泰司のような人を吐かせるのはそう難しくなく、少し手荒に追い込み、きつく脅せば、あっさりとすべてを白状した。そして、奈緒の予想どおり、泰司は今回も誰かに利用されていた。少し前、楓から別れを告げられた泰司は、それをずっと恨んでいたらしい。そんなとき、何者かが接触してきて、クラブ・ノクターンの従業員を買収してほしいと持ちかけた。楓への愛情が憎しみに変わっていたこともあり、彼女を陥れることにした泰司が、すぐに話に乗ったということだった。長年、店で働いていた泰司は、店の内部事情を知り尽くしていた。そこで昔の同僚に会いに来たふりをして店内へ入り込み、薬物の入った包みを楓の事務所に隠した。警察が楓のデスクから押収した薬物は、泰司が仕込んだものだった。ここまでくれば、すべて誰かが周到に仕組んだ罠だと考えて間違いないだろう。それも、狙いはクラブ・ノクターンを潰すだけではなく、蘭に薬物犯罪の罪を着せ、長期間刑務所から出られないようにするつもりだ。幸い、泰司がこちらに捕まっていることを、相手はまだ知らない。奈緒は床にへたり込み、すっかり仁哉に怯えきっている泰司を見下ろした。怒りが込み上げ、どうしても抑えられない。蘭が昔から従業員を大切にしてきたからこそ、クラブ・ノクターンは長年深津市で営業を続け、繁盛してきたのだ。それなのに、泰司一人の裏切りですべてを台無しにされかけている。そう思うと奈緒は我慢できなくなり、泰司を思いきり蹴りつけた。「この恩知らず!前だって、あなたは人に金で買われて放火に手を貸した。それでもお母さんは、長年働いてくれた情があるからって、一度は許してくれたでしょ!なのにまた同じことをして、お母さんだけじゃなくお店まで潰そうとして……楓さんの事務所に薬物を隠すとき、お母さんまでどうなるか、一度でも考えた!?あれだけ助けてもらっておいて!」その瞬間、奈緒は心の底から嫌気が差した。人を許すことも、手を差し伸べることも、相手を選ばなければならない。相手を間違えれば、その優しさが自分を追い詰める刃になる。奈緒に強く蹴られた泰司は、床に血を吐いた。「奈緒さん、ごめんなさい……僕が間違ってました!でも、わざとじゃないんです。金が必要で……だから、ど、どうしようもなかったんです!僕が薬物を置いたって証
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