実家の前でタクシーを降りた時、胸の奥が少しだけ縮んだ。 久しぶりに見る門扉は、記憶より小さかった。御門家の重たい門に慣れすぎたせいかもしれない。けれど、庭の隅に置かれた古い鉢植えも、玄関先の少し色あせた表札も、私の知っているままだった。 チャイムを押す前に、深呼吸をした。帰る場所のはずなのに、帰ってきたと言うには少し勇気がいる。結婚してから、私はここを頼らない場所にしていた。頼らないことで、大人になったつもりでいた。 ドアを開けたのは父だった。 「真尋」 父は驚いた顔をした。けれど、責める声ではなかった。ただ、私の顔色と鞄を見て、何かを察したように眉を寄せた。 「入れ。寒かっただろう」 その一言で、少しだけ泣きそうになった。 だけど泣かなかった。玄関で泣くには、私はまだ意地が残っていた。 リビングに通され、私は鞄を足元に置いた。 「御門さんには」 「連絡していません」 父の表情が、わずかに硬くなった。けれど、責める言葉は出てこなかった。 「……そうか。まず座れ」 父は台所へ行き、湯呑みに温かいお茶を入れて戻ってくる。父の手は、昔から大きい。電卓を叩く時も、申告書をめくる時も、必要以上に音を立てない手だった。 「何があった」 聞き方は短い。 でも、急かしてはいなかった。 私はどこから話せばいいのかわからず、湯呑みを両手で包んだ。ホテルのこと。城戸さんのこと。朔弥さんの電話のこと。澄麗のメッセージのこと。 話すべきことが多すぎて、何ひとつ言葉にならない。 それでも、一番先に言わなければならないことは決まっていた。 「離婚の話が出ています」 父は、驚かなかった。 ただ、目を伏せて、低く息を吐いた。 「……やはりそうか」 「知っていたんですか」 「知っていたわけじゃない。だが、数日前に御門ホールディングスから妙な照会があった。今朝、事務所に書類も届いた。高瀬は先代のころから、御門の帳簿を見てきた家だ。お前の口から聞くまでは決めつけなかったが、風向きが妙だとは思っていた」 私は湯呑みを握りしめた。 離婚を求められていること。一条澄麗のこと。会社での立場が、少しずつ私のものではなくなっていること。 簡単に話したつもりでも、口に出すたびに、胸の奥が重くなった。 「御門家には、戻り
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