「灰燼に帰しなさい――赤の火弾ッ!」 ラナンは有無を言わせず、両手から灼熱の火球を放った。 スキル『二連詠唱』による、タイムラグのない連続攻撃。 殺意の照準は、祭壇の中央で錫杖を構えるゲレドッツォへ正確に向けられていた。「ゲレドッツォ様!」「我らの命を盾とし、御身をお守りするのだァ!!」 火球が届くより早く、二匹のオークがゲレドッツォの前に飛び出した。 身を挺して肉の盾となった彼らに魔法が直撃し、紅蓮の炎がオークたちを包み込む。 断末魔すら上げず、彼らは文字通り灰となって崩れ落ちた。「イ、イカれてやがる……」 フサームが、信じられないものを見る目で呟いた。 俺も同感だった 。己の命を投げ出してまで守るべき主君なのか。 あのオークたちは、自分たちが『使い捨ての駒』として処理されたことに気づいてすらいない。「あなた達、騙されているのよ! 私達の狙いは、そこの魔王の偽物だけよ!」 ラナンが残りの魔物たちに向かって叫んだ。 彼女とて、理不尽な指導者に踊らされているだけの同族たちを無闇に殺したくはないのだろう。「黙れ、小娘! ゲレドッツォ様に歯向かう不届き者め!!」「偉大なるドラゼウフ様のご子息であらせられるぞ!!」 狂信に目を血走らせる魔物たちを見て、ハンバルが深く重い溜息を吐いた。「……愚かな。ヤツはドラゼウフ様の血など引いておらぬ。ただの突然変異のトカゲだ」 ゲレドッツォが、怒りに任せて錫杖を祭壇の床に叩きつけた。「魔の子らよ! この我を、ただのリザードマン呼ばわりしておるぞよ! 魔王の正当なる後継者に仇なす愚か者どもに、神聖なる制裁を下すのだァ!!」 「グオオオオオッ!!」 その号令をトリガーにして、広間を埋め尽くす魔物の群れが一斉に殺意を剥き出しにして俺たちへと殺到してきた。「俺にやらせろ」 前衛である俺は、一人で前に出た。「おい人間! こんだけの数を一人でやれるのかよ!?」 フサームが背後から少し馬鹿にするような、だが焦りを孕んだ声を上げる 。「俺とて、元勇者パーティで前衛を張っていた戦士だ。こいつらを放っておけば、いずれ善良な人々にも牙を剥くだろう」 押し寄せる魔物の数は多い。 彼らの動きには知性がなく、人形師に操られた魔導人形のようだった。
Last Updated : 2026-04-16 Read more