バンッ!大きな音とともに病室のドアが蹴り開けられ、勢いよく壁にぶつかった。奈緒は驚いて顔を上げた。入ってきたのは、少し前にヤジン・デザインの事務所へ商談に来た佳乃だった。佳乃は淡いイエローのきっちりしたスーツ姿で、化粧も隙なく整っている。だが、眉間には隠しきれない苛立ちが滲んでいた。後ろには、まるでボディーガードのような屈強な秘書の二人が控えている。3人とも明らかに穏やかな用件で来た様子ではない。佳乃は顎をわずかに上げ、病室の中を鋭く見回した。やがて奈緒と仁哉に視線を留めると、嘲るように口元を歪めた。「誰がこんな特別室に入ったのかと思えば……またあなたたちだったのね」奈緒には、何のことかさっぱり分からなかった。なぜ佳乃が突然ここへ乗り込んできたのかも、この病院と佳乃にどういう関係があるのかも、皆目見当がつかない。奈緒は思わず仁哉を見る。彼はすでに箸を置いていて、ゆっくりとした動作なのに、纏う空気は明らかに冷えていた。仁哉は立ち上がり、奈緒の前へ出る。「庄野さん。ここは僕たちが使っている病室ですので、出ていっていただけますか?」佳乃は腕を組み、仁哉を上から下まで眺めた。「は?出ていけですって?私が誰だか分かって言ってます?仁愛インターナショナル病院はうちの父が出資する病院、そちらに指図される筋合いはありません」佳乃は、仁哉のことをほとんど知らなかった。栗原家は事業規模こそ大きいが、表に出ない資産も多く、主要な持ち分も信託や名義分散で保有している。仁哉自身も、派手な二世経営者の集まりにはほとんど顔を出さない。だから、ブランドや肩書きで人を見る佳乃にとって、仁哉はせいぜい少し裕福な家の出身にしか見えていなかった。それを聞いて、仁哉が鼻で笑う。「そうですか。それで、僕たちがここに入院していることが、庄野さんに何か不都合でも?」「あるに決まってるじゃないですか!」佳乃の声が一気に大きくなった。「祖父が隣の特別療養区にいるんです。絶対安静が必要だから、このフロアには私が許可した人間以外、入れないよう病院側にも伝えてありますので」そして奈緒へ視線を向ける。佳乃はその瞳に浮かぶ嫌悪を隠そうともしなかった。「そもそも、ここの特別室って誰でも入れる場所じゃないんですよ。使いたいなら、
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