充が水鏡ヶ丘に戻ると、リビングのテーブルに一通の封筒が置かれていた。彼は不思議に思い、恵に尋ねた。「これは何だ?」「裁判所からの郵便みたいで、中身は分からないんですけど。一度中を確認したほうがよろしいかと」裁判所?封を切った充が、取り出した書類の表紙にあった「離婚裁判」という文字を見て、めまいに襲われた。書類を持つ手が震え、こめかみが激しく脈打つ。さっきまで胸の中にあった迷いもためらいも、一瞬にして冷え切った。そうか!あいつは、ここまでやるのか!奈緒は、離婚の手続きが万が一まとまらなかった場合に備えて、奏介に離婚訴訟まで起こさせたらしい。まるで二重に保険をかけるように。奈緒はそんなにそんなに離婚したいのか?そこまでして離れたいと?一体、自分の何がそんなに気に入らないのだろう?充は爪が食い込むほど、力強く手のひらを握りしめた。胸の奥が締めつけられ、鈍い痛みが走る。苛立ちは収まるどころか、ますます膨らんでいった。気分を変えようと中庭へ向かうと、角に植えられた一本のネムノキが目に入った。あの木は、二人が水鏡ヶ丘へ引っ越してきた時、奈緒がわざわざ庭師を呼んで植えたもの。植えて間もなく、一組のカササギが巣作りを始めた。あの時、「縁起がいいですね。きっとお二人は、いつまでも仲のいいご夫婦でいられますよ」と恵は笑っていた気がする。それなのに今ではどうだ?カササギは子育てをして家族を増やしているというのに、自分たちの関係はもう、修復不可能なところまで崩壊している。充はカササギの巣を呆然と眺めていた。奈緒が木の下に立ち、枝に願いを書いた木の札を下げていた時の情景が脳裏をかすめる。奈緒は言っていた。「充に伝えたいこと、全部ここに書いておくの。いつか子供が大きくなったら、パパとママがどんなふうに夫婦になっていったのか見せてあげたいから」札を結びつけながら、こちらを振り返る奈緒の目が、夜空の星のようにキラキラと輝いていたことを今でも鮮明に覚えている。当時の奈緒は、華奢で、明るくて、いつも生き生きしていて……今のように、自分を見るだけで冷たい目をする女ではなかった。あの木札に、奈緒は何を書いていたんだろう?その瞬間、なぜか強烈な好奇心が込み上げてきた。重い足取りで歩み寄り、震える指先で札に触れ
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