All Chapters of 有給休暇は異世界で: Chapter 151 - Chapter 160

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第151話:自己再生

 セルフィが俺の声を聞いてすぐに振り返り、シールドゴブリンの棍棒を……辛うじて盾で受け流す。あと一瞬遅れていたら一撃貰っていたであろうタイミングだ。 セルフィはそのまま体勢を持ち直すと、シールドゴブリンに向かっていく。この後は任せても大丈夫そうだな。今のうちに他にいるかもしれないゴブリンを探そう。 ゴブリンがずる賢いモンスターなら、もう一段階小細工をしていてもおかしくない。風魔法で匂いをたどると……右方向に近づいてきていることがわかった。一方向から狙うのではなく、できるだけ同時に二方向以上から。 そちらの方向を向いた瞬間、俺に向かって何かが飛んできた。とっさに手で受けたが、投石ではなく矢。それがしっかりと俺の手のひらに刺さってしまった。「ッッッッ!! 」 正直全力でいってえええええと叫びたいところだが、響く上に他のモンスターを呼び寄せるかもしれない。黙ってここは我慢だ。 イアンちゃんが状況を把握し、すぐにそちらに向かって走り込んでいく。しばらくして、シールドゴブリンを倒し終わったセルフィとゴブリンアーチャーを倒し終わったイアンちゃんが戻ってくる。「ご主人様、大丈夫ですか……」「痛いけど、大丈夫……じゃ、ないかも。とりあえず、毒とかクソとか塗ってないだろうな」「外のゴブリンはその限りではないですけど、ダンジョンのゴブリンはそういう毒っぽい攻撃はしてこないようになっているのです。そもそも、ダンジョン内部のゴブリンは排泄をしませんので」「じゃ、ここから壊死したりばい菌が入ったり腐り落ちたり……って心配はないな……っと! いってー」 何とか手に刺さった矢を抜く。手のひらに刺さった矢は、そのまま綺麗に手の甲まで貫通していた。矢じりに返しが付いてなくてそのまま抜けてくれたのが安心ポイントだったようだ。 せっかくだから試すか、さっき図書館で調べた聖魔法の効果。俺を治せー、なおせー、ナオセー……
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第152話:面倒

 三層をまだうろうろする。正直、効率だけを考えたら二層を回ったほうが戦闘回数と魔石は稼げると思う。 ただ、三層のゴブリンアーチャーの魔石にもちゃんと需要があるのだろうということと、自分のレベルとは関係ない所での戦闘経験を得るためにも戦う必要性はある、と感じている。 セルフィも剣聖レベルだけではなく、戦闘の「つくり」としての戦術や、ゴブリンたちがやってくるいやらしい戦い方というものを身に付ける必要があるだろう。 イアンちゃんはその辺もきちんと心得ているようだが、こちらはまだまだ初心者。しっかり動きを見せてもらいつつ、ゴブリンの知能レベルがどのぐらいまで高いのか見定める必要がある。「しかし……面倒だな。遠距離攻撃手がここまで面倒な手順で攻撃をしてくるのは」「もうちょっと単純でいてくれるといいんですけどね。このオルハヌスのダンジョンではそういうものを学ぶためのダンジョン、ということなんでしょうか」「セルフィちゃんは良い所を突きますね。ゴブリンの巣やゴブリンの集落の駆除依頼が受けられるようになるためのDランクの昇給基準にも、ゴブリンとの戦闘経験があるかどうか、というのが判断されることになるのですよ。なので、このオルハヌスのダンジョンはゴブリンに慣れるための場所として優秀なのです」「なるほど、一種の修行場として機能しているわけか。しばらくここでゴブリンに慣れて、地上のゴブリンにも安全に戦えるようになれ、と」「そんな感じなのです。だから、ある程度は安心しながら戦えると言えるのです」 イアンちゃんもここで戦い慣れてから色んな依頼を受けたりしているのだろう。しかし、イアンちゃんがCランクというのは意外だったな。思っていたよりも高かった。 またゴブリンアーチャーが出てくるも、今度は矢をきっちり盾で受けて、軽く刺さったところで近寄って、弓を使えなくしてから余裕をもって倒す。 ゴブリンも段々知能レベルの具合がわかってきた。小狡い、という表現の範囲で済まされる程度のレベルだ。 本格的に頭脳戦を仕掛けられて困惑するほどではないので、今日で慣れたら次回はセルフィと二人でな
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第153話:雨季と乾季と傘づくり

 時間ギリギリまで二層で粘り、ゴブリンのやらしい攻撃にも耐えて今日一日すっかり、搦め手で攻撃してくる相手というものに立ち向かった気がする。しばらくオルハヌスのダンジョンはいいかな、と思わせられるほどだった。 その割に収入はそこそこなので、パナメラのダンジョンの最下層に居続けることと比べるとどっちが稼げたのか、というのは移動時間も含めて計算しなければいけないので一口にパナメラのダンジョンのほうがおいしいとはいいがたい。 しかし、全部で300体ぐらいのゴブリンを倒すことが出来たので、まあ最高効率とは言わなくても、心理的経験を得られておまけに金までもらえた……と考えるほうが無難なんだろうな。 一層でまたゴブリンの投石を盾でしのぎつつ、ゴブリンが投石を止めて棍棒に持ち替えている間にスコンと頭を割って倒す。これがもう少し続くのかと思うと面倒くさいな。一層で稼ぐのがEランクの常だとは言っていたが、俺としては一層より二層のほうが戦いやすかったな。 カン、カンと盾で弾かれる投石を身に受けながら、ゴブリンに近寄ってショートソードで一撃。これで銅貨3枚は結構お得だ。投石さえ完全に防げるなら、確かに稼ぎ場としてはおいしいのかもしれないな。 二層から40分ほど時間をかけて出入り口まで戻った。入り口に立っていた衛兵は交代をしたのか、入る時に出会った人とは変わっていた。ちゃんと24時間勤務とかじゃなくて時間交代らしい。 もしかしたら、昼の鐘と夜の鐘でそれぞれ交代し、夜は長い勤務だとかそういう感じなのかもしれない。暇で大変だとは思うが頑張ってほしいと思う。 そこからまた20分かけて北門まで戻る途中に、ミニボアを数匹引っ掛けたのでまた血の跡を作りながら歩いていく。「その血の跡はどうにかならないのですか」「これが効率いいからなあ。しいて言うなら草むらを歩いて地面に血の跡が残らないようにするぐらいしかないかな」「じゃあ、タカナシさんのアイテムボックスだけ道から外れて草むらのほうへ血を流すようにしてほしいのです。今度いつ雨が降るかわからないのに血の跡が残っているのは余り見た目としてよろしくはないのです」
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第154話:今日は三分割

 冒険者ギルドについて一息。まずは水分を取り、水筒代わりにしていた入れ物の中身を綺麗に飲み干し、もうちょっと水魔法で継ぎ足して更に飲む。かなり喉が渇いていたんだな、と今更ながら気づいた。 それだけ真面目に仕事をしていた、ということにしておこう。「さて、とりあえず解体所で途中で〆たミニボアの査定をしてもらってくるよ。二人は適当に休んでて」「はい、あと、私も水お願いします」 セルフィ用の水筒を取り出して、水を補充してやってから渡すと、やはり喉が渇いていたのか一気にコクコクと飲み干し始めた。ぷはっと飲み終わると、冒険者ギルドの適当なテーブルへイアンちゃんと向かったので、子守は任せるとしよう。 その間に解体所へ向かい、いつものおっちゃんにミニボアを渡す。今回も満額査定、5匹分100%で請け負ってくれた。 解体結果書を手に、受付に戻る。受付で魔石をザラザラと出し、それぞれの大きさ……この場合ゴブリンの種類になるが、それぞれの種類で分けて提出すると、ちゃんと確認したうえで、区分けしたことに対してペコッとお礼をされながら鑑定してもらう。 結果、銀貨13枚と銅貨5枚になった。結構頑張ったことになったな。やはり、パナメラのダンジョンより収入がいいのは間違いないようだ。「すいません、銀貨を1枚だけ大銅貨にしてもらえますか」「そのぐらいでしたらいいですよ。分配ですか? 」「ええ、あそこで待ってる三人で分割するんです」 机と椅子でおしゃべりをしているイアンちゃんとセルフィのほうを指さす。「はい……では、大銅貨10枚です。仲良くしてくださいね。お金でもめてパーティー解散するケースって、そんなに少なくないんですよ」 一言注意されたものの、一人分ずつ袋に入れてくれた。袋はサービスらしい。助かる。 二人のところに戻っていき、椅子に座ると、それぞれの前にお金を出して渡す。「え? 私は会社からもらってるから要らないですよ? 前も言ったのです」「実は、受付の……ま
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第155話:君たちは明日どう生きるか

 いつも通り湯をもらい、部屋で体を拭く。まだ完全に暗くなってない中、手の平にできた傷を見るが、完全にふさがり、怪我をしたのかわからないぐらいまでに傷の修復が完了していた。痛みの記憶だけが怪我の記録、ということになってしまったようだ。 手をこすり、少しだけ肉の当たる感覚が新しい、というか、少し皮が薄くなっているような気がするのがその名残かな。まあ、数日もすれば自然と忘れていくだろう。 セルフィの背中を拭きながら自分の手の甲を確認するが、こちらもやはり傷跡はない。あの矢は本当に俺に刺さっていたのだろうか、と思いすらしそうになる。「どうかしたのですか? 」 手が止まっている俺に不思議さを感じたのか、セルフィがこちらを少しだけ向く。「手の傷、完全に治ったなと思ってな。怪我したのが夢だったみたいだ」「それは何よりだったんじゃないですかね。まだ傷が残ってたら、背中を拭いてもらう度に水が染みて痛かったかもしれませんから、今日背中を拭いてもらえなかったかもしれないですね。そういう意味では安心しました」「自分の体も拭けなくなってただろうから、その時はセルフィに拭いてもらっていたかもしれないな」「私はそれでもかまいませんよ? ご主人様に命令されればその限りではありませんから、ふふっ」 背中や腕や足、腹はいいとしても、さすがに股間はな……そこはもう12歳の女の子、仮奴隷とはいえ分別はつけておかないといけない。その可能性があったことを考えると、聖魔法を使えてよかったと心から思う。「それは残念だった、と言っておくか」「そうですか、その気になったらいつでも言ってくださいね。全身くまなく綺麗にしてさしあげます」 セルフィの冗談なのか本気なのか反応に困る態度に、俺も少し戸惑う。12歳とはいえ女の子。昔の日本なら結婚していても不思議はない歳。この世界での性教育とか、標準的な女の子の日の来る年齢なんかはどうなっているんだろう。 さすがに俺がいる間にそれが来る……という可能性は十分にあるが、来たら来たでわたわたする俺とセルフィの姿が想像で
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第156話:そしてまた朝が来て

 ゲキマブな太陽が俺を照らし目が覚める。いい加減日の傾きとかそういう作用で、眼球を洗いに来るのは勘弁して欲しい。いつになったらこの大自然の目覚ましから解放されることができるのか。 しかし、せっかく目が覚めたのだ、そのまま二度寝せずに気持ちよく起きることにしよう。二度寝するのは休みの日だけでいい。今日は休みの日の予定ではないし、朝から仕事が……おっと、朝から頼まれごとがあるのでそれを仕上げてやらないといけない。 いつも通り起きて着替えて、井戸のところまで行き、顔を洗って身支度をして、パンツを洗う。石鹸は固まった。これで長時間持たせて、しっかり使いきることもできる。 今日の分は……昨日はそれほど血にまみれたり汗をかくほど激しく動かなかったので、汚れもそれほどではない。しっかり石鹸で洗って洗濯板で汚れを落として、いい感じに汚れが水に流れ出てっている。 しかし、洗濯板の発明は結構近代になってからだと思うのだが、これも先人の残し知恵の一つだったりするのだろうか。その可能性は高いな。木工職人の手習いとしても効果的だろうし、何より洗濯が劇的に楽になるのは間違いない。 洗濯機がある現代でも、汚れの落ち具合で言えば洗濯板のほうに軍配が上がる、という話らしいし、確実に汚れを落とすならこいつのほうが一歩リードしていると言えるだろう。 俺の洗濯が終わったあたりでセルフィが起きてきたので、洗い物と身支度を交代。その間に干して、乾かしてしっかり風魔法を鍛える。風魔法の索敵をもっと効果的に行うには、こうして洗濯物を乾かしておくことで、少しずつでもレベルが上がるように努力していこう。 セルフィの洗い物が終わって一緒に干すと、そのまま朝食を食べに食堂へ行く。今日のパンは……白パンが少しだけ混ざっていた。昨日は客は大入りというほどではなかったらしい。幸か不幸か、でも柔らかいパンを食べられるのは運がいい。 ただし、その代わりというわけではないだろうが、マヨの量が少なかった。どうやら使い切った、という表現のほうが近いらしい。確かに親父さんの消費予測通りの量だったようだ。「親父
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第157話:薬草仕分け

 銀の卵亭に戻り、早速キッチンを借りて二人でマヨづくり。セルフィももはや慣れたもの。俺が、もったりと重くなった、油以外の材料を混ぜ合わせ終わったところで油の準備を始める。 今日はレンモを数滴絞り、マヨに加えた。これでさわやかな味わいを絡めることができるだろう。レンモの実が苦手な人にはごめんなさいだが、こういう味わいもあるんだよ、という面では試しに作ってみることにした。揚げ物……そういえば、揚げ物も料理の中では文明レベルの高い調理法だ。 天ぷらが伝わったのは戦国時代、その前に確か中国から伝来した揚げ物の方法はあったが、一般家庭でも作られるようになったのは第二次大戦以降になったという話を聞いた覚えがある。 トリキシではガルキンの揚げ物が提供されていたし、揚げ物を作るには大量の油が必須。それだけの油がこれだけの都市で供給されているというのは、どこで作られているかまでは詮索しないが、きっちり作る場所がある、ということだろうな。 いつもの分量のマヨを作ったところで、親父さんに出来上がりを伝えに行く。親父さんはサラダを刻んで肉を焼く準備をしていた。スープはリンカちゃんが作っている。「マヨここに置いとくよー」「おー、今日もありがとう。これ、昨日までの分……いつもありがとうな」 銀貨2枚をうけとり、今日の収入とする。仕事……おっと、頼まれごとが終わったので、いつも通り冒険者ルックで冒険者ギルドへ出かける。さて今日はどんな仕……世の中のお手伝いができるだろうか。自分の勉強になるような仕事があればそれが一番いいな。 まずは薬草採取をもっと細かくできるようになるために冒険者ギルドの書棚で薬草に関する知識をもっと仕入れよう。その間にセルフィには何かしら良さそうな依頼がないか探してもらうことにするか。 冒険者ギルドに到着し、書棚で薬草関連の本を探し、薬草の種類や効能、生えているらしい場所などの情報を仕入れていく。 ホルム草やハププ草、テルミ草については知っているが、もうちょっと難易度の高い薬草について知ることも必要だろ
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第158話:高速選別

 俺一人分の体積ぐらいは優に超えているであろう薬草の山がそこには鎮座していた。「薬草をまとめて仕入れたはいいが、仕入れの価格が折り合わなくてな。安く仕入れた代わりに、納品した薬草をめちゃくちゃにして置いていきおったんだ。一応一人でできなくもないが、その間薬草の調合の手が止まっちまうんでな」 確かに、婆さん一人で店を切り盛りするときにこれをついでにやれ、というのは難しいだろうな。納品した後に価格でごねたのは婆さんなのか、それとも納品した業者か冒険者なのかはわからないが、面倒くさい嫌がらせをしていったものだな。「とりあえず、種類と量は大まかにはわかっとるから、薬草ごとに分けて並べて、できればギルドに納品するときの規定量で束ねとくれ」 一束ごとに仕分けろってか。それはセルフィに任せるかな。とりあえず……鑑定で薬草の種類を見分けていく。見える範囲で確認できるのは5種類か。表面にないだけでもっと種類がある可能性はあるが……とりあえずわかるもので取り出しやすいものから順番にやっていくしかないな。「じゃあセルフィ、俺が名前を言いながら渡していくから、いつもの薬草採取の束ね方でそれぞれ分けていってくれ。婆さん、この辺のテーブルは自由に使ってもいいんだよな? 」「ああ、最終的に全部仕分けできていて、それぞれの薬草でわかりやすく置きなおしてくれていたら文句は言わんよ」 婆さんからの了解も取れたところで、早速作業に入ろう。まずは全体の中で最も取りやすいホルム草からだな。ホルム草を鑑定でパパパパッと見渡すと、それぞれセルフィに渡しながら、一定量ごとに「ホルム草」と伝えて渡す。 受け取ったセルフィが一束ごとにまとめていき、ホルム草の置き場を仮決めしたところに並べていく。どんどん薬草の山からホルム草をはじき出していき、セルフィがそれを束にして並べていく。そして並べ始めて、全ての薬草を綺麗に横に並べるだけでは足りないと判断したのか、ピラミッド積みを始めた。 ホルム草を一区切り選別し終わったところで、次はキズナオ草の選別に入る。これもホルム草と同じぐらいの量がある。名前からして傷薬に使いそうな名
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第159話:せっかくなので

 セルフィと冒険者ギルドに戻る。ご飯は報酬を受け取ってから決めることにした。そのほうが、午前の仕事をきっちり終えた、という気分になってちょうどいい。 冒険者ギルドで確認書を渡し、婆さんの署名があることを確認してもらい、銀貨2枚を受け取る。昼食には多すぎるし、今日一日分生きるためには十分な稼ぎではあるものの、今日一日分でしかないのもまた確か。 余裕のある生活を送るには、午後ももうちょっと誰かの助けになることをしなければならないだろう。さて、午後からは何をするかな。「とりあえず、どこかでお昼を食べましょう。近くにお腹にたまる店があればいいですが」「どこもまだ入ったことのない店だからな。ある意味でどこに入っても一緒……ということにはなる。かといって歩き回ったり悩み抜いたりするぐらいなら、銀の卵亭まで戻って食事にしたほうが効率的だ。ここは一番近そうで気軽に入れそうな店にしよう」 食べ物を売ってそうな店を探すと、店構えがそこそこよく、ちゃんと屋根があって座れる店を見つけた。名前は「マヨイネコノスープヤ」と書いてある。迷いネコのスープ屋か。迷って入ってこい、ということなのだろう。 名前からして、スープに自信がある可能性が高い。塩辛い燻製肉と豆をぶち込んだだけのスープを売っているような雰囲気ではないので、ここで一食食べていくほうが良いかな。「よし、こういう時はインスピレーション……思い付きと思い切りが大切だ。ここに入ってみよう」「はい、ついていきます」 店の中に入ると、コンソメのようないい香りが漂っている。ガラスを使えない地方のため、石の据え付けられた壁にも香りが移っているらしく、店全体から何とも言えない腹の空くようないい匂いが詰まっていた。「いらっしゃい、空いてる席にどうぞ」 二人掛けの席があったのでそこに座り、早速店員に聞く。「初めてなんだけど、何がある? 」「今はランチと、基本メニューにスープが三種類。どれも白パンがつくよ。値段は全部大銅貨1枚」 銀の卵亭よりは割高に感じるが、黒パンじゃなくて
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第160話:アライが悪いよ、アライが

 西門にたどり着き、外に出る。出るときに衛兵がいつも通り話しかけてきた。「冒険者が西門に用事があるのか? 」「薬草を採りに行くんですよ。西門からのほうが近くて」「そうか、夜の鐘には遅れないようにな」 納得したらしく、そのまま見送ってくれた。ちゃんと仕事をしていてえらい。そのまま西門から南西方向に道を外れて、採石場とは道を挟んで反対側に行く。 まだ採石場として稼働していないが、今稼働している採石場から石を取り切ったら、こっち側が今度は採石場になるんだろうな、というようなイメージの岩場を歩く。道はないので適当に岩に昇って……そして、岩陰にこっそりと生えている草を鑑定する。 草からは「僕アライ草です、こんにちは。良く育ってます」と返事が返ってきた。アライ草はこんなに近くでも取れてくれるのか。ただ、鑑定で調べる感じ……と、お? 今ので鑑定のレベルが上がったらしい。 範囲鑑定ができるようになって、周辺の地形の中にどんなものがあるのかが遠距離でもわかるようになってきた。ついでに、さっきの鑑定結果のアライ草の返事を見る感じ、状態変化も把握できるようになったらしい。「セルフィ、鑑定のレベルが上がったぞ。これで離れててもどこに薬草が生えてるのかわかるようになった。いちいち近づいて見たり抜いて観察しなくていいのは楽だな」「おめでとうございます。これで楽に稼げますね」「そうだな、しっかり育ったアライ草だけを抜いていくことにしよう。アライ草の育ち具合も見られるようになったからそこも楽になった」「鑑定だけで食べていけるようになったんじゃないですか? これでお休みを増やしてもいい感じになりましたね」 セルフィはニコニコと嬉しそうにしている。お休みが増えるのを楽しみにしているらしい。確かに、自分の自由になるお小遣いも増えたし、お休みに買い食いするとか楽しみたいことはそれなりにあるだろう。「それだと鑑定やってる婆さんの商売敵になっちゃうしな……鑑定で飯を食っていくつもりはないよ。それに、レアなスキルを持っ
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