結婚3周年の記念日。結城凛(ゆうき りん)は、夫の鞄の中から一枚の妊娠検査の診断書を見つけた。相手は、夫婦で経済的支援をしていた苦学生だった。彼女は怒りに任せて特急列車の切符を買い、家を飛び出した。だが、列車を降りると、電光掲示板の時間は5年後を示していた。両親の電話は繋がらない。パニックの中、凛はタクシーに乗り込み、夫と暮らすマイホームへと向かった。だが、タクシーを降りた凛は呆然とした。自分がパラレルワールドに迷い込んだのではないかと疑うほどだった。桐生蒼介(きりゅう そうすけ)と一緒にデザインした小さな庭には、凛の大好きなスズランの代わりに真っ赤なバラが咲き誇っていた。玄関前に置いてあった猫用の小屋も消えており、すべてが見知らぬ景色に変わっていたのだ。凛は気を取り直し、インターホンを鳴らした。1秒、2秒……ドアが開き、蒼介の端正な顔が目に飛び込んできた瞬間、凛の目からついに涙がこぼれ落ちた。「あなた、どういうことなの。私、ただ特急に乗っただけなのに、どうして何もかも変わっちゃったの……」凛は蒼介の胸に飛び込み、声を上げて泣き崩れた。どれくらい泣いただろうか。声が枯れ果て、ようやく凛は泣き止んだ。「君は、ただ特急に乗っただけで5年後に来たと言うのか?」蒼介は微かに眉をひそめた。凛は頷いた。その頬にはまだ涙の跡が残っていた。蒼介は首を横に振った。「凛、出会った頃から君がわがままで世間知らずなのは分かっていたが、今はもうまともな嘘をつく気すらないのか。5年前の結婚記念日、僕は君にサプライズを用意していた。だが、家に帰って見つけたのは、僕が君を怒らせたから離婚するという置き手紙だけだった。それなのに今さら、すべては予期せぬ事故だったとでも言うのか?」凛は彼の腕から突き放され、呆然とした。「信じてくれないの?それに……」置き手紙なんて残していないし、離婚したいなんて思ったこともない。凛はただ、蒼介にちゃんと説明してほしかっただけなのだ。「どうやって信じろと言うんだ?演技が上手いと褒めるべきか、それとも冷酷すぎると言うべきか。君がわがままを言って僕を愛さなくなったのは百歩譲っていいとして、まさか自分の両親の葬儀にすら顔を出さないとは思わなかったよ」蒼介の目は冷ややかだった。葬儀?お父
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