代物です」「海賊の薔薇……?」「その酒は見た目も美しく、不安をやわらげ、飲めば気持ち良く眠れる。濃度さえ間違えなければ……」「濃度……?」「ベル様はその匂いを知っているはずです」 リゼルにそう言われて、一瞬、言葉を飲んだ。 酒のような芳香――あの連れ
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