振り返った碧斗と由利の視線がぶつかった。碧斗はきょとんと首をかしげ、彼女に尋ねた。「どうかしたのか?由利」「いえ、何でも……」ない――と言いかけて、彼女は思わず言葉を止めた。振り向いた碧斗の顔が、まるで愛おしいものを見つめるかのように優しかったからだ。―――『お前が死ねばよかったのに』そう言われた前世のあの日とは打って変わって、彼の瞳は異常なほど柔らかかった。冷たかった彼が優しくなって喜ぶべきなのだろうが、今はただ困惑するだけだった。(……どうして?どうしてそんな顔をするの?)私はあなたへの思いを、とっくに捨てたというのに。今になってどうして、そんな風に気があるような素振りを見せるの?もしかして、一度由利に幸福を与えてから奈落の底へ突き落そうと画策しているのだろうか。だとすれば、あなたはとても残酷な人間だ。彼の意図など測り知ることはできないが、由利は動揺する心を落ち着かせ、何とか平静を保った。――絶対に、あなたの思い通りにはさせない。固く心に誓った由利は、口を開いた。「……碧斗、一つだけお願いがあるの」「何だ?」碧斗はさっきと変わらない、柔らかい笑みで返事をした。やっぱり、彼にそのような目を向けられるのは慣れない。気持ちが揺れそうになったのは、彼への未練からではない。あの日のことが蘇ってきて、また死ぬのではないかという恐ろしさからだ。距離を縮めようとする碧斗に対し、由利は一線を引いた。「―――碧斗、あまり私に優しくしないで」「…………何を言っているんだ?」そうやって私の気を引こうとしても無意味だ。私は私だけのものであり、今度は絶対にあなたに心を抱いたりはしない。「言葉通りの意味よ、私に優しくしないでほしいの」「夫が妻に優しくするのがそんなにおかしいことか?」碧斗は何かしてしまっただろうかと、焦ったように口を開いた。(ええ、しているわ。あなたは覚えてもいないでしょうけど、何度も何度も私の心をズタズタに破壊したわ)前世のことを思い浮かべると、今すぐにでも彼を罵倒してやりたいという気持ちがこみ上げてくる。しかし、今の彼はまだ何の罪も犯していない。強いて言うなら、紫苑との不倫くらいだろう。前世で彼が犯した罪に比べれば、あまりにも可愛いものだ。由利は彼にゆっくりと近付き、挑発的な笑みを浮かべた。「ねぇ、碧斗……私、知ってるの
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