Mag-log in主人公の高校生・真琴が出会ったのは、自称吸血鬼【ヴァンパイア】と名乗る転校生・ユズルだった。 ユズルの秘密を知ってしまった真琴は、ユズルと共に命を狙われることになってしまうが……。 友達以上恋人未満の関係だった二人は、いつしかお互いを意識するようになり、ついに恋人同士になるが、そんな中真琴に吸血鬼を子供を産ませようと目論む吸血鬼のボスが、真琴を拉致監禁してしまう。 真琴は恐怖に怯えながら、逃げることを目論むが……。果たしてユズルは、真琴を助け出せるのか。そんな中真琴の身体にとある変化が襲いかかる。 果たして二人の運命はどうなってしまうのか……。吸血鬼と人間の許されない恋の行方は……。
view more「行ってきまーす」
「行ってらっしゃーい」
今日もいつも通り、お母さんに見送られながら学校へと向かう。
「真琴ー!」
「あ、萌恵。おはよう」
「おはよう」
友達の萌恵に、「どうしたの?なんかご機嫌だね」と声をかける。
「えっ?ちょっと真琴知らないの!? 今日転校生くるんだよ?」
「そうなの? 知らなかった」
萌恵は目をキラキラさせながら「しかもその転校生、超イケメンなんだってさ!」と話すから、私は「へえ、そうなんだ」と言葉を返す。
「あーあ、早くどんな子なのか見たいなぁ」
「イケメンってねぇ……萌恵、彼氏いるでしょ?」
「いるけど、それとこれとは別だよ!」
そんな萌恵に私は「別ってなに?」と聞き返す。
だけど私はこの時、まさか自分が"吸血鬼(ヴァンパイア)"の餌食になるなんて、想像もしていなかったーーー。
✱ ✱ ✱
「ほらー席つけー。ホームルーム始めるぞー」
チャイムが鳴ると同時に、席に着くみんな。 いつもより行動するの早いな、みんな。
やっぱ転校生が来るから……?「えーみんなも知っていると思うが、今から転校生を紹介するぞ。 おーい、入ってこい」
「はい」
先生の合図で転校生が入ってくる。 そしてその瞬間「きゃああああああ!」という女子たちの黄色い声援が響き渡った。
う、うるさい……! 思わず耳を塞ぎたくなる。
「おい、うるさいぞお前ら。静かにしないか!……さぁ、自己紹介しなさい」
「はい。桜木ユズルです。 今日からよろしくお願いします」
桜木という転校生が挨拶をしただけで"きゃああああああ!"と女子たちのテンションが上がっている。
「席は……そうだな」
キョロキョロと辺りを見回す先生。 そして先生と目が合ったのは、私だった。
「……えっ?」
ウソッ……。まさか……?
「じゃあ桜木は、金森の隣に座れ」
「ええっ……」
やっぱり?やっぱり私? たしかに席空いてるけど、でもでも……!
「はい」
そして近づいてくる桜木という名の転校生。
「よろしくお願いします」
「……うん、よろしくね」
軽く挨拶をした。
だけどこの転校生がまさか"吸血鬼(ヴァンパイア)"だったなんて、この時の私にはわかるはずもなかった。
そう、見た目は一見普通の人間にしか見えなくて。
だけどその心と中身は、人を噛み殺す【吸血鬼(ヴァンパイア)】なんだ……。
そんな吸血鬼に目をつけられることなるなんて、全く別の世界だと思っていた。 私の人生、どうしたらいいんだろうか……。「ねぇねぇ桜木くん」
「アドレス教えてー!」
「どこから来たのー?」
う、うるさい……。
「真琴、ご飯食べよ」
「ああ、うん」
「今日は屋上で食べよう」
「うん」
萌恵とお弁当を持って屋上へと移動する。
「にしても桜木くんって、カッコイイよねぇ。芸能人にいそうだもん」
「萌恵、彼氏いる分際でなに言ってんの? 彼氏いるんだからそんなこと言っちゃダメだって」
「でももちろん、彼氏が一番だけどね」
「そっか。良かったね」
彼氏ね……。恋なんて面倒くさいと思うけど。
「もう……真琴も彼氏くらい作ればいいのに。青春しなよ、青春」
「私は彼氏なんていらないよ。 男なんてバカでくだらないし、めんどくさいだけじゃん」
恋をするメリットをあまり感じない。
「なんていうか、真琴ってほんとに思いやりがないよね」
「え? それどういう意味?」
「なんていうか、真琴はズバズバ言い過ぎなんだって」
「なに言ってんの。これが私だって知ってるでしょ? 私は昔からそうなの」
私がそう言うと、萌恵は「まあたしかに、そうだけど……」とお弁当の卵焼きを頬張る。
どんな時も俺は、この子の父親として、真琴に寄り添っていきたいと思う。例えこの子が吸血鬼(ヴァンパイア)の子供だったとしても、この子の未来を俺たちならきっと変えていけると、そう信じている。そう信じて、二人で歩き始めたいんだ。「……俺、真琴も子供も幸せにしたい。 三人で、幸せになりたい」「うん。幸せになろう、絶対にさ」「……ああ、なろう。必ず」これが俺が決めた道だ。 俺はこの先、吸血鬼としてではなぐ人間゙として生きていく。例え俺が吸血鬼だとしても、俺はこの世界では人間として生きている。 この世界にいる限り、これからも人間として生きていきたい。この子がもし大人になって、吸血鬼になってしまったとしても……必ず俺が助けてやりたい。人間の母親と、吸血鬼である父親の元へと生まれてきてくれたこの小さな命。 もしこの子に吸血鬼の血が流れていたとしても、必ず俺は人間として育ててみせる。この子には絶対、辛い思いはさせたくない。「……ねえ、ユズル?」「ん?」「この子の名前……私決めたよ」真琴が嬉しそうに俺に微笑みかける。「……実は俺も、この子の名前、考えてきたんだ」「え? ユズルも……?」色々と調べてみたりして、いい名前がないかを考えてみた。 よく考えると悩んでしまい、すごく大変だったけど。でもどうしても、俺は子供に付ける名前をこの名前にしたかった。真琴が気に入ってくれると、いいんだけど……。「ウソ……考えてくれたの?」「……ああ。俺たちの子供だから、俺も一緒に考えたかった」真琴は「ユズル、ありがとう」と言ってくれた。「私が考えた名前は……これだよ」真琴が見せてくれた紙には、子供の名前が書いてあった。その名前にはーーー。「……え? 一緒だ」「えっ?」それは俺が考えた名前と、同じ名前だった。まさか、同じ名前を考えているなんて……。「俺も、同じ名前にしたんだ」「ウソ……?」「本当だ」まさか真琴も、同じ名前にしていたなんて……。こんな奇跡はないな。 そんな、この子の名前は……。「……歩夢(あゆむ)」「いいな、歩夢か。……桜木、歩夢」 明るい未来へと真っ直ぐ歩いていってほしいと願いを込めて、歩夢(あゆむ)と名付けた。桜木歩夢(あゆむ)。 これが、俺たちの子供の名前だ。とても素敵な名前だ。この子にぴったりな名前だ
【sideユズル⑩】 「ユズルくん!? 大変!真琴が産まれそうなの!」 「えっ!? 真琴が……?!」昼休みに屋上で寝転がっていると、真琴のお母さんから電話がかかってきた。「すぐ行きますっ!」 俺は急いで屋上を飛び出し、先生の元へと走った。「先生……!」「桜木? そんなに慌ててどうした?」俺は先生に「俺早退します! 真琴が赤ちゃん、産まれそうなんです!」と話すと急いで走り出す。「えっ!? あ、おい、桜木!廊下は走るなっ!」待ってろよ、真琴! 今行くからな……!俺は急いで病院まで走った。 ✱ ✱ ✱ 「ユズルくん!こっちよ!」「お母さん! あの、真琴は……!?」「今、産まれたわよ」「えっ……産まれた?」病院に着いた時にはすでに、真琴は出産したばかりだった。「本当……ですか?」「あ、お父さんですか?」看護師さんらしき人が分娩室から出てきた。「あ、はい……」「おめでとうございます。元気な男の子ですよ!」第一子は、元気な男の子だ。 待ち望んでいた子供が、ようやく産まれた。 俺は今とても、嬉しい気持ちでいっぱいだった。「ユズルくん、おめでとう」「……ありがとう、ございます」まだ信じられない。……でも、俺たちの子供は確かにここにいるんだよな。 なぜだかわからないけど、自然と涙がこぼれた。 「っ……俺、本当に父親になったんだ……」きっと嬉しい気持ちと、ホッとした気持ちが入り混じっているのかもしれない。「ユズルくん、真琴すごく頑張ってたのよ」真琴のお母さんは優しく微笑んでくれた。「っ……真琴、ありがとう」真琴が頑張ってくれたおかげで、俺にも大切な宝物が増えた。 すごく嬉しい。……俺、父親として頑張らないと。「母子ともに健康だって。良かったわね」「はい……良かったです」 その後俺は、初めて自分の子供に対面した。「この子が……俺たちの子供」「そうだよ。……可愛いよね」「ああ……可愛いな」俺たちとの子供は……フニフニしていて、とても柔らかくて、温かかった。 そんな子供の寝顔を見て、とても愛おしかった。 こんなにも愛おしいんだな……子供って。スヤスヤと眠っている子供を見て、とても微笑ましかった。 とにかく、可愛いんだ。目は真琴に、似てる気がする。 鼻は……俺なのかな? 口元は真琴に似て
あれから時は流れ、臨月を迎えたある日のことだった。ソファから立ち上がろうとすると、急にお腹が痛くなり動けなくなってしまった。「……い、たいっ………痛いよ……っ」あまりにも痛すぎて泣きそうになった。 座り込んでても痛くて、どうしようもなかった。「ただいまー。……え、真琴、大丈夫っ!?」帰ってきたばかりのお母さんが、しゃがみこむ私に駆け寄る。「お母さん、お腹が、痛いっ……」「大変……! 陣痛が始まったのね。 すぐ病院へ行きましょう!」お母さんは慌てて準備を始める。 「っ……痛いっ……」そっか。これが、陣痛なんだ……。ということはつまり……もうすぐ産まれるってことなの?「い、痛いよお……。お母さん、どうしよう……」「大丈夫よ。すぐに病院へ行きましょう。 恐らく陣痛が始まってるから、出産準備に入るかもしれないわね」「痛いっ……お母さん、痛いっ!」お母さんは「大丈夫よ、真琴。お母さんがついてるから」と手を握ってくれる。「お母さん、どうしよう!……う、産まれそう、かもっ……!」「いきんじゃダメよ、真琴! 力を抜いてっ!」「そ、そんなこと言われても……。お母さん、もうダメかもっ!」いきんじゃダメだと言われたのに、いきんでしまって、急に産まれそうな感覚になってしまう。このままだと、本当に産まれてしまう気がした。「真琴、落ち着いて。深呼吸しなさい」「う、うん……」 病院に着いてすぐ分娩室へと運ばれた。 産科の先生が優しく手引きしてくれる。 「桜木さーん、子宮口開いてるから、出産準備始めますからねえ」看護師さんの言葉が聞こえるけど、痛みに耐えることに精一杯でどうしたらいいのかわからない。「桜木さーん、ごめんね。今はまだ力抜いててね」 「ううっ……!!」 「ごめんね、痛いよね。 でももう少し頑張ってっ!」 力の抜き方もわからない。え、 どうすればいいのだろうか……。 もう少しって、どのくらい……!? 痛みに耐えながら、そんなことを考えてしまう。「はい!いいよー、いきんで!」 助産師さんの言う通りに、いきんだり力を抜いたりしていく。「桜木さん、はい!もう一回いきんで!」これを何度繰り返すのかわからないまま、時間だけが過ぎていく。「そうそう。上手だよ! そのまま頑張って!」「桜木さん、赤ちゃんの頭見えてきたよー!」先
「おかえり、桜木」「真琴、これもらってきた」「えっ?」桜木が帰ってきてそうそう、先生のサインが書かれた婚姻届を私に見せてきた。「え……先生!?」桜木ってば、先生に頼んだの!?「先生に、書いてほしいって頼んだ」「……先生、よくOKしてくれたね」ビックリした。まさか先生に頼むなんて……。「俺たちの幸せのためならって、書いてくれた」「それは、ありがたいけど……」でも先生がまさか、書いてくれるなんて……。「真琴、日にちを決めて、これ一緒に出しに行こう」「うん」桜木と私は、もうすぐ夫婦になる。 まだ十八歳と若い夫婦だけど、私たちには家族になる理由がある。だからこそ私は、子供のために、桜木のために頑張る。「桜木、アイス買ってきたの。食べよう」「ああ。 俺着替えてくる」「うん」私は桜木と一緒に、ソファに座ってアイスを食べた。✱ ✱ ✱それから数日が経ち、私たちは役所へ行って婚姻届を提出した。私は金森真琴から桜木真琴となり、桜木と夫婦になった。十八歳という若い夫婦だと思うけど、私たちはこれから夫婦としての人生(みらい)を進んでいく。「ねえ、桜木」「真琴、お前も今日から桜木だろ?」そう言われて「あ、確かに……」と思った。「そっか、私も桜木……なんだよね」「そうだよ。お前は今日から゙桜木真琴゙。俺の妻だ」「桜木……真琴」すごく言い慣れない。いつか慣れるのかな……「なあ、真琴……?」桜木と手を繋いで歩いていく。「うん、なに?」「夫婦になったんだから、俺のことはユズルって名前で呼べよ」「え……?」確かによく考えたら、私は桜木のことを下の名前で呼んだこと、一度もなかった。お母さんはユズルくんと呼んでいるけど、私はずっと桜木と呼んでいたので、呼ぶのに少し照れがある。「今日からユズルって、呼んでほしい」「え? は、恥ずかしい……!」ものすごく照れる。 ユズルという名前を呼ぶのにちょっと抵抗がある。「ほら、ユズルって呼んでみろ」「ゆ、ユズ、ル……」は、恥ずかしい……。「もう一回言って」「ゆ……ユズル……」照れるけれど、ユズルと呼んでみる。「もう一回」「ええっ、もう、恥ずかしいから無理っ!」私は桜木の手を離すと、恥ずかしさから手で顔を覆う。「名前で呼ばれるって……いいな」「……え?」「やっぱり真琴
「金森……お前は母親になる覚悟があるのか?」 「……あります。 私は絶対に、この子を産みます。この子を大切に育ててみせます」私は先生に訴えかけるように見つめた。「はあ……俺もお前たちが付き合っていることは知っていた。 付き合うのは自然なことだから仕方ないとしても、妊娠ってのはな……」先生も驚きを隠せないのだろう。「先生……ごめんなさい」「え?」「いい生徒じゃなくて、ごめんなさい」私は先生に頭を下げた。「先生、俺もごめんなさい。……いい生徒じゃなくて、ごめんなさい」なのに桜木も、私と一緒に謝ってくれた。「……二人とも、顔を上げろ」私たちは二人とも顔を上げた。「お前たち
「お願いします。……俺たちのこと、認めてください。必ず、真琴さんとお腹の子、守ってみせます。俺何があっても、守り抜いてみせますから」「しつこいわね! もう帰ってちょうだい!」真琴のお母さんが俺を追い返そうとする中、真琴がリビングから出てきて「お母さん、待って……! 話を聞いてっ!」とお母さんの腕を掴む。「真琴は黙ってなさい」「お願い、お母さん!……ちゃんと、ちゃんと私たちと話を聞いてほしいの。お願い!」そんな真琴に対して、お母さんは「……真琴、身体に障るから部屋に戻りなさい」と告げる。 「お母さん、お願い! 少しでいいから、話を聞いて……。お願いだから……」真琴は泣きそうな顔
次の日の朝、私はいつもの時間に目を覚ました。だけど、妊娠している今の身体では、起き上がることさえ困難になった。つわりで吐き気が止まらず、朝ごはんを食べようとしても、ごはんや味噌汁のニオイで気持ち悪くなって何も食べることができない。昨日、あんなことを言ったお母さんだけど、私のことを心配してくれているのか、ヨーグルトやゼリーなどを用意してくれた。「真琴、これなら食べられる?」 ヨーグルトを目の前に置いてくれる。「……ありがとう、お母さん」でもヨーグルトすら食べる気になれない。 そんな私にお母さんは「真琴、一週間後に病院へ行くわよ」と告げた。「……え?」「一週間後に、中絶手術
「……っ」私はお母さんの言うことを聞くしかないと思った。 お母さんが唯一の家族だから。唯一、私のことを理解してくれてる大切な家族。 お母さんを失えば、私は今度こそひとりぼっちになると思った。「……ごめんね、赤ちゃん」私はお腹に手を当てて、この中にいる小さな命に静かに呟いた。産んであげられなくてごめん。私のところに来させてしまって……ごめんね。「……っ……」 あまりにも残酷な現実に、涙が止まらない。 こうなってしまって、本当に後悔している。そう言われても仕方ない。 これは当然の報いなんだ。これは私への罰。 自業自得とは、まさにこういうことを言うんだな……。あまりにも辛くな