ベッドの端に座ったまま、私は朔弥さんの袖をつかんでいた。 部屋の明かりは消え、街の光だけが足元に差していた。 さっき自分が言った言葉が、まだ耳の内側に残っていた。 ――あなたが欲しいです。 朔弥さんの動きが止まった。 喉がゆっくり上下した。 生唾を飲み込んだのだと、気づくまでに少し時間がかかった。 そのわずかな動きだけで、男の欲が音もなく揺れたのだと、はっきりわかった。 その時、カーテンの隙間で、小さな光がはねた。 「真尋?」 朔弥さんがすぐに気づく。 「……いえ」 気のせいかもしれない。 車のライトか、向かいの窓に反射しただけかもしれない。 そう思おうとした瞬間、体がふわりと倒れた。 朔弥さんに肩を押され、背中がやわらかいシーツに沈む。 袖をつかんでいた手は、そのまま彼の胸元に触れた。 布越しに伝わる熱と硬い筋肉の感触が、掌にじんわり染み込んでくる。 彼が息をするたび、胸板のかすかな動きまで手の中に伝わった。 「……真尋」 「はい」 「さっきの言葉、取り消さないでくれ」 「取り消しません」 そう答えると、彼の目元がわずかにゆるんだ。 総会で壇上に立っていた人が、今は私を見下ろしている。 その差に、心がついていかない。 朔弥さんの手が、私の髪に触れた。 乱れていた髪を、ゆっくり耳にかける。指先のやさしい感触が、耳の裏をくすぐるように熱を走らせた。 その熱が首筋まで降りてきて、肌の内側までじんわり火照る。 「今日の私、どうでしたか」 「凛々しかった」 「……それ、褒め言葉ですか?」 「そのつもりだ。それに……きれいだ」 思っていたよりまっすぐに言われて、返事に困った。 彼は少しだけ笑った。 その笑い方が優しくて、たまらなかった。 心臓に悪い。 でも、嬉しかった。 会社の資料でも、妻としての役割でも、子供を産めるかどうかでもなく。 ただ私を見て、きれいだと言われることが、こんなにも嬉しいなんて知らなかった。 熱が一気に下腹へ落ちていく。 じわりと、奥の方まで重く沈んでいく。 朔弥さんが身を起こし、ネクタイを外した。 さっきまで私の手に触れていた布が、彼の指先でほどける。 喉元が少しずつ露わになるのを見て、目をそら
Read more