無機質な金属の扉が閉まり、VIP専用の豪奢なエレベーターの中は、私と智哉さんの二人きりの密室となった。外界の喧騒から完全に遮断された静寂の中、かすかなモーター音だけが響く。私は背中に隠し持った小さな紙袋をギュッと握りしめ、彼の広い背中を恐る恐る見上げた。先ほどの私の振る舞いが、出過ぎた真似だったのではないかと不安でたまらなくなった。「あの……もしかして、さっきの会話、聞いてましたか……?」私が恐る恐る問いかけると、智哉さんはゆっくりとこちらを振り返った。その表情はいつものように冷徹で読み取れないが、隠し事など一切通用しない漆黒の瞳が私を捉える。「……あぁ。途中からな」彼の短く肯定する言葉に、私は心臓が跳ね上がる。でしゃばった真似をして彼の顔に泥を塗ってしまったかもしれないと、慌てて頭を下げた。「す、すみません……っ!勝手に偉そうなことを言ってしまって」私の謝罪を遮るように、微かなため息が頭上から降ってきた。怒られる、と身をすくめた次の瞬間。私の頭に、大きくて温かい手のひらがそっと乗せられた。そして、まるで壊れ物を扱うかのように、私の髪をゆっくりと優しく撫で始めた。その不器用で甘い手つきに、私は驚いて息を呑んだ。「怒っているわけじゃない。……よくやった」普段の彼からは想像もつかないほど、穏やかな声。「え……?」呆然と顔を上げた私と、至近距離で視線が絡み合う。「篠原の妻として、一歩も引かずに完璧な振る舞いだったと褒めているんだ」それは私にとって最高の褒め言葉であるはずなのに、同時に、これはあくまで契約上の役割に対する評価なのだという現実を突きつけられた気がした。彼の優しさは、私が完璧な防壁として機能したことへの報酬でしかないのだと。そう思うと、胸の奥がチクリと痛んだ。「……もうここには誰もいませんから、優しくする必要なんてないんですよ」これ以上彼の甘い
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