All Chapters of 偽典のダーク・ブレイブ: Chapter 71 - Chapter 72

72 Chapters

ep69.アーカイブの迷宮(イオ視点)

 大聖師は絶対的な詠唱を始める。 嫌な予感がするのに、体がまったく動かない。 これが『イベントの強制力』というやつなのかもしれない。 そう、バジリスクの魔眼に射すくめられたかのように石化状態さ。 ボクは指先一つ動かせず、ただ石像のように立ち尽くすことしかできなかったんだ。「消し飛べ! 『純白の審判』……!」 ヤツが最上位の聖属性呪文を放とうとした、その瞬間だった。 ――ズドォォォォンッ!! 空間全体を揺るがすような、凄まじい轟音が響き渡った。 ドラゴンやサイクロプスの咆哮ではない。 強大な呪文の爆発音。何か巨大なものが破壊されるときの音だ。「あ、あれは……?」 ボクが視線を向けると、先ほど大聖師が強引に弾き飛ばした『緋色の獄炎』が、遠くに見える巨大な建造物に直撃し、猛烈な炎を吹き上げていた。 それを見た大聖師の顔色が、一瞬にして蒼白になった。「……なッ! 弾いた魔力が直撃しただと!? あれはボクの最高傑作……未実装の『絶対の終焉兵器』を保管しているサーバーだぞッ!」 大聖師は頭を抱え、ワナワナと体を震わせている。 彼にとって、ボクたちなんかよりも遥かに重要なものが、あの炎の中に眠っているらしい。「あそこには膨大な工数を費やしたのだ。ここで失うわけにはいかん……ッ!」 大聖師はボクたちを完全に放置し、血相を変えて燃え盛る巨大倉庫へと飛んでいった。 奇跡的な偶然が重なり、ボクとブルーニアは何とか窮地を脱したのだ。「……信じられない強運ですね。どうやら、私たちに逃げるチャンスが巡ってきたようです」 大聖師が去った虚空を見つめながら、ブルーニアが静かに告げた。「う、うん……」
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ep70.インストール(イオ視点)

「おそらくはこれがそうでしょう」 ブルーニアは無数に並ぶ書棚の一つから、一冊の分厚い本を引き抜いた。 それは、血のように深いバーガンディ色の装丁が施された重厚な書物だった。「これは『創典のラディアント・ブレイブ』――あなたの物語です」「ボ、ボクの?」「ええ……大聖師が考えた、壮大な英雄譚のプロット集です」「英雄譚? ボクが歩んできた冒険が? ……今まで出会った人たちが、全部作りものだって言うのかい?」「その通りです」「ウソだッ!」 ボクはたまらず叫んでいた。 生まれ故郷で待つ父さんや母さん。 共に笑い、背中を預け合った仲間たち。これまで出会い、別れてきた沢山の人々。 嬉しいことも、悲しいことも、流した血の温もりでさえも……。 そのすべての出来事が、誰かの机上で書かれた『紛い物』だなんて……そんなこと絶対に認められるわけがない。「あなたの気持ちは痛いほど理解出来ます。でも、これが現実なのです」 ブルーニアは一切の感情を交えず、淡々とそう言うと本のページをめくった。 そこには、精緻なペン画で描かれたボクの姿があった。 身長や体重といった基本設定から、家族構成、好みの食べ物、果てはボク自身しか知らないはずの細かな心の機微に至るまで、びっしりと記されていた。「こ、これは……ボク……?」「あなただけではありませんよ。先ほど大聖師に連れ去られた老人や女性のデータもあります」「クロノ、シンイー……それにダミアンまで!」「後はご自身の目で確かめなさい」 ブルーニアから受け取った本は、ひどく冷たかった。 震える指でページをめくり続けると、ボクが冒険で出会った人々が次々と現れた。 戦ってきた凶悪な魔物、使ってきた武器や防具、ギリギリで命を繋いだ劇的な出来事。 全部が
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