俺様吸血鬼【ヴァンパイア】と私の甘くて苦い恋愛事情。 のすべてのチャプター: チャプター 61 - チャプター 70

81 チャプター

●61〜吸血鬼【ヴァンパイア】とこれからの人生(みらい)〜

「真琴?大丈夫?」「気持ち、悪い……」「お水持ってくるから、座って待ってなさい」「うん……ありがとう、お母さん」お母さんはきっと、今ので気付いた。私が妊娠してること。「真琴、はい。お水」「……ありがとう」お水を飲む私に、お母さんは「真琴、アンタもしかして……妊娠してるの?」と聞いてくる。 私はお水を置くと「……うん。今、六週目だって」と伝えた。「……そう、そうなのね」「ごめんね……。お母さん、いい娘じゃなくて、ごめんなさい」私は俯いた。「……真琴」「え……?」お母さんは私を優しく抱きしめてくれた。「真琴はお腹の子……どうしたい?」「……え?」「お母さん、真琴が産みたいと思うなら、協力する」え……? 「え……どうして……?」「どうしてって?」「どうして……怒らないの? だって私、まだ17歳だよ? 未成年なのにこんなことになって……普通なら、怒るところでしょ?……なのにどうして」お母さんはそんな私の手をギュッと握り締める。「それはお母さんが、アンタの幸せを一番に思ってるからよ」「……え?」「真琴は、病院でお腹の子をエコーで見た時、なにか感じた?」「……動いてた。小さかったけど、動いてた。 それを見て私、命を授かるって偉大なことなんだなって思った」「そう」「……でも、それと同時に、怖くなった。だけどこの命を、小さな命を私が守らないと。……そう、思ったりもした」お母さんは「偉いわね、真琴」と褒めてくれた。偉い……? 私が?「……偉い?」「あなたには、きっと産みたいっていう小さな希望があるのよ」「小さな、希望……?」「今あなたのお腹にいるのは、間違いなくあなたの子よ。 あなたがしたいと思うように、すればいいの」私はお母さんに「……ありがとう、お母さん」と告げた。「でも……その子の父親には、話したの?妊娠してること」「……うん、話した」「その子は、なんて?」「まだ、分からないって」「そう……」お母さんは、私の背中を優しくさすりながら、そばにいてくれた。 私にはお父さんがいない。 小さい時、事故で死んでから、お母さんはたった一人私を育ててくれた。 兄弟もいないから、ずっとお母さんとの二人暮らしだった。お父さんの顔も覚えていないから、今こうしてお腹にいる赤ちゃんのことを考えると……。
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○62

「え? 吸血鬼(ヴァンパイア)って……アンタ、まさか……」「……ごめん、お母さん。私が好きな人は人間じゃないの。……吸血鬼(ヴァンパイア)、なの」お母さんは私の言っていることを理解しているのかは、わからない。 だけど、ちゃんと話した。「え……どういうこと、なの? じゃあその子の父親は、吸血鬼ってこと……?」「……うん。私のお腹の中にいるのは……吸血鬼の子供なの」私が言っていることは普通じゃない。そんなことはわかっている。「まさか、そんな……。なんで、なんであなた、吸血鬼なんかと……どうして?」だって仕方ないじゃない。 桜木のことが大好きなんだから……。「……好きなの。 私は、桜木のことが大好きなの。私は桜木のことを人間として、好きになったの」お母さんは「……真琴、人を好きになることは悪いことじゃない。 だけど吸血鬼なんかダメよ。危険な生き物なのよ? いい?今すぐその人とは別れなさい」と厳しい口調で言ってきた。「え……?」別れる……? 桜木と……?「お母さんは、吸血鬼なんかと付き合うことは認めません。……それとお腹の子も、堕ろしなさい」「……え? 堕ろす……?」それって……。「吸血鬼の子供を産んだとして、あなたはどうするつもりなの?……まさかその人とずっと一緒にいられるとか、そう思ってるわけじゃないわよね?」「……違う。そんなこと思ってない……!」「だったら今すぐに別れなさい。 お腹の子には申し訳ないけど、中絶してもらうわ。お金は全部お母さんが払うから。……ただし、吸血鬼なんていう危険な生き物との関係は、今すぐに絶ちなさい」お母さんは厳しい口調でそう放つと、リビングを出ていってしまった。「お母さん、待ってっ……!」 私はお母さんを追いかける。「真琴、あなたに恋人がいることは、知っていたわ。 恋人がいることに対しては反対はしていなかった。……でもまさかその恋人が、吸血鬼だなんて……あなた一体何を考えてるの?」「っ……桜木はそんな人じゃない! 確かに吸血鬼だよ!?……でもちゃんとした人間の心を持ってる、とても優しい人なの」桜木のことを好きになってわかった。吸血鬼だとしても、ちゃんと人間として生きられるって。「たとえ人間の心を持っていても、吸血鬼だってことに変わりはないでしょ!? あなたはいつか死ぬかもしれないのよ!?危な
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●63

「……っ」私はお母さんの言うことを聞くしかないと思った。 お母さんが唯一の家族だから。唯一、私のことを理解してくれてる大切な家族。 お母さんを失えば、私は今度こそひとりぼっちになると思った。「……ごめんね、赤ちゃん」私はお腹に手を当てて、この中にいる小さな命に静かに呟いた。産んであげられなくてごめん。私のところに来させてしまって……ごめんね。「……っ……」 あまりにも残酷な現実に、涙が止まらない。 こうなってしまって、本当に後悔している。そう言われても仕方ない。 これは当然の報いなんだ。これは私への罰。 自業自得とは、まさにこういうことを言うんだな……。あまりにも辛くなって、私は思わず家を飛び出してしまった。「真琴っ!?どこに行くの!? ちょっと、待ちなさい……!」お母さんの声が聞こえたけど、振り向くこともなく、走った。……当然、行く宛なんてないのに。その辺をフラフラと歩いた。もうなにも考えられない……。私は近くの河原に座り込んだ。「真琴……!?」「……っ、桜木……?」どうして? どうしてこういう時、一番会いたくない人に会ってしまうんだろう……。「何してるんだ? って……どうしたっ!?」 桜木は私の顔を覗き込む。「お母さんに……。お母さんにね、桜木と別れろって、言われた……」「え……?」「お腹の子も、堕ろしなさいって言われた。……産むこと自体、反対されちゃった」桜木はそっと私の隣に座り込む。「……やっぱり、俺が吸血鬼だから、だよな」「吸血鬼の子供なんて、産むな。……そう、言われた」私は涙が止まらなくて、思わず下を向いた。「ごめんな……真琴」桜木は優しく私を抱きしめてくれた。「こんな風に辛い思い……させてごめん」私は桜木の服の袖を掴んで、「……私は、別れるなんて、やだよ……」と桜木に訴えた。でも桜木は「真琴、お腹の子……堕ろそう」と言ったのだった。「えっ……? なんで……?!」なんでそんなこと言うの……?「お前のために言ってるんだ! こんな風に……」「やだっ! 絶対にイヤッ……!」「真琴……?」私は桜木に「私は、この子を産みたい……」と告げる。「っ!? 何言ってんだ!そんなことしたら……!」「この子の母親は私なの! 私はこの子を産みたい!……産みたいの」桜木だって、きっとわかっているの
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○64〜吸血鬼【ヴァンパイア】と一緒に生きる道〜

「……さく、らぎ……」「好きなんだ……真琴。どうしようもなく、好きなんだよ」「私も……大好きに決まってるじゃない」   真剣な眼差しで見つめられて、そしてまた、お互いに深くキスをした。 その気持ちを確かめ合うように……。桜木の背中をぎゅっと掴んだとき、離れたくないと、強くそう思ってしまった。「……ちゃんと、俺からも言いたい。俺の、本当の気持ち……お前の、母さんに伝えたい」「でも……無理だよ。お母さんは、絶対に認めてなんてくれない」お母さんにはもう、きっと伝わらない。「認めてもらえないんだったら、認めてもらえるまで何度だって、お前の家に通う」そこまで私にしてくれる理由は、なんなんだろうか。 吸血鬼でもない、普通の人間の私に、なんで桜木がそこまでしてくれるのか……。「……なんで? なんで、そこまで……。私は、吸血鬼じゃないのに……」「違う!そんなこと関係ない。 俺にとってお前は、゙大事な人゙だからだよ」   桜木のその真剣な瞳に吸い込まれていく。「俺は……人間の真琴だから、好きになったんだよ。 吸血鬼とかじゃなくて……俺の中に眠る人間としての俺が、真琴を選んだんだ」 桜木から優しく髪を撫でられ、胸がときめいた。「……ありがとう、桜木」私の大好きな人。 吸血鬼だっていい、人間じゃなくてもいい。 私が本当に生きたいと思う相手。一緒に生き抜いて生きたいと、本気でそう思える相手なのだ。 それが私にとって、桜木なんだ。その日の夜、帰宅した私はまたお母さんと話そうと思い、リビングへと行った。「……お母さん、あのさ」「言ったでしょ、絶対に認めないわよ」「お母さん……」お母さんは私に近付くと「あなたにもしものことがあったら、お母さん、悲しいの。……あなたにもしものことがあった時、お母さんはあなたを守れないのよ?」と私を心配そうに見る。でもお母さんの声は、とても低くて怖かった。 だけど……震えてるようにも、感じた。「お母さん、聞いて」「お願いよ、真琴。 分かってちょうだい」「……お母さん、お願い。私、この子を産みたいの。 小さな命を、私の手で抱きしめてみたいの」お母さんに訴えたけれど、取り合ってはもらえず「言ったでしょ。絶対に産むなんてダメよ」と念を押されてしまった。「どうして?……私はこうやって授かった命を、殺すことなん
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●65

次の日の朝、私はいつもの時間に目を覚ました。だけど、妊娠している今の身体では、起き上がることさえ困難になった。つわりで吐き気が止まらず、朝ごはんを食べようとしても、ごはんや味噌汁のニオイで気持ち悪くなって何も食べることができない。昨日、あんなことを言ったお母さんだけど、私のことを心配してくれているのか、ヨーグルトやゼリーなどを用意してくれた。「真琴、これなら食べられる?」 ヨーグルトを目の前に置いてくれる。「……ありがとう、お母さん」でもヨーグルトすら食べる気になれない。  そんな私にお母さんは「真琴、一週間後に病院へ行くわよ」と告げた。「……え?」「一週間後に、中絶手術の予約を入れたから」「えっ!?……ひどい!なんで勝手にそんなことするの……!?」椅子から立ち上がった瞬間に、急に襲ってくる吐き気に、思わず座り込んだ。「……お願い、お母さん!お願い……。中絶なんてしたくない。絶対にイヤ……!」泣いてすがる私に、お母さんは冷たく「だったら、一人で生きていきなさい」と告げる。「そんなに産みたいって言うなら、一人で生きていきなさい。 ただし、お母さん手助けはしないから」お母さんの冷たい視線に、私は何も言い返すことが出来ない。「真琴、あなただって考えれば分かるでしょ?お母さんはね、あなたのことが心配だから言ってるのよ。 産みたいと思う気持ちは、お母さんだってよく分かる。……だけどね、産んだ後に大変な思いをするのは、あなたなのよ?」「それはっ……」 確かにそうかもしれない。 私は人間で、桜木は吸血鬼で、大変な思いをすることは間違いないかもしれない。「あなたがこうして授かった生命は、今あなたのお腹の中で一生懸命生きようとしてる。……でもそれは、あなたの人生を大きく左右するかもしれない、とても重大なことなのよ」「……重大な、こと?」「将来的にみたら、子供が可哀想かもしれないでしょ。いじめられたり、バカにされたりするかもしれないわ。……だからこそ、そんな辛い想いをしないために、そうさせないために、お母さんはあなたに子供を諦めてほしいの」「っ……」お母さんの言葉に、涙がたくさん出てしまう。だって、お母さんの言うことは正しい。将来的に見れば、子供は可哀想なのかもしれない。 私はそれをお母さんに言われて改めて、思い知った。私に……こ
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○66

【sideユズル⑧】「……もしもし」 電話に出た真琴の声は、ひどく落ち込んでいた。今朝、真琴のお母さんから真琴が一週間くらい学校を休むと連絡があったらしい。「真琴、大丈夫か……?」真琴は死んだような声で「……うん」と、頷いた。「学校に、真琴が一週間後くらい学校休むって連絡があったみたいだな」「……お母さんが、しばらく休みなさいって」「そうか……。つわりは、大丈夫か?」この前、すごく気持ち悪いって泣きそうになったいたから、すごく心配だった。 「……大丈夫、だよ」「そっか。 あんまり、ムリするなよ」真琴がこんなにも元気がないのは、初めてかもしれない。いつも真琴は元気に「桜木!」と笑ってくれる人だったから。「……うん、ありがとう」俺は今、とてつもなく真琴に会いたい。 真琴をこの手で抱きしめたい。「なあ真琴、少しだけ会えないか?」俺がそう聞くと、真琴は泣きそうな声で「……ごめん。もう桜木とは会うなって……お母さんに言われたから」と俺に告げた。「……え?」「……あのね、私一週間後に、中絶しないといけなくなっちゃったんだ」「えっ!?」中絶……!? それって……。「病院で、手術受けるの。 お腹の子、産めないんだ……ごめん、じゃあね」真琴はそう言い残して電話を切った。 でもきっと、今頃泣いているに違いない。そう思うと、足が勝手に走り出していた。 すぐにでも、真琴のお母さんに認めてほしいて思ったから。真琴のこと、お腹の子のこと、ちゃんと話したいんだ。ピーンポーン……と真琴の家のチャイムを鳴らすと、゙はーい゙と声がした。 でもその声は、真琴の声じゃない。 「はーい。どちら様……」 真琴のお母さんは、俺を見た瞬間に悟ったのか、怒りを含めた声で「あなたに用はないわ。お帰りください」と言った。「待ってください!……お願いします。真琴と話をさせてください」「あなたに話すことなんてないわ。帰ってちょうだい。……それから、真琴には二度と近付かないでちょうだい」 そう言われた後、ドアを閉められてしまった。 クッソ……!どうすれいいんだ、俺は。 このまま何もできないまま、終わるのか……?俺はスマホを取り出し、真琴に電話をかけた。呼び出し音が聞こえてしばらくして、真琴の声が聞こえた。「……はい」「真琴?俺だけど……」「うん……
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●67

「お願いします。……俺たちのこと、認めてください。必ず、真琴さんとお腹の子、守ってみせます。俺何があっても、守り抜いてみせますから」「しつこいわね! もう帰ってちょうだい!」真琴のお母さんが俺を追い返そうとする中、真琴がリビングから出てきて「お母さん、待って……! 話を聞いてっ!」とお母さんの腕を掴む。「真琴は黙ってなさい」「お願い、お母さん!……ちゃんと、ちゃんと私たちと話を聞いてほしいの。お願い!」そんな真琴に対して、お母さんは「……真琴、身体に障るから部屋に戻りなさい」と告げる。 「お母さん、お願い! 少しでいいから、話を聞いて……。お願いだから……」真琴は泣きそうな顔で母親にすがる。そんな真琴の思いが通じたのか、真琴のお母さんは「……分かったわ。少しだけよ」と真琴に告げた。「ありがとう、お母さん……」真琴のお母さんが話を聞いてくれたのは、中絶手術の二日前のことだった。「お母さん、私……この子を産みたい。 私の手で、私たちの手で育てていきたい」真琴がそう話すと、真琴のお母さんは俺を視線を向ける。「あなたは、どうなの?  あなたの気持ちは、どうなのかしら?」俺の気持ちも変わらない……。変わるわけ、ない。「……俺も、彼女と同じ気持ちです」「そう。 あなたは真琴と、今いるお腹の子を守る覚悟はあるの?」 「覚悟……ですか?」真琴のお母さんが、真剣な顔を俺に見せる。「……はい。覚悟なら、もう出来てます」真琴のお母さんは少しの沈黙の後、口を開く。「本当に、約束できる?……真琴を守ると言うなら、自分の命をかけなさい。 死んでも真琴を守りなさい。 いい?うちの娘を預けるって、そういうことなのよ」そんなの、決まっている。 「はい。必ず守ってみせます。俺の命に変えても、必ず守ってみせます。 お腹の子も、必ず守ってみせます。……だから、三人で暮らすことを許していただけませんか?」これが俺の本気なんだ。……これが俺の、覚悟なんだ。「……お母さん、お願いします。認めてください、私たちのこと」「お願いします」俺は真琴のお母さんに、精一杯頭を下げた。これで結果がどうなるのかはわからない。 でも出来ることは全て伝えたつもりだ。「……分かったわ。 そこまで言うなら、仕方ないわね」「えっ!?……本当、ですか?」「ただし、一つ条件が
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○68〜吸血鬼【ヴァンパイア】と同居生活〜

その次の日から、桜木は軽めの荷物を持って、家に越してきた。 一緒に住むことを条件に、お母さんは産むことを認めてくれた。正直、吸血鬼の子供を産もうとするなんて……バカだと思ってる。それでも、私は桜木と一緒に生きていきたい。本当に本気でそう思っているんだ。お腹の子と三人で、幸せになろうって言ってくれたのは、桜木からだった。        こんなにも、本気でぶつかって来てくれた人は初めてだった。だから私は、必ず幸せになる。 お腹の子と桜木と、三人で。「あの、先生」「ん? 金森、どうした?」私はお母さんに言われた通り、先生に妊娠のことを話すことにした。「私、先生に話したいことがあります」「話たいこと?」「ここだと話しづらいので……一緒に来てくれませんか?」「お、おう。 わかった」私は先生を連れて美術室へと向かった。「桜木? 桜木も一緒だったのか?」「はい」先生は私たちに「二人してどうした? 何かあったのか?」と聞いてくる。「先生……私、先生に言わないといけないことがあります」「……なんだ?」私は先生に「先生、私……今、妊娠してるんです」と告げた。「……え?」「私のお腹の中に……赤ちゃんが、います」先生は少し考えて「金森、それは本当か?」と聞き返してくる。「はい。……今、妊娠八周目です」私は先生の反応を見る。「金森、もしかして、お腹の子の父親って……」先生は少し離れたところにいる桜木に視線を送る。 桜木は静かに口を開き「……はい。俺です」と伝えた。「……金森、桜木」先生が私たちを呼ぶので「はい」と返事をする。「お前たち……お腹の子はどうするつもりなんだ?」私はすぐに「産みたいと……思っています」と答えた。先生は桜木にも視線を送り「桜木も、金森と同じ気持ちなのか?」と問いかける。「はい」先生はため息を一つ吐くと「お前たち、今これがどういう状況かわかってるのか?」と私たちを見る。「お前たちの気持ちはわかった。……だが、これはお前たちだけの問題じゃないんだぞ?」「……わかってます、そんなの」「金森、お前学校はどうするつもりだ?」  先生からそう聞かれた私は「……辞めます。 辞めて、お腹の子のために働きます」と伝えた。「……産む意思に、変わりはないんだな」「はい。……桜木と二人で、話し合って決めました」
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●69

「金森……お前は母親になる覚悟があるのか?」 「……あります。 私は絶対に、この子を産みます。この子を大切に育ててみせます」私は先生に訴えかけるように見つめた。「はあ……俺もお前たちが付き合っていることは知っていた。 付き合うのは自然なことだから仕方ないとしても、妊娠ってのはな……」先生も驚きを隠せないのだろう。「先生……ごめんなさい」「え?」「いい生徒じゃなくて、ごめんなさい」私は先生に頭を下げた。「先生、俺もごめんなさい。……いい生徒じゃなくて、ごめんなさい」なのに桜木も、私と一緒に謝ってくれた。「……二人とも、顔を上げろ」私たちは二人とも顔を上げた。「お前たちの意思はわかった。……金森、桜木」私たちは二人で「はい」と返事をした。「お前たちはまだ未成年だ。 だけど、二人で話し合って決めたことなら、俺は応援することにするよ」「……え?」それは先生からの思ってもない言葉だった。「……本当に、いいんですか?」「お前たちは未成年だ。 だけどお腹の子の両親だろ?……お前たちが産むと決めたのなら、俺はその決意を尊重しなければならない、教師としてそう思った」「先生……」「生徒の気持ちを尊重し理解するのが、俺たち教師としての役目だ」先生は私たちにそんな温かい言葉をくれた。「……先生、ありがとうございます」「ありがとうございます」「もちろん、このことは教頭や校長には話をさせてもらう。……いいな?」私たちは二人で見つめ合い「はい」と頷いた。「とりあえず、今はまだ誰にも、何も話すなよ」「……わかりました」先生は「気を付けて帰れよ」と美術室を出て行った。「真琴……大丈夫か?」「私たち……認めてもらったってことで、いいのかな」私がそう聞くと、桜木は「多分……な」とだけ答えた。「……良かった」なんだかホッとしてしまった。「ああ、良かったな」桜木は私を優しく抱き寄せる。「……私、絶対に産みたい」「ああ、俺も産んでほしい」こうして二人で過ごせる時間を、大切にしたい。「頑張って、家族になろうね」「家族……?」「そう、家族。……お互いに十八歳になったら、籍を入れて家族になろう」桜木は「そうか……家族か」と呟く。「私は……桜木と家族になれたら、本当に嬉しいよ」「……ありがとう、真琴」「桜木、大好きだよ」「
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○70

大好きな食べ物を受け付けられないって、とてもキツイ。 最近はなんだかグレープフルーツが、特に食べたくなる。 グレープフルーツは苦手なのに。 妊娠すると好みが変わるって言うけど、本当なのかな。グレープフルーツだけ、今は食べられる。それで乗り切る訳にもいかないのだけど……。「っ……気持ち、悪い……」そんな私に「真琴、大丈夫か……?」と桜木が寄り添ってくれる。「無理っ……」最近はつわりがひどすぎて、なにも出来なくなってしまった。「辛いよな、つわり」横になっていることすらも、しんどくて……。「ん……ちょっと、しんどいかも……」「ムリしなくていい。休んでろ」「うん……」桜木は、優しい目と優しい声でそう言ってくれた。こんなにも、つわりがひどいものだなんて思わなかった。でも妊娠するって、本当に奇跡だと思う。 今私をの中に起きている小さな奇跡が、何よりも生きている証拠だ。私がこの子のために、何でもしたいって思うのは、きっと私の中にある小さな母親としての希望があるからなんだと……お母さんはそう言っていた。今こうして、私の中で小さな生命が動いている。 生きたいと、頑張っているから。「……ね、桜木……?」「なんだ?辛いか? あ、水でも飲むか?」「ううん……。ありがとう、本当に」「え……?」私は桜木に「桜木の、おかげだよ。……こんなにも大変だけど、ちゃんと幸せになりたいって。心から、そう思うの……」と伝えた。「……ああ」優しく握ってくれた手は、とても優しくて温かい。そんな手だった。それからしばらくは体調に気をつけながら、生活をしていた。「真琴、学校行けそう?」「……無理っ」「わかったわ。 ゆっくり休みなさい」つわりが治まるまではムリなことはせず、お母さんや桜木に協力してもらいながら、一日を過ごすことにした。つわりがひどくて動けない時が多いけど、それでもなんとか生きている。「お母さん……つわりっていつ治まるの?」「まだまだ先よ」「ええ……辛い」お母さんは私に「母親になるんでしょ? 頑張りなさい」と告げる。「うん……」いつまでこのつわりに耐えればいいのか、わからない。「グレープフルーツジュース、帰りに買ってきてあげるから」「んんー……」つわりで辛い中、お母さんは「ごめんね、真琴。 お母さん、もう仕事行かないとなの」と
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