俺様吸血鬼【ヴァンパイア】と私の甘くて苦い恋愛事情。 のすべてのチャプター: チャプター 71 - チャプター 80

81 チャプター

●71

最近では桜木のことを「ユズルくん」と名前呼びをしていて、驚いている。すっかり我が家の一員となった桜木は、私たちといると楽しいと言ってくれている。✱ ✱ ✱そんなある日のこと、家に担任の片倉先生が私の様子を見に来てくれた。「おう、金森。 体調は大丈夫か?」「……つわりで死んでます」片倉先生は「桜木から聞いてる。グレープフルーツを食べてるんだろ?」と言ってくる。「はい……むしろグレープフルーツしか食べれません」先生は「そうか。 てことで持ってきたぞ、グレープフルーツ」と私にグレープフルーツを見せてくれた。「グレープフルーツだ……」グレープフルーツを見ると、なんか嬉しくなる。「食べれる時に食べろよ」「はい。ありがとうございます、先生」私はグレープフルーツを先生から受け取ると、先生に「あの、今日はどうしたんですか……?」と問いかけてみる。「まあ、金森の様子が気になってな」「……そうですか」  「少し、痩せたか?」「そんなことは、ないと思いますけど……」確かに食べれるものは少ないけど……。「桜木が言ってたぞ」「……え?」「金森がつわりで辛そうな顔をしてるのが、見てるのが辛いってな」桜木……先生にそんなことを言ってたんだ。「出来れば、代わってやりたいと言っていたぞ」「桜木が、そんなことを……?」先生は「多分、桜木は金森のことが本当に大事なんだろうな。 そばにいるのに何も出来ないのが辛いって、そう言ってたぞ」と私に告げた。「桜木は金森とお腹の子が心配なんだろうよ。 産むのは金森だから、俺には出来ることが少ないって嘆いてたぞ」「そうなん、ですか……?」「俺も金森には、元気な赤ん坊を産んでほしいと思ってるよ。……一教師として、大事な生徒には幸せになってほしいと願ってる」先生がそう言ってくれるから、私は泣きそうになった。「先生な、俺がもし桜木の立場だったら……って考えたんだけどさ」「はい」「俺には桜木みたいに、きっと父親になる覚悟なんて、なかったと思うんだ」先生は麦茶を喉に流し込むと、「だから俺は、桜木のその決意はすごいと思ってる。 もちろん、金森の決意もだ」と話してくれた。「先生……」「俺は金森と桜木が幸せなら、それでいいかなって思う」先生がそう言ってくれた時、私はなぜか涙が流れた。「どうして……先生は私た
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○72〜吸血鬼【ヴァンパイア】の子供の名前〜

「先生……今までお世話になりました」 「金森、体には気を付けてな。 元気な子供、産むんだぞ」「はい。ありがとうございます」つわりも無事に治まり安定期を迎えた頃、私はそのタイミングで学校を退学した。「先生、真琴がお世話になりました」退学する日、お母さんも一緒に学校へ来てくれた。「お母さん、金森のこと、どうかよろしくお願いします」「はい」「先生、どうもありがとうございました」私はお母さんとともに学校を出た。「真琴、本当に良かったの?」「うん……大きいお腹じゃ、学校にも行けないしね」すでに私のお腹は少し大きくなっている。 「そう……」「お母さん、ありがとう」「え?」「ここまで育ててくれて、ありがとう」私は子供が出来て初めて、お母さんの偉大さを知った。 お母さんが女手一つでここまで育ててくれたことの意味をちゃんと理解したし、今ではとても感謝している。「真琴……」「私、お母さんの娘で良かった」私はお母さんの腕を取り、「お母さん、帰りにケーキ買って帰ろう」と微笑んだ。「そうね。ケーキ、買って帰ろうか」「うん」私が学校を辞めることは、クラスメイトにも伝わっている。 ただ辞める理由を「家庭の事情」という風に先生も伝えてくれているので、妊娠のことは話されていない。先生も話すつもりはないと言ってくれた。桜木はとりあえず先生や私たちと話し合った結果、一旦は学校を卒業することを決めた。桜木が私と一緒に住んでいることを知っているのは、先生と教頭先生、校長先生、そして萌恵と学年主任の先生だけだった。 クラスメイトの子たちは、桜木と私が付き合ってることは知っている子たちが多かったため、私のことを聞いてくる子に対しては「別れた」ということにしているとのことだった。お母さんもそれがいいと話してくれたから、桜木には迷惑かけるかもしれないけど、別れたと貫き通すことになった。「真琴、何ケーキがいい?」「どうしようかな……。フルーツタルトとか、いいかも」「いいわね、美味しそうね」「うん」ケーキを三人分購入してくれたお母さんと一緒に、お店を出た。「明後日検診よね?」「うん」辛いつわりに耐え抜いてからの日々は、なんだか新鮮な気持ちになれた。好きなものがまた食べられるようになって、本当に良かったと思えた。「明後日、付き添えなくてごめんね
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●73

「ごめんね、桜木にも迷惑かけて」「そんなこと、気にすんな」桜木は私の頭を撫でてくれる。「だって……私とは別れたってことにしてるんでしょ?」「ん? ああ」「別れた理由とか、聞かれなかった?」桜木は「もちろん、聞かれてはいるけど……フラレたってことにしてるから、それ以外は何も聞かれないかな」と言ってくれた。「……そっか。 なら、いいんだけど」「真琴が気にすることじゃない」「だって……別れたってことにさせないといけないなんて、心が痛むし」本当はこうして一緒にいれるのに、別れたということにしないとならないなんて……。なんていう胸が痛むことなのだろう。「真琴はそんなこと、考えなくていいんだよ。 今は子供のことだけ、考えていればいいんだ」桜木は私の髪の毛をグシャグシャと撫でる。「もう、髪の毛グシャグシャになるから……」髪の毛を手ぐしで直すと、桜木は「真琴……ずっと、これからも愛してる」と熱いキスをくれる。「ん……私も、愛してる」誰かをこんな風に愛おしく思うのは、初めてだった。 私は桜木のことを本当に愛してる。✱ ✱ ✱「うん、経過は順調そうね」「……良かった」 「この子、とても元気な子ね」あれから時は過ぎ、気がつけばもう妊娠八ヶ月目に入った。膨らみの目立たなかった私のお腹は、どんどん膨らみを増していき、立ち上がったり、動くだけでかなり重みでキツく感じる。「やっぱり男の子だから、元気なのね」「……ですね」お腹の子の性別が男の子だと分かった時、嬉しかった。 特に桜木は、男の子だと聞いてすごく嬉しそうだった。「金森さん、何か不安なことはない?」「いえ、特には……大丈夫です」私も妊婦なのでマタニティマークのキーホルダーをカバンに付けている。けれど街を歩いたり、電車やバスに乗ったりすると、私のマタニティマークを見てヒソヒソと言われてしまうこともある。 確かに私はまだ十七歳だから、世間からそう言った目で見られるのも、不思議じゃないけれど。でも電車やバスに乗ると優しい人もいて、優先席を譲ってくれたりするから、みんながみんながそうではないけど。だけど、今お腹にいるこの子に、もうすぐ会うことができる。 念願だった、この子に会える日が少しずつ近付いている。「ふぅっ……」歩くだけでも、こんなに一苦労だなんて思わなかった。 体が
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○74

「……あっ」「どうした?」「今、赤ちゃん動いた」お腹の子が、私のお腹を蹴るのがわかった。 それを感じると、なんだかすごく嬉しくなる。「赤ちゃん、元気なんだな」「そうだね。よく動いてるよ」私はお腹に手を当ててに「元気に産まれてきてくれるかな?」と桜木に聞いてみると、桜木は「大丈夫だ、俺が付いてる。……後、お前の母さんも付いてる」と優しく言ってくれる。「うん」「あ、プリン、食べるか?」「えっ? プリン?」「……お前の母さんに、作り方を教えてもらったんだ」え? まさか……。「私のために……作ってくれたの?」「ああ。 真琴、母さんが作るプリン好きだって言ってたから」「……覚えててくれたの?」「まあ」桜木がちょっと照れている感じがした。「ありがとう。食べたい」「じゃあ、用意するから待ってて」桜木がキッチンへと向かうので、私も後を着いていく。「はい、プリン」桜木が目の前にプリンを置いてくれる。「ありがとう」 うわ……めっちゃ美味しそう。「うわぁ……美味しそう」お母さんが作ってくれるプリンと、全く同じ見た目だった。「これ、本当に桜木が作ったの……?」「ああ。俺が作った」桜木が私のために作ってくれたこのプリンが、本当に嬉しかった。「……いただきます」プリンを一口に入れると、甘い香りと卵の風味が口いっぱいに広がっていく。「……美味しい」「よかった」「本当に、お母さんの味だ」ビックリした。 ここまでお母さんの味になるなんて、思ってなかった。 本当にお母さんの味だ……。お母さんが作るプリンの味だ。「……よかった。ちゃんとお母さんの味になってたか」「でも……どうしてプリンなの?」桜木にそう聞くと、桜木は「真琴が、今すごく頑張ってるから、何か力になりたくてさ。 好物のプリン、作ってあげたくなって」と照れ臭そうに笑っていた。「……え?」「だって俺、何も出来なくてさ。 真琴が今そんな大きな体で一生懸命に頑張ってるのに、俺は何もしてやれないなって思って」「……そんなことないよ」私は桜木の手を握ると「だって、こうしてそばにいてくれるだけで……私は幸せだから」と微笑む。「真琴……」「桜木は、何もしなくてもいい。……ただ私のそばにいてくれれば、それでいいの」桜木は「ありがとう」と私の頭を優しく撫でてくれる。 ただ
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●75

「うん、美味しかった」「よかった。 ユズルくんが、どうしても作りたいから教えてほしいって言ってくれてね。お母さん、張り切っちゃった」「そうなんだね」お母さんも以外と、可愛いんだな。  「お母さん、ありがとう」「なによ、お礼なんていいわよ」お母さんは嬉しそうに微笑んでいる。 きっと、お母さんも嬉しいんだと思う。「そうだ。 お母さん、赤ちゃんの名前、何がいいと思う?」「名前? そうねぇ……。真琴が付けたい名前にすればいいんじゃない?」「うーん……付けたい名前か」そう言われると、結構悩む。「まあお母さんの場合、お母さんは男の子でも女の子でもどっちでもいいような名前にしたかったから、真琴にしたんだけどね」「えっ? そうなの?」え、そういう理由……?「男の子でも女の子でも、使える名前がいいなぁって思ってたし。 それで、真央か真琴にしようって決めてて、真琴にしたんだ」「そうだったんだ」今で言うジェンダーレス的なことかな……?「真琴のお腹の子は、男の子だもんね」「うん、そうだよ」「男の子なら、ユズルくんみたいなカッコイイ名前にしたら?」桜木みたいに、カッコイイ名前か……。「そうだなあ。……でも私も、どっちでも付けられる名前がいいなぁ」「あら、じゃあ真央にでもする?」「真央か……。んー、考えとく」本格的に名前を決めるって大変。まさか私が男の子でも女の子でもいいような名前にしていたなんて、ちょっとビックリ。その日一日は、ずっと名前のこと考えてた。名前の候補をノートに書き出してみたりした。「どんな名前が、いいですか?」  色々と考えてみたけど、私の中でこの名前がいいなあという候補が私の中で出来た。桜木には、産まれるまで内緒にしておこうっと。今思えば、色々あったな。 私は安定期に入ってしばらくしてから、切迫早産になりかけ少し入院をした。ベッドの上で安静にしてないといけないし、点滴もしないといけなくて……。流産にならないように色々と気をつけないといけなくて、すごく大変だった。でもその危機を乗り越えていく今がある。 それは、支えてくれたお母さんと桜木がいたからだった。前よりも少しずつ大きくなっていく身体には慣れなくて、でもようやく妊娠しているということを実感し始めている。ただでさえ重かった身体が、更に重くなったことが、何
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○76〜吸血鬼【ヴァンパイア】と夫婦〜

【sideユズル⑨】それから数週間が経ったある日。「真琴、お誕生日おめでとう」「お誕生日、おめでとう真琴」「ありがとう、二人とも」今日は真琴の十八歳の誕生日だ。 真琴がようやく、十八歳になった。「真琴、これ……誕生日プレゼント」「え?……いいの?」    俺は真琴に誕生日プレゼントを渡した。「これは俺とお母さんからの、誕生日プレゼント」「えーなんだろう」真琴は「開けてみてもいい?」と聞くので「ああ、開けてみ」と返した。   真琴は「開けてみようかな」とラッピングを解いていく。「これ、なに……?」 真琴はそのプレゼントを見て、驚いている。「ん? 誕生日プレゼント」「いや、そうじゃなくてっ……」真琴は「そうじゃなくて……これって、どういう意味?」と俺に問いかける。 俺は真琴のそばへ歩み寄ると、「こういう意味」と真琴の左手を手に取る。「えっ……?」俺は真琴の左手の薬指にそっと触れると、その薬指にそっと指輪をはめる。「え、え……えっ?」真琴は驚いているのか、目をクリクリとさせている。「真琴……俺と結婚してくれる?」「……え?」実は真琴が十八歳の誕生日を迎えたその日、俺は真琴にプロポーズすることをずっと前から考えていた。 それは真琴のお母さんにもひっそりと相談していて、真琴のお母さんにも協力してもらっていた。 真琴にはバレないかハラハラしていたが、なんとか当日までバレなかったので安心した。「真琴、俺と……家族、になってほしい」真琴はそんな目を見つめると、涙目で微笑む。「家族……?」「そう、家族」俺は、真琴と家族になりたい。 本気で、そう思ってるから。真琴は静かに俺の手を取り「……はい。 こちらこそ、家族にしてください」と笑ってくれた。「もう。ずるいよ、こういうの……」真琴はボロボロと涙を流し始める。「真琴、おめでとう」真琴のお母さんが真琴を優しく抱きしめる。「お母さん、もしかして、このこと知ってた……?」「ええ。ユズルくんから、前々から相談されてたからね」「ええ……。知らなかったの、私だけ……?」真琴は「もう、こういうサプライズ……ずるい」とふてくされているけど、「でも……すっごく嬉しい」と笑っていた。「ちなみにその指輪……安物なんだ」本当はもっといいものを買ってやりたかっ
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●77

俺も真琴が切迫早産になりかけて入院している間に誕生日を迎え、人間の年齢で言う十八歳になっていた。 俺はこの時をずっと待っていた。 ようやく、その夢が叶って嬉しいんだ。「真琴、婚姻届……書いてくれるか?」俺は婚姻届を取り出し、真琴に見せる。「……うん」真琴とこうして家族になることが、俺にとってどれだけ幸せなことなのか。「お母さん……婚姻届の証人の欄、書いてほしい」「もちろん、いいわよ」真琴のお母さんが、婚姻届の証人の欄にサインを書いてくれる。「桜木は……婚姻届の証人、誰にするの?」「俺? 俺は、もう頼んであるから大丈夫」「え……?」俺はとある人に、婚姻届の証人をお願いしていた。「俺も書いてもらう。 そしたら、一緒に出しに行こう」真琴は嬉しそうに「うん、わかった」と微笑む。「さ、今日は真琴の好きなものを用意したの。たくさん食べましょう」「うん」真琴の誕生日をこうして祝えるのは、本当に嬉しい。 「いただきます」「いただきます」「……ん、美味しい」   真琴のこの美味しそうに食べる姿も、俺は好きだ。 ✱ ✱ ✱ 俺は翌日の放課後、担任である片倉先生を呼ぶ。「あの、先生」「桜木? どうした?」俺は先生に「俺、先生にお願いがあるんですけど」と告げると、先生は「お願い? なんだ?」と俺を見る。「あの……これにサインをください」「え、サイン? なんのだ?」  俺は先生に婚姻届を見せる。「桜木、お前、これって……」 先生は俺を見つめる。 そんな先生に俺は「お願いします。……先生、俺の結婚の証人になってください」とお願いした。「桜木……本気か?」俺はそう聞かれて「はい。もう、真琴にプロポーズもしました」と即答した。「俺は、先生に見届けてほしいんです。……俺と真琴の幸せを、見届けてほしいです」先生は迷っているみたいだった。 だけど「……わかった。俺が、お前たちの証人になるよ」と言ってくれた。「本当ですか……?」「お前も金森も、俺にとって大事な生徒だ。 お前たちが幸せになれるなら、それを願うのが……担任である俺の教師としての願いだ」先生は俺に「桜木……金森のこと、守ってやるんだぞ。子供も、ちゃんと守ってやるんだぞ」と言ってくれた。「……はい」俺にとって先生は、最高の先生だと思った。「桜木、貸してみろ」先
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○78

「おかえり、桜木」「真琴、これもらってきた」「えっ?」桜木が帰ってきてそうそう、先生のサインが書かれた婚姻届を私に見せてきた。「え……先生!?」桜木ってば、先生に頼んだの!?「先生に、書いてほしいって頼んだ」「……先生、よくOKしてくれたね」ビックリした。まさか先生に頼むなんて……。「俺たちの幸せのためならって、書いてくれた」「それは、ありがたいけど……」でも先生がまさか、書いてくれるなんて……。「真琴、日にちを決めて、これ一緒に出しに行こう」「うん」桜木と私は、もうすぐ夫婦になる。 まだ十八歳と若い夫婦だけど、私たちには家族になる理由がある。だからこそ私は、子供のために、桜木のために頑張る。「桜木、アイス買ってきたの。食べよう」「ああ。 俺着替えてくる」「うん」私は桜木と一緒に、ソファに座ってアイスを食べた。✱ ✱ ✱それから数日が経ち、私たちは役所へ行って婚姻届を提出した。私は金森真琴から桜木真琴となり、桜木と夫婦になった。十八歳という若い夫婦だと思うけど、私たちはこれから夫婦としての人生(みらい)を進んでいく。「ねえ、桜木」「真琴、お前も今日から桜木だろ?」そう言われて「あ、確かに……」と思った。「そっか、私も桜木……なんだよね」「そうだよ。お前は今日から゙桜木真琴゙。俺の妻だ」「桜木……真琴」すごく言い慣れない。いつか慣れるのかな……「なあ、真琴……?」桜木と手を繋いで歩いていく。「うん、なに?」「夫婦になったんだから、俺のことはユズルって名前で呼べよ」「え……?」確かによく考えたら、私は桜木のことを下の名前で呼んだこと、一度もなかった。お母さんはユズルくんと呼んでいるけど、私はずっと桜木と呼んでいたので、呼ぶのに少し照れがある。「今日からユズルって、呼んでほしい」「え? は、恥ずかしい……!」ものすごく照れる。 ユズルという名前を呼ぶのにちょっと抵抗がある。「ほら、ユズルって呼んでみろ」「ゆ、ユズ、ル……」は、恥ずかしい……。「もう一回言って」「ゆ……ユズル……」照れるけれど、ユズルと呼んでみる。「もう一回」「ええっ、もう、恥ずかしいから無理っ!」私は桜木の手を離すと、恥ずかしさから手で顔を覆う。「名前で呼ばれるって……いいな」「……え?」「やっぱり真琴
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●79〜吸血鬼【ヴァンパイア】の人間の子供、桜木歩夢〜

あれから時は流れ、臨月を迎えたある日のことだった。ソファから立ち上がろうとすると、急にお腹が痛くなり動けなくなってしまった。「……い、たいっ………痛いよ……っ」あまりにも痛すぎて泣きそうになった。 座り込んでても痛くて、どうしようもなかった。「ただいまー。……え、真琴、大丈夫っ!?」帰ってきたばかりのお母さんが、しゃがみこむ私に駆け寄る。「お母さん、お腹が、痛いっ……」「大変……! 陣痛が始まったのね。 すぐ病院へ行きましょう!」お母さんは慌てて準備を始める。 「っ……痛いっ……」そっか。これが、陣痛なんだ……。ということはつまり……もうすぐ産まれるってことなの?「い、痛いよお……。お母さん、どうしよう……」「大丈夫よ。すぐに病院へ行きましょう。 恐らく陣痛が始まってるから、出産準備に入るかもしれないわね」「痛いっ……お母さん、痛いっ!」お母さんは「大丈夫よ、真琴。お母さんがついてるから」と手を握ってくれる。「お母さん、どうしよう!……う、産まれそう、かもっ……!」「いきんじゃダメよ、真琴! 力を抜いてっ!」「そ、そんなこと言われても……。お母さん、もうダメかもっ!」いきんじゃダメだと言われたのに、いきんでしまって、急に産まれそうな感覚になってしまう。このままだと、本当に産まれてしまう気がした。「真琴、落ち着いて。深呼吸しなさい」「う、うん……」 病院に着いてすぐ分娩室へと運ばれた。 産科の先生が優しく手引きしてくれる。 「桜木さーん、子宮口開いてるから、出産準備始めますからねえ」看護師さんの言葉が聞こえるけど、痛みに耐えることに精一杯でどうしたらいいのかわからない。「桜木さーん、ごめんね。今はまだ力抜いててね」 「ううっ……!!」 「ごめんね、痛いよね。 でももう少し頑張ってっ!」 力の抜き方もわからない。え、 どうすればいいのだろうか……。 もう少しって、どのくらい……!? 痛みに耐えながら、そんなことを考えてしまう。「はい!いいよー、いきんで!」 助産師さんの言う通りに、いきんだり力を抜いたりしていく。「桜木さん、はい!もう一回いきんで!」これを何度繰り返すのかわからないまま、時間だけが過ぎていく。「そうそう。上手だよ! そのまま頑張って!」「桜木さん、赤ちゃんの頭見えてきたよー!」先
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○80

【sideユズル⑩】 「ユズルくん!? 大変!真琴が産まれそうなの!」   「えっ!? 真琴が……?!」昼休みに屋上で寝転がっていると、真琴のお母さんから電話がかかってきた。「すぐ行きますっ!」    俺は急いで屋上を飛び出し、先生の元へと走った。「先生……!」「桜木? そんなに慌ててどうした?」俺は先生に「俺早退します! 真琴が赤ちゃん、産まれそうなんです!」と話すと急いで走り出す。「えっ!? あ、おい、桜木!廊下は走るなっ!」待ってろよ、真琴! 今行くからな……!俺は急いで病院まで走った。 ✱ ✱ ✱ 「ユズルくん!こっちよ!」「お母さん! あの、真琴は……!?」「今、産まれたわよ」「えっ……産まれた?」病院に着いた時にはすでに、真琴は出産したばかりだった。「本当……ですか?」「あ、お父さんですか?」看護師さんらしき人が分娩室から出てきた。「あ、はい……」「おめでとうございます。元気な男の子ですよ!」第一子は、元気な男の子だ。 待ち望んでいた子供が、ようやく産まれた。 俺は今とても、嬉しい気持ちでいっぱいだった。「ユズルくん、おめでとう」「……ありがとう、ございます」まだ信じられない。……でも、俺たちの子供は確かにここにいるんだよな。 なぜだかわからないけど、自然と涙がこぼれた。 「っ……俺、本当に父親になったんだ……」きっと嬉しい気持ちと、ホッとした気持ちが入り混じっているのかもしれない。「ユズルくん、真琴すごく頑張ってたのよ」真琴のお母さんは優しく微笑んでくれた。「っ……真琴、ありがとう」真琴が頑張ってくれたおかげで、俺にも大切な宝物が増えた。 すごく嬉しい。……俺、父親として頑張らないと。「母子ともに健康だって。良かったわね」「はい……良かったです」 その後俺は、初めて自分の子供に対面した。「この子が……俺たちの子供」「そうだよ。……可愛いよね」「ああ……可愛いな」俺たちとの子供は……フニフニしていて、とても柔らかくて、温かかった。 そんな子供の寝顔を見て、とても愛おしかった。 こんなにも愛おしいんだな……子供って。スヤスヤと眠っている子供を見て、とても微笑ましかった。 とにかく、可愛いんだ。目は真琴に、似てる気がする。 鼻は……俺なのかな? 口元は真琴に似て
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