由樹の顔色がかつてないほど険しくなっているのを見て、摩美はその表情を少し和らげた。「小林、人事部の人間を今すぐここに――」「早坂三久の職務を一時停止する。調査が終わるまで、容赦なく追及する」由樹は三久を射抜いていた視線を引き戻し、底知れない目を向けて摩美を冷ややかに一瞥した。「こいつは、俺の直属の部下だ。進退は……すべて俺が決める」八年前に由樹がこの会社を引き継いでから、次々と圧倒的な記録を打ち立て、百栄グループを業界のトップへと押し上げてきた。酒井家の正統な後継者という圧倒的な立場を抜きにしても、取締役たちは由樹の手腕に敬意と畏怖の念を抱いていた。「確実な証拠」を突きつけられた場面でも、飽くまで「自身の裁量による調査」を突き通した由樹に、誰も正面から反論することはできなかった。由樹の行動は、摩美の面目を人前で潰したも同然だった。それは、摩美が三久に与えた物理的な平手打ちよりも、はるかに屈辱的で容赦のないものだった。由樹が踵を返して会議室を出ると、哲朗がすぐさま後に続き、中野部長も部下を連れて退室した。「……皆さまに、大変不快な思いをさせてしまいましたね。由樹は昔から、何事も自分自身で証拠を確認しなければ気が済まない人間なのです」摩美は悔しげに歯を食いしばりながら、取締役たちの前で必死に面目を保とうとした。「では、本人に徹底的に調べさせましょう。きっと皆さまと村上家への説明責任を、立派に果たしてくれると信じております」取締役たちは、空気を読むことにかけては一級品だった。この恐ろしい親子の対立に巻き込まれないよう、当たり障りのない短い挨拶を交わしてから、退席していった。彼らが去ると、摩美は抑えきれない怒りを露わにして、直接三久に向かってきた。「私を恨まないでちょうだい!あんたが何度も何度も、千歳ちゃんと由樹の仲を邪魔したのがいけないのよ!以前からきつく言ったでしょう、身の程知らずにも酒井家へ入りたいなどと、夢にも思うなと!」三久の瞳は冷たく凪いでいた。「どうぞご心配なく。酒井家の敷居など……死んでも跨ぎはいたしません!」その口調は氷のように確固としていて、青白い顔には揺るぎない決意が滲んでいた。摩美は言葉に詰まった。まさか、こんな反抗的な反応をしてくるとは思っていなかった。「……もし今日、
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