「前デルメール男爵が、横領疑惑でローゼン家から切られたんですわ」 真っすぐに自分を見ているセルジオの目に、ラヴェルはただ何度も瞬きをして言葉を探す。 知らない。 どう言う事だ? ジェイドの父親は確かに、自分の父親の腹心として一緒に働いていた。 だが、彼ら親子が姿を消した理由は知らされなかった。 父親からも、クレイからも、誰からも教えて貰えなかった背景にそんな話があったなんて――。「結局、疑われただけで審議は分からなかったらしいですけどね」 セルジオはそう言って目の前のティーカップを口元へ運ぶ。 ラヴェルはその長い指の先をただジッと見て、驚きも疑問も顔に出ない様に務めた。「そ、う……」「それにローゼン家の嫡男がいるなら、男爵こそ恨んでいるでしょう。冤罪で父親は病に倒れ、領地を脅かされたのだから」「恨んで……」 そう言われてラヴェルは心臓を握られた様に息が詰まった。 ティーカップに指をかければ、震えてしまうかもしれない。 ラヴェルは膝の上に重ねた手を、ただぎゅっと握る。「だから私は、海に漂着した宝石様がローゼン家の嫡男で、日記と共に王家に売る為に監禁されているのではないかと思ったくらいですよ」 王家に売る――――? もし、仮にジェイドの本心がローゼン家への復讐にあるとしたら、その発想は突飛とは言い切れない。 失った領地の過失を取り返すには、追われているラヴェル・ローゼンを差し出す事に大きな意味を持つ。 いやでも、それなら見つけてすぐに差し出しているだろう。 こんな女装までさせて、一年以上匿う必要はない。「セルジオ様、お言葉に気を付けて下さい。主人を貶める発言は許しません」 リゼルの低い声に、ラヴェルはハッと意識を取り戻した。「いや
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