Lahat ng Kabanata ng 愛人の死に耐えられなかった夫、お前が死ねばよかったのにと言い残し自死ー妻は回帰したー: Kabanata 71 - Kabanata 80

101 Kabanata

第71話

紫苑は嬉しそうに笑みを浮かべながら、由利の手を握った。「姉さんもここへ来たということは、あの日のことを思い浮かべていたんでしょう?」「……ええ、そうね」あの後、結局父親と母親に叱られたのは由利だけだった。勝手な行動をした張本人である紫苑は何のお咎めもなく、由利だけが責められた。(……嫌な記憶を思い出してしまったわ)せっかくの旅行だというのに、どうして彼女はこうも余計なことばかりするのだろうか。紫苑の考えがどうしてもわからず、由利は困惑した。「……紫苑、そろそろチェックインが始まるわ。行きましょう」「ええ、そうね」由利は碧斗に紫苑を見つけたという連絡を入れ、紫苑と共にチェックインゲートへと向かった。ゲートの前には既に、碧斗が到着していた。「――紫苑!よかった、無事に見つけられたんだな」「ええ、私のおかげでね」今回の一件においては碧斗は何もしていない。そのような視線に彼も気付いたのか、気まずそうに視線を逸らした。「二人とも、早く行こう」由利は紫苑と碧斗より一足先にチェックインゲートに入り、搭乗券を受け取ったあとに荷物のスーツケースを預けた。チェックインしたあとは手荷物検査に進んだ。由利は初めてではないため、スムーズに終えることができたものの、紫苑は違う。「義兄さん、スーツケースはどうすればいいの?」「それはそこに……」「海外旅行に行くためにこんなにも面倒な手続きが必要だなんて、知らなかったわ!ここにいる人たちは手伝ってもくれないわけ!?ホンット、気が利かないのね」周囲にいる空港の職員たちに聞こえるような大声だった。職員たちは眉をひそめて紫苑を見つめていた。碧斗は顔を真っ青にしながら、何とか紫苑を宥めた。「し、紫苑……代わりに俺が手伝うから、そんなに大声出すな」由利は遠くから、そんな二人をじっと眺めていた。騒ぎ立てる紫苑は完全に周囲の人々の注目を集めている。あの近くにいなくてよかった、と安堵の息を吐いていた。そして案の定、紫苑は手荷物検査でも問題を起こしてしまった。「ちょっと、持ち込んじゃいけないってどういうことよ!」「……そういうルールになりますので」横にいる碧斗が何とか紫苑を落ち着かせているが、彼女は気に入らないのか職員に怒鳴り散らしてばかりだ。職員は呆れたような目で紫苑を見ており、周りにいる人々も完全にドン引きしている
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第72話

碧斗が紫苑の世話から解放されたのは、かなり時間が経った後だった。疲れ切った顔の碧斗と、納得がいかないのかプンプンした紫苑。何があったのかは、わざわざ言われなくとも想像がつく。碧斗はなかなかに苦労していたようだ。しかし、彼が紫苑がついて来ることを許可したのだから、面倒は彼が見るべきなのは当然だ。「―――やっと終わったのね、碧斗、紫苑」搭乗ゲートの傍にある椅子に座っていた由利は、立ち上がってこちらへやってくる碧斗と紫苑に声をかけた。「あ、あぁ……何とか無事に終えられたよ」「あの職員ったら、人の話をまるで聞かないのよ!失礼しちゃうわ!」どうやら紫苑はかなり空港職員と揉めていたようだ。彼らと同じタイミングでやって来た旅行客たちが紫苑を見ながら眉をひそめているところからして、相当だったのだろう。由利は旅行に行く前から疲弊している碧斗に労いの声をかけた。「お疲れ様、碧斗」「………由利」「だから私は紫苑を来させるのに反対したのよ。こうなることが目に見えていたから」碧斗は反論の余地もないのか、黙り込んだ。昔から紫苑に甘い彼のことだ、彼女の願いならと特に深く考えずに許可したのだろう。「あなたが紫苑を連れて来たんだから、あなたには責任を取って最後まで紫苑の面倒を見てもらうからね」「……」乗り気ではないのか、碧斗は何も言わずに由利を見つめていた。少し離れたところでは、紫苑がキャー!飛行機!と子供のようにピョンピョン飛び跳ねている。ちょうど飛行機が到着したところのようだった。あの様子だと、紫苑は絶対に機内で大人しくはしないだろう。娯楽としてスマートフォンなども使えないから、なおさら。「紫苑が窓際、あなたが真ん中で私が廊下側よ。いいわね?」「……」――紫苑の世話、よろしくね。そう言われているような気がして、碧斗が憂鬱な気持ちになったのは言うまでもない。(今になって紫苑を連れてきたことを後悔しているの?普段の紫苑の様子からして、こうなることはわかりきっていたでしょうに)それから由利は碧斗、紫苑と共に三人でハワイ行きの飛行機に乗り込んだ。紫苑はもちろん、由利にとってもハワイに行くのは初めてだった。今回は三泊四日の旅行を予定している。碧斗はハワイに行くのが初めてではないので、由利と紫苑の行きたいところを中心に回ってくれるという。「わぁ、義兄さん!海が
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第73話

由利は荷物を持って飛行機から降りた。そのあとを碧斗、そして紫苑が続く。空港内で流れてきたスーツケースを受け取り、彼女は碧斗と紫苑が追い付くのを待った。「あら?私の荷物どれだったかしら?これではないわね……」「紫苑、そんな風に人のものにベタベタ触るのはあんまり良くないぞ……」そしてここでもまた、紫苑がモタついて周囲の人々に迷惑をかけてしまったようだ。手当たり次第に人の荷物に手を触れる紫苑を、碧斗が何とか落ち着かせた。(……まぁ、初めての海外だから仕方が無いわね。責任は全て碧斗が取るから)スーツケースを引いた紫苑が、由利の元へ駆け寄ってきた。「姉さん!荷物見つかったわ!初めての海外だからちょっと焦っちゃったの。待たせちゃってごめんなさいね」「いいのよ、気にしないで」それから三人は空港を出た。青い空と、眩いほどの太陽の光が由利たちを出迎えた。紫苑はもちろん、由利もまた初めてのハワイに興奮を隠せなかった。「わぁ、ついにハワイに着陸したのね!」「ええ、道中どうなることかと思ったけれど……」紫苑は日焼け対策につば広の麦わら帽子をかぶった。白いリゾートワンピースに、夏にピッタリな麦わら帽子。風を受けた長い髪の毛がなびいている。その姿は、周囲にいる人々の注目を集めていた。「あら、とっても綺麗な人ね」「モデルさんか何かかな?」昔から、紫苑はどこにいても目立つ存在で、多くの人の視線を集めるような子だった。(やっぱり、紫苑はどこでも注目されるわよね。そのせいで変なことが起きないといいけれど)姉である由利から贔屓なしで見ても、紫苑はとても綺麗だった。いつも我儘ばかりかけている妹だが、そのことは認めざるを得ない。しかし、由利は気付いていなかった。通りかかる日本人たちの称賛の言葉の半分は、その横にいる由利に向けられたものであるということに。「ワイキキにあるホテルまで行こう、由利、紫苑」「ええ、そうね」空港を出た三人はタクシーに乗り、ホテルがあるワイキキまで移動した。「ねぇ、この人何て言ってるの?」「紫苑、お前は一旦下がっていてくれ」由利は英語をある程度話すことができ、幼い頃から海外旅行に行っていた碧斗はペラペラだ。しかし、紫苑は全くと言っていいほど話すことができない。(GPSでもつけさせておくべきだったかしら……)そんな由利の不安になど気付
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第74話

マズい、と思った頃にはすでに遅かった。人のスマホの画面を勝手に覗き込むだなんて、いくら夫婦とはいえ無礼ではないか。しかし、碧斗にとってはそんなことどうでもいいのか、顔をしかめながら尋ねた。「……由利、兄さんと連絡を取り合っているのか?」「……別にいつもそうしてるわけじゃない。今はたまたま私が碧斗たちと旅行に行っているから、気になって連絡しているだけよ」「そうか……」妻が兄とコソコソ話しているのが気に入らないのだろうか。しかし、碧斗は由利の妹である紫苑とそれ以上のことをすでにやっている。そんな彼が、由利の行動を制限する資格なんて無いはずだ。「涼介兄さんはただ私や碧斗、紫苑たち三人を心配しているだけよ。彼がとっても優しい人なのはあなたも昔から知っているでしょう?実の弟であるあなたと、妹のように可愛がってきた私たちのことを気にかけてるのよ」「………そうだな」涼介は誰から見てもとても優しい人だった。それは碧斗もよくわかっていた。優秀なうえに性格まで完璧で、非の打ち所がないところが彼の気に障るのだろう。「ほら、碧斗。目を離した隙に……紫苑がどこかへ行きそうよ」「……!」由利は碧斗が紫苑に気を取られている隙に、慌てて涼介に返事をした。碧斗は今回の旅行において、紫苑の世話だけで手一杯になりそうだ。荷物を預けた由利たちは、ホテルを出て念願のワイキキ観光をスタートさせた。「姉さん、義兄さん。私お腹が空いたから何か食べたいわ」「そうねぇ……そういえばちょうどお腹が空いたわね」機内食は一応出たものの、かなり時間が経っているため三人とも空腹だった。「ご飯でも食べに行きましょうか。ちょうど近くに有名なお店があるそうよ」碧斗もその提案に賛成し、由利たち三人は海の前に位置するレストランへと向かった。そこで名物のエッグベネディクトを一つずつ注文し、テラス席でそれぞれ食べ始める。「とっても美味しいわ!お店の雰囲気も素敵。ハワイってこんな感じなのね」視線のすぐ先には、綺麗な青い海が果てしなく広がっている。多くの観光客が水着を着て泳いだり、ビーチに立てかけたパラソルの下で休憩したりしている。「姉さん、このあとはワイキキビーチに行くんでしょう?」「ええ、そうよ」しっかりと腹ごしらえをしたあとは、ワイキキビーチで泳ぐ予定だ。そのための水着やサンダルなどは用意し
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第75話

それから碧斗と紫苑が昼食を終え、三人はレストランを出た。彼らが次に向かうのは、当然すぐ傍にあったワイキキビーチだ。今日は絶好の海水浴日和だった。空は青く晴れ渡り、日差しが眩しいくらいだ。ビーチ内は観光客で賑わっており、多くの国の人々が泳いだりビーチで休憩をしたりしている。由利と碧斗、そして紫苑は水着に着替えてビーチへ出た。青い海水パンツを履いた碧斗、紫苑はリボンとフリルの付いたピンク色のガーリーな水着を着用している。普段下ろすことの多い髪の毛は、高い位置で一つにまとめられている。「あら、とっても綺麗だわ」「何て美しい人なんだ……」由利の姿を見た周囲の人たちが感嘆の声を漏らした。――ビーチ内において、人目を引いていたのは紫苑よりも由利の方だった。元々スタイルの良い彼女は、真っ白なビキニを着用していた。スラッとした長い脚、くびれのあるウエスト、豊かな胸まで。由利は女性にしては背が高く、顔も小さい。真っ白な肌に白いビキニがよく似合っている。実際、ビーチにいる男たちは皆彼女に注目していた。そんな男たちの視線に気付いた紫苑が、不快そうに眉をひそめて口を開いた。「あら、姉さんの水着とっても似合ってるわね」「そう?あなたからそう言ってもらえるだなんて……嬉しいわね」褒められたこと自体は嬉しいものの、相手が紫苑であるため本心か煽りかどうかの区別がつかない。そんな彼女の心情に気付いたのか、紫苑が頬を膨らませた。「――姉さんったら、私がふざけてこんなことを言うとでも思っているの?心外だわ」「あ、いや……そういうわけじゃ……」読心術でも持っているのか。前から思っていたが、紫苑は妙に鋭いときがある。まるで由利の心の中を常に掌握しているかのようだった。「姉さんの水着姿がよく似合ってると言ったのは私の本心よ。だってこの世で私ほど姉さんを愛している者はいないもの」「…………嬉しいわ」喜んでいいのか悪いのか、よくわからない。一見仲が良い姉妹のように見えるかもしれないが、二人の関係は普通とは言えないものだった。「――由利……たしかにその水着、よく似合っているな」話している二人の間に割り込んだのは、それまでずっと紫苑の後ろに立っていた碧斗だった。彼は頬を赤く染めて由利を見つめている。彼の視線が、由利の体を上から下までなぞるように動いた。一瞬だけゾワッとしたのは
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第76話

それから由利と紫苑は海で泳ぎ始めた。由利や碧斗と違って紫苑は泳げないため、浮き輪を付けての海水浴となった。「姉さん、何かこの浮き輪ダサくない?」「紫苑、我慢しなさい。溺れでもしたら大変でしょう?」紫苑は嫌がっていたものの、浮き輪を外すことを許可するわけにはいかなかった。彼女は学生時代のプールの授業にすら一回も出たことが無いほど水には慣れていなかったからだ。「姉さん、碧斗義兄さんがビーチから写真を撮ってくれているわ!」「……あら、本当ね」ビーチに目を向けると、ちょうど碧斗がこちらにカメラを向けているところだった。紫苑と二人の写真なんて由利は別に撮ってほしくもなかったが、彼女がそれを望んでいるので適当に合わせることにした。(紫苑と写真撮るとか何年ぶりかしら……)由利は昔から、家族旅行というものをあまり経験したことがなかった。両親は紫苑だけを連れて行くことが多かったため、由利はいつも家で留守番だった。「やっぱりこの浮き輪、何か邪魔くさいわね。取ってしまおうかしら?」「紫苑、ダメよ……もしあなたに何かあったら母さんが耐えられないでしょうから……」由利は今すぐにでも浮き輪を外そうとする紫苑を慌てて制止した。もし沖に流されでもしたら大変だ。父親はまだしも、母親は紫苑に何かあるたびにヒステリーを起こすのだ。「母さんが大騒ぎするわよ……」「……」彼女のその言葉に、紫苑はピタリと動きを止めた。ゆっくりと由利の方に首を回すと、彼女を嘲笑うように口角を上げた。「母さんが?冗談でしょう?」「………冗談ではないわ。母さんがどれだけあなたを深く愛しているか、知っているでしょう?」母が紫苑をとても大切にしているのは今に始まったことではない。そのことは彼女自身が一番わかっているはずだ。しかし、紫苑は意外な反応を示した。「姉さん、何を勘違いしているか知らないけれど――母さんは私を愛してなんていないわ」「…………どういうこと?」彼女の言っている意味がわからず、由利はあ然とした。母親が紫苑を家族の中でも特に深く愛しているのは、近隣住民の間でも有名だった。それなのに愛していないだなんて、何故そんなことが言えるのか。「姉さんは悲しいくらい物事の表面部分しか見ていないのね。母さんが私を愛していると思っているだなんて」「紫苑……それは一体……」「まぁいいわ、今日
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第77話

由利と紫苑、そして碧斗も加わり、三人はしばらく海で泳いでいた。太陽の日差しが降り注ぎ、水面がキラキラ光っている。猛暑の中、冷たい水が気持ちいい。(行くときはどうなることかと思ったけれど……こんなにも楽しいなんて……)これまで色々なことがあったせいか、心配性になりすぎていたようだ。由利は浮き輪に入ったまま楽しそうに泳ぐ紫苑を見つめた。そのとき、紫苑に気を取られていた由利の背後に誰かがぶつかった。「キャッ!」「――由利、大丈夫か?」「碧斗……」押し出された由利を、碧斗が慌てて体で受け止めた。彼の胸に倒れ込み、逞しい腕で抱きしめられる。お互い裸に近い状態だからか、何だか恥ずかしくて顔が真っ赤になった。(最後に碧斗に抱かれたのなんてかなり前だから……)三度目の生では、由利は紫苑に碧斗を譲り、彼が自身の部屋へ来ることを拒んでいた。そのため、彼に抱かれた最後の記憶はだいぶ前だった。「碧斗……」由利はすぐにその腕から逃れようとしたが、碧斗は彼女をしっかりと抱きしめたまま離さなかった。それどころか、彼女が離れようともがくたびに腕には力がこもった。そのまま彼の指先は彼女の背中をなぞり、腰まであっという間に移動した。(ちょ、ちょっと何してんのよ!)由利が顔を上げると、熱を帯びた目で彼女を見つめる碧斗が視界に入った。碧斗はもう我慢できなかった。今の彼女は真っ白なビキニで大事なところだけを隠している状態であり、その姿を見るたびに彼はこみ上げる熱情を抑えることができずにいた。由利に見惚れている男たちの目をくりぬいてやりたい。彼女は自分のものだ。そのような強い独占欲が、碧斗を支配していた。碧斗はその細い体を強く抱きしめ、肩口に顔を埋めた。由利の体から発せられる甘い香りが、余計に彼を狂わせた。(いくら夫婦とはいえ、人目のあるところでこんなことする!?)彼の荒い息遣いを耳元で感じ取った由利は、慌ててその体を押し退けた。強い力で押された碧斗はようやく由利を腕から解放した。「碧斗、正気じゃないみたいね」「………ああ、どうやら君のせいで我を忘れていたようだ」我慢できずに手を出そうとしたのはそっちだというのに、人のせいにしないでほしいものだ。由利は二度とこのようなことが起きないよう、碧斗から距離を取ろうとした。しかし、碧斗はそんな彼女の行動に察したのか、由利
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第78話

ビーチで泳いだあと、由利たち三人は思う存分ワイキキ観光を楽しんだ。夜になり、ホテルへ帰ってきた。「紫苑、一人で大丈夫?」「そうねぇ……不安だから碧斗義兄さんと一緒がいいわ」「なら、変わりましょう?ね?私は平気だから」由利はこっそり紫苑とそんな話をしていたが、すぐに碧斗にバレてしまった。紫苑の頼みなら聞き入れるかと思ったが、今日の碧斗は何故かやけに頑固だった。部屋を変えることはできない、と言われて由利は碧斗に引きずられるように同じ部屋まで連れてこられたのだった。「紫苑、何か困ったことがあったらすぐに私たちの元へ来てね」「ええ、そうするわ」ルームキーをかざし、ロックを開けた碧斗は由利を先に中へ通した。彼女は逃れることはできないと思い、覚悟を決めて部屋へ入った――「わぁ、とっても素敵な部屋ね……!」「だろう?君のために奮発したんだ」テンションの上がった由利に、碧斗が安心したように微笑んだ。碧斗が予約したホテルは、ワイキキの中でも有名な豪華リゾートホテルだ。客室はかなりの広さで、大きな窓からワイキキビーチが一望できる。白と青を基調としたシンプルな室内は、ハワイ感たっぷりのデザインとなっている。(素敵……碧斗ったら、わかってるじゃない)由利のためではなく、きっと紫苑のための間違いだろうが、どちらにせよこのようなホテルに泊まれるのは嬉しい。「君が喜んでくれてよかった」「ええ、きっと紫苑も今頃大はしゃぎしてるはずよ。そのせいで物を壊したりしていないか心配だけれど」「……何故、紫苑の話が出てくる?」紫苑というワードに、碧斗が眉をひそめた。彼が紫苑のことでそのような顔をするのは珍しい。(行きの手荷物検査で迷惑かけられたから、ちょっと不機嫌になっているのね)由利は碧斗を宥めながらも、用意されていたバスタオルを手に取った。スーツケースの中から下着を取り出し、そのまま浴室へと向かう。「お風呂に入ってくるわ」「ああ、いってらっしゃい」碧斗は軽く手を振りながら、浴室へ入る由利を見送った。お風呂に入った由利は丁寧に体を洗い、湯船に浸かった。温かいお湯に体を沈めると、一日の疲れがほぐれていくかのようだった。「気持ちいいわ……」しばらくお湯に浸かった由利は、体を拭いて服を着替えた。バスローブ姿の彼女が出ると、次は碧斗の番だ。彼がお風呂に入っている
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第79話

由利はじわじわとこちらへ近付いてくる碧斗を、自然と拒絶していた。彼が今何を考えているのか、その瞳だけで十分すぎるくらいに伝わってくる。言われなくても由利にはわかる。――彼は今、本気で由利を抱こうとしているのだ。前は何とか逃れられたが、二度目はそう簡単にはいかないだろう。碧斗はゆっくりと歩み寄り、ベッドに座る由利の横に手をついた。そして、彼女の頬に優しく手を触れた。熱っぽい目と、至近距離で視線がぶつかった。間違いない、彼はこのまま由利を抱くつもりだ。(じょ、冗談じゃない……!せっかくの旅行で何で碧斗に抱かれないといけないのよ!)由利は慌てて彼の胸に手を置き、その体を押し返した。「ちょ、ちょっと待ってよ碧斗……私、今日は一日中歩いてたから疲れてるのよ?あなたもそうでしょう?」「いや、俺はまだまだ元気だ」碧斗は自身の胸に置かれた由利の手を掴んだ。そのまま指を絡め、彼女はベッドに押し倒されてしまう。大きなキングサイズのベッドに寝転がった由利に、碧斗が覆いかぶさるように手をついた。もう片方の手が彼女の脇腹をなぞり、そのままバスローブの腰ひもを解いた。「キャッ!」胸元が緩くなって乱れ、谷間が露わになった。由利がいくら言ったところで、碧斗は止まらなかった。彼は由利の頬にキスをすると、フッと耳元で笑った。彼の柔らかい髪の毛が顔に当たり、くすぐったい。由利は何とか逃れようともがくも、こうなった以上碧斗は彼女が受け入れるまで退かないだろう。「あ、碧斗……」「由利……」誰か助けて――と由利は心の中で叫んだ。そんな彼女の切なる願いが届いたのか、部屋の扉がノックされた。「――姉さん、義兄さん。中にいる?ちょっとわからないことがあって」「し、紫苑……!?いるわ!今開けるからちょっと待っててちょうだい!」「……紫苑?」ちょうどいいところで部屋にやって来たのは紫苑だった。由利は力が緩んだ碧斗を押し返し、服の乱れを直すとすぐに扉を開けた。珍しくシャツとパンツ姿の彼女が、扉の前に立っていた。由利はそんな彼女の腕を引き、半ば強引に部屋に入れた。「いいところに来てくれたわね、紫苑。さぁ、どうぞ入ってちょうだい」「……いや、ちょっと聞いたら帰ろうと思ってたんだけど」「そんなこと言わないで!せっかくだし、碧斗と三人で話でもしましょうよ」ね?ね?と由利は救世主
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第80話

紫苑のおかげで難を逃れた由利は、彼女が帰ったあと何事も無かったかのようにベッドに入った。碧斗が何か言いたそうな顔でこちらを見つめていたが、気にもしない。せっかく二つも大きなベッドがあるんだから、別々に寝ないわけにはいかない。碧斗としては同じベッドで寝たかったのだろうが、由利はその提案を断固として拒否した。そのせいで明日の観光に影響が出ることになったら最悪だからだ。「おやすみ、碧斗。良い夢を見てね」「……あぁ」碧斗は素っ気なく返事をして眠りに就いたかと思いきや、突然ベッドから起き上がって由利の元へ向かった。まだ諦めていなかったのか、と体を強張らせたそのとき――碧斗がベッドで横になる由利のおでこにキスをした。「……おやすみ」「……」チュッと音を立てて口づけが額に落とされた。前世ではほとんどなかったスキンシップをされるのも、もう何度目かわからない。キスをした後、碧斗は部屋の照明を消した。由利は特に深く考えることなく瞼を閉じ、眠りに就いた。***翌日、由利たちはホテルで朝食を摂ったあと、バスに乗ってハワイの有名なショッピングセンターへと訪れていた。「わぁ、とっても素敵ね!姉さん、義兄さん早く行きましょう!」「紫苑、あまり走ったら転ぶわよ」バスを降りた紫苑は、幼い子供のように駆けて行く。彼女を一人にするわけにはいかないので、由利と碧斗も慌ててそのあとをついて行く。しっかり睡眠を取った由利とは違い、碧斗は目の下にクマを作っていた。まだ朝だというのに、早速疲れきったような顔をしている。「碧斗ったら、昨日はよく眠れなかったみたいね」「……あぁ、変な夢を見てしまってな」「変な夢?」一体何の夢か尋ねても、碧斗は虚ろな目でわからないと口にするだけだった。そんな彼を見ていると、途中で倒れてしまうのではないかと不安になった。「……疲れているのね、紫苑のことは私が見るからそこのベンチで休んできたら?」「……いいのか?」由利はもちろんと頷き、碧斗はベンチにドサッと座り込んだ。彼が見た夢の内容はわからないが、今由利たちが彼にしてあげられることは何も無い。由利は碧斗に冷えたペットボトルの水を渡した。「本当は付き添ってあげたかったけど、紫苑がとっても楽しみにしているみたいだから……行かないと」「……迷惑かけてすまない、二人だけで楽しんできてくれ」
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