長い一日が終わり、私は夜の静寂に包まれた自室のベッドへと、ふわりと丁寧な手つきで下ろされた。智哉さんは今日一日、本当に私が一歩も歩かなくて済むように徹底的に私を抱え上げて屋敷中を移動した。ダイニングでの食事からリビングのソファへの移動、果ては洗面所まで、過保護すぎるほどに面倒を見てくれた。ようやく柔らかいマットレスに背中を預け、シーツを肩まで掛けられた私を見届けると、智哉さんはほんの少しだけ疲労の滲む息を吐いた。「じゃあ、ゆっくり休め」その一言を残し、彼はすぐに踵を返して寝室の扉へと向かおうとした。その広く頼もしい背中が離れていくのを見た瞬間、咄嗟に身を乗り出した。痛む足のことも忘れ、シーツから半分身を乗り出すようにして腕を伸ばし、彼の仕立ての良いシャツの袖口をギュッと掴んだ。「あ、と、智哉さん……っ」私が焦ったような上ずった声で彼の名前を呼ぶと、智哉さんはピタリと足を止めて振り返った。「あ、すみません……」私は咄嗟に摑んでしまった指先をゆっくりと離し、彼の漆黒の瞳を見つめ返した。「その、今日は一日、何から何まで本当にありがとうございましたと、きちんとお礼を言いたくて」私が深々と頭を下げて心からの感謝を伝えると、智哉さんはほんの数秒だけ黙り込んだ。「気にするな。明日もまた、お前が起きる頃に迎えに来る」その言葉の意味するところはつまり、明日も今日と同じように、朝から晩まで私を抱え上げて屋敷中を移動させるつもりだということだ。確かに私の足はまだ痛むけど、いくらなんでもそれはやりすぎだ。今日の夕方も、彼はお風呂場まで私を抱えて入ってこようとした。私が泣きそうになりながら「ここからは自分でできますから!」と扉を閉めたものの、彼は「足が滑ったらどうする気だ」と本気で不満そうにしていた。女として見られていないからこそできる行動なのだと理解してはいるものの、やはりこれ以上の過保護は私の心臓が持たない。「あ、ありがたいのですが……その、明日も今日みたいに、どこへ行くにもずっと私を抱えようとしなくて大丈夫です」私が顔を真っ赤にして猛抗議をすると、智哉さんはピクリと片眉を上げた。彼は私の意図が全く理解できないとでも言うように、少しだけ怪訝な顔をして私の顔を覗き込んでくる。「なんだ。俺に抱えられるのは嫌か?」その問に、私はぐっと言葉に詰まった。
Baca selengkapnya