翌朝、食卓に座った瞬間、嫌な予感がした。 義母の隣に、一条澄麗が座っていた。 淡い色のワンピースに、小ぶりのパール。あれだけ空気を掻き回しておいて、朝から当然みたいな顔で収まっている。 義母の前に、見慣れない封筒が置かれていた。病院のロゴ。婦人科。胸の奥が冷えた。 「真尋さん」 義母は、いつもの穏やかな声で言った。 「来週の火曜、午前十時に予約を入れておいたわ」 私は箸を置いた。 「……何の、ですか」 「検査よ」 天気の話みたいな口調だった。 「年齢のこともあるし、ここまでお子さんに恵まれないのなら、一度きちんと確認しておいたほうが」 澄麗が小さく息をついた。 「御門家の跡継ぎを作るのは、嫁のいちばん大事な仕事ですもの」 やわらかい声だった。常識を口にしただけです、という顔まで完璧だった。 言葉が、皮膚を切っていく。 ここまでお子さんに恵まれない。 私に何か足りないみたいに聞こえる。 「……今、その話をするんですか」 声は平たかった。 義母は微笑んだまま、封筒を少し押した。 「今だからこそ、でしょう」 全部わかった。 追い払いたいのだ。 でも、御門家が若い女に乗り換えたせいにも、朔弥さんが私を切ったせいにもしたくない。 だから、私の側に理由がほしい。 私に問題があったから。 私が産めないかもしれないから。 だから仕方なかったと、話を整えたいのだ。 体面と家の看板のために、最後に私の身体を使う。 喉の奥が、すっと冷えた。 「なるほど。私に理由がある形にしたいんですね」 一瞬だけ、空気が止まる。 「そんな言い方はしていないわ。ただ、きちんと確認しておいたほうが、あとで誰も困らないでしょう」 誰も。 そこに、私は入っていない。 「離婚したいなら、そうおっしゃればいいのに」 私が言うと、さすがに朔弥さんが顔を上げた。 「真尋」 低い声だった。守るためじゃない。この場をこれ以上露骨にしないための声だとわかる。 「どうして、私の体で理由を作るんですか」 義母は息をついた。困った子を見るみたいな顔だった。 「あなた、ずいぶん感情的になっているのね」 人をここまで追い詰めておいて、感情的なのは私のほうらしい。 「感情的なのは、どちらでし
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