「奈緒!大丈夫?!どこのどいつがまた奈緒に薬なんて盛ったのよ!体調はどんな感じ?怪我はない?どこか傷つけられたりとかはしてないよね?」蛍は勢いよく病室のドアを押し開けると、買ってきたばかりのお見舞いのフルーツを持って奈緒の元へ駆け寄り、心配そうにその手を握りしめた。その後ろから、額に手を当てて呆れた様子の奏介が入ってくる。奏介は金縁眼鏡を押し上げると、鋭い視線で仁哉を一瞥した。そして一瞬で、仁哉の首筋に残る、どうやっても隠しきれないいくつもの赤い痕を見つける。たちまち意味深な笑みを浮かべ、肘で仁哉の腕を小突いた。「おい。今回は災い転じて福となすってやつか?ずいぶんいい思いしたみたいだな?」仁哉は耳を赤くしながら、奏介を睨みつけた。「……何言ってるんだよ」奏介は訳知り顔で口元を緩め、声を潜める。「まだとぼけるのか?内心じゃ喜んでるくせに……どうせ奈緒ちゃんももうすぐ離婚するんだろ?だったらお前ら、いっそ付き合っちまえばいいじゃないか。俺は冗談じゃなくて、本気で言ってるからな。あんなにいい子、他の男に取られたらもったいないだろ?」「勝手にくっつけないで!」奏介が言い終わるや否や、奈緒と仁哉が声を揃えて叫んだ。二人とも同じくらい真っ赤な顔をしており、ふと視線がぶつかり、二人は慌ててそれぞれ顔をそらした。せっかく先ほどまで穏やかで温かな空気が流れていたというのに、蛍と奏介が現れた途端、病室には何とも言えない甘く気まずい空気が漂い始めた。奏介は声を上げて笑い、二人を指さした。「二人とももういい大人なんだから、そんなに澄ました顔してなくてもいいだろ?」そう言ってから奈緒へ向き直り、珍しく少しだけ真面目な口調になる。「奈緒ちゃん、ひとつ言っておくけどさ。仁哉のことを、世間知らずのお坊ちゃんとか、近寄りがたい天才建築家みたいに考えなくていいんだぞ。普通に喜怒哀楽もある、ただの男前だと思っとけ。こいつも一応離婚歴があるけど、実際のところ恋愛経験なんてほとんどないからな。美紀とは政略結婚みたいなもんだし、結婚前はお互いのことなんてろくに知らなかった。この30年、建築一筋で生きてきた男だ。もし二人が将来一緒になることがあったら、むしろ奈緒ちゃんがいろいろ教えてやらなきゃならないかもな」奏介は相変わらず軽口を叩
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