十二月に入ると、忙しさはさらに増した。週に一度だった会議が、二回になった。それでも、確認すべきことは次から次へと湧いてくる。手帳のスケジュール欄は、空白を探すほうが難しくなっていた。 中旬に差し掛かると、街はクリスマスや正月に向けて、どこか浮き足立った空気をまといはじめる。けれど紡には、その浮かれた空気に乗る余裕など、どこにもなかった。 もともと、クリスマスを誰かと過ごすあてもない。正月も実家には帰らず、マンションで一日中、だらだらと過ごすのが、ここ数年の定番だ。相手がいなくても、十二月の街の灯りを見ていると、なんとなく胸の奥がそわそわした。毎年、そうだった。 今年は、そのそわそわすら、感じる暇がなかった。 プロジェクトは、クリエイティブ制作の佳境に差し掛かっていた。広告撮影やパッケージデザインの最終調整、店頭什器の仕様確定など、やるべきことが山積みだった。それだけでも目がまわりそうなのに、来年三月下旬のローンチイベントの企画まで、並行して進めなければならない。 専任の担当になると、これほど忙しいのか――と、紡は何度も思った。 これまではサポートで入ることが多く、ひとつの新製品の販売に、これほど深く関わったことはなかった。なにもかもが、初めてだった。それでも、紡は充実していた。きっと、この半年は、自分の糧になる。そう思える程度には、前を向けていた。 セントラル・アドとの正式な打ち合わせ日以外にも、有馬と顔を合わせる回数は増えていた。行き来の移動時間がもったいない。そう理由をつけて、紡はいくつかの打ち合わせをウェブ会議に切り替えてもらった。 もったいない、というのは、半分は嘘だった。 ほんとうは、できるだけ、有馬と同じ部屋にいたくなかった。画面越しなら、目を逸らしても気づかれない。声が掠れても、電波のせいにできる。あの男と同じ空気を吸うと、自分の輪郭が、少しずつ崩れていくような気がした。だから、ウェブにした。 有馬も、セントラル・アド側のメンバーを取りまとめる立場で、多忙なはずだ。だから、そのほうがいい。お互いのためだ。 そう、自分に言い聞かせた。 その日、会議室で有馬と
Last Updated : 2026-05-25 Read more