บททั้งหมดของ 我が子より他人の子?産後ワンオペ妻の離婚: บทที่ 401 - บทที่ 410

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第401話

琴葉は動画を見ながら、思わず口元をほころばせた。なんだか、見れば見るほどお似合いじゃない。ところが、その余韻に浸る間もなく、次の動画が自動再生された瞬間、琴葉の笑みがぴたりと固まった。薄暗い車内で、仁哉が奈緒に覆い被さっている。車の電気まで付いているため、それが仁哉と奈緒だということは間違いない。琴葉の頭の中で、何かがぷつんと切れた。目の前が真っ暗になり、胸を押さえる。危うくその場で倒れるところだった。こ、これが……あの冷静で堅物な息子!?普段は二人ともあんなに真面目なのに、どうして動画ではこんなことになってるのだ?どうにか気を取り直した琴葉は、今度は刺激的な見出しの記事を開いた。そこには、仁哉と奈緒は以前から男女の関係にあり、奈緒の娘も仁哉の子供である可能性が高く、二人とも不倫の末に離婚し、堂々と一緒になるつもりなのだ、などとまるで事実であるかのように書き立てられていた。冗談じゃない。息子のことは母親である自分が一番よく知っている。仁哉がそんなことをするはずがない。こんな嘘で息子の名誉を傷つけられて、黙っていられるものか。一睡もできなかった琴葉は、夜が明けるとすぐに仁哉の友人である弁護士の奏介に連絡を入れた。そのまま奏介の法律事務所へ向かい、二人きりで午前中いっぱい話し込む。奏介から詳しい事情を聞き、奈緒と充の間に何があったのか、そして奈緒と仁哉の間に何があったのか、琴葉はようやくすべての経緯を把握した。なかでも琴葉を激怒させたのは、奈緒が産後の1か月を過ごしている間、充が妻と娘を完全に放ったらかしにして、自分の従姉妹である美紀に付きっきりだったという話だ。しかも、自分の娘にはろくに目も向けず、裕弥の祝い事にはせっせと奔走していたという。琴葉は怒りのあまり、今日の午前中だけで何度テーブルを叩いたか分からなかった。事務所の職員たちには、奏介の部屋で何が起きているのか知る由もない。ただ、ときおり中から「バン!」と大きな音が聞こえてくる。しかも、その音は次第に激しさを増していった。すべてを聞き終えた頃には、琴葉は涙をぼろぼろこぼし、テーブルを叩き続けた両手まで赤く腫れていた。勢いよく立ち上がり、拳を固く握りしめる。「青木家の人たち、あまりにもひどすぎるわ!お嫁さんをあんな目に遭わせて
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第402話

「奏介くん、今回はよくやったわ。さすが私の教え子ね」「自分は……やるべきことをしただけですよ」すると琴葉は少し身を寄せ、意味ありげに瞬きをした。「奏介くん、あなたは口が達者よね?これから仁哉と奈緒さんの間を、うまく取り持ってあげてくれないかしら。うちの息子、ああ見えて恋愛には奥手で受け身だから」自分の耳を疑った奏介。慌てて声をひそめる。「それはつまり、仁哉と奈緒ちゃんを……」琴葉はそっと目を閉じ、切なげに息を吐いた。「奈緒さんは、私の親友だった蘭の娘なの。あの家にあんなことが起きなければ、もしかしたら仁哉と奈緒さんは、とっくに一緒になっていたかもしれない。奈緒さんが青木家でどれだけつらい思いをしてきたか聞いたら、胸が痛くてね。もしあの二人に本当に縁があるなら、私は奈緒さんの過去なんて気にしない。うちに来てくれたら、もちろん大切にするわ」そこで例の動画を思い出したのか、琴葉は少し気まずそうな顔になった。「それに……あんな状況だったとはいえ、二人は、その……あそこまでしてしまったわけでしょう。奈緒さんは薬を盛られていたんだから仕方ないとしても、仁哉は男として、多少なりとも責任を持つべきだから」奏介は感心したように琴葉を見つめた。「先生は反対すると思ってました。奈緒ちゃんには娘さんもいますし……まさか、そこまで受け入れてくださるとは」琴葉がじろりと奏介を見る。「娘ちゃんがいるから何なの?女の子なんて可愛いし、仁哉がいきなりパパになれるなら、私はむしろ大歓迎よ。それに、うちはそんな古臭い家じゃないし、男の子じゃなきゃ駄目なんて考えもないわ。人として信頼できて、二人が本気で想い合っているなら、それ以外は大した問題じゃない」琴葉は奏介の肩をぽんと叩いた。「ただし、今日私がここへ来たことは、二人には内緒よ。仁哉から私生活に口を出すなって釘を刺されてるから。分かるわよね?」奏介はすぐに察した。「もちろんです、先生」……一方、その頃。朝起きた奈緒を待っていたのは、一変した世界だった。以前、キャンプ場で美紀に撮られていた仁哉との動画が、とうとうネットに流出したのだ。しかも、瞬く間にトレンド入りしている。それに、車内での動画だけではなく、二人で歌っていたときの映像や、奈緒が公の場で娘は充の実子では
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第403話

ふわりと鼻をかすめたのは、爽やかなウッディ系の香り。奈緒が勢いよく顔を上げると、仁哉の透き通るような鋭い眼差しとぶつかった。仁哉がためらうことなく、自分を庇ってくれたのだ。その代わり、パリッとした白いシャツの背中は墨汁で真っ黒に染まり、見る影もない。「怪我してないか?」いつも落ち着いている仁哉の声に、わずかな焦りがにじんでいた。奈緒はあわてて首を振る。「大丈夫」仁哉が奈緒を背後にかばったまま、若者たちへ向き直ったその瞬間、空気が一変した。「誰に頼まれて、こんな真似をしてる?」しかし、先頭にいた若者は、相手が仁哉でもお構いなしに食ってかかる。「お似合いの不倫カップルだな!お前のどこが世界的建築家なんだよ。聞いて呆れるぜ!」その男が言い終わるより早く、仁哉が動いた。鋭い蹴りが風を切り、若者の顔面を正確に捉える。鈍い音が響いた直後、「ああっ……歯が!顔が!」血と一緒に欠けた歯が飛び、男はその場にうずくまった。残りの若者たちは一瞬で青ざめ、そのまま逃げ出そうとする。仁哉は大股で歩み寄ると、先頭の男の襟首をつかんだ。「君たち、近くの建築系の学生だろ?誰に雇われた?正直に答えろ」たった一発ですっかり大人しくなった男は、震えながら白状した。「し、知らない……ネットで募集されてて、4000円で依頼を……俺たち、本当に何も知らないんだ!」仁哉の目が鋭く細められた。やはり、裏で誰かが糸を引いている。一晩でここまで炎上し、その直後に現実で嫌がらせまで起きるなど、偶然で済むはずがない。「二度とここに来るな。次に同じことをしたら、卒業できなくなると思え。たかが4000円で将来を棒に振りたいのか、よく考えるんだな」若者たちから、先ほどまでの威勢は跡形もなく消えた。何度も頭を下げ、必死になって謝り始める。「失せろ」仁哉が冷たく言い放つと、彼らは逃げるようにその場を去っていった。奈緒は、墨汁まみれになった仁哉の背中を見つめた。さっき何の迷いもなく飛び込んできてくれた姿を思い出すと、胸の奥がじんわりと温かくなる。一歩近づき、そっと声をかけた。「仁哉さん、その服……もう着られないよね。車に着替えはある?なければ、近くのお店で買ってくるけど。汚れた服は私が持ち帰って洗うから。さっきは…
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第404話

奈緒は一度息を整え、並んだ服を見渡した。そしてマネキンが着ている黒いスーツを指差す。「サイズは胸囲102、ウエスト80、ヒップ98。シャツとスーツはL。このサイズで一式選んでください」店員は目を輝かせ、矢継ぎ早に褒め始める。「まあ、ご主人、とてもスタイルがいいんですね!肩幅があってウエストが細くて。身長も180センチ以上あるんじゃないですか?本当、素晴らしいモデル体型ですね!」奈緒は黙り込んだ。顔がまた熱くなっているのを感じる。夫でも恋人でもないと言ったはずなのに、この店員はどうしてこんなにも余計なことを言うのだろう?店員は手際よくスーツ、シャツ、ネクタイを選び、袋に詰めていく。袋を受け取った奈緒は、手のひらに汗をかいていることに気づいた。次は靴と……下着だ。奈緒は靴売り場へ向かい、仁哉の普段の服装を思い出しながら、ダークブラウンのカジュアルなビジネスシューズを選んだ。「これの27.5センチをお願いします」そして、最大の難関である下着売り場へ。男性用の下着を選ぶなんて、生まれて初めてだった。充と結婚していた5年間、ジャケットや服を選んであげたことはあっても、下着は本人が買っていたため、充の下着のサイズなど、奈緒は今でも知らない。なのに、仁哉のサイズは知っている。そう考えた途端、なんとも言えない気分になった。そんなこともあってか、声も少しだけ裏返る。「あの……男性用の下着を2枚。XLで……冷感素材のものを」店員は奈緒の様子を見て、意味ありげに微笑んだ。そして手際よく、冷感素材の下着を奈緒に差し出す。「こちらはいかがですか?当店でも人気の商品なんです。締めつけ感が少なくて、ひんやりして通気性もいいんですよ。ご主人なら、きっと快適に――」「……」この店員、わざと言っているのか?!避けたい話題に限って、どうしてこう何度も踏み込んでくるのか。奈緒はもう穴があったら入りたい気分だった。近くに他にも紳士服店があれば、とっくに店を出ている。普段なら一言くらい言い返すところだが、今回ばかりは何を言っても墓穴を掘りそうで、黙るしかなかった。無言で会計を済ませ、大きな紙袋を抱えてそそくさと出口へ向かう。すると背後から、店員の明るい声が追いかけてきた。「ぜひご主人にすぐ試着しても
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第405話

奈緒と仁哉はそろって声のしたほうを振り向いた。事務所の入り口には、肩口で切りそろえた髪の、華やかな顔立ちの女性が立っていた。後ろには二人のアシスタントを従えている。すらりとした美しい女性だが、全身から漂う空気は刺々しい。ひと目で、ただ者ではないとわかる。奈緒は相手の顔を見て、はっとした。相手は潮咲市の大富豪、庄野グループの令嬢、庄野佳乃。奈緒がどうしても手に入れたいと思っているS級リゾート開発プロジェクトは、まさに庄野グループの事業だった。すでに双方とも契約に向けて話を進めているものの、まだ正式な調印には至っていない。今日はその最終調整をする予定だったのだが、よりによってネット上の騒動が爆発したタイミングで、佳乃本人が先にやってきた。しかも、この険しい表情。穏便に話をしに来たわけではなさそうだ。奈緒は表情を強張らせ、反射的に相手を観察した。だが、佳乃もまた奈緒を値踏みするように眺めていた。頭のてっぺんからつま先まで、遠慮のない視線がゆっくりとなぞっていく。これが、充を5年間も独占してきた女?佳乃は、せいぜい少し腕の立つ程度の平凡なデザイナーだと思っていた。ところが実際に対面してみると、印象は違った。細身ながら背筋はすっと伸び、薄化粧の顔立ちは端正で涼やか。仕事のできる女特有の、凛とした雰囲気もある。思っていたほど冴えない女ではない。とはいえ……やはり自分と比べればまだ及ばないだろう。佳乃はふっと視線を外すと、ヒールを鳴らしながら奈緒へ近づいた。「ねえ、どうして何も言わないの?それとも喋れないとか?」奈緒は真正面からその視線を受け止めた。「佳乃さん、ネット上の件についてはこちらで対応します。ただ、今回の騒動と当事務所の設計力は別問題ですので、どうぞご心配なく」「あら、ずいぶん強気なのね」佳乃の目つきが鋭くなる。そして、いつものように高慢な態度を見せた。「それと、佳乃さんじゃなくて、社長って呼んでくれるかしら?それじゃ、会議室へ行きましょう。あ、ミルクたっぷりのコーヒーを一つ持ってきて。砂糖はいらないから。よろしく」そう言って、まるで自分の会社であるかのように、二人のアシスタントを連れて会議室へ入っていく。途中、仁哉の前を通りかかったところで、佳乃の足が一瞬止まった。どうやら
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第406話

奈緒がトレーを手に会議室へ入ると、仁哉もそのあとに続いた。ヤジン・デザインは奈緒たちの事務所だというのに、佳乃はすでに上座に陣取っていた。指先でテーブルを一定のリズムで叩きながら、奈緒を見下すように眺めている。そして、彼女の両脇には二人のアシスタントが無表情で立ち、その威圧感をさらに強めていた。奈緒は佳乃の前にカップを置く。「佳乃社長、コーヒーです」佳乃は奈緒を見ることすらせず、2本の指でカップを持ち上げた。ひと口飲んだ途端、眉間にしわを寄せ、乱暴にカップを置く。「あら、これがあなたのおもてなしってこと?」奈緒は表情を変えずに、淡々と佳乃を見据えた。「ご指定どおり、砂糖なしでミルクを入れています。何か問題がありましたか?」佳乃は鼻で笑うと、鋭い視線を奈緒に向ける。「コーヒー1杯に、いったい何分かけるつもり?あなたがこの事務所の中心的なデザイナーで、仕事も速いと聞いていたけれど……ずいぶん話を盛っているんじゃない?」奈緒の中で、かっと火がついた。なんなの、この女。どう考えても、打ち合わせではなく難癖をつけに来ている。だが、佳乃が握っているのは数百億円規模のS級リゾート開発プロジェクト。奈緒にとって建築デザイナーとしてさらに上へ進むための大きなチャンスだ。ここで感情的になるわけにはいかない……奈緒は一度目をつぶり、ぐっとこらえた。奈緒は拳を握り、平静を装う。「コーヒーを淹れる速さは、本来の業務とは関係ありませんので、デザイナーの評価は、作品と実績で判断していただければと思います。それに、私の本職はバリスタではありませんので。そろそろ、本題に入りませんか?」「生意気ね!」佳乃は眉を吊り上げ、カップをテーブルに叩きつけた。「たかがデザイナーの分際で、私にそんな口を利くつもり?あなたたちが提出した初期案に多少見るべきものがあったから、わざわざ話を聞きに来てあげたの。それなのに、その態度は何?」さらに数秒、奈緒を眺めてから、侮蔑を隠そうともせず言い放つ。「そもそも、本当に実力で今の立場まで上がったのかしら。それとも、男に取り入るのが上手なだけ?実力もないくせに、男を利用して上へ行こうとする女なんて、嫌というほど見てきたわ。もうあなたと話す気はない。責任者を呼んで。あなたじゃ話にならないから」
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第407話

「言葉を慎んでください。ここは商談の場であって、人を罵る場所ではありません。うちの仕事に疑問があるなら、契約書を持ってお帰りください。ヤジン・デザインは、この案件一つを失ったところで困りません。ただし、このプロジェクトは奈緒さんがメインデザイナーを務めなければ、平凡なものに終わるということだけは断言できますので。それから、奈緒さんは単なる所属デザイナーではありません。この事務所の共同責任者のため、今回の契約について、すべてを交渉する権限があります」仁哉は強気な態度で、一歩も引かなかった。その迫力に、佳乃は一瞬言葉を失ったが、すぐに屈辱で顔を強張らせた。「あなた、誰?私に向かってよくそんな口が利けるわね」ヤジン・デザインでは、対外的な窓口を秀智が一手に引き受け、設計チームは奈緒を中心に動いている。そのため、佳乃は今まで仁哉と直接関わったことがなかった。それは仁哉自身が意図してそうしていたから。ヤジン・デザインは、彼が手がける仕事のほんの一部にすぎない。普段は一族の事業全体を見ながら、表には出せない国の重要プロジェクトにも携わっている。実際、仁哉は数年前から、国立大学の建築学科の教授として研究指導を行っており、某国立先端建築研究所の顧問も務めていた。だが、本人がメディアに出ることを好まないため、建築業界の外ではその名を知る者は少ない。それに仁哉自身も、肩書きをひけらかしたことなど一度もなかった。仁哉にとって、本当の成功とは称賛を求めることではないのだ。仁哉は佳乃をまっすぐ見据え、わずかに身を乗り出した。「栗原仁哉と申します」佳乃の目が大きく見開かれた。数秒間、信じられないものを見るように彼を見つめる。なるほど。最初に見たときから、ただ者ではないとは思っていたが、まさか国際的に名高いトップの建築デザイナーであり、深津市でも指折りの栗原家の御曹司だったとは。そしてこの男こそ、ネットに流出した動画で奈緒と車内にいた人物では?あれほどの騒ぎになった以上、立場を考えて奈緒とは距離を置くものだと思っていたが、この男はむしろ平然としている。それどころか、奈緒を守るためにクライアントである自分に真っ向から歯向かってきた。佳乃の胸が怒りで上下する。佳乃は仁哉を睨みつけ、そのそばで平然としている
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第408話

仁哉がここまで強気に出てくるとは思っていなかった佳乃。彼女は驚きを露わにして立ち上がり、声を一段と高く張り上げた。「私が持っているのは、総事業費数百億規模のS級リゾート開発プロジェクトなんですよ!成功すれば、メインデザイナーとして業界で一気に名前を上げられる!うちと組みたがっている設計会社なんていくらでもあるし、それも、あなたたちより実績のあるところだってあるんですから。後悔しないよう、よく考えてくださいね!」仁哉が眉を寄せ、口を開こうとしたそのとき、テーブルの下で奈緒がそっと彼の手の甲に触れた。てっきり奈緒が折れるのかと思い、仁哉は奈緒に視線を向けたのだが、どうやら違うようだった。奈緒は佳乃の挑発的な視線をまっすぐ受け止め、静かに話し始める。「それがどうしたんですか?私はデザイナーとして、クライアントにも最低限の敬意を求めます。それすらない相手と、同じ理念を共有して仕事ができるとは思えません。御社のプロジェクトに強く興味を持っていたのは事実です。でも、対等で互いを尊重できる関係を築けないのなら、お断りします。ヤジン・デザインは、この案件がなくても困りませんので」まさか奈緒まで、ここまで強気でくると思っていなかった佳乃は、呆気に取られた。凛と光る奈緒の目を見ているうちに、佳乃の苛立ちはますます膨らんでいく。「そう、そうやって強気でくるのね?」佳乃は口元に勝ち誇ったような笑みを浮かべた。「あとでほかの事務所に決まっても、泣きついてこないでよね」そう吐き捨てると、佳乃はバッグをつかんで立ち上がり、二人のアシスタントを連れて出ていった。バタン!会議室のドアが激しく閉まる。その瞬間、奈緒の張り詰めていた肩から力が抜けた。深く息を吐き、仁哉を見る。「さすがに……このプロジェクトはもう無理かな」だが、仁哉は余裕のある笑みを見せる。「そうとも限らないよ。今この国で、このプロジェクトを奈緒さん以上に仕上げられる人はいないと思ってる。待っていればいい。最後には向こうから戻ってくるから」「どうしてそう思うの?」と奈緒は首をかしげる。仁哉は答えず、ただ笑って奈緒の肩を軽く叩いた。「仮にほかへ決まったとしても、落ち込む必要はないよ。ああいう高圧的なクライアントにまで頭を下げる必要はないからね。うちに足りない
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第409話

奈緒はすぐにいくつかのSNSアプリを開いて確認した。ついさっきまで、自分と仁哉を叩く投稿や記事があふれ返っていたはずなのに、今はどこを探しても綺麗さっぱり消えている。奈緒が首を傾げていると、オフィスのドアが叩かれ、仁哉が入ってきた。「ネットの件、奈緒さんが誰かに消してもらった?」「え?てっきり仁哉さんがやってくれたのかと……違うの?」二人は顔を見合わせる。仁哉がふと口を開いた。「じゃあ、ギルとか?」奈緒はすぐに兄へメッセージを送ったが、返ってきた答えは彼ではないというものだった。「お兄ちゃんでも、仁哉さんでも、私でもない。じゃあ一体誰?それに、こんなことできる人そうそういないよね。それに、わざわざ私たちのために……」奈緒にも仁哉にも、さっぱり見当がつかなかった。二人で考え込んでいると、廊下のほうから柔らかな声が聞こえてきた。「仁哉、奈緒さん、二人とも仕事ばっかりして、どうせまだ何も食べてないんでしょう?美味しいものを作ってもらったから、食べてちょうだい」奈緒と仁哉がそろって振り向く。そこには、にこやかな笑みを浮かべる琴葉が立っていた。白いワンピースに、シャンパンカラーのフリンジショール。髪は上品なクラシカルなまとめ髪に整えられ、耳元では真珠のイヤリングが柔らかな光を放ち、穏やかで華やか、それでいて品がある。やっぱり、美人からは美形が生まれるんだ……奈緒は琴葉を見て、それから仁哉へ視線を移した。この親子、並んでいるだけで本当に絵になる。何も話さず、ただ微笑んで立っているだけなのに、周りの空気まで柔らかくなるようだった。仁哉は歩み寄り、琴葉からランチボックスを受け取る。「母さん、どうしたの?急に」琴葉はむっとしたように息子を見た。「差し入れに決まってるでしょう。見れば分かるじゃない」しかし、まだ納得のいっていないような仁哉。「だって母さん、今までこんなことしたこと無いから……」琴葉は仁哉の肩をぺしっと叩いた。「失礼ね!昔のあなたは海外にいるか、仕事で缶詰になってるかだったでしょう。私にどうやって差し入れしろっていうのよ」そう言ってから、琴葉は奈緒へ満面の笑みを向けた。「奈緒さん、あなた本当に痩せたわね。ほら、こっち来て。ちゃんと食べなきゃ」奈緒は我に返り、慌てて笑みを浮かべる
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第410話

仁哉と美紀が結婚した当時、奈緒はまだ充の部下にすぎず、栗原家がとても盛大に結婚式を挙げたとは聞いていたが、細かい内情までは知らなかった。しかし、今こうして琴葉から聞かされて、あの結婚が最初からどれほど理不尽で、栗原家にとってどれほど割に合わないものだったのかを、奈緒は初めて知った。仁哉はだんだん居たたまれなくなってきたらしい。「母さん、もういいだろ。その話は……」「散々損させられて、挙げ句の果てに孫だと思ってた子まで他人の子だったのよ!離婚のときには、あなた10億円も渡したじゃない!どうして私が黙ってなきゃいけないの?むしろ言いふらしてやるわよ。あの家と縁談を考えてる人がいたら、全力で止めるんだから!翠さんの3人の娘の中には、まだ結婚してない子がいるでしょう?だから、このことを知らずに嫁にもらった家が可哀想じゃない!」仁哉は黙ってしまった。自分の母には、やっぱり黙って座っているだけにしてほしい。口を開けば品などなくなり、ただの井戸端会議の中心になってしまう。奈緒は笑いをこらえながら、琴葉の生き生きした顔を眺めた。なぜだか分からないが、とても親近感を覚えるのだ。名家出身で大学教授。そんな肩書きだけを見れば、私生活でも常に隙がなく、言葉一つひとつを慎重に選ぶタイプだと思っていた。ところが実際は、思ったことをまっすぐ口にする、とても人間味のある人だった。その激しいギャップに、奈緒は妙子を思い出す。初対面では威厳があり近寄りがたく見えるのに、親しくなれば驚くほど気さくで面白い。建前と駆け引きばかりの世界で、琴葉のように感情を隠さず話す人はむしろ珍しく、清く流れる一筋の小川のようだった。そして、そのまっすぐさは仁哉にもどこか通じている気がした。奈緒がそんなことを考えていると、琴葉が突然話題を変えた。「そういえば奈緒さん、青木家に嫁いだとき、結納金はどれくらい貰ったの?」奈緒は少しきょとんとしてしまったが、正直に答える。「何ももらってません」琴葉が固まった。次の瞬間、勢いよく立ち上がる。「何ですって!?ちょっと待って。翠さんって、うちからはあれだけ取っておいて、自分の家に嫁いできた奈緒さんには何も渡してないの!?青木家だって、この街じゃ名の知れた家でしょう!それなのに、嫁いできたお嫁さん
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