All Chapters of RMTサバイバー~今日の宿代を稼ぐ俺と、人助けで戦う使い魔~: Chapter 171 - Chapter 180

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第171話 1000万ヴァル

 午後一番。 いま、ラグナシアの町長の家へみんなで向かっていた。晴恋が衣装下着の作成に成功したのである。それを渡しに行くのだ。 路傍には一列に大きなサボテンが生えている。不思議な形である。トゲトゲとしており、頭にはオレンジ色の花が咲いているものもあった。しげしげと眺めて、ウミは隣にいるアイギスに尋ねる。「アイちゃん、あの植物、形が変ですぅ」「本当」「どうしてトゲがあるのでしょうか?」「僕にも分からない」 二人は首をかしげつつ歩を進める。モフモフとした尻尾が仲良く揺れていた。:サボテンのトゲは外敵から身を守るためですよ。:ラクダに食べられますけどね。:トゲの意味ないじゃんw アイギスの右手首にはいつの間にか緑色のブレスレットがはまっている。ニキからプレゼントされたらしい。 午前中、トウマとウミとベルフラウの三人は砂漠を探索し、ボスの出現ポイントを二つ見つけていた。主人の考えでは雑魚よりもボスを倒した方が、効率が良いらしい。何ともトウマらしい考え方だと思った。 朧月とトワのペアに勝つためにも、高得点をたたき出さなければいけない。 町長の家はオアシスの隣だった。レンガ造りの大豪邸である。普通の民家を三軒並べたほどの大きさだった。庭にはナツメヤシ以外にも木々が植えられていた。オアシスから水が流れてきており、ため池を作っている。これなら家にいても水に困らない。すぐ近くには畑もあった。 地図を片手に先頭を歩いていたベルフラウが「ここね」と言って玄関へと案内する。みんながその背中に続いた。ベルフラウと晴恋が並び、赤茶けた扉をノックする。すぐに中から返事があった。扉が開き、木製の杖をついたティオが顔を見せる。「あら、貴方たち、衣装はもう出来たのかい?」「はい。何とか出来ました」 晴恋が答えて、ステータス画面から五枚のスキンカードを差し出す。金色の綺麗なカードだ。 ティオは受け取って、にんまりと口の端をつり上げた。「おお、ありがとう! 確かにAランクだね。こりゃあお礼をしなきゃいけないね! お茶を用意するからさ。さあ、上がって上がって」「「ありがとうございます」」 みんながそれぞれ返事をして、大豪邸に上がらせてもらった。扉の前で配信ドローンが停止する。キャルル丸は立ち入り禁止であり、玄関のところで伏せった。 リビングに案内されて、扇状を描
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第172話 ご主人様の足が遅いですぅ!

 ――モンスター討伐競争クエスト、入賞する 翌日の午後一時前。 ラグナシアの北出口だった。そのスタートラインには100人以上のプレイヤーたちが並んでいた。他プレイヤーのほとんどがラグナシアの民族衣装を着ている。暑さデバフ対策だった。競技開始を今か今かと待ち望んでいる。好スタートを切るために気を張っていた。ウミの胸が緊張でバクバクと鼓動を打っている。 競技時間はたったの二時間である。その間に多くの点数を稼いだペアの勝利だ。 眼前に広がっているのはひたすらに砂漠である。遠くには砂丘も見える。雑魚モンスターが歩き回っていた。これから一斉に狩られることを予期せず、のんびりとした様子である。 プレイヤーたちの鼻息は荒い。目を血走らせて武器を構えている者もいた。もしかしたら、この後プレイヤー同士で乱闘が起こるのかもしれない。PKにだけは気をつけたいところだ。 ――ちなみに、競技で勝った賞金は造船の費用に回すことに決まっている。 隣にいるトウマはのんきに腕組みをしていた。「ウミ、ベルフラウ、競技が始まったらボスのところまでダッシュするんだぞ」 昨日の探索により、ボスの位置はすでに把握していた。まず中ボスを一体倒し、その先にいるボスを二体討伐する予定である。「乗り物が欲しいわよね」 ベルフラウが周囲を眺めてつぶやく。 プレイヤーたちの中には動物に乗っている者も多い。動物の種類は、にわとり、ブタ、狼、羊、馬、様々だった。 少し離れたところにいるニキたちがキャルル丸にまたがっている。ニキ、晴恋、アイギスの三人を乗せてキャルル丸は凜々しい顔つきをしていた。競技が始まったら突っ走るつもりなのだろう。だけどその背中は狭そうだった。晴恋はニキに密着してぎゅっと抱きついており、アイギスは晴恋に同じようにしている。:キャルル丸は大変だな。:三人は定員オーバーw:ぎりぎり何とかw ウミは怖々と尻尾を揺らした。「ご主人様、参加人数が多いですぅ。果たして、ボスを上手く狩れるでしょうか?」「やるしかな
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第173話 この競技はもらったさ

 どこまでも広がるベージュ色の砂地の上だった。 プレイヤーたちのほとんどがボス狙いであり、その地点へマラソンをしていた。なんといっても中ボスは50点、ボスは500点である。1点の雑魚に構っている暇はない。 目の前の砂地にぽっかりと穴が空いている。 穴の中心には巨大な青いムカデが顔を出していた。堅硬な皮膚をしており、不気味にぎらぎらと光っている。ずらりと生えている長い足の先は尖っている。敵は口を大きく開き、ウミとベルフラウを威嚇した。「きしゅーっ!」 ――中ボス、鎧ムカデ:気色の悪いボスだな。:ウミちゃん、頑張って!:ボス狙いは実はハズレ。 鎧ムカデがウミをターゲットして首を伸ばす。「このっ!」 ウミが赤い剣を打ちつけて防御した。ガキンと鈍い音が鳴る。(硬いですぅっ) 敵のHPはちっとも減らなかった。 隣にいるベルフラウが声高に呼びかける。「ウミちゃん、フレイムウェポンを頂戴!」「師匠、フレイムウェポンですぅ」 ベルフラウの頭上に赤い剣のマークが灯る。 彼女が横回転しながら鎧ムカデの頭を斬りつける。鈍い音が立て続けに鳴った。だけど敵のHPはあまり削れていない。物理耐性が高いようだ。「きしゅーっ!」 鎧ムカデは怒ったような声を上げ、ベルフラウをターゲットする。顔を大きく振ってムチのように叩きつけた。ベルフラウが両手のダガーで受け止める。 轟音。「ぐうっ」 彼女が後方に吹き飛ばされた。だが転ばない。砂地に足をすらせて止まった。「師匠!」「ウミちゃん、大丈夫よ!」 ベルフラウがすぐに戦線に復帰する。(ゆっくり倒せば、大丈夫ですぅ) 敵の装甲は硬いが無敵ではない。コンスタントに攻撃を当てれば勝てると思った。 ――思ったのだが。 刹那。「エクスプロージョン!」「アイシクルダガー!」「サンダーフォール!」 後続からやってきたプレイヤーの魔法使いたちが立て続けに杖を向けた。その三人は乗り物に乗っている。魔法スキルが鎧ムカデに雨あられと降り注ぐ。まるで竜巻が起こったような勢いだ。敵のHPがみるみると削れていく。:これじゃあ誰が倒したか分からないよね。:この競技に勝つには運が必要です。:ラストアタックを取った人に点数が入りますよ。 ウミはたまらずに叫んだ。人々を叱りつける。「だ、ダメですぅ! このボスは私たち
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第174話 500点の攻防

 砂漠を疾走していた。 限りなく澄み渡る空の下、プレイヤーたちはボスを目がけて全力で走っている。気を抜くと砂地に足が埋まりそうになる。ウミたちは砂丘を二つ乗り越えた。砂漠の地面の上、遠くにアカシアの木がぽつんと一本だけ生えているのが見えてくる。(見つけたですぅ!) 緑の葉を青々と茂らせている。根の深い植物なのだろう。その木は、砂漠という過酷な環境下でも力強く生きていた。:砂漠に木が生えているって神秘的な光景。:孤独な木だなw:ボスがいるぞ! ボスの出現ポイントだった。アカシアの木の周りには一匹の飛竜が飛び回っている。 ――ボス、サンドワイバーン。 ゴツゴツとした灰色の皮膚。頭部には長い一本角が生えている。大きな翼を広げて悠々と空中を泳いでいた。こちらを睨みつけて「ギャウアー!」と吠えた。 ベルフラウがダガーを抜いて呼びかける。「ウミちゃん、やるわよ!」「分かりましたですぅ!」 ウミも抜剣した。 ベルフラウがステータス画面からフラググレネードを取り出す。事前にトウマからもらっておいた物だった。ピンを抜くと導火線が燃える音がする。彼女がタイミング良くサンドワイバーンへと投擲した。「ウミちゃん伏せて!」「はい!」 空中で炸裂音が起こる。「ぎゃうぅぅっ!」 大爆発を浴びたサンドワイバーンが地面に落下した。ドサと音が鳴る。(今ですぅ!) ウミが赤い剣を構えながら走る。そして唱えた。「フレイムウェポン」 彼女の頭上に赤い剣のマークが灯る。 モフモフとした尻尾をぶんぶんと振って敵の頭部を斬りつけた。ガツンと音が鳴った。「ギャウアー!」 サンドワイバーンの皮膚は硬い。 敵が頭を振ってウミに噛みつこうとする。ウミは赤い剣を当てて防いだ。 瞬間、敵が大きな翼を勢いよく開く。 砂塵が舞い上がった。「ちっ」「くううっ」 ベルフラウとウミが一歩後退する。サンドワイバーンはまた飛び立とうとしていた。(やらせませんっ!) ウミが前に跳んで剣を振りかぶる。敵が嫌そうに牙で弾いた。 ベルフラウが指示した。「ウミちゃん、防御してて! あたしが後ろからHPを削るわ!」「了解ですぅ!」 ベルフラウが唱えた。「リファインドスラスト」 ダガーが赤い光を帯びて、疾風の三連撃を繰り出した。 そんな時である。 またしても後続のプレ
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第175話 一夜限り

 朧月の唇が弧を描く。「トウマよ。ぬしさんと少し話がしたいのでありんす」 彼女がステータス画面から酒の一升瓶を取りだして砂地に腰掛けた。女座りをする。 ちょうどアカシアの木陰だった。緑色の葉が風になびいて揺れている。倒れていたサンドワイバーンが透明になって消えた。なんだろう。砂漠の中心で飲み会でもするつもりだろうか?:朧月さんは競技リタイアか?:そのお酒美味しいですよね! 私、飲んだことあります。:いま砂クジラが討伐されたぞw 朧月はおちょこを取りだして酒をついだ。トウマに差し出すように置く。「何を突っ立っておる? こっちに来て、酒を飲みなんし。なに、取って食ったりはせぬよ」 トウマは眉をひそめてぽかんとした。「朧月さん。今は競技の最中だが?」「そんなことはよいよい。実はな、わちきは競技など最初から興味はありんせん。それより、話がある。こっちへ来なんし」 朧月の後ろにいるトワがぎょっとしていた。「おい朧月。競技はどうするんだ?」「競技などどうでも良いでありんすぅ。それよりもトワ。ぬしさん、トウマに言いたいことがありんすね? ほれ、ここに座りなんし」「そ、そりゃあ、あるけれどよ」 朧月はトワの分のおちょこも用意して酒をついだ。彼女の隣にトワが正座する。(何の話だ?) トウマは怪訝な表情をしつつ近づく。その場にあぐらをかいた。 朧月が嬉しそうに肩を揺らす。「この酒は酔い桜と言ってな。このゲームで一番高い酒なんすよ。飲み口は軽く、それでいて香り高いのでありんす」「そ、そうか」「ほれ、飲みなんし」「そ、それじゃあ」 トウマはおちょこを右手で掴んであおいだ。飲み口が軽い。胸の奥がカーッと熱くなった。 朧月は目を三日月のように細める。「どうでありんす? 美味でありんしょう?」「悪くないな」「そうでありんしょう? こうして誰かと飲むの
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第176話 にゃんこプリンセス

 ラグナシアのスナネコレストラン。 その入り口だった。 午後の四時を過ぎており、太陽は西に傾いてきていた。すぐそばにはスナネコの顔が描かれた看板が立っている。オープンエアの店であり、砂地の上にテーブルが等間隔に配置されていた。四つの角には柱があり、張られてある黒い布が屋根となっている。 ベルフラウとトワは硬く握手を交わしていた。彼はずいぶん泣いたようで、泣きはらしたような顔だった。目はウサギのように真っ赤である。だけど凜々しい表情で告げた。「ベルフラウ、俺はゲームを引退する」「……そうなのね」「次こそは、絶対にもっと良い男を見つけてやる」「頑張りなさいよ」「ああ、お前。トウマを、頼んだぜ」「任せなさい」「トウマを幸せにしろよ! 俺に誓え!」「誓うわ。あたしがトウマを幸せにする!」「……任せたぜ」「あたしにお任せなんだから」「そうか」 二人は握手を解いた。トワがステータス画面を開き、ログアウトをタップする。最後、彼がふっと優しく笑った気がした。:トワさん、最後は男らしいな。:泣いちゃう。:切ないな。 トワが透明になって消えていく。 ベルフラウは最後の最後まで見つめていた。 トウマがすぐに後ろで見守っていた。 ベルフラウは振り返り、トウマのそばに寄り添った。 彼が髪を撫でてくれる。「行ったな」「うん。ちょっとしんみりしちゃった。でも、トワさんも納得したみたいで良かったわ」「そうだな」「ダーリン、ご飯にしましょ」「ああ」 二人でテーブル席へと歩く。 そこでは仲間たちが和気あいあいとご飯を食べていた。アイギスが誕生日ケーキのような大きなホールをナイフとフォークで食べている。生クリームと苺がふんだんに使われた豪華なケーキだった。何でも、彼女は先
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第177話 一夜限りの戦争

 その夜。 ノーファン村の広場だった。桜の木々が青々とした葉っぱをつけている。広場の入り口付近には噴水があった。女神像が肩に担ぐ壺から水が流れている。緩やかな夜風が吹いて、水面がちゃぷちゃぷと音を立てていた。 辺りには初心者プレイヤーの数が多い。時刻はゴールデンタイムを迎えており、学校や会社から帰宅した人々がログインしてきていた。朗らかな顔つきで梅おにぎりを食べている女性がいる。近くにいる男性プレイヤーが「そのおにぎりを分けてもらえませんか?」と頼んだ。女性は驚いたような顔をして男性から離れていく。 広場の中心に、伊達兵庫髷に打掛姿の女性が立っていた。左手に酒ひょうたんを握り、銀のキセルを吸ってぷかぷかとタバコを吹かしている。朧月だ。たった一人であり、誰かの訪れを待っているようだ。 彼女がつぶやいた。「今宵は月が綺麗よのう」 朧月の右足首には先ほどまではつけていなかったアンクレットが装着されている。 広場にトウマたちが入ってきた。トウマとベルフラウが先頭に立ち、肩を並べている。その後ろには他のメンバーたちが顔をそろえている。そして朧月の前で立ち止まった。 ただならぬ気配を察したのか、他プレイヤーたちが次々と広場を後にする。 可愛いは正義勢:本当に戦争になるの? 戦争があると聞いて:凄い緊迫感だなw 俺最強LV99:これは面白くなりそうだな。 レディミラージュ:グラスオースは忙しいわね。 ベルフラウが一歩前に出る。「こんばんは、朧月さん」「良い月でありんすねぇ、ベルフラウさんよ」 朧月がキセルを裏返し、炭を地面にこぼした。 ベルフラウの顔つきは険しい。「朧月さん、あたしたちと戦争するなんて嘘よね?」「本当でござりんす」「本当って、貴方一人しかいないじゃない」「一人だと、何かおかしいでありんすか?」「……どうしてなの?」「理由は言わぬよ」「弟さんのためなの?」「……ベルフラウさん」「何?」「もう、話すことは何もない」「……話し合いましょう! 朧月さん、あたしたちは分かりあえるはずよ」「いつか、共に酒を飲みたかったのう。……ステータスオープン」 朧月が水色の画面を出して操作した。 お互いのHPMPバーの上に旗が立つ。朧月の旗は青、トウマたちは赤だった。 ドンと音がした。 
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第178話 大好きでした

 ゲームから強制ログアウトしていた。 我が家の自室のベッドにアクナは戻る。 デバイスゴーグルを取ると、すぐそこに息子と娘が立っていた。二人とも幼稚園児である。息子が話しかけた。「お母さん、起きた?」「起きたの?」 娘も心配そうな声を響かせる。 アクナは上半身を起こしてすまなそうな顔をした。「ハルト、イオリ、すまん、いま夕ご飯を作るからな」「お母さん、もうゲームしちゃ嫌だー」 ハルトの目には涙がいっぱいたまっていた。アクナに近づいて両手を伸ばす。 寂しい思いをさせてしまったのだろう。 アクナはベッドに腰掛けてハルトを抱きしめた。「すまなかった。もうゲームは二度としないからの」「本当?」 ハルトが頬を膨らませて聞いた。 イオリもゆっくりと歩み寄った。「あたちもやだ!」 アクナは両手を大きく開いて二人の肩を抱く。「悪かった。ゲームは今日で引退じゃ、許せ」「ママ、引退って何?」「引退って?」「もうゲームをやめるということじゃよ」「本当? ママ、ゲームを引退して!」「引退してほちいの」「ああ。これからは寂しい思いをさせんからな。おおよしよし」 アクナは二人の肩をひとしきりさすった。それから立ち上がる。「よし、ハルト、イオリ、これから美味しいご飯を作るからな。一緒にダイニングキッチンへ行こうな」「分かった!」「ママはーい」 歩きだす。 アクナは先ほどの戦争を思い出した。 トウマをPKするつもりだったのだが、結局叶わなかった。 戦争では負ける始末である。(……超越スキルの焔落としまで使ったというのに) それも二回も。 酒ひょうたんの効果でクールタイムが短縮されており、スキルの回転率が上がっていた。
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第179話 団長失格

 ノーファン村の広場のベンチにトウマは座っていた。 辺りには人々の賑やかさが戻っている。各々の同伴者との会話に花を咲かせていた。その中でぽつんと佇んでいるトウマの顔には、異様な影が落ちていた。空には満天の星が広がっている。ちらちらと瞬いており、星同士が語り合っているようにも映る。だが、そんな美しさを楽しめるような精神状態では無かった。 トウマの両手にはウミの日記がある。 アストラブールへ到着した日にウミが買ったものだった。 ステータス画面のほのかな灯りを頼りに日記を読む。『4月27日。 今日から日記をつけることにしたです! 今日はご主人様とニキさんと一緒に海底の村へ行きました。 海の中の植物は、地上の植物とは違い、不思議な形をしています。 イワシの群れが渦を作っている光景がありました。 ダンゴウオが岩の上を這っていました。 途中から師匠も海底へ来てくれました。 師匠の作ったエンディコマグロの角煮で、月海竜ダルシャランをやっつけました。 そのおかげで、マーマン村長さんが、釣り竿をくれました。 楽しかったです』 震える指でページをめくる。『4月28日。 今日はアストラブールの闘技祭の前夜祭でした。 ポロポージュの屋台の飲食スペースでアイちゃんに再会しました。 一緒にお祭りを見て回りました。 美味しい食べ物をいっぱい食べました。 アイちゃんが銀のイヤーカフの片方をくれました。 高台で一緒に打ち上げ花火を眺めました。 親友になりました。 楽しかったです』 トウマの瞳から一筋のしずくが伝う。 鼻の穴がひくひくと震えた。 ページをめくる。『4月29日。 今日はついに、アストラブールの闘技祭の日でした。 ご主人様と一緒に出場しました。 悪のおじさん、クレナイを倒しました。
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第180話 Another chance

 翌日。 ルスプルのカジノだった。 魔導具のピカピカとした照明が室内を照らしている。床は丸い模様をしたグレーのマット敷きだった。カジノの一階にはスロットが背中合わせになってずらりと並んでいる。5列以上はありそうだ。スロットからは豪華でノリの良いメロディーが流れている。 今、ベルフラウはとんでもなく困っていた。恋人がスロットに夢中になっているのである。 少し離れた席では、男性プレイヤーがスロット台をぶっ叩いていた。「俺のヴァルを返せ!」と叫び声をあげている。どうやら大負けしたようだ。このカジノはチョコレートパフェの製菓カードを使わなければ、勝つことは難しい。 チョコレートパフェの効果……満腹度30%回復。幸運上昇。効果時間30分。 目の前にいるトウマがパフェをスプーンで頬張りつつスロットのレバーを引いた。だらしなく足を組み合わせている。三つのボタンを押すとチェリーが揃った。目押ししているようだ。スロットからコインが吐き出される。(どうしたらいいの?) やめさせなければいけない。 ドクロが止まれば破産である。 昨夜にみんなから預かったヴァルだけは、今朝トウマはすべて返却していた。:ギャンブル依存症w:団長、カジノに逃亡なうw:……見損なった。 ベルフラウがトウマの両肩を掴んで揺さぶる。「ダーリン、もうやめて! ドクロが当たるわよ」「うるさいぞ! 真帆。俺はようやく分かったんだ。このゲームはつまりカジノだ! チョコレートパフェを食べれば、いくらでも稼げるんだ! モンスターを狩る必要は無い。次の町へ進むことも不要だ!」「ユウマ、どうしちゃったの!? これから勉強をして弁護士になるんじゃないの!?」「いや、俺の考えでいくと、弁護士になる必要は無い! そんなことよりも、ここでスロットをずっと回していればぼろ儲けだ! 楽しく楽に稼ぐことができる! つまり、勝ち組だ!」「……あのねぇ、ユウマ」
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