奈緒がそう言った瞬間、充と胡桃の表情が同時に変わった。胡桃の目から、先ほどまでの威勢がわずかに消える。「黎ちゃん……骨髄移植が必要なの?」奈緒は淡々と答えた。「そうです。あなたたちは血縁者だから適合する確率も高いと思います。それに、青木家の血が流れている子供だとおっしゃるなら、青木家の人たちにも検査を受けてもらうつもりですので。で、もし適合した人がいたら、その人に提供してもらう。それだけのことです。それくらい、当然協力してくれますよね?」言葉に詰まった胡桃は、反射的に充を見る。充は一瞬驚き、その漆黒の瞳を少し揺らしたものの、すぐに答えた。「ああ、俺は受けてもいい」その瞬間、胡桃は充の袖を引き、廊下へ出るよう目で合図する。充も意図を察し、そのまま胡桃と病室を出ていった。奈緒は二人の背中を見送り、冷ややかな笑みを浮かべた。蛍がそっと近づき、声を潜める。「奈緒、実際にそんなことはないよね?さっきの……二人を騙してるだけでしょ?」奈緒は鼻で笑った。「見てて。青木家の人間、最後まで誰一人、本気で検査を受けようとはしないと思うから。充本人が受けると言っても、周りが必死で止めるはずよ」蛍はすぐに納得したようにうなずいた。「私もそう思う。あの人達、本当に自己中心的だし、黎ちゃんが元気なときですら、ろくに可愛がらなかった人たちだもん。病気になった途端、自分を犠牲にして助けるなんて、するわけないよね」仁哉も静かに口を挟んだ。「もし本当に誰かが検査を受けると言うなら、そのときはこっちでいくらでも対応できる。もちろん、本当に提供させる必要はない。まずは誰が本気で黎のために動くのか、それを見るだけでいい」奈緒の目は冷え切っていた。「これが最後の確認。青木家の中に一人でも、黎のために本気で動こうとする人がいるなら、青木グループを完全に潰すところまではやめてもいい。でも、最後まで誰も出てこなかったら……充には、全てを失う覚悟をしてもらう」仁哉は奈緒をじっと見つめた。「この件でも失望したら、本当に青木家を終わらせるつもりってこと?」奈緒は迷わずうなずいた。「うん。私の手元には、青木グループを崩せる証拠がある。お兄ちゃんの力なんて借りなくても、私一人で十分潰してみせるから」5年間の結婚生活。奈緒は
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