骨折した左腕を三角巾で吊った榊原さんが、右手で差し出した紙には、日付と金額が並んでいた。 私の担当を減らされた日。 城戸さんとの写真が流れた日。 妊娠がわかったあと、澄麗が会社へ来た日。 そのたびに、一条家の関連会社から榊原さんへ金が動いている。 「何を依頼されたんですか?」 「いわゆる別れさせ屋です」 別れさせ屋。 ドラマの中だけに出てくる仕事だと思っていた。 まさか、自分の結婚が標的になっていたなんて。 榊原さんの右手が、三角巾から出た左手の薬指を覆った。 指輪はない。それなのに、根元だけが細く白い。 すぐに手を離し、何事もなかったように右手を膝へ載せる。 「高瀬さんと御門社長を離婚させる。そのために、あなたから仕事と信用を奪うよう依頼されました」 「私の担当を減らしたのも」 「仕事から退かせるためです」 「城戸さんとの写真は」 「不倫を疑わせるためです」 「澄麗さんが会社へ来たのは」 「あなたの代わりはいると、見せつけるためです」 全部仕組まれていた。 仕事を奪われたことも、城戸さんとの関係を疑われたことも、澄麗が当然のように私の席へ入ってきたことも。 私が自分から退職し、離婚を選ぶように。 そうなれば澄麗は、何も知らない顔で朔弥さんの隣に座れる。 「城戸さんの推薦状もですか」 「はい。城戸さんの署名は本物ですが、説明された目的が違います」 私の仕事が足りなかったから、席を奪われたのだと思っていた。 妻として足りないから、若くて家柄のいい澄麗に代えられるのだと。 全部、そう思わせるためだった。 悔しさで、紙の端を強くつまんだ。 城戸さんが頭を下げた。 「確認が足りませんでした」 「城戸さんまで謝らないでください」 「私の名前で、高瀬さんの席を奪われた」 「城戸さんの名前を使ったのは、榊原さんです」 榊原さんが、まっすぐ私を見る。 「はい」 「あなたにも、腹が立っています」 「当然です」 本当に可愛げがない。 でも、階段では私をかばった。 そして、その腕を折った。 朔弥さんが書類を閉じた。 「この証拠は、警察と法務へ渡す」 榊原さんが答えた。 「警察には、昨夜すべて話しました。証拠も渡しています」 私は、胸元に吊られ
Read more