最近では桜木のことを「ユズルくん」と名前呼びをしていて、驚いている。すっかり我が家の一員となった桜木は、私たちといると楽しいと言ってくれている。✱ ✱ ✱そんなある日のこと、家に担任の片倉先生が私の様子を見に来てくれた。「おう、金森。 体調は大丈夫か?」「……つわりで死んでます」片倉先生は「桜木から聞いてる。グレープフルーツを食べてるんだろ?」と言ってくる。「はい……むしろグレープフルーツしか食べれません」先生は「そうか。 てことで持ってきたぞ、グレープフルーツ」と私にグレープフルーツを見せてくれた。「グレープフルーツだ……」グレープフルーツを見ると、なんか嬉しくなる。「食べれる時に食べろよ」「はい。ありがとうございます、先生」私はグレープフルーツを先生から受け取ると、先生に「あの、今日はどうしたんですか……?」と問いかけてみる。「まあ、金森の様子が気になってな」「……そうですか」 「少し、痩せたか?」「そんなことは、ないと思いますけど……」確かに食べれるものは少ないけど……。「桜木が言ってたぞ」「……え?」「金森がつわりで辛そうな顔をしてるのが、見てるのが辛いってな」桜木……先生にそんなことを言ってたんだ。「出来れば、代わってやりたいと言っていたぞ」「桜木が、そんなことを……?」先生は「多分、桜木は金森のことが本当に大事なんだろうな。 そばにいるのに何も出来ないのが辛いって、そう言ってたぞ」と私に告げた。「桜木は金森とお腹の子が心配なんだろうよ。 産むのは金森だから、俺には出来ることが少ないって嘆いてたぞ」「そうなん、ですか……?」「俺も金森には、元気な赤ん坊を産んでほしいと思ってるよ。……一教師として、大事な生徒には幸せになってほしいと願ってる」先生がそう言ってくれるから、私は泣きそうになった。「先生な、俺がもし桜木の立場だったら……って考えたんだけどさ」「はい」「俺には桜木みたいに、きっと父親になる覚悟なんて、なかったと思うんだ」先生は麦茶を喉に流し込むと、「だから俺は、桜木のその決意はすごいと思ってる。 もちろん、金森の決意もだ」と話してくれた。「先生……」「俺は金森と桜木が幸せなら、それでいいかなって思う」先生がそう言ってくれた時、私はなぜか涙が流れた。「どうして……先生は私た
続きを読む