All Chapters of RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~: Chapter 131 - Chapter 140

166 Chapters

第131話 友達を守る剣

 バハロムの森に来ていた。 真っ暗闇である。だけどウミとアイギスは獣の亜人のため夜目が利いた。おかげでランタンを点灯させる必要は無い。所々に落ち葉のある地面を踏みしめて歩く。乾いた足音が鳴っていた。周りには背の高い木々が無秩序に立っている。一人なら怖くて、とてもでは無いが夜には来られない。だけどすぐそばにはアイギスがいる。友達の存在が心強かった。 二人はパーティを組んでいた。ちなみに配信ドローンは出して無い。 フレイムウェポンはお互いにすでにかかっていた。 両手に槍と盾を構えて、アイギスが先頭を進む。ウミはすぐ斜め後ろから続いた。モンスターのダークエルフが出たら協力して倒し、また林の中をさまよい歩く。 ウミはすっかり感心していた。 やっぱり、(アイちゃんは強いですぅ) アイギスはダークエルフに対し、コンスタントにパリイを決めてスタンさせてくれる。おかげでウミは剣を大ぶりに斬りつけることができた。ダークエルフはどんどん倒れた。だけど、どれだけ倒してもお目当ての黒燐石を入手できない。 黒燐石を取ればAランク武器を作ることが可能である。ベルフラウはそう教えてくれた。 二人分欲しいところだ。「アイちゃん、出ませんね」「うん。レアドロップは確率が悪い。だけど頑張る」「頑張りましょう!」「朝まで狩り続ける」「分かりました!」 二人は意気投合し、ダークエルフを求めて暗闇の林を行ったり来たりする。 ふと。 闇よりも濃い漆黒の渦が前方に巻き起こった。「アイちゃん!」「あれは何?」 二人が立ち止まる。 ドンと音がした。 ――クエスト、ナイトゲイルの撃破 漆黒の渦から、三つ目をした男性のダークエルフが出てくる。左手には丸い盾、右手にはシミターが握られていた。肩や足の筋肉は盛り上がっており、筋肉だるまのようなモンスターである。敵はその長い舌で唇をべろりと舐めた。舌の先からよだれがしたたり落
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第132話 裏切れない人

 夜のルスプル町の繁華街。 魔導灯の明かりや店からこぼれる光が大通りを照らしていた。食堂からはかぐわしい匂いが風に乗って運ばれてくる。「いらっしゃいませ! 美味しい鹿肉のステーキはいかがですか?」という呼び込みの声が響いている店もあった。 プレイヤーたちが同伴者たちと輪になって話し込んでいる光景がある。その表情は明るく、賑やかな笑い声を響かせていた。ウミも自然と笑顔になる。ウミは他人の幸せを自分の幸せと感じてしまう部分がある。 ウミとアイギスは肩を並べて歩いていた。今、カフェに向かって歩いている。 ウミの肩にぽつんとしずくが落ちた。夜空を見上げると、雨が降って来ようとしている。「アイちゃん、雨ですぅ」「やばい」「カフェに急ぐですっ」「急ごう」 二人は早足になる。 ふと、正面に見慣れた恐竜のシルエットが見えてきた。ひな鳥のような丸みを帯びた顔に長い首。キャルル丸が道端に佇んでいる。その鼻からはじゅるじゅると鼻水が垂れていた。「きゃる……」と寂しそうに鳴き声を上げている。 ウミとアイギスはびっくりとした。「アイちゃん、キャルル丸がいるです!」「どうしたの?」 近づいていく。 キャルル丸は二人に気づくと、驚いたように目を見開いた。ウミに接近して舌を伸ばす。「きゃるるぅぅ! きゃるるぅぅ! きゃるるぅぅ!」 顔が強烈に舐められる。 キャルル丸がすぐに舐めるのはいつもの事だ。 だけど今は、その様子に異変を感じた。 ウミがキャルル丸のあごに両手で触れる。「ちょっ、キャルル丸、どうしたですかぁ?」「ニキはどこ?」 アイギスが聞いた。 キャルル丸は大通りの向こうに首を向けて小さな鳴き声をあげる。「きゃ……る」「あっちにいるですかぁ?」「ウミちゃん、危険な匂いがする」 アイギスが鼻を
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第133話 団長命令(二)

雨が降りしきっていた。 夜の暗闇の中を、ニキは行く当てもなくさまよい続けた。 身体に打ち付けてくる雨は自分の罪を責め立てているようであり。 これからの未来の冷たさを物語っているかのようでもあり。 ただひたすらに悲しかった。 涙でいっぱいで視界がにじんでいる。前が上手く見えない。ここはどこだろうか? だけどどこでも良い。明日はギルドバトルなのに、もうどんなにあがいたって、自分は戦力外なのだ。 羽の生えた魚になって、この雨の中を泳いで行きたい。 ニキは立ち止まる。後ろにいたキャルル丸も足を止めた。 ……もう、ダメさ。 (俺っちは何をやってもダメさ) もう歩けなかった。 立ち止まり、その場に尻餅をつく。濡れネズミだった。 「うぇっ……うぇっ……」 嗚咽がこみ上げる。涙腺が崩壊した。涙と鼻水がとめどなくこぼれた。顔の筋肉がひきつって、子供のように泣き声を上げる。 「うえへぇぇえええんっ!」 「きゃるるぅっ、きゃるるぅっ」 キャルル丸がすぐそばに寄り添って、その身体を屋根にした。身を挺して雨を防いでくれる。相棒の優しさが、ニキの嗚咽を加速させる。 割れんばかりの泣き声が響いた。 恥も外聞も無かった。 幼子のように泣きじゃくる。 キャルル丸が鳴いて、必死に励ましてくれていた。 その丸みを帯びた白い鼻からも、鼻水が伝っている。 配信コメントはどうしてか止まっていた。 おそらく、誰も声をかける気にならないのだろう。 このまま死んでしまいたい。 (そうだ、死ねば良いさ) それしかない。 死にたい。 その時だ。 正面で足音が響いてきた。スタ、スタと鳴り、やがて止まる。 本名が呼ばれた。 「ニキト」 ニキが顔を上げる。 「……う、うぇ、だ、誰さ」 「俺だ」 見ると、青い髪に同じ色のTシャツを着た男がそこにいた。トウマである。どうしてここにいるのだろうか? いつもこの時間は、すでにログアウトしているはずなのに。 トウマも雨に濡れている。 ニキは顔をしかめた。両手で涙をぬぐう。本名で呼び返した。 「ゆ、ユウマ、ど、どうしてここにいるさ?」 「ウミから電話で連絡があった。お前がここにいて、困っているってな」 「……き、聞いたさ? 俺っちが、さっき何をしたのか
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第134話 自分を救え

 ノーファン村の北出口にワープする。 小さな雲がゆっくりと流れている。夜空には満月がぽっかりと浮かんでいた。黄色い光が地面を照らしている。やけに明るい夜であった。絶望から救われた自分の心と良く似ていた。泣きはらしたせいでニキの目は真っ赤である。 出口付近では、初心者プレイヤーがだらしなく座り込んでいる姿があった。ゲームに失望しているせいなのか頭を下げている。ふと通りかかった魔法使いふうの男が地面に唾を吐き捨てた。「こんなゲーム稼げねえ!」と語気を荒くする。そのまま出口を出て行った。 これが初心者の村の平常運転である。(俺っちも去年までは、ああだったさ) ニキは200万ヴァルを使い、レベルを22に上げた。スキルレベルも18にアップさせる。ニキが作業をしている間、トウマはウミに電話をしていた。キャルル丸の面倒を見てくれるように頼んでくれた。:ニキさん、良かったね。:もう落ちるなよw:団長、太っ腹すぎる……。 電話を終えると、トウマが声をかける。「ニキト、配信を切ってくれ」「わ、分かったさ」:ちょっと! トウマさん、まだ見ていたいんだけどw:配信切らないで。:みんな、少し二人きりにしてあげようよ。 ステータス画面を操作して、二人が配信を中止する。コメントが流れなくなった。「ニキト、行くぞ」「どこへ行くさ?」「ついて来い」 トウマがランタンを出して点灯させた。村の外へと歩く。ニキは怪訝に思いつつもその背中を追った。(もしかして山へ行くさ?) 草原を越えて森に入る。ニキが思った通り山を登った。鬱蒼とした木々と藪が左右に生い茂る山道を二人でひたすらに歩く。ひんやりとした空気が肺に入り、頭が少しだけ冴えた。 モンスターが出たら協力して撃退していく。 苦戦することは無かった。 だけど、(目的地はどこさ?) 今はついて
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第135話 恋人の贈り物

 ――クエスト、ヴァラクスの撃破 楕円形の広い空間だった。室内の奥は暗闇が広がっている。階段前の地面にニキはランタンを置いた。白銀のキャノンを両手で構える。こめかみにじっとりとした汗が伝った。 部屋の中心にボスモンスターが立ち上がる。輝く白金のローブを身にまとっていた。先の丸まった木の杖を持っている。赤い瞳を開いた。 敵がケタケタと笑った。ひずんだ声を響かせる。「また人間が来たか。哀れな奴め、我の稲妻で焼き尽くしてくれようぞ」 こいつを倒して、(自分を救うさ) やるしかない!「やってやる!」 ニキがキャノンを構えて発砲する。弾丸が射出されて敵に命中した。だけどHPはあまり減らない。(くそ、硬いさ!) ヴァラクスが杖を振るった。シューティングゲームのごとく魔法弾を放つ。 ニキは横に駆け出した。逃げ撃ちは彼の専売特許である。敵の魔法弾を回避しながらキャノンの弾丸をコンスタントに命中させていく。だけど敵の耐久力が高い。「どうした人間よ、それは攻撃か?」「うるさいさ!」「ほれほれほれ、早く走らないと殺してしまうぞ」「くそっ」 ニキはヴァラクスの周囲を大きく回るように走った。魔法弾を回避しつつ、こちらの攻撃を当てる。幸運なことに、敵のHPの自然回復速度は遅い。ダメージが蓄積されていく。(これなら行けるさ!) ニキの胸に希望が灯る。 だけどそこで、ヴァラクスが黄色いオーラに包まれた。魔法の詠唱を始める。(何だ?) スキルを使うつもりのようだ。(させるかよっ!) ニキが唱えた。「バーストキャノン」 射出された炸裂弾が命中し、大きな爆発が起こる。ヴァラクスは頭をピヨピヨと回した。スタン状態に陥っている。魔法の詠唱は中断だった。「この……やってくれたな!」 敵がまた杖を振るう。魔法弾が飛んだ。 
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第136話 出陣

 ギルドバトル当日だった。 午後七時前。 牡鹿ホテルのツインルームを借りていた。床にはグレーの絨毯が敷かれてある。通路の幅は広く、調度品は質の良いものばかりが使われていた。明るい色の木製テーブルに柔らかなソファ。棚の上には花瓶がある。シャクヤクの紅色の花が一輪だけ挿してあった。広いガラス窓からはルスプルの町並みを一望できる。街灯が道路をほのかに照らしており、大通りではいつもと変わらない日常があった。ゴールデンタイムのこの時間はプレイヤーが多く、人々が行き交っている。この部屋は八階であり、人々の姿が粒のように映った。清々しい夜空にはわずかに欠けた月が悠然と浮かんでいる。 トウマはベッドに腰掛けていた。柔らかさと弾力が併存したマットレスの上で、海鮮グラタンを食べている。緊張のせいで味がよく分からない。思わず吐息をついた。 ホテルの一室ということで、配信ドローンはない。 昨夜、トウマはウミとアイギスに口止めをした。団長として、ニキを許すことに決定している。そのおかげでベルフラウと晴恋は昨夜のことを何も知らない。 みんなでバフ料理を食べていた。トウマとニキ、晴恋がグラタン。それ以外はカレーライスである。カレーはアジリティとHP、グラタンはスキル効果とMPの向上がある。キャルル丸も床でむしゃむしゃと口を動かしていた。その顔は笑顔であり緩んでいる。時々顔を上げて「きゃるるぅ」と嬉しそうに鳴いていた。その口にはカレールウがついている。 トウマが声をかけた。「みんな。バフ料理を食べ終えたら、全財産のヴァルを俺に渡してくれ」「それはどうしてですか?」 椅子に座っている晴恋が顔をきょとんとさせる。 ベルフラウが説明した。「晴恋、ギルドバトルでも、死ぬとデスペナルティがあるのよ。死んだらヴァルマイナス30%のペナルティがあるわ。だから、攻めの私たちは死んでも良いように、守備のトウマにヴァルを預けた方がいいの」「あ、なるほどです!」 晴恋が納得したように頷いた。 ウミがスプーンを掲げる。唇からはチャーミングな八重歯が覗いた
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第137話 急襲

 満月の明かりの下。 ニキを乗せたキャルル丸が右の通路を走っていた。道幅は、現実の道路の片側車線ほどの広さである。雑草があり、シロツメクサがのんきに咲いている。月光が降り注ぐ中、白い花は凜と背筋を伸ばしていた。柔らかな地面だった。キャルル丸が踏みしめるたびに足跡が出来ている。道はなだらかなカーブを描いており、敵陣地を遠望することはできない。今のところ敵影はない。片手で手綱を握っているニキが声をかけた。「キャルル丸、ここからはゆっくり行くさ」「きゃるるぅっ」 相棒の声は興奮にうわずっていた。つぶらな瞳が今は鋭く尖っている。それでもきちんと言うことを聞いてくれたようで、進むペースがゆっくりになる。 突っ込みすぎて、敵の中心に飛び出す訳にはいかない。袋だたきにされるからだ。(ここは、落ち着いて行かないと):キャルル丸、落ち着いて。:焦りは禁物だぞ。:死んだら即退場ですぞ。:もっと圧力をかけた方が良くないか? キャルル丸、足速いし。 昼間のうちに、ニキとトウマはある約束をしていた。 第一回戦では、プラズミックガンを使用しないというものだ。 ギルドバトルの配信録画は公式サイトにすぐに上がる。ニキたちがどうしても勝ちたいのは三回戦のセレクター戦だった。プラズミックガンを持っている情報がネットに流れた場合、対策を練られてしまう恐れがある。だから今回は封印だった。 ニキがキャルル丸に小声でささやく。「キャルル丸、前方から敵の足音は聞こえるかい?」「きゃるる」 キャルル丸も声をひそめている。だけど強く頷く。 敵が来ているみたいだ。「キャルル丸、ストップさ」「きゃるっ」 キャルル丸が足を止める。 ニキは白銀のキャノンを両手に持ち、正面に目をこらした。やがて二人のプレイヤーが走ってくるのが見える。そのうちの一人はダークネスダガーの団長、シモベだった。赤い短髪に見覚えがある。(団長か!) くそ、(当たりを引いちまったさ) ダークネスダガーのメンバーが叫ぶ。「いたぞ! 敵だ!」「へっへー、白竜に乗ってらあ。トウマさんと戦う前に、いっちょやっちまうか」 シモベが剣を構えて全力で駆け出す。「キャルル丸、後退するさ!」「きゃるるっ!」 キャルル丸は回れ右をして走り出した。ニキはキャノンを後方に向けて威嚇射撃をする。そのままゆっくりと味
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第138話 勝負の流儀

「ご主人様、右から敵が来ますです」 ウミが両手を猫耳に当てて聴覚を研ぎ澄ませていた。:ウミちゃんの猫耳はハイテクです。:ウミちゃんの水着はさすがにエロい。:おへそにでっかいハートマークの穴w:トウマはどうしてDランクの服なの?:団長の服が貧乏くさい件w トウマとウミにはフレイムウェポンがすでにかかっている。 岩壁に囲まれた半円形のフィールドだった。トウマはブラウンのステッキを構えつつ、凜々しい顔をひきしめる。緊張が胸にこみ上げてかすかに吐き気がした。興奮も強く、冷静さを保つためにトウマは大きく深呼吸をする。夜空の月は今にも落ちてきそうなぐらい近くにあった。月にアルテミスがいるのなら、今頃ギルドバトルに熱狂しているに違いない。 トウマが静かに聞いた。「ウミ、敵の数は分かるか?」「キャルル丸の足音がしますです。その奥に二人います」「……二人か」 だとしたら数で勝っている。トウマは勝ち気に口の端をつりあげた。やがて、ドタドタという足音がトウマの耳にも聞こえてくる。「ご主人様、来ます!」 ウミが声を上げた瞬間、右通路からキャルル丸に乗ったニキが顔を見せる。こちらへと走って来た。ニキとキャルル丸のHPが減っていないことにトウマは安堵する。:ニキが逃げてきた!:陽動だろ?:そういう作戦だと思う。「トウマさん!」「きゃるるぅ!」「ニキさん、キャルル丸!」 ウミが名前を呼んで駆け寄っていく。走りながら赤い剣を抜いた。口早に唱える。「フレイムウェポン」 ニキに攻撃力アップのバフがかかる。 キャルル丸の後ろからは間もなくダークネスダガーのメンバー二人が現われた。赤髪の剣士と斧使いだ。 キャルル丸が振り返る。その背中の上でニキが敵にキャノンの砲口を向けた。照準を合わせる。 赤髪の剣士、シモベが両手を開いて肩をすくめた。ニヤリと笑み
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第139話 もう一回!

 静岡のログネストのマットルーム。 デスペナルティをくらった晴恋には一時間のログイン制限がかかっていた。 木製の薄い壁で隔てられた黒いマットルーム。天井からは空調の音がかすかに聞こえてくる。ジンジャエールのコップを持って一口含んだ。炭酸の利いた甘い液体を舌で転がす。 今、デスクトップを操作してギルドバトルの配信録画を見ている。ヘッドホンを耳に当てていた。VALORIUMの公式サイトには先ほどの配信録画がすでに掲載されていた。 やがて、自分が死んだ瞬間の映像が流れる。「ふ、ふわわあぁぁあああああっ!」 虹色ワンピース姿の晴恋は、指示棒を持ったままぶるぶると震えていた。敵の攻撃を浴びてぎょっとした表情をしている。(……私、情けないです) 晴恋の目からしずくがこぼれる。 これでは戦力外だ。 敵に恥をさらしただけとも言える。 あの時、どうして土壇場で固まってしまったのだろうか? できることはたくさんあったはずなのに。 自分のスキルには強力なバフ、デバフスキルが合わせて三つある。(……悔しい) ――ニキさん。 これを見たら、ニキはがっかりするだろう。 だけど一番がっかりしているのはやはり自分自身だった。 録画を最後まで見終える。ウミの戦い方にはびっくりとした。ぴょんぴょんと跳び上がって敵を翻弄している。やがてベルフラウとアイギスが敵陣地のクリスタルを破壊し、グラスオースの勝利となった。 視聴者コメントにショックを受けた。:一箇所だけ穴があったけどな。:晴恋だろ?:あの女はよわw(私……弱いんだ) 晴恋の両目から涙がぼろぼろと垂れる。 デスクトップをシャットダウンした。靴を履いてルームを出る。ジンジャエールのおかわりを汲みに行った。それをゴクゴクと飲んでふうと息をつく。ポケットからスマホを取りだし
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第140話 復讐したいんです

 翌日の昼過ぎ。 トウマたちはルスプルの西の森に来ていた。青々とした木々の葉が風にさわさわと揺れている。オオルリが木の枝に止まっており、高い鳴き声で歌っていた。近くに川が流れているのか水の音もする。オオルリの歌と川音のハーモニーが耳に心地よい。モンスターさえ出なければ絶好の森林浴スポットだ。だけど今はモンスターに用事があった。 晴恋が両手に指示棒を持ち、地面の上を先頭で歩いていた。少し離れたところから仲間たちが追いかけて足を運んでいる。 ギルドバトルに向けた晴恋の特訓だった。今日は実戦である。:晴恋の修行があると聞いて。:フードのてるてる坊主の刺繍が可愛い。:ニキって腹筋割れてるよな。:裸にチョッキって、かなりセクシーな格好。 トウマの隣を歩いているウミが微妙な笑顔を浮かべた。右手を口に当ててこそこそとささやく。「ご主人様、大丈夫でしょうか?」「大丈夫だ」 頷いたトウマだったが、少々不安である。晴恋が危険になったらすぐにでも助けようと気を張っていた。 ニキも同じ気持ちのようで、白銀のキャノンを油断無く構えていた。その顔つきはギルドバトルの時よりも真剣な色合いを帯びている。恋人を死なす訳にはいかないのだろう。 ニキを背中に乗せているキャルル丸が「きゃあるぅー」と大あくびを一つした。 ふと晴恋が立ち止まった。 遠方正面からエリートオークとゴブリンファイターが一体ずつ現われる。「ぎゃばあ!」と笑い声のようなものを響かせて迫ってきた。 晴恋の両目がわなわなと震える。「ふ、ふわわ……」「晴恋、スキルを使う!」 アイギスが厳しい声で助言した。 晴恋が指示棒を掲げる。「そ、そうだよねアイ! えっと、本日の天気は快晴です」 空の太陽がぱあっと光った気がした。 その場にいる全員が白い光に包まれた。動体視力アップのバフがかかる。敵の動きが滑らかに映った。:独特なスキル名称。
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