All Chapters of 有給休暇は異世界で: Chapter 171 - Chapter 180

184 Chapters

第171話:ゴブリンの巣の主

 少し開けたところに出て、空洞……いや、というより会議室? 宴会場? そんな雰囲気の残るところへ出てきた。かがり火が炊かれており、ゴブリンが自分で火をつけた様子がうかがえる。 できるだけ静かに奥まで進んできたものの、さすがにゴブリン達も人間が狩りに来た、という認識はあるようで、その部屋の主である一回り大きなゴブリン以外はみな戦闘態勢でこちらを見ている。「グギャギャギャ、ギャギャ、ギャギャギャーッ!! 」 ひときわ大きいゴブリンが指示みたいなものを出すと、脇部屋のあちこちからゴブリンが出てくる。その数はこれまで倒してきた数とほぼ同数ぐらいだ。かなりの数だ。こちらの人数とほぼ同数、といったところだろう。 大きいゴブリンも自分の得物である体にあった大きさの剣を持つと、ゆっくり立ち上がってこちらに向かってくる。「全員一人一殺以上! 大きいのはスコットが受け止めてる間に数を減らしてくれ! 」 フレイズさんの指揮の元、それぞれ近くのゴブリンを受け持つ。セルフィも先ほどまでとは違いやる気に満ち溢れていて、さっきおびえていたのがウソのようだ。むしろ、やり返してやらなければ、女の敵だ。といった気迫のほうが満ち溢れている気がする。 俺も剣と盾を構えつつ、正面から来ている剣持ちのゴブリン相手に火魔法で一撃を与えて、ひるんでいる間に肉薄して剣を弾き飛ばし、相手がそっちに気をそらしている間に剣を持っていたほうの腕を切り落とす。 痛みから逃げ出すように、そのままぐるりと後ろを向いて遠ざかろうとするゴブリンの背中に剣を差し込み、地面に縛り付け、しばらくするとピクリとも動かなくなった。耳は後で切り取れるから、今は数を減らすことが優先。セルフィが棍棒だけのゴブリン二匹相手に大立ち回りをしている。 支援のため火魔法を飛ばすと、片方は火がついて騒ぎ出し、セルフィがその隙を狙ってゴブリンの片方を倒す。もう片方はセルフィに向かって棍棒を振りかぶるが、盾でうまく防いでそのまま盾を押し返し、力技でゴブリンを地面に押し付けると、首筋から背中に向けてショートソードを突き刺し、ゴブリンを倒す。「ありがとうございます! 」
Read more

第172話:被害者一人目

 大きなゴブリンの背後になるようにできていた、空洞にゆっくり入っていく。ゴブリン臭が激しすぎるため、索敵はもはや用をなさない。己の目と明かりだけが頼りだ。 まだ潜んでいるゴブリンがいないとも限らないので本当なら火魔法を投げ込んで全てを丸焼きにしてから中を確認したいところだが、ゴブリンが繁殖しているペースと、ミニボアの骨を考えると、ミニボアに産ませるたびに食べて、新しいのを常に補充していた可能性は高い。 それ以外のケースとしては、この中にまだ、生きている出産用の生物……具体的に言うと、捕まってしまった女性が存在する可能性が残されている。どのぐらい原形を保って生かされているのかまではわからない。 両手両足をつぶして動けなくして、なんてのも可能性としてはあるし、もしかしたら喉も潰されているのかもしれない。どこまで人の形を保っているのかどうかもわからない。セルフィは大丈夫だとは言っていたが、俺のほうがちょっと大丈夫かどうかは怪しいな。 火魔法でぽっと明かりをつけて、部屋の中を見渡す。部屋の中はむせ返るほどのゴブリンの体臭と……そして、女性が二人、縄で両腕を後ろに縛り付けられて転がされていた。 フレイズさんが呼吸を確認する。「まだ生きてる。そっちはどうだ? 」「こっちもまだ息がある。ただ……足は折られてるな。逃げられないようにはされている様子だ。腕は……折れてない。縛っただけで満足したらしい」 身体的損傷は軽微……と言っていいのか? でも、少なくとも凌辱されているのは確か。精神的ダメージはかなりのものだろう。気を失っているのが助かる部分でもあるか。「誰か、聖魔法を使えるやつはいるか? 」「あ、俺が、一応」 思わず手をあげる。全員が俺を見る。「タカナシ……いろいろできるな」 スコットさんが呆れている。確かに、火魔法と風魔法だけでなく聖魔法も使えて近接戦闘もできる、というのは珍しいほうに入るのだろう。
Read more

第173話:被害者二人目

 目覚めたもう一人の女性は息も絶え絶えに、足が元に戻った痛みとゴブリンに凌辱される痛みを混同しているようにも見えた。意識も混濁している様子だ。「セネカさん、助けが来たよ」「助……け? 」「あんたセネカっていうんだな。俺はフレイズだ。ゴブリンは掃討した。救出に来たぞ」「そう……なのね」 まだ頭がぼうっとしているのか、意識ここにあらずといった状態だ。もう一人の……そういえば名前を聞いてないな。気をしっかり持ってるほうの女性とは対照的だな。「リランダさん……私たち、助かったの? 」「そうよ。ちゃんと生きてれば助けが来るって言ったでしょ」 どうやら、先に足をつなげたほうの女性はリランダさんというらしい。リランダとセネカ。覚えましたし。「……足が痛いわ。折られて感覚がなかったはずなのに、なんだか助けられたうれしさで痛みが返ってきたみたい」「足は治ったはずだ。立ち上がれそうか? フレイズさん、セネカさんのほうの腕の縄も切ってあげて」「そうだな。今楽な姿勢にしてやるからな」 フレイズさんがセネカさんの腕の縄も切り、両腕が使えるようにしてあげている。腕は折られてないみたいだな。セネカさんもゆっくりと自分の腕がちゃんと動くかどうか確認して、腕が動くことを見せてくれると、少しずつ気持ちが上向いてきたのか、落ち着きを見せ始めた。「ねえ、私たち、どうなってるの? 」「そうだな、とりあえず全裸だ。ごちそうさま。これも役得だと思っている」 フレイズさんがぶっちゃける。女性としては屈辱だろうが、助けられた相手にそこまでマナーを求めるのは難しいだろうな。「ふふ……こんなにゴブリンの体臭まみれでいろんなところも汚れてしまっているのに、ごちそうさまって言ってくれるのね」「磨けば光りそうだからな。持って帰って……いや、言い方が悪いな。連れ
Read more

第174話:かくして事件は一つ幕を閉じ

 もう一つの出口のほうまで行くと、出口の先では待ち構えていたパーティーが、逃げてきたゴブリンの死体の山を築いていた。どうやらそこそこの数のゴブリンがこちらへ逃げてきていたらしい。10体かそこらはいるだろう。「お疲れさん、どうだった」「御覧の通りさ。あんまり上司として魅力がなかったゴブリンだと言えるのかもしれんな」「確かに。これだけ逃げてくるなら、ただ力の差だけで押さえつけてたってイメージだな。もうちょっと忠誠度の高いゴブリンが多いと、中で苦戦しているところだったが、そこまでじゃなかったらしいな」 待機中のパーティーが左耳を切り取って袋に詰めていたので、俺が代表してアイテムボックスで預かる。「おう、助かるぜ。耳なんてそうそう持ち歩きたくないからな」「同感です。アイテムボックスがあってよかった、と思うところですね」 耳を回収していき、ゴブリンの耳の総数は40ほどになった。装飾品や剣なんかの討伐証明と、最初に出入りした側の入り口でどれだけ討伐できたかによるな。 こっち側の数の計算が終わったので、向こう側のパーティーと合流して、討伐証明を数える。 結果、子供の耳も加えると55ほどになった。かなりの規模の巣になっていたことは確かだ。あと数日放置していたら、もっと数は増えていただろう。「中の様子はどうだった? 生存者はいたか」「ああ、二人いた。片方は精神的にも折れかけていたからギリギリだったな。数のほうもそうだが、大集落になる前に潰せて何とかってところだ。生存者は正面のほうから戻りつつあるから、合流しよう」 全員外から持ち場を離れ、十数分歩いて先に突撃した正面入り口のほうへ戻ると、全員揃っているようで、リランダさんとセネカさんの姿も見えた。「あの二人か、生存者ってのは」「ああ、足は折られていたが治癒した。それ以外の外傷は目立ったところにはないはずだ。後は精神的な問題だろうな。ゴブリンに襲われたショックで異性恐怖症になったり、そういう行為に嫌悪感を示すようになる人も少なくない。後は環境が何とかしてくれると思いたいね」 全員揃っているかどう
Read more

第175話:昇進

「はい、ここにそろってます」 フェリクスさんの呼びかけに答える。とりあえず、スコットさんからの銀貨を預かっておく。後で返すことにしよう。先に上司であるフェリクスさんの話を聞くのが先だろうからな。「揃っていますね。では、せっかく皆さんがいる場なので公表します。タカナシ、セルフィの両名をただいまよりDランク探索者として認定します。今後も街のため人のため世のため、その力を存分に振るってください。受付で探索者証の更新を受けてください。では解散」 Dランクらしい。ゴブリン退治をきちんと行えたことで実績は確か、と思われたと考えたのか、それともフレイズさんが余計な一言を挟み込んだのかまではわからないが、とにかく、昇進だ。これでまたできる仕事が一つ増えたことになる。「おめでとう、二人とも」 フレイズさんが拍手で祝福してくれている。「タカナシはともかく、セルフィちゃんは今いくつなんだ? 」「12歳です。12歳でDランクって珍しいのですか? 」「珍しいな。タカナシが無理やり働かせてるのでなければ、自主的に冒険者をやっている中では一番年下かもしれないぞ」 スコットさんがくれたさっきの銀貨は、Dランク昇進祝い、ということなんだろうか。まあ、それも含めて頑張った証拠、ということなんだろう。 早速受付へ行くと、冒険者証を更新してくれた。Dの文字が新しく輝いている、ここまでやって半人前、という証拠の探索者証だ。 Cランクになれば探索者としても一人前らしく、DからCへ進むのがなかなかに壁、ということも含めて説明された。焦ってCランクになる必要はないらしい。まあ、地道に進もう。俺がこっちにいる間にCランクになれれば十分かな。「さて、フレイズさん、お二人を娼館へ連れていこう。風呂へ入れてやりたいんだ」「そうだな。いつまでもゴブリン臭いのは嫌だろうし、全身くまなく洗ってもらって綺麗な体になりたいだろうしな……タカナシも一緒に来るか? やっぱりセルフィちゃんの手前、来づらいか? 」 セルフィのほうをみると、じとーっという目をしている。本当についていくだ
Read more

第176話:久しぶりの風呂

 通された浴場には、従業員……つまり、娼婦のお姉ちゃんたちが使う用の大き目の浴槽と、盛大に湯を沸かすための設備が用意されていた。こんな時間から風呂を沸かせてもらうのはもったいないし、ほぼ二番風呂だろう浴場を使わせてもらうのはありがたみしかないな。 こっちへ来てほぼ20日。20日ぶりの風呂だ。まず体を軽く洗ってこすって……石鹸もあるな。きっと前のお客さんの体臭がきつすぎたりした時用の物として用意されているんだろう。 泡立ちは……泡立ちは俺のお手製と同じぐらいか。さすがにそこまで期待するのは無理だが、それでも長らく落としきれてなかった垢をしっかり落とすことはできるだろう。 すると、布を巻いたお姉さんたちが入り込んでくる。「これはサービスです。よければこの後も当店でゆっくりしていってくださいね」 そして布を外し……おほっほ、これはなかなかいいサービスだ。柔らかい二つのスポンジが俺の背中を洗ってくれている。多分、ゴブリン退治という街を救う手柄を立てた分の住人サービスみたいなものだろう。うむ、やわらかくて、これは癖になりそうだ。俺も残りたいな。「では、前のほうも」 前も!?  ◇◆◇◆◇◆◇ しっかり全身を綺麗にしてもらった後、湯船にゆっくりと浸かる。さすがに風呂の中までは入って来てくれるサービスはない様子だ。「さて、誰が残る? 誰が服屋に連れていく? 」 たっぷり気持ちよくさせてもらって、少し冷静になった男たちが会議を始める。俺は正直、全身綺麗にしてもらって落ち着いてきた。セルフィを待たせているのもあるし、俺が連れていくべきだろうな。「セルフィの手前待たせるわけにもいきませんから、俺が連れていきますよ。特に指定する店とかがなければ知り合いの店に行く予定ですが」「そうか、店のほうは任せる。預かった金で服を買ったら、慰労金ということで残りの金額は二人に渡してやってくれ、とのことだ。あまり多くはないが、心の支えになったりしてくれていると嬉しい、とのこ
Read more

第177話:久しぶりのサイバル

 まだ外は明るい。夕方の鐘が鳴るまでには時間があるようだ。風呂上がりの四人が連れ立って、サイバルフクショクテンへ向かう。サイバルフクショクテンを選んだ理由はただ一つ。他に服屋を知らないからだ。 もし俺がもっとファッションに詳しくて他の服屋を回るだけの時間的余裕とファッションセンスの持ち主ならば、適切な服屋選びができたのだろう。 サイバルさんへの前のお礼と確実に服が選べるであろう金額を込みにしても、ここなら間違いなく一式そろえられる、という金銭感覚しか持ち合わせていないので、他に選択肢がないのが現状。 彼女たちに店の場所を聞いて好きな場所で着替えてもらったらいいんじゃないか、ということに気が付いたのは、サイバルフクショクテンで服を選んでもらっている途中。 しかし、サイバルさんにはこっちに来るときに着ていた服を高値で購入してくれたお礼もある。こうして客を呼び込んでおくのも大事といえばそうだな。今回はサイバルさんに儲けてもらおう。 二人が着替えている間に、セルフィも二人の着替えを手伝っている様子。女性陣に割り込んで似合うじゃないか、と声をかけるのは恋人かデートする相手の仕事なので、俺の出る幕はない。今日は俺は財布として二人に同行しているだけ。 精々気に入ったデザインの服を着てもらって、かかった費用を全額払おう。さらにしばらく待つと、服を選び終わった二人が出てきて、きちんと着替え終わっていた。そのまま着て帰るらしい。 受け取ったお金の中から費用を払って、店から出る。そして店から出たところで、残りの金額を二等分して二人に渡す。「このお金は? 」 リランダさんがたずねてくるので、受け売りの言葉をそのまま伝える。「冒険者ギルドからの見舞金だそうだ。少しの間気持ちを落ち着ける間の生活費にはなるだろうから、ということを聞いている。受け取っておいてくれ。俺がもらうと横領になってしまうしな」「そう……わかったわ。素直に受け取ることにする。これをどうするかは自由ってことよね? 」「自由だが、今日助けてくれたお礼に……と俺に返すのはなしにして
Read more

第178話:メンタルケア

 最後の洗濯が終わって、セルフィの服を洗い終わった。部屋の中に干し、火魔法と風魔法の混合魔法、俺命名ドライヤー魔法で急速乾燥させていく。部屋の中にはレンモの香りが充満し、窓から暖かい風と共に湿気が抜けていく。 しばらく乾かし続けてもうそろそろいいだろう、というところでセルフィの服の香りを嗅ぐ。ゴブリン臭さは完全に抜けており、新品同様、といった感じの真新しい服に、更に強めのレンモの香りが付着した、清潔な戦闘服が戻ってきていた。「ほらセルフィ、もういい香りしかしないぞ。ゴブリン臭さはもう抜けているぞ」 セルフィにも服の臭いを確認させる。セルフィは服のにおいを嗅ぐと、ほっとしたのか、服をぎゅっと抱きかかえて、そして膝から床に崩れた。どうやら、完全に緊張の糸がほどけた、という感じだ。「今日は色々とショックなことが多かっただろうからな。疲れただろうし、どうする、お風呂は入れてもらったから、夕食まで横になっているか? 夕方の鐘が鳴ったら起こすぞ」「そうですね。ちょっと横になります。ご主人様に申し付けをするのは悪いとは思いますが、お腹が空いたら起こしてください」 そういうと、セルフィは自分の寝床で丸くなって、数分すると寝息が聞こえ始めた。肉体的には普段のほうが疲れているだろうが、精神的に疲れているのは確かだろう。 今日は朝から大仕事だったんだ。明日は休みにしてやるほうがよさそうだな。連日ダンジョンやゴブリン退治とあちこち行って、疲れも溜まっているかもしれない。 何より、精神的な疲れを癒すには仕事を忘れて遊びまわるのが一番だ。明日はセルフィの行きたいところについていってやろう。 しかし……やることがない。個人的な本の一冊でも欲しくなってきたな。時間までやることがないというのはこっちに来ては割と珍しい。食堂の手伝いでもしてくるか。 食堂に下りてきて、親父さんに何か手伝うことはないかと尋ねると、リバーシのコマの数が足りるかどうかと、コマを綺麗にしておいてくれと頼まれたので、これは俺の仕事だな、と気合を入れてリバーシの整備を始めた。 すると、コマが一枚足りないことが分かった。これは
Read more

第179話:みんな失くしている

 いつもの朝が来た。昨日は大変だったが、今日もいつもと変わらぬ風景を与えてくれている太陽に少しだけありがとうの祈りを込める。 セルフィはいつも通り寝ているので、今日も先に起きて、ドアをきっちり閉めて身支度に井戸のところへ。昨日はしっかり体を動かしたし、ゴブリンとも戦って多少服に臭いが残っている。今日は戦闘服を洗ってしまおう。 どうせ今日は着ないのだ、洗ってドライヤーで乾燥させて、綺麗にして、また明日からの仕事に使うでも問題ないだろう。 顔を洗って歯磨きをして、戦闘服と肌着を石鹸で洗い始める。しばらくするとメリーさんが通りかかったので挨拶。「おはようございます、メリーさん」「おはようございます、タカナシさん。セルフィちゃんは? 」「まだ寝てますよ。もう少しすれば起きて……あ、今起きてきましたね」「おあよーございましゅ」 いつも通り寝ぼけたセルフィが水汲みにきたので井戸から水をとりだし、寝ぼけた顔の横に置いてやる。セルフィは寝ぼけた顔に水をぴしゃりと何度かかけて顔をごしごしとこすり……そして、眠気の取れたいつもの顔に戻った。 セルフィが顔を洗って房楊枝で歯磨きをしている間に洗濯を終わらせ、部屋でドライヤーをかけ始める。しばらくすると、セルフィも洗った服を持ってきたので、同時にドライヤーをかけてまとめて乾かしてしまう。「……そろそろ乾いていると思います」「そうか、どれどれ……まだ端っこが湿ったままだな。端っこを集中的に乾かしていこう」 脇の部分と裾の部分を集中的に乾かし、触って湿っぽさがなくなるまでドライヤーを使い続けて、服を乾かし終わったところで朝食を取りに食堂へ。「おはようリンカちゃん、朝食二つね」「おはようございますタカナシさん、朝食二つー! 」「あいよー」 親父さんの反応を聞いて席に着く。お通しこそ出ないものの、今日は白パンがあるかどうかは悩ましいところだな。 しばらくして、親父さ
Read more

第180話:コマ補充

 木工ギルドを後にして、モクロク親方のところへ向かう。木工工房が立ち並ぶ木工工房区までくると、色んな木材の香りがして、なんとも森に入ったような気持ちにすらさせられる。「このあたりへは初めて来ますね。いろんな木の匂いがします……あと、何かツンとした匂いもしますね」「おそらく、保護剤や接着剤だろうな。表面に塗ったりすることで長持ちさせたりする効果がある薬品だと思う」「よく知ってますねえ。さすがご主人様です」 二人でブラブラ木工工房をいくつかのぞき込みながら、モクロク親方の工房へとたどり着く。「おはようございます、タカナシです。モクロク親方いますか? 」 声をかけると、見覚えがある徒弟さんが顔を出す。「あ、タカナシさん。ご無沙汰してます。親方なら今特注品を作ってるので声をかけるのはちょっと」 徒弟さんが声を小さくしてモクロク親方に聞こえないようにしている。どうやらかなり集中して物作りをしている様子で、かなり細かい彫刻などを行っているのだろう。 徒弟さんがそれだけ神経過敏になっているということは、邪魔したらノミの一つでも飛んできそうな具合、ということかもしれない。俺も大声を出すのは控えよう。「実は徒弟さんに相談があってね。ちょっと木工ギルドでも確認してきた話なんだけど」 声のトーンを落として会話をする。セルフィと徒弟さんと三人で、膝を突き合わせて会話をする。「リバーシ用のコマを失くしちゃってさ。木工ギルドにスタンダード用のばら売りのコマがないか確認したら売り切れだって言われたのよ。もしかしたらこっちには予備がないかなと思ってきたんだけど」「なるほど、そういうことでしたか。確かに、バラ用のコマもこっちで作って木工ギルドに納品しています。いくつかでしたら融通が利くと思いますが、いくつ御所望ですか」 いくつか融通してくれるらしい。足りなくなるたびに木工ギルドかここへ足を運ぶのは面倒くさいな。まとめて五個ぐらい注文してしまうか。「じゃあ……5個いけるかな」「わかりました
Read more
PREV
1
...
141516171819
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status