充は照明をつけた。淡いオレンジ色の光が、彼の目の下に刻まれた痛々しい隈を映し出し、その疲労しやつれた姿を浮き彫りにする。「焦らなくていい。何も変なことはしていないから。病院の付き添い用のベッドじゃ硬くて寝にくいだろうと思って、俺の家に連れ帰ってきたんだ」家?奈緒は困惑した。見慣れない空間だったが、そのあちこちには、どこか意図的に演出されたような温かみが漂っている。充は急いで弁解した。「新しく買った家なんだ。水鏡ヶ丘の家は改装中だから。あ、それと、ここは奈緒のマンションの上の階なんだ。近ければ、黎の世話も一緒にできると思ってさ」奈緒は少し目を細め、値踏みするように充を見た。「充、どうやって私をここまで連れてきたの?」充が低い声で答える。「抱えてきたんだ。お前は深く眠っていて、途中も起きなかったから」奈緒は唖然とした。充に連れ去られるほど深く眠り込んでいたとは思いもよらず、奈緒は自分の無防備さに言葉を失った。いや、正確には少し意識はあった。うつらうつらとした意識の中で、温かく分厚い腕に包まれているような感覚。それに加え、ずっと慣れ親しんだ、心を解かす安心感が鼻先をくすぐり、深い眠りへと沈んでいかざるを得なかったのだ。充は欠伸をして、腕を広げた。その表情には、繊細でどこか探るような色がある。「おいで。もう一度、抱き合いながら一緒に寝ないか?何もしない。ただ……ただ一緒にぐっすり眠りたいだけなんだ。奈緒もこのところ疲れてるんだろ?それに、俺の隣でこんなに深い眠りに就けるのは、ここがどこよりも安らげる場所だと、思ってるってことじゃないのか?」奈緒は口をつぐんだ。否定したかったが、充の言うことも一理あると認めざるを得なかった。ここ5年間、奈緒が仕事にこれほど打ち込めたのも、毎晩の睡眠が充実していたおかげなのだ。充との間に愛なんてものは残っていなくとも、このベッドの上の睡眠の相性だけは確かに充が一番だった。二人はともに仕事熱心で、脳をフル回転させるタイプであり、何より質の高い睡眠に人一倍こだわっていた。それにかつての二人は、生活のペースが完璧なまでに一致していた。夕方5時に退勤して6時に夕食。7時から8時は奈緒がヨガをして充がジムに通う。8時以降はゆっくりとお風呂に浸かり、夜9時に
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