All Chapters of 光煌の逆転姫~その女、追い詰められるほど煌めき輝く~: Chapter 41 - Chapter 50

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お金がない!

「ん、む……夢、か。久し振りに昔の夢をみたな。ん、んん……!」 ソロはベッドの中で目を覚ますと、のそのそと動き出して思いきり身体を伸ばした。昨日はジャンヌ達とレガリアへ向かうルートの相談をした後、自室に戻って寝てしまったのだが、かつての夢を見たのはそのせいだろう。ソロにとって、5年前のことはまだ何一つ終わっていないことなのだ。 (結局、あの直後にバーン陛下が身まかられたことで、俺達に対する追手は弱まり、なんとか国外へ脱出することは出来た。しかし、あの一年後にはイェルダ様が皇帝に……噂で聞く限りでは、段々とエンデュミオンの内情が酷い物になりつつあるらしいし、急いでいてジャンヌに詳しく話さなかったのは正解だったかもしれないな) 着替えをする動きがいつもより鈍いのは、夢見が悪かったからだろうか。ソロはあの時の事を片時も忘れたことはないが、だからこそ、今の状況でエンデュミオンに立ち入ることはしたくなかった。ジャンヌに相談する形を取ったのは、あくまでポーズである。未だ対抗手段の見つからないイェルダ皇女と出会うリスクは、絶対に避けねばならないことだ。もっとも、ジャンヌ自身も、実家のあるエンデュミオン皇国に立ち寄ることはしたくないと思っているだろうが。 ゆっくりと時間をかけて着替えを終え、溜め息交じりに宿の一階へ降りて行くと、ソロはその足で食堂へ向かった。こういう気分のスッキリしない時は、濃いめのゴナを飲むのが一番である。そうして食堂に一歩足を踏み入れると、そこでみえた光景にソロは思わず崩れ落ちた。アーデやジーナと一緒にテーブルを囲み、ジャンヌが豪華な食事を大量に食べまくっていたからだ。「あ、ソロ、おはよー!」「おはようございます、ソロさん」   「…………ジャンヌ、何をしてるんだ?朝っぱらから!」「え?だって、ここの食事美味しいんだもの。ちょっとくらい贅沢してもいいでしょ?お金はあるんだし」「~~~~っ!」 あっけらかんとしたジャンヌの返事を聞き、ソロは言葉にならない声を上げるとジャンヌの手を引っ張って強引に部屋へと戻っていく。慌ててその後を追うジーナも、何故ソロが怒っているのかはよく解っていないようだ。
last updateLast Updated : 2026-04-06
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パニック!お化け屋敷?!

「イヤイヤイヤイヤ!ゼッタイイヤ!見たくない聞きたくない!そういうの聞くとオバケが寄ってくるって言うじゃない!夜眠れなくなるの~~~~!」「ジャンヌさん、落ち着いて。ね?大丈夫ですから!」「……あの、大丈夫なんですか?なんだか暴れてらっしゃいますが」「問題ありません、魔法で作ったあのロープは、彼女の馬鹿力でも決して千切れませんから。それで、具体的にはどういうお話で?」 椅子に縛り付けられて身動きを封じられたジャンヌを余所に、ソロは招き入れた老人に話を促した。どうやら、まだ今朝の怒りが継続しているらしい。余談だが、オバケが寄って来るのは話を聞いた時ではなく、話をするとである。「実はこの村の外れに、かつて一人の老人が住んでおったのです。名はジンロという、偏屈な男でした。彼は結婚もせず、ただ一人村外れで花や野菜を育てて生計を立てておりました。しかし、数年前、ジンロが他界した後、状況は変わりました……」 老人はそう言うと、何とも切なげな表情をして、ふっと息を吐いた。そのジンロ老人とは仲が良かったのだろう。或いは身内だったのかもしれない。ソロとジーナが話を聞き入っていると、老人はやや間を開けて話を続けた。「主人であるジンロを失った後、あの屋敷は荒れ果てて、今は誰も住んでおりません。何度か村のものが様子を見に行ったのですが……そこで、妙な事を言うのです。あの家の中から、若い女の笑い声がする、と」「ヒィィィィィッ!?」「うるさいぞ、ジャンヌ!しかし笑い声、ですか?泣き声や呪詛のつぶやきではなく?」「はい、何とも楽しいもの、といった様子だそうで。とはいえ、あそこはもう荒れ果てた廃屋ですから、それが逆に不気味だと恐れられているようで……どうでしょう?何とかして頂けませんか?」「ふーむ……」 ソロは老人の話を聞き、深く唸った。一般的にこの世に残る幽霊などというものは、恨みや後悔といった負の念によるものである。それゆえに、楽しく笑い声を残す幽霊というものは、あまり聞いたことがない。人を脅かしたり驚かせて喜ぶ性質の悪い悪霊の類いだとしたら、笑い声を聞いただけで済んだというのも妙な話だ。どうにもは
last updateLast Updated : 2026-04-07
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炎に咲く花

 ――フォラファ山脈。大陸の中央にそびえ立つその山々は、人類が踏破していない場所がなくなったこの|星《せかい》に於いて、未だに数名の人間しか辿り着いていない秘境というべき場所である。  最高で1万メートルにも到達する絶対の高さを誇り、切り立った崖と槍の穂先のように鋭く尖った頂点がいくつも存在し、人のゆく手を阻むという恐ろしい山脈だ。ここを登って突っ切る事は不可能に近いだろう。この山脈のすぐ東側にエンデュミオン皇国があり、山脈が西に広がっていることから、目的のレガリアへは西回りに迂回せねばならない。 そして、現在、ジャンヌ達はフォラファ山脈の中でも最も低い、カミジューラ山の麓にある街、ジュラに到着していた。 ジュラはカミジューラ山の恵みを受けた豊富な山の幸と、山から見下ろす広大で美しい景色が魅力な街である。特に、この山に生息するキングディーアという動物の肉は絶品で、登山客のみならず、美食を求める観光客も絶え間なく訪れる人気の都市だ。「うわぁ!凄い人ですね。ドルトの新市街もたくさん人がいたけど、ここはもっとたくさん!」「ジュラは、観光地としては世界屈指の都市だからな。ここで少し滞在して、色々と準備を整えよう。出来れば、割のいい仕事が見つかるといいんだが」「これだけ人がいるんだもの、仕事を頼みたい人だって結構いるでしょ。頑張って稼がないとね!」 ――……私はあまり人間の多い所は好きじゃないわね、うるさいし、男も多いし。「またハバキリはそんなことばっかり言って……ダメよ?もうちょっと人生を楽しまないと」 ――私は人間じゃないんだから人生なんて関係ないでしょ。「あ、そっか。じゃあ、刀生?」 ――…………なにそれ。 人気の観光地に着いたからか、そんな他愛もない会話をするジャンヌ達の表情も明るいようだ。先日の幽霊騒ぎで青い顔をしていたジャンヌも、すっかり元通りである。ちなみに以前は男のいる場所では話したくないと言っていたハバキリだったが、ジャンヌだけに聞こえるよう声を調整するようになり、こうして時折、話をしてくれるようになった。もっとも、それも機嫌のいい時だけのようである。 そうして街の賑わいに関心していたジャンヌ達だったが、ここで一つ問題が起きた。それは、泊まる予定で目星をつけていた宿に着いてからのことだ。「えっ!部屋の空きがない?!」「はい、申し
last updateLast Updated : 2026-04-08
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謎の手掛かり

「なんだ、お前ら宿探してんのか?だったらうちに来いよ。二部屋くらいならよゆーだぜっ!」 そう語るテリーは胸を張り、自信満々な様子だ。テリーの事情を聴きだそうと世間話をしていた所、流れでジャンヌ達が宿を探していることを話してしまったら、これだ。一応、渡りに船といった展開ではあるが、なにせ相手は子供である。ジーナのようにしっかりしている子ならともかく、やや粗暴な男の子といった印象のテリーの言葉をまるっと信用していいものか、そこはかとない不安がよぎっていた。   「テリー、君の家は宿屋なのか?」   「ああ、今はちょっと事情があってちゃんと店開けてないけど、お前らくらいなら大丈夫!」「……大丈夫かしら?」「まあまあ、せっかくだし行ってみませんか?」 同じような年頃で親近感が湧いたのか、ジーナはテリーをすっかり信頼している様子だ。ジャンヌにしてみても、ここで疑って文句を言った所で宿のアテが見つかる訳でもない。それになにより、さっきの連中がどこかで待ち伏せしている可能性もある。ここはひとまずついて行ってみようという結論になり、一行はテリーの案内で街を進んでいった。 そうして辿り着いたのは、街の中心部から少し離れた川辺に立つ、小さなペンションのような建物だった。ただ、テリーの言う通り今は営業していないらしく、周辺は火が消えたように静かである。雰囲気はとてもいいのに、何故営業していないのかが気になる所だった。「とーちゃん、ただいまーっ!」「テリー!どこへ行ってたんだ。こんな時に……ん、なんだ?あんた達は」「すみません、ご子息についてくるよう言われまして。ご迷惑かとは思ったのですが、実は――――」「――ほんっとうに、申し訳ございません!うちのバカ息子がとんだご迷惑を!まったく、何を考えているんだ!?お前は!」「ごめんよぅ、とーちゃん……でも、炎に咲く花があれば、かーちゃんが……」 ソロから事情を聴いたテリーの父親ケインは、平謝りをした後で烈火のごとき怒りをみせた。テリーも悪いことをしたと思ってはいるのだろう、父親からカミナリを落とされて、すっかり涙目になってしまっている。「まあその辺にしてあげて下さい。テリー君にも何か事情があったようですし」「いえ、そんな!あなた方が来てくれなかったらテリーはどうなっていたか……まったく、仕方のないやつだ。テリー、
last updateLast Updated : 2026-04-09
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不可視のリリィ

「う……ぁ、ここ、は……?」 ジャンヌが意識を取り戻した時、周囲はいつの間にか、鬱蒼とした森の中だった。木漏れ日の具合から察するに、まだ昼間である。そう時間が経っている訳ではなさそうだ。段々とハッキリしてきた頭で冷静に状況を観察してみると、ジャンヌの身体は両腕を頭の上で縛られ、大きな樹の枝に吊られている。それ以外、他に目立った傷はなく、身体に痛みや違和感はない。何かされた様子がないのは一安心だが、何故自分がこうなっているのかが解らなかった。「ハバキリは……近くにないか。どうなってるの、一体」 倒れた時、手にしていたはずのハバキリは傍にないようである。奪われたか、或いは置き去りにされたかは不明だが、武器がないというのは少し厄介だ。不意打ちだったとはいえ敵は、少なくともジャンヌを一撃で昏倒させるだけの実力を持っている。それだけの力量を持つ相手に、素手というのは心許ないだろう。「驚いた。もう気が付いたんだ?手加減なんてしてなかったんだけどね」「っ!?」 ハッとして、声のした方向を見ると、ジャンヌの正面5~6メートルほど先の所に若い女がいた。手にはハバキリを持ち、不敵な笑みを浮かべてジャンヌを見据えている。つい今しがたまで、そこには誰もいなかったはずだ。何が起きているのかまだ解らないが、その女の表情は明らかにジャンヌをからかい、嘲笑っている顔である。負けん気の強いジャンヌは、それに気付くと、動揺を表に出さないよう冷静に口を開いた。「……いつからそこにいたの?誰もいなかったような気がするんだけど」「ふっ、気が強いねぇ。そういうのは嫌いじゃないよ。流石、女の癖にMIRAなんてやってるだけの事はある。初めて見たよ、女のMIRAなんてね」「それが解るって事は、あんたは|Neck《賞金首》だってことでいいのかしら?」「そうだね、隠す必要もない。アタシは|Neck《賞金首》さ。一部じゃ、|不可視《インヴィシビーリス》のリリィって呼ぶヤツもいるみたいだけどね」「不可視の、リリィ……って、あの?!」 |Neck《賞金首》の情報を記憶するのはソロの役割だが、ジャンヌにも記憶に留めた|Neck《賞金
last updateLast Updated : 2026-04-10
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最大のピンチ

「え?ジャンヌが戻ってこない?」「はい。今朝、仕事探しついでに散歩へ行ってくると言って出掛けたまま……もうお昼過ぎなのに全然。ジャンヌさんどこへ行っちゃったんでしょう?」 不安そうな顔で呟くジーナを、ソロは何とも言えない表情で見つめている。ソロからすれば、ジャンヌに超がつく耐久力があるので別に心配などいらないのだが、それをまだよく解っていないジーナは、帰ってこないジャンヌが心配になるのだろう。かと言って、心配いらないから放っておけとも言えない雰囲気である。「あー……きっと、割のいい依頼でも見つかって、そのまま仕事をしてるんじゃないか?心配しなくても大丈夫だろう」「そっか。そうですよね!ジャンヌさん、強いですもんね!」「あ、ああ……」 (ジャンヌの奴、一体どこをほっつき歩いてるんだか……しょうがない奴だな、まったく) なんとかジーナを納得させられたかと、ソロは溜め息交じりにゴナを一口飲んだ。まさかジャンヌが危機に陥っているなど夢にも思わずに。   (またあの気持ち悪い触り方をしてくるつもり?!や、やっぱり殴り倒して逃げちゃおうか……でも、コイツが姿を消してた謎を解かないと、戦っても勝てるかどうか。それに、炎に咲く花のことも放っておけないし……あー、もう!) ゆっくりと伸びて来るリリィの手に、ジャンヌは我慢の限界を感じていた。拘束を振り解きリリィを殴りつけるのは簡単でも、万が一それで勝負が決まらなかったら、その後は最悪である。いくら不意打ちだったとはいえ、ジャンヌは一度、成す術もなくリリィに倒されているのだ。迂闊な真似をしてまた意識を失ってしまったら、今度目覚めた時には、大事な何かを失っている可能性は極めて高い。流石に、それはごめんである。「……ああ、ダメだ。こんな所じゃ、満足に遊べない。まだ我慢しなきゃ。落ち着こう、そう、お楽しみはあとにしないとね」「っの……!」 ジャンヌの身体に触れる寸前で、リリィは手を引いて深く息を吐いた。一旦でも引いてくれたのはありがたいが、ああいう激情は内に秘めて貯めれば貯めるほど、解放した時に爆
last updateLast Updated : 2026-04-11
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リリィの真価

 ジャンヌを部下のロッドに任せたリリィは、森の中のとある場所にいた。そこは見るからに何の変哲もない開けた空間である。カジュミーラ山の裾野に位置する小さな森で、観光都市ジュラからはやや離れた場所だ。「さて、炎に咲く花か。ずいぶんな名前した花だけど、どこにあるんだかねぇ……」 ざっと周囲を見回すが、これといって変わった草花は見当たらない。他の部下達は近くの茂みの中を探しているようで、あちこちからゴソゴソと物音がして茂みが揺れている。しかし、特に成果はないようだ。そんな中で、リリィは腕を組み、動かずにその場で頭を働かせていた。 (地図で見る限り、ボスが指定してきたポイントに間違いはない。普通に考えりゃ、そんな花なんかないって所だろうけど……そう決めつけるのはちと早いね。となれば、他に考えられるのは時期的な問題か?しかし、ボスがわざわざ見つけて取って来いって言うくらいだ、今は生えてないなんてオチも考えにくい) 炎に咲く花がどんな花なのかは不明だが、植物である以上は、それが咲くのに適した季節というものがあるのかもしれない。だが、リリィはボスが採取しろと命じた以上、そんな理由で見つけられないという事はないと確信しているようだ。それだけ、リリィにとってボスの存在は大きいということだろう。 (そう簡単には見つからない伝説の花だっていうくらいだ、普通に探しているだけじゃダメな、何か条件のようなものがあるってことかね。条件……条件か) 木々の騒めきに耳を傾け、リリィは目を閉じて考える。花や草木のような植物が育つ為には光と水、そして二酸化炭素を含めた空気が必要である。それはこの|星《せかい》でも同じ事だが、果たして本当にそれだけなのだろうか?何か、自分の常識では考えられないような別の見方が必要なのではとリリィはいくつもの考えを巡らせているようだ。だが、答えはまるで思いつかず、時間だけが過ぎていった。そんな時だ。 ガサガサと藪の中で激しく動く物音がする。それが思考を邪魔するような気がして、リリィのストレスが溜まっていった。そして、ついにそれが爆発した。「あーもう!ガサガサガサガサ、うっさいよ!お前ら、もうちょっと静かに手を動かしな!」 リリィ
last updateLast Updated : 2026-04-12
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反撃のジャンヌ

 ニヤリと笑みを浮かべたリリィは、ゆっくりと茂みを進んでジャンヌを探し始めた。考えてみれば、加護による優位性だけでなく、ジャンヌの最大の武器であるハバキリも自らの手の中にあるのだ。絶対に負けるはずはないと、リリィは確信していた。  そして遂に、その時が訪れる。 (見つけたよ!こんな所に隠れていたのか。しかし、残念だったねぇ。これだけ近くに来ても、あんたはアタシに全く気付かない、いや、気付けない。どうせだ、このまま押し倒して可愛がってやろうか?あいつらは眠ってるし、|外《・》|で《・》ってのもたまにはオツなもんだしね) にんまりと邪な笑みを湛え、リリィは茂みにしゃがんで隠れているジャンヌに近づいた。ロッドが言っていた通り、蛇のように絡み合って、何日も何日もむつみ合うのは彼女の常套手段だ。そういう意味では、彼女は蛇によく似ている。野外でそういうコトに及ぶのを否定的でないのも、彼女が蛇の如き精神を持っているからかもしれない。そして、あと一歩という所まで近づくと、突然、ジャンヌがニヤリと笑ってリリィの方へ向き直った。 (え?)「な~るほど、そこにいるの……ねっ!」「っぶ?!ぐわぁぁぁっ!」 ジャンヌは渾身の力でリリィに向けて拳を放った。まさか攻撃されるとは思ってもみなかったからだろう、リリィは身を守る事も出来ずにそれを食らって、激しく吹き飛んでいく。そして、ジャンヌは静かに立ちあがって、リリィに向かって歩きだした。「あんたのそれ、加護でしょ?魔法じゃないから解りにくかったけど、残念ね。あんた自身とあんたが身に着けてるものは隠せても、あんたが踏んで歩いた草や土は消えてないわ。ただの足跡と違って、物理的に踏んで折れた草木まで隠せる訳ないものね。一か八かで先に隠れて正解だったわー。こっちが隠れて挑発すれば、あんたも隠れて能力を見せると思ったのよ。私の作戦勝ちね」「あ、そ、そんなバカな……!?」 リリィは鼻血を流しながら、地面を這ってジャンヌから離れようとしている。ジャンヌの言う通り、リリィの加護が隠してくれるのは、彼女が身に着けているものと、彼女が触れたものだけである。臭いや音までも隠せると言っても、二次的に接触したものま
last updateLast Updated : 2026-04-13
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湖畔にて

 晴れ渡る青空の下、温かい陽の光が水面に反射し、キラキラと美しい輝きを放っている。ジャンヌ達の目の前に広がる湖はかなりの大きさで、対岸まではかなりの距離があるようだ。湖面を撫でて吹く風は適度に冷えていて、歩いて火照った身体を冷ますのに最適だ。「うーん、いい天気で気持ちがいいわね~!私、この生活しててこういう瞬間が一番好きなの。ね?いいでしょ、ジーナ」「はい!ドルトとは全然違いますね。出来ればお父さんとお母さんにも、この景色を見せてあげたかったですけど……」 ジャンヌは、旅暮らしにも良い所があると言いたかったようだが、ジーナにとっては故郷との違いから思わず今は亡き父と母への思いを馳せさせる形になってしまったようだ。ジャンヌは胸に詰まる思いを感じながらも、ジーナを優しく抱きしめて、頭を撫でてやることしか出来ないのがもどかしく感じている。 ジャンヌ達は、ジュラの街を出て街道沿いに次の街へと進んでいた。炎に咲く花を見つけた森を抜け、目前に広がるボワ湖に沿って歩けば、次の街ティグへと辿り着けるはずだ。ジュラからティグへは、徒歩でおよそ3日ほどかかる距離がある。長距離移動用の馬車を使ってもよかったのだが、生憎と馬車の予約は一杯で、2週間以上先まで埋まっていた。うかうかしていると雨季に入ってしまう事もあって、徒歩で移動しようという結論に至ったのだった。「今日はこの辺で休む事にするか。明日は朝から早めに移動すれば、夜までにはティグに入れるだろうしな。アーデ、周辺の見回りを頼む」「ホゥ!」 ソロの言葉にアーデはすぐさま反応し、その場で高く飛び上がってぐるりと上空を旋回した。アーデの眼があればそれだけで、近くに危険なものがないかを調べることが出来るのだから、楽なものである。しばらくするとアーデが降りてきて、胸を張って警戒の結果をアピールしてくれた。「よし、近くには魔獣などの姿もないみたいだな。必要以上に森の中へ入らなければ大丈夫だろう。二人共、あそこの木陰に移動するぞ」「はーい、行きましょ、ジーナ」「はいっ」 湖畔にいた二人は、ソロに促されて街道沿いの木陰に移動する。ジャンヌ達のような旅人は、時にこうして野
last updateLast Updated : 2026-04-14
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幻の怪魚を倒せ!

「ぷぁっ……!ジーナ、大丈夫か?!」「は、はい、何とか……それより、ジャンヌさんが」「なに!?ジャンヌ?……どこだ、ジャンヌッ!」 津波が引いた後、ジャンヌの姿は既にどこにも見当たらなかった。津波は森にまで到達し、街道はすっかり水浸しだ。あれほどの波に飲まれれば、ジャンヌとて無事では済まないだろう。ソロはすぐさまアーデを飛ばして、ジャンヌの行方を捜した。「ゴボゴボッ!く、息が……っ?!」 引き波に流され、多数の流木と共に湖に落ちたジャンヌは、水中で信じられない光景を目の当たりにした。それは正しく、先程水中から現れた巨体の怪魚だ。途轍もない大きさのその魚は、カサゴのようにいくつもの棘を身に纏い、ジャンヌの身体よりも大きなギザギザの歯で、流れ込んだ流木を噛み砕いて食べている。ジャンヌはソロのように図鑑の内容を暗記しておくような記憶力は持っていないが、それにしてもこんな魚は見たことも聞いたことも無かった。 (こ、こんな大きな魚がいるなんて……!?きゃっ!) 巨大魚は、湖の水ごと次々に流木を吸い込み、一心不乱に咀嚼している。これほどの巨体を維持するには、そこらの水草などでは到底足りないのだろうが、それにしてもこの食事はあまりにも規格外だ。いかに常人を超える耐久力を持つジャンヌとて、自分の身体と同じサイズの歯に噛み砕かれては助かるはずもない。つまり、あの口に吸い込まれたら一巻の終わりなのだ。ジャンヌは流れに逆らい必死に泳いで逃げながら、かつて人々がこの土地を捨てた理由が、理解出来たような気がした。 そうしてジャンヌが自分から遠ざかって行くのに気付いた巨大魚は、明確に狙いをジャンヌに定めて動き出した。そこまで高い知能を持っている訳ではないようだが、狙った餌が口に入らないのが気にくわないらしい。巨体を器用に揺らし、巨大魚はより一層吸引力を高めてジャンヌを追ってきた。 (ちょっ……冗談でしょ!?アイツ、私を狙ってきてる!?もう、最近こんなのばっかりじゃないっ!) リリィといいこの巨大魚といい、立て続けにちっとも嬉しくない狙われ方をして、ジャンヌはやり場のない怒りを爆発させた。とはいえ、怒りに任せて泳いでも、流石に水中で
last updateLast Updated : 2026-04-15
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