紫苑は嬉しそうに笑みを浮かべながら、由利の手を握った。「姉さんもここへ来たということは、あの日のことを思い浮かべていたんでしょう?」「……ええ、そうね」あの後、結局父親と母親に叱られたのは由利だけだった。勝手な行動をした張本人である紫苑は何のお咎めもなく、由利だけが責められた。(……嫌な記憶を思い出してしまったわ)せっかくの旅行だというのに、どうして彼女はこうも余計なことばかりするのだろうか。紫苑の考えがどうしてもわからず、由利は困惑した。「……紫苑、そろそろチェックインが始まるわ。行きましょう」「ええ、そうね」由利は碧斗に紫苑を見つけたという連絡を入れ、紫苑と共にチェックインゲートへと向かった。ゲートの前には既に、碧斗が到着していた。「――紫苑!よかった、無事に見つけられたんだな」「ええ、私のおかげでね」今回の一件においては碧斗は何もしていない。そのような視線に彼も気付いたのか、気まずそうに視線を逸らした。「二人とも、早く行こう」由利は紫苑と碧斗より一足先にチェックインゲートに入り、搭乗券を受け取ったあとに荷物のスーツケースを預けた。チェックインしたあとは手荷物検査に進んだ。由利は初めてではないため、スムーズに終えることができたものの、紫苑は違う。「義兄さん、スーツケースはどうすればいいの?」「それはそこに……」「海外旅行に行くためにこんなにも面倒な手続きが必要だなんて、知らなかったわ!ここにいる人たちは手伝ってもくれないわけ!?ホンット、気が利かないのね」周囲にいる空港の職員たちに聞こえるような大声だった。職員たちは眉をひそめて紫苑を見つめていた。碧斗は顔を真っ青にしながら、何とか紫苑を宥めた。「し、紫苑……代わりに俺が手伝うから、そんなに大声出すな」由利は遠くから、そんな二人をじっと眺めていた。騒ぎ立てる紫苑は完全に周囲の人々の注目を集めている。あの近くにいなくてよかった、と安堵の息を吐いていた。そして案の定、紫苑は手荷物検査でも問題を起こしてしまった。「ちょっと、持ち込んじゃいけないってどういうことよ!」「……そういうルールになりますので」横にいる碧斗が何とか紫苑を落ち着かせているが、彼女は気に入らないのか職員に怒鳴り散らしてばかりだ。職員は呆れたような目で紫苑を見ており、周りにいる人々も完全にドン引きしている
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