大聖師は絶対的な詠唱を始める。 嫌な予感がするのに、体がまったく動かない。 これが『イベントの強制力』というやつなのかもしれない。 そう、バジリスクの魔眼に射すくめられたかのように石化状態さ。 ボクは指先一つ動かせず、ただ石像のように立ち尽くすことしかできなかったんだ。「消し飛べ! 『純白の審判』……!」 ヤツが最上位の聖属性呪文を放とうとした、その瞬間だった。 ――ズドォォォォンッ!! 空間全体を揺るがすような、凄まじい轟音が響き渡った。 ドラゴンやサイクロプスの咆哮ではない。 強大な呪文の爆発音。何か巨大なものが破壊されるときの音だ。「あ、あれは……?」 ボクが視線を向けると、先ほど大聖師が強引に弾き飛ばした『緋色の獄炎』が、遠くに見える巨大な建造物に直撃し、猛烈な炎を吹き上げていた。 それを見た大聖師の顔色が、一瞬にして蒼白になった。「……なッ! 弾いた魔力が直撃しただと!? あれはボクの最高傑作……未実装の『絶対の終焉兵器』を保管しているサーバーだぞッ!」 大聖師は頭を抱え、ワナワナと体を震わせている。 彼にとって、ボクたちなんかよりも遥かに重要なものが、あの炎の中に眠っているらしい。「あそこには膨大な工数を費やしたのだ。ここで失うわけにはいかん……ッ!」 大聖師はボクたちを完全に放置し、血相を変えて燃え盛る巨大倉庫へと飛んでいった。 奇跡的な偶然が重なり、ボクとブルーニアは何とか窮地を脱したのだ。「……信じられない強運ですね。どうやら、私たちに逃げるチャンスが巡ってきたようです」 大聖師が去った虚空を見つめながら、ブルーニアが静かに告げた。「う、うん……」
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